活動データ
タイム
08:59
距離
12.3km
のぼり
1362m
くだり
1362m
活動詳細
すべて見るここしばらく、名の通った、言い換えれば手垢のついた谷にばかりはいっていたので、記録がなく登り堪えのありそうな谷を遡行してみたいと地図を眺めていて見つけたのがこちらの大木谷。 下部・上部にゴルジュがありそうな地図記号あり。 場所は新居浜市の別紙山村。赤石山系南面の谷で近くに床鍋、瀬場、肉淵、日浦とメジャーな谷がそろっている。一方の大木谷はネットに記録もなく登山体系にも未掲載。わずかに私の山岳会で過去に右俣を遡行した記録があるだけで、左俣は完全に未知。 こりゃあいってみねばいかんと今回の遡行を計画。とはいえ海のものとも山のものとも知れない谷へ他人を誘うのは忍びないので単独遡行。 心細い思いで遡行を開始。 歩き始めは、川床の石にヌメリがあってウンザリ。けれども15分くらいでだんだんぬめりがなくなり、フリクションが効きだす。 それと同時にインゼルが現れ、それを過ぎると10m滝。前日の雨のせいか水量が多く水線突破できないので滝左のバンドからガリーを抜ける。落ちれば大けがなので緊張しながら手足のホールドを探し、滝上に上がる。滝上には10mナメ滝。これも抜け口の水量が多く吹き飛ばされそうだったのでトラバースし右手の側壁にとりつく。しかしぬめりがきつく斜めの摂理で足置きが悪い。落ちないよう、慎重にホールドを探りつつトラバースをこなす。滝上に立った時には思わず大きく息を吐いた。 しばし小堰堤が続く平和な歩きになる。アブがうるさい うざったいなぁと思いながら歩いていると、ミニゴルジュになってアブが消える。 ゴルジュ出口の滝はいっけん直登できそうにない。右手の苔蒸した壁にぼろいトラロープが下がっているが、もちろん信用ならないので他の手を探す。結局滝左手側壁のバンドから落ち口までトラバースできた。 そこから先、小滝をいくつかこなすと横幅の広い10m滝。水が少なければシャワー、あるいは2人なら右手のバンドをFix張りつつトラバースする選択があったが、今回は1人でリスクを負いたくないのでおとなしく左手のガリーから巻く。 滝上もまた小滝の連続。それをこなすとゴーロになり右俣との別れになる。 左俣の入り口からしばらくはゴーロが続く。10分ほどで5m滝。ホールドが少なそうなので直登をあきらめ、右から巻く。 その上は再び河原歩き。20分ほど歩いて、林道交差の橋を渡ると8m滝。滝の上には取水口があって、抜け口が悪かったので取水口へのアプローチ用橋梁をつかんで滝上に抜ける。その上は連続で8mトイ状滝。フリクションクライミングでキョンとクリーニングを多用して抜ける。 いずれも結構ホールドが細かくぬめりがあって緊張した。 滝上に上がるとすぐに5mx8の連瀑。さらに5m滝が続き、次第に両岸が切り立ってゴルジュになる。ゴルジュのなかは倒木で見通しが悪いが、奥に大きな布引状の直瀑が見えてくる。 遠目におよそ登れそうにないのであきらめ、手前から左岸を高巻く。 この高巻きがかなり悪く、登りやすいところを上がると、滝へ近づけず上へ上へと追いやられる。 そこで途中で意を決してバンドをトラバースしたが、厳しい木登りが続き最後は岩壁に行き当たってマジか!と絶叫。幸い、岩壁の真上にテラスがあり、そこまでホールドが多く、フリクションもばっちりなので3mほど登ってひと息つく。テラスの先はルンゼになっていて滝の落ち口らしきものが見えるものの、途中の側壁が崩れていて、沢床まで下れるか未知数。とはいえさらにトラバースしようにも前方も岩壁でかなり厳しい。仕方ないのでザイルを出し、ルンゼ途中に生えていた木にザイルをひっかけて斜め懸垂を敢行。幸い、崩れていたところはしっかりした足場になっていて、そこを抜けるとちょうど巻いた滝の真上に復帰できた。ひと安心して先を見るとまだまだゴルジュが続いている。抜けれるか不安がつのり頼むぞーと何か良くわからないものに祈る。幸い、そこから先は登れる滝で、なんとか最後までゴルジュが抜けれて、ホッと一息付けた。 ゴルジュを抜けても小滝が連続し、息もつかさぬ様相で1400mまで一気に上がる。すると突然谷が広がり、河原状になって水が消える。 苔むした岩に日が差し非常に美しい。その光景を堪能しつつ歩けば笹こぎの必要なく、二つ岳へ続く稜線に出る。稜線上はシャクナゲの薮で、木々を避けつつ歩けば30分ほどで二つ岳への登山道と合流。 山頂到着は14時で、計6時間。単独遡行でほぼ休み無しに歩いたにも関わらず結構時間を要した。 あとは蛾蔵越まで登山道を下り、そこから別子山方面へ下った。 大木谷は予想していたよりはるかに厳しい谷だった。しかし、連続する滝と厳しい巻きは、終わった後に厳しい遡行をやり切った充実感を与えてくれた。そう考えると、今回の谷は大当たりの谷だったと思う。 今度は右俣にもトライしてみたい。
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