グレート盗られバース 1839峰

2020.09.28(月) 3 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
8 時間 17
休憩時間
38
距離
15.3 km
のぼり / くだり
1707 / 370 m
DAY 2
合計時間
12 時間 12
休憩時間
1 時間 35
距離
9.7 km
のぼり / くだり
968 / 967 m
DAY 3
合計時間
7 時間 41
休憩時間
43
距離
15.7 km
のぼり / くだり
386 / 1723 m

活動詳細

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過去イチの長文です、最後に事件に巻き込まれました。 ご覧頂けたら幸いです。 文に遭難しないようにして下さい。 リベンジとなる山行。初回は意気込んで臨んだはずなのに、暑さに晒され過ぎてバテてしまい、テン泊もせずのコイカク登頂のみで終えてしまった。 引っかかっている事ではあった。 自分の体力や脚力から考えて、2泊3日なら... ならば、3連休の時にもう挑んでいくしかない。 今年ももう秋も深まり寒くなってきている。 9月一杯が活動時間的にも気温的にもラストチャンス。 そんな時は巡ってきた。 天気は良し、風も問題ない。 ただ、25日頃から降り続いていた雨が気になってはいた。相当量は降り続いたと思われる。 27日の未明には雨も上がり、落ち着き始めていたが、大雨の影響で、ピョウタンの滝ゲートが閉鎖されているとの情報を得た。 直前でどうする...ピョウタンの滝から登山口まで8kmといったところ。 自転車...だな。 こんな事で計画をスルーさせたくもなかったので、天気の良さを信じて決行することにした。 防寒装備の追加。水は60ℓザックには5.1ℓが搭載量の限界だった。 寒くなってきているから、そんなに飲まない、大丈夫だろう、安易な考えだった。 28日4時前に札幌を出発し、8時半にはピョウタンの滝ゲートに到着。 快晴、微風。 ゲートは閉まったままだった。 時間もそんなには余裕はないので、待つ事はせずに自転車に乗り換え出発した。 若干の上り、自転車は押し歩きしつつも1.5km程進んだところで、前から車が...「ゲートは閉じているはず。。」 そのうちに後ろからも車が上ってきた。。 「まさか、まさかね、、だが今もしゲートまで戻ったとして、一時的に開いたゲートだったらどうする、また閉まっていたらどうする。右往左往はしたくない」ともう進むしかなかった。 漕いでいける傾斜もあり、思ったよりペースは良かったと思う。 40分近く経ったか、ようやく登山口に到着した。 札内川ヒュッテには車は1台も止まっていない。 登山届けにも、名前は書かれていない。 誰もいなさそうだな、、 出来るだけ奥に行こうと、自転車はコイカク登山口の草地の端っこに止め、出発した。 沢はまだ水は引いてはいない状態で、当然前回よりは水量は多かった。 それでも膝上くらいの渡渉もあり、流れも速かった。 沢ゾーンは概ねCT通りに通過。 登山靴に履き替え、今回もヤッケ下を着用。蒸れるんですよね。。 登山靴はスポルティバのGTXのTX5。ここも大きな違うポイント。履いて3回目でこのロング山行でどう活躍してくれるか。 「またこの地獄の急登を登るのか...」気持ちは重かった。 前回よりも重たい荷物で、当然ペースは上がらなかった。 ただ、気温は落ち着いており過ごしやすいくらいだったので、ほとんど汗はかかずに登ることが出来た。 ゆっくりゆっくりと歩を進める。 1310mのテン場に着いた時点で15時くらい。。 結構ギリギリの進み具合だった。 初日から日没を迎えるのか? それくらいのペースだった。 ロック尾根も慎重に通過。周りは見ない。前だけを見る。集中することで、高所への恐怖を誤魔化した。 尾根上に出た、快晴の日高山脈が出迎えてくれる。 時間は無かった。迫る日没を前に、何とかテン場に到着。 コイカクピークをベースとした。 当然誰もいない。 本当に日没ギリギリで設営し、即夕食作りへ。 しっかりと食事を取りながら、日は沈んでいった。 ヤッケ着用はやはり微妙で、ズボンまで結構蒸れていた。これは着干しだな。。 山は穏やかだった。ザンクもヤオロも力強く佇んでいた。 独り占めの凄い光景だった。 ダラダラしながらも、翌日のためにシュラフに入って寝ようとする。 完全防備で着込んだはずだったが、足が寒かった。カイロ使用したが、これは考えものだな。 風はふいに強くなり始め、テントに叩きつけてくる。 バタバタとなかなか眠れなかった。 