槍ヶ岳から穂高岳へ・もう1つの憧れ 2008年10月末

2020.05.23(土) 日帰り

活動詳細

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この縦走路もアルピニストの憧れですね。ちょっと長いけど、お付き合いください(笑) 1日目 夜の8時ころに家を出て、車で沢渡に向かいます。そして、夜中の1時ころに到着し車中泊です。 翌朝、始発の上高地行きバスに乗りました。もう、シーズンも終わりに近いので乗客もちらほらでした。 しかし、あまり天候が良くありません。上高地バスターミナルから河童橋、明神を過ぎ、徳沢に着くころに弱い雨が降り始めました。雨具の上だけを羽織り黙々と歩きます。 横尾から山道に入りますが以前に登ったことのある山道です。 槍沢ロッジを過ぎたころから雪に変わりました。湿り気の多い冷たい雪です。 景色も見えない、寒いで良いところなしなので機械的に歩を進めます。 最後の急登に取り掛かると、オーバーグローブの防水性が悪くインナーグローブがずぶ濡れで手がかじかんできました。 そして、よれよれになりながら槍ヶ岳山荘に到着です。手がかじかんで宿帳が上手く書けません。しかし、部屋で着替え、談話室でストーブに当たり身体を温めるとようやくリラックスできました。 今日は素泊まりなので持参した食糧とビールで夕食を済ませました。 テレビの天気予報では明日も好天は望めないようです。明日どうするかは明日考えようと、床に就きました。 2日目 願いもむなしく雨の朝。危険な岩場が多いので縦走はできそうもありません。幸い日程に余裕があるので、山小屋に停滞することにしました。 さて、同じ停滞組でオランダ人の登山者と知り合いました。なんとオランダ王立交響楽団のチェロ奏者だそうで、日本公演のために来日し、公演の合間をみて登山を楽しんでいるそうです。名前はピーター(だったと思う)。私の片言の英語とピーターの片言の日本語で何とかコミュニケーションが取れました。 午後になって、雨が止み徐々に天候が回復してきました。少しでも先に進もうと考え、南岳小屋まで行けると思いましたが、前日で今シーズンの営業を終了しており、断念しました。 じっとしていても詮無いので、槍ヶ岳を撮影しようと大喰岳(おおばみだけ)に向かいます。 大喰岳3101mは標高第10位で、槍ヶ岳と槍の肩に建つ山荘の構図が素晴らしいです。 山荘に戻りビールを飲んでくつろいでいるとピーターが、これから槍ヶ岳に登るが一緒にどうかと誘ってくれましたが、アルコールが入っているので遠慮しました。元気なオランダ人です。 そして、消灯時間まで談話室で楽しみ、山荘の夜は更けていきました。 3日目 夜明け前に起床。天気は良好のようです。 山荘の外に出て、朝陽の写真を撮影します。槍の穂がシルエットになり美しい日の出でした。 山荘に戻り朝食を済ませ、出発の準備に取り掛かります。 まずは槍ヶ岳。ピーターが再度登るというので一緒に登ることにしました。自分にとっては2度目の槍ヶ岳です。 急峻な岩稜登りで、雪が多少残っており、足の掛け場所に迷うことがありますが、慎重に進めば問題ありません。 最後のハシゴを登り切り登頂に成功。3180mの槍ヶ岳山頂でピーターと握手を交わしました。雲はあるけど素晴らしい眺望です。 そして、槍ヶ岳の西側の雲に槍の影でブロッケン現象が出現しました。なんと巨大なブロッケンの怪でしょう。なかなか見られるものではないです。 先が長いので早々に下山し、山荘に戻り荷物を点検し、ピーターに先に行くことを告げ、いよいよ大縦走の始まりです。 大喰岳までは昨日登っているのでスムーズです。そこから岩稜帯のハシゴやクサリを通過し、中岳の山頂に到着。3084mは標高第12位です。 中岳からペンキマークをたどりながらゴロゴロした岩の中を行き、ザレた緩い斜面を登ると南岳の山頂に到着。3033mは南ア・仙丈ケ岳と並ぶ標高第17位です。 南岳山頂から砂礫の斜面を下ると南岳小屋です。ここでピーターに追いつかれました。 さて、ここから先がいよいよ本番の始まりです。大キレットへ下降します。稜線がいきなり切れ落ち、ルンゼ状の岩場を下り、高度感のあるハシゴを降り最低コルまで来ました。