秋焼に 暴風雨と熊 湯の香り

2020.08.12(水) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
6 時間 13
休憩時間
50
距離
12.2 km
のぼり / くだり
698 / 695 m
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活動詳細

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全国にある焼岳、焼山の名前。 ここの秋田焼山は東北百名山だ。 登山口の駐車場は八幡平アスピーテラインの後生掛温泉の入口の所。 前日、鹿角市で竜ヶ森と五ノ宮嶽に登り、五の宮の湯に入り受付のお嬢様に五ノ宮嶽の駐車場を教えて頂いたお礼を申す。 スーパーで買い出しして、いざ八幡平アスピーテラインをかっ飛ばす。 八幡平は観光や百名山の件で3回くらい来ているのだ。 だが真っ暗は初めてだ。 ほとんど車はない。 駐車場に到着。 キャンピングカーが1台だけ。 古い駐車場、便所は夜間閉鎖。 下界は暑かったが現在20℃ほど。 風通しの良い奥の角に停めて少し窓を開けると少々硫化水素が匂うが仕方ない。 星が綺麗だな。 飲んで早めに就寝。 朝5時起床。 天気は大丈夫そうな感じ。 弁当食って準備して出発。 大丈夫そうなんだが一応靴カバーしてく。 登山口の後生掛温泉の湯畑が壮観。 ジジイになったら泊まりたいな。 温泉手前の用水路沿いを下る。 ここで北と南側ルートの分岐点。 て所で。 あっ! で、出た。 いきなりの熊。 ハッと立ち止まる。 焦りは無い、わりと遠くで見つけた。 ソーシャルディスタンス充分。 約7mくらい。 温泉宿の迷惑になるからとガラガラうるさいカウベルはポケットの中、一応チンチン鳴る鈴は付けている。 奴はとっくにこちらに気付いているのだ。 見つめ合うも奴は動じる事なく座り込む。 ピャー!と口笛もハーイ!叫んでも無視。 ベルをガラガラ鳴らすも全く無視だ。 そう、ここは秋田県。 昨年、十和田の迷ヶ平のおっちゃんが言っていたな、青森の熊は臆病だからすぐ逃げるが秋田の熊はおっかねぇだ。 うるせー人間だなぁと悠然と座り込む奴。 真っ黒で艶のある毛並みに三日月模様がくっきりしたシュッとした若い熊だ。 どうしよう。 邪魔だなぁ。 行っちゃおうかな。 何か野良犬みたいだな。 スルーできそうな感じなんだが。 て言うかこいつ慣れてんな。 人間は離れてる立ち止まるの知ってんな。 先制攻撃したろうかな。 いや、今、敵意ないやつにそれはダメ。 うーん。 ぶつぶつ悩む。 ふと、一応持ってきた熊スプレー。 よし!こちらが風上だ。 バッ!と一吹き。 オレンジ色の汁が霧散する。 4秒おいて、辛味成分が風で届いたのか、奴はビクッとしてソワソワ。 去って行った。 ホッ。 奴の行き先は右側の北回りルート。 どっち行こうか迷ってたが、これで南側ルートに決定した。 カウベルガラガラ鳴らし登山道の対岸にそびえる後生掛温泉の建物。 音が響くのか並ぶ窓から浴衣の宿泊者がこちらを眺めている。 はーい、さっき熊と対峙しましたよ~。 そっちは極楽ですか~。 木々からポタポタ滴が垂れる森の道。 所々ぬかるむが傾斜は緩い。 1時間ほどで一休みして傘をさす。 時折、雨が強まるがカッパ着る程でもない。 毛せん峠を通過したところで景色は一変。 森林限界線となり砂櫟の道。 3000m級の雰囲気だ。 ちょっと栂峰山頂に立ち寄り、また進む。 風がかなり強く小雨がふりしきる。 縦走者にとって最悪の天気。 ここで傘が最強なのだ。 強風によって小雨がありとあらゆる隙間に染み込んでいくのだ。 八ヶ岳縦走の時はテントも寝袋も濡れた。 カッパもザックカバーも強風と小雨ではほぼ役に立たないのだ。 傘で直撃を防ぐのが一番。 縦走とかこれからの人は覚えておいた方がいいだろう。 あ~晴れてたらなぁ~。 ザクザクと砂利の道を登り、分岐点に立派な避難小屋に到着。 中は極めて快適そうだ。 