どれくらい眠れたのだろうか、29日の4時前からアレコレと準備を始め、食事を食べる。 バタバタと時間を要してしまい、出発出来たのは日の出後。 アタックザックには食糧、エマージェンシーセット、レイン上、水分が1.6ℓ。寒いだろうからこれくらいの水分でいいだろうと、また甘い考え。 本当に活動時間は12時間。 コイカク→ヤオロで3時間 ヤオロ→1839峰で3時間 このCT内でいかないと未来はない。 さあ、未知の世界へ。 ハイマツが出迎える。ええ、たっぷりのハイマツが。 脛にはサッカーの脛当てを装備。 足元の防御力はかなりの鉄壁だった。 足元のハイマツの跳ね返りは気にならない。 ひたすらにハイマツを押しながら進んでいく。 日が上がり、今日の快晴を祝福してくれていた。 風こそまだ強めだったが、徐々に弱くなり、、気温が上がり。。 だが周りは日高山脈オールスター。遠くまで見通せる景色に、原始の山々は力強く映っていた。 ヤオロ到達時でスタートから2.5時間経過。少しだけ余裕が出来た、出来たはずだった。 気温が上がり、太陽が強く刺してくるようになった。 暑いな、、遮るものはほとんど無い。 少しずつ水分摂取量は増えていった。 ヤオロからの先が真の全てが詰まっている領域だった。 一つ奥のピークを下ってから藪漕ぎ... そこから何山越えるのか。。 ハイマツやら普通の木やら、笹藪やら踏み跡をあるのか無いのか、はたまた木の枝を歩いたりと、登山道はなかった。 ひたすら踏み跡を頼りに、「よくこんなところに人が通り、踏み跡が出来たな...先人は本当凄い、、何故こんなところまで。。」 全てがMIXされた踏み跡、、凄まじく過酷だった。アップダウンも激しく、時には笹やハイマツの枝を掴みながら、身体を持ち上げる。 このような時には頼れる存在だった。何度命を預けただろうか。 水はその内に少なくなっていった。 気がつくと、行きで飲める分はほとんど無くなっていた。 水分制限をするしかない。 少し進んでは一口、進んでは一口、とこれだけでもストレスではあった。 先に得た30分の時間は割り始め、ザンクに登頂しなくてはいけない時間も迫ってきていた。 ひたすらに過酷、身体の全てを使い前進していく。 天気だけは味方し、快晴は続いていた。 ザンク直下の最後の岸壁。最後にこの仕打ちとは、、何という試練だろうか。 もう「怖い」とか言ってられなかった。 目の前の草木を掴みながら、ひたすらに登っていく。 頂の上に立つために その先の景色を見るために 静かなる山頂。 待っていてくれていた。 カムエクの存在感や何たるものや 原始の山の深淵に聳える1839峰に登頂した。。 真っ白になったと思う。 やり遂げたというのか、凄まじい達成感が頭の中を塗り替えたと言うべきなのか。 真っ青な空の中、グッと喜びを噛みしめた。 ...戻らないといけない。 同じように。アップダウンを繰り返しながら、あの全てが詰まる道?を。 集中した。かつてないくらいに。水分摂取量の調節をしまくりながら、残り700ml程で勝負を賭けた。 体力脚力は残ってはいたが、常に水分に飢えているような状態で、行き程のペースは上がっていないように思えた。 けど違った。生き残る力なのか、執念なのか、速くはないものの、ある程度のペースは維持出来ていたのだと思う。 ヤオロを前にして、ガスが発生していた。 ヤオロには吹き上がらずに溜まっていた。 後ろからは照りつける太陽。 ブロッケン現象が起きていた。 初めて体験する現象、まさかこの地にて見ることが出来るとは。 ヤオロの谷筋に出る度に、ブロッケンは起き続けていた。 日没が迫ってくる。 ヤオロを越え、窓も通過。 後はコイカクへの最後の登り返しだった。 最後の最後にハイマツの逆目が邪魔をしてくる。 ひたすらに漕いだ。 ハイマツの海を漕いだ。 水は飲み干した。 日没後、10分ぐらいでテントまで戻ってこれた。。 危なかった。。 よくやったと思う。本当に。 生きて戻らないことには、何も為さない。 また急ぎ夕食調理開始し、空腹を満たす。 ヤッケは汚れ等には気にならなかったが、蒸れすぎていた。かつてない程にズボンは濡れており、痒くて痒くて仕方なかった。 今日も誰もいなかった。 まあそんなもんだろう。山の世界にどっぷりと浸かっていた。 寝る...がなかなか眠れない。 疲れているはずなのに。やや寒さはあったが、どうも寝付けない。 ウトウトしながら、30日の朝を迎えた。 日の出に合わせて撤収準備を行い、日の出後に下山開始することにした。 水は残り400ml。沢まで下りれば無限浄水で水分は補給出来る。。 薄曇り、ある意味良いタイミングだった。 歩きだそうとするが、大腿部の筋肉がプルプルしていた。 