約300mの高低差です。 そして、2841mの長谷川ピークを通過。ナイフリッジの稜線を進み、信州側から飛騨側に乗っ越し、A沢コルを越えると槍~穂高縦走コースの最難関である飛騨泣きに差し掛かります。ここから滝谷ドームと呼ばれる大岩壁が良く見えます。ピンやクサリを駆使し、高度感ある登りを越えていくと北穂高小屋のテラスに出ました。ほとんどを同行したピーターと、相前後していた他の縦走者たちと縦走成功の握手を交わしていると、テラスで休憩していた北穂登頂者たちから拍手が送られました。なかなか気持ちの良いものです。 テラスで小休止し、小屋のすぐ上にある北穂高岳・北峰に登頂。北穂は2度目です。 ここから一旦下り、松涛のコルから登り返し、北穂高岳・南峰3106mの山頂に到着です。標高第9位です。 さて、ここから先は、実はかなりの難関ルートなんです。後日、山で知り合った色々な人に聞いても、槍~北穂よりも北穂~奥穂のほうが危険度が高いと語ります。自分もそう思います。 南峰からドームの上を通過し、最低コルに到着。この先の登りから難関ルートです。三点確保をしっかりと行い、ハシゴとクサリを上手く使い涸沢槍と呼ばれるピークを横目に最後のルンゼ状のクサリ場を登り切ると涸沢岳山頂に到着です。ここも2度目で3110mは標高第8位です。実に、今日6つ目の3000m峰でした。 ガスってきましが、奥穂やジャンダルム、前穂が良く見ました。 そして、涸沢岳を下り、くたくたになりながら穂高岳山荘に到着。ピーターと健闘を称え合い、宿泊手続きを済ませ、夕食までの時間を寛ぎます。 夕食でみんなと乾杯し、食後に談笑し、今日の行程を思い出しながら床に就きました。 4日目 2008年10月初旬の夜明け。 日の出前に起床。防寒着を身に着けカメラを片手に山荘の前のテラスに出ると、他にも臨時カメラマンが何人もいるようです。ピーターも出てきました。 空は徐々に赤みを増し、東の方角には、正面に蝶ヶ岳があり、左に常念岳です。特に常念岳のシルエットが素晴らしい。 いよいよ朝陽が昇る。辺りが薄紅に染まり、上空の雲が真紅に輝いている。下にはどこまでも雲海が続く。山で見る朝陽と夕陽は最高です。 朝食を済ませ、出発の準備を整えて山荘を後にしました。 まずは奥穂高岳。ハシゴを順番に登り、しっかりと足場を確保しながら危険個所を過ぎると緩やかなガレ場になり、やがて標高第3位の奥穂高岳・3190mの山頂に着きました。 山頂は人工的な石積みの塔に祠があり、どうも好きになれません。しかし、眺望は雄大です。山頂を後にし、吊尾根を辿り紀美子平に到着。そこに荷物をデポし、前穂を目指します。 ガレ場の急登を登り切り、標高第9位の前穂高岳・3090mの山頂に到着。ここも眺望は雄大です。前穂の北尾根や涸沢を見下ろすと、吸い込まれそうになります。今回は、標高第3位、5位、8位、9位、10位、11位、12位、17位の8つの3000m峰に登頂しました。正にアルピニスト憧れの縦走路です。 この山旅での最後の山頂を後にし、クサリとハシゴの多い重太郎新道を下り、岳沢ヒュッテ跡に出ます。この当時は雪崩で流された後の基礎だけが残っていました。現在は岳沢小屋として復活しています。 岳沢を下り上高地に帰還。河童橋を渡り、上高地バスターミナルに到着です。 ピーターは売店でお土産を買ってます。ピーターにとって、どんなものが日本の山に登ったという記念になるのでしょうか。後日、ネットでオランダ王立交響楽団のHPを閲覧したら、チェリストとしてピーターが載っていました。貴重な出会いでした。 さて、ピーターが松本市街のホテルを予約していると言うので、沢渡から車で送ってあげることにしました。 沢渡で自分の車に乗り換え、松本へ向け出発。同乗者がいるので退屈せず松本まで運転できました。 ピーターをホテルまで送り、ハグと握手を交わし別れました。 様々な思いを胸に、この山旅も終わりを迎え、長い帰路に就きました。 ※※写真の枚数が少ないのは、データ消失してしまったため※※

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