群馬県ハイク 熊さんとの出会い。秋の尾瀬散策編

2020.10.18(日) 日帰り

前日、農家のお手伝いをした。 土に触れ合い、苗の植え替え作業しながら 色々話すのもいい。 寒さを忘れて、楽しく過ごした。 しかしだ。朝起きたら頭が痛い。 冷えてしまったせいで、風邪をひいたかも しれない。 しかし、今日は秋晴れ登山日和。 今日も新潟県に行こうと思っていたが、 体調不良のため、7時に起きた。 車中、行く場所を悩みながら進む。 頭痛は治らない。 こんな時、頭痛薬を飲むのかもしれない が、この10年ぐらい薬を飲まないことに している。 こんな時にはカフェインだ。 コーヒーを飲んで様子を見る。 微妙だ。 悩んだ結果、心拍を上げて歩くのは辛い。 尾瀬を散策するという緩やか企画に変更だ。 そうと決まれば、気持ちは軽い。 朝ごはんとする。 今日はセロリの葉を佃煮にしたものを まぶしたおにぎりだ。 セロリの歯応えと香りがいい。 少し元気になる。 駐車場に到着したが、車が多い。 隙間を見つけてなんとか停めることが できた。 尾瀬に来たのは、一昨年の至仏山 以来だ。 尾瀬は登山を始めるきっかけとなった 思い入れの深い場所。 山道の空気が凛としていて、清々しい。 肺がきれいになっていく感覚を覚える。 おいしいと感じる空気。 心が躍る。 しかし、心拍数は上げてはいけない。 頭が痛くなるので、心を鎮める。 秋の尾瀬は初めて足を踏み入れる。 道中、至仏山が見えると、山頂には 雪が付いている。 尾瀬の冬は近いようだ。 山の鼻小屋から先は360°の景色が 広がる尾瀬ヶ原だ。 今日は至仏山から燧ヶ岳まで、くっきり 見ることができる。 そして、足元には金色の湿原が広がる。 日々の混沌が解けていく。 どこまでも続く木道を時間の許す限り、 歩こう。 そんな気持ちで、尾瀬ヶ原を大きく一周 することにした。 ヨッピ吊り橋の少し手前で昼食にする。 今日のお昼の具材は、 ゆで卵。 牛挽き肉を醤油と酒で煮たもの。 自家製のラー油に豆乳にニンニクを すり潰したもの。 味噌、中華だし、すりごま、かいわれ大根。 そして麺。 もうお分かりだろう。 そう、坦々麺だ。 メスティンに溢れんばかりに詰め込み、 煮る。 冷たいながらも清々しい風に吹かれながら、 食べる坦々麺は格別だ。 食べ終わる間近、背後からガサガサ物音 がする。 思わず固まり、あたりを見渡す。 そしてもう一度。 ガサガサ。 まずいかもしれない。 急いで坦々麺を流し込み、匂いのもとを 胃に仕舞い込む。 すると、飛び出したのは立派な大三段の 角をもつ牡鹿が現れた。 写真に収める隙もなく、走り去っていく。 鹿も坦々麺が好きなようだ。 後、牡鹿の求愛の声が湿原に鳴り響き、 秋の風情に華を添える。 東電小屋経由で弥四郎小屋に到着。 ここで、少しコーヒーブレイク。 山荘のコーヒースポット。 良い雰囲気だ。 コーヒーを一杯頼む。 普段はお砂糖とミルクは入れないのだが、 今日はだいぶ歩いたので、少しご褒美だ。 スティックシュガー1本使う。 外の椅子で、片手にコーヒー。 この景色を見ながら時間が過ぎるのを ゆっくり待ちたい。 お尻に根が張りそうだが時すでに14時を 過ぎていた。 日暮れに間に合わなくなるので、 帰路に着く。 この時間から戻る人は少ないのであろうか。 湿原に人気がなくなっていた。 日が傾きかけると、池塘が輝きを増す。 空を写しだし、青く輝く。 吸い込まれそうな青色を眺めながら歩く。 紅葉も昼の時間帯よりも秋色が増す。 秋は昼を過ぎた時間がいい。 山の鼻小屋まで戻ると、小屋がすでに閉まって いた。小屋も年内の営業は終了のようだ。 窓を木戸で覆う作業をしていた。 トイレに立ち寄り、ふと目を向けると 熊の目撃情報が記載されていた。 16時を過ぎると熊が出るから注意だと。 山の鼻小屋、只今の時刻。 15:56 あと4分では帰れっこない。 不安は募るが、森のくまさんを口ずさみ ながら歩くと、レンジャーの方が向かって 来た。 これから歩くんですか?気をつけてください。 と一言。 お礼をいい通り過ぎる。 怖くなる一方だ。 さらに10分ほど歩く。 あたりが少し暗くなり、見通しのきかない 曲がった山道。 事件は起きた。 大きな木で視界がない曲がり道、差し掛かる 手前、大きな黒い顔が木陰から姿を現した。 ツキノワグマだ。 その距離5mほど。 命の危険を肌で感じる。 視線もばっちり。目があってしまっている。 こんな時はそう、急がず振り向かず、 後退だ。 熊も一歩足を出す。 焦ったらいけない。 そのまま急がず後退する。 熊の見えないとこに来たら、 山の鼻までダッシュで戻る。 幸い熊は追いかけてきていない。 次の問題は営業終了の小屋には泊まること ができるだろうかだ。 念のため、ツエルトはいつも持っているが、 夜の尾瀬を外で凌げるほどのものはない。 人はいたので頼み込もう。 そんなことを思いながら戻る。 小屋に近くと 様子を察したレンジャーが駆け寄ってきた。 熊か?と。 事情を話すと なんと、途中まで同行してくるらしい。 ありがたい。 何度も感謝する。 道中、大きな黒い固まりを見ると 熊に見えてしまう。 レンジャーもあれ熊に見えますよね。 なんて話をしてくれる。 気持ちが少し解れる。 先ほど遭遇したポイントは木の実が多い ところなのだそう。 眠る前に食べにくるから夕方はよく出会す ようになったのだそう。 レンジャーの装備は熊スプレーに花火だ。 今のところ人間を怖がってくれている ので大丈夫なのだが…と言っていた。 語尾が消えていることから命がけの 仕事をしていることに気付かされた。 尊い。 無事に遭遇場所を過ぎると今度は向かいから 人がやってきた。 これから小屋に向かうらしいが、 この方々も同じ熊に遭遇し、立ち往生していた ようだ。 するとレンジャーはこの先の階段まで行けば 目撃情報はないので、小屋に向かう方々を 連れて戻るという。 お礼をし、別れる。 ここから先が恐怖だ。 先の階段が現れるまで、恐怖で顔がひきつって いるのがわかる。 顔の筋肉が疲労してきたためだ。 思えば、体調が悪い中、平坦とはいえ 20キロは歩いてきた。 緊張により、体の状態がよくわかり、 全体的に疲労感があることを知る。 次に出会したら対応できるだろうか。 道中に設置されている熊除けの鐘を 少し多目に鳴らして進む。 無事にやり過ごすことができた。 大袈裟かもしれないが、生きていること に感謝した。 あとは、階段を上がるのみ。 日が落ちる少し前、ふと見た紅葉が美しい。 恐怖から解放されたあとの景色は光輝いて いた。 尾瀬は私にとって、生きるのに大切なことを 教えてくれる場所なのであろう。 今日はご褒美なしで帰宅することにする。