通常時の半分くらいの筋力か、やはりタダでは済まなかったようだ。 こんな脚では...ロック尾根すら下れない。 滑落してどうする? 生きて下山しなくては何も為さない。 最後の集中力だ。 下山してコーラを飲むんじゃああ!! そこからの集中力はかつてない程のものがあった。 どこがロック尾根?という程にスタスタと下り、急登ゾーンをひたすらに下る。 ある意味で楽しかったな、攻略した気分だよ。 沢まで下りてきた、、後はCT2時間分! もう体力も脚力も何も残ってはいない。岩と岩の少しの段差でもバランスを崩すくらいだった。 気力との勝負だ。 沢で水分補給し、ひたすらに歩き出す。 長かった、とにかく長かった。 第二のハコでは巻道を使ってみたが、笹藪...!?!?もう辛いっす、、踏み跡なのかどうか分からないところから横に逸れて、沢に復帰しようとしたところが泥泥で踏ん張り切れず2m程滑落...マットレスが守ってくれた。。 酷い状態だった。 褒められるような登山ではない。 山を舐めるなよ...! 怒られても当然だな。 第一のハコを通過、まだまだ先は長く... そして堤防。。 戻ってきたよ...登山口へ。 草地の横には行きにはなかったゴミ袋が落ちていた。誰かがここで騒いだのだろうか? まあ...自転車でウイニングランじゃあああ!! あれ?!?! 自転車のサドルが見えない... えっ?!疲れ過ぎて目が見えなくなっているのかな、乗ってみよう。 あれ?! サドルに座れない。。 はあ?!どういうこと? サドルが無い! 無いんだ、どう考えてもあるはずのものが無い!! ふざけんなや!  誰かに盗まれた? 投げられた? 仕方ないから付近を探してみる。 見つからない、どこにも落ちていない。 草地に一台の車が入ってくる。渓流釣りの偵察か? 自分の動きは明らかに不自然だった。 変だろう? 私はサドルを探しているんだぜ? 何故山奥で? どうでもよかったんだけど、サドルは見つからなかった。 青ざめたよ...サドルと、サドルポストも無く、座れないので自走不可。フル装備のザックを背負っているので更に不可。 8kmを歩けってか... 絶望だった。 歩くしかなかった。 怒りに任せて... この先はトンネル続きだ、ライトライト、、と!?!? はあ?! あるはずの位置にライトが無い?!?! バカか? ライトも盗まれた!!  意味が分からなかった。 もう怒りに任せて歩くしかなかった。 体力とか脚力とか、まだ残っていたもんだよね、不思議と。 トンネルでは叫んだよ 「○ねぇぇぇぇぇ!!!!」ってね。 虚しくこだましていくだけだった。 怒りから悲しみへ。 人間のやることってこういうこと?! 絶対に死なないからな、舐めるなよ。 食糧もまだ残っているし、浄水器もある。 永遠に続くトンネル。 とてつもない長さだった。 道ゆく車に不思議がられる。 私の表情はもう魂も何も残っていなかった。 感情だけで動いている。 ああ、戻ってきたさ、山岳センターに!! くたばれ!! 身体の力がドッと抜けた。 生きた実感がした。 とりあえず着替えて、中札内まで戻った。 警察に行くことも考えたが、疲れ過ぎていて、諦めかけそうになっていた。 唐揚げ食って、福祉の里温泉に行き、サッパリした。 SNSには被害を公表しており、DMを頂いていた。 被害にあったら被害届は義務。 そりゃあそうだ、泣き寝入りするシステムではないだろう、この世の中は。 せめてもの足掻きをしよう。 帯広警察署中札内駐在所に車を走らせ、警察官に事情を話した。 被害届の受理には、もう一度現場に行き、現場検証をしないと受理されないとのこと。 事実説明に1時間、その後に警察官とまた片道30kmのコイカクの登山口に行った。 日没後のコイカク登山口、完全に暗い中で警察官と、自転車を置いたり横にしたら、何したりアレしたり。 不思議な光景だった。 全てが終わったのが18時30くらいか。また中札内に戻った後、札幌に向けて走り出した。 もうあくびと、ため息の連続。 だが、あり得ない集中力は続いた。 ノンストップで走り続け、札幌帰着。 こんな事は起きて欲しくない、いや、起きることがおかしい。 ありのまま、全てを書き綴っておきます。 注意喚起というのも変だと思います。 いや、おかしい、、悲しいし腹立たしいし、悔しい。 けど、今回自分はザンクリベンジに成功して無事に下山したんだ!! これだけは紛れもない事実!!!

活動の装備

  • プラティパス(Platypus)
    225601
  • マムート(MAMMUT)
    Add-on bottle holder

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