ここ目当てで泊まるのも良さそう。 小屋から山頂方面へ登る。 霧の強風、甚だ厄介だ。 ようやく山頂に到着。 展望なく三角点だけの小さな広場。 休みたいが霧の強風、ちょっとハイマツの影に腰掛け一休み。 やっぱカッパ着よう。 着かけた、その時から突然の大雨。 傘! やはり傘が役立つ。 傘しながら慌ててカッパ着る。 よし、下山。 当然さっきからガス中の強風、そして雨。 傘を真横にして横殴りを防ぐだけでもびしょ濡れは回避できる。 雨のせいかガスが薄まり左手の下に池が視認できるようになった。 見るからに悪魔色の火口湖。 草津白根や蔵王や新燃岳みたいな。 魅惑の色に誘われ池まで降りたら硫化水素と二酸化炭素で即死だ。 ザクザクと砂利道を下る。 避難小屋に到着。 ちょっと中で靴カバーとスパッツを外し、靴紐を締め直す。 カバーしたからさほど深刻な濡れはない。 外に出ると雨はやんだ。 強風とガスは変わらずだが下山しよう。 分岐点を北回りルートに進む。 細い尾根道を通り、遠くさっきの池が見える。 対岸の岩壁は白い岩だらけ、植物すら生えないガス地帯なんだな。 急坂をジグザグに下り、荒々しい渓谷。 どんどん下り谷底に降りる。 沢があるが真っ白で青白い水が流れてる。 沢に到着し、よく見ると温泉だった。 手を入れるとかなり熱い。 沢の本流の所は冷たい。 混ざってる所は適温なのかな。 凄い所だ、ザーザー流れる沢は全て温泉。 沢沿いを下ると、登山者が1人いた。 荷を下ろし何か準備している様子。 その脇には大きな水溜まり。 ん? 露天風呂か! 切明温泉みたいなやつか。 手を入れると、適温。 これぞ正真正銘の天然温泉露天風呂。 いつか白馬鑓温泉とか八ヶ岳の本沢温泉とか、高天ヶ原温泉とか行きたいのよ。 劔岳の阿曽原温泉には行ったのだが最高の思い出なんだよなぁ。 奥鬼怒温泉?あんな所は違う。 登山者って人種に限定ってのが真の秘湯。 ここ、いいなぁ~。 でも今回、何の用意もしてない。 残念だが入湯を諦めよう。 温泉水の白い沢を渡り、登山道を進む。 森の道となり激しくぬかるむ。 ストック突いて確認しないと確実にエライ事になる。 慎重に木の根を伝い歩き、いちいちストック突いて地面の固さを確認。 傾斜はないが嫌な道が続く。 さすがに途中で一休み。 ぼちぼち最初の登山口が近くなるな。 最初のあの熊とか再会したら嫌だな~。 鈴を鳴らしてんのに無視だもん。 あん時はどでんしたなぁ~きもやげる~やめでげれこの秋田がァ~。 おっそろしい熊っこいんだもん。 しばらく進むと何故か工場がある。 車があり誰かいる。 地熱発電所なのかな。 また道を少し進むと広い草原、いや湿原があるが花なし。 またしばらく進むと沢に丸太の橋。 そして最初の熊っこおった分岐点。 少しドキドキ。 用水路沿いを登り、後生掛温泉に到着。 お昼だ、どうしよう。 後生掛温泉でお昼やってるらしい。 だが凄まじい懐石料理とかだったらちょっと困るよな。 駐車場に戻る。 よし、八幡平頂上に行こう。 レストあったろうから食って山頂行ってそんで帰ろう。 車に荷を放り込みすぐ出発。 しかし行くにつれガス濃度は増す。 頂上は濃密な雲の中。 ダ~メだこりゃ。 もう出るのも嫌。 はい、また来年ね。 アスピーテラインを東へ下ってゆく。 下るにつれ晴れてきて、蝉の声と強烈な日差しでくそ暑くなる。 途中、公衆便所の駐車場に停めプレハブ小屋の売店で軽食を食う。 八幡平を見上げると青空も見えるがそれは罠だ。 山頂はそうそう晴れそうなガス濃度ではなかった。 へばな、八幡平。 そろそろ夏休みも終わり間近のため、南下して盛岡方面へ向かう。 明日、適当にどっか登って帰ろう。 盛岡にて榊山稲荷神社に参拝したところで本日の行程は終了のお時間。 結局、丸半日かかってしまった秋田焼山。 だってしょうがないじゃんか。 熊いるし山頂暴風雨だしいきなり露天風呂あるし登山道ぐっちょぐちょだし。 それはそれはとても濃密な山でした。

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