活動データ
タイム
03:12
距離
7.7km
のぼり
575m
くだり
596m
活動詳細
すべて見る週末の天気予報は曇天の時々雨というもので、これは駄目だと諦めた木曜日。よせばいいのに同僚に誘われて駅前居酒屋で飲みすぎてしまった。 ところが翌日の金曜になり、土曜日に晴れマークが点灯したのはどうしたことかと思うが、山に行けると思うと嬉しい。その晩は二日酔で体調が悪いこともあり、早々に就寝。土曜はそれが功を奏してアラームよりも早く、未明の三時に目が覚めた。 身支度をして出掛けるまで、何処に行こうかと考えていたが纏まらない。中央線の電車に乗ると、新型コロナウイルス感染危機のご時勢とは思えないくらいに、夜明かしの徒がすし詰め状態で、車内の空気は、これ以上は無いかと思うほど不快であった。 この時点では、漠然と中央本線に乗り継ぎ、倉岳山にでも登ろうかと考えていた。しかし、立川駅で青梅線の接続が絶妙によいことを知り、ご無沙汰であった奥多摩方面に食指が動くような気分になった。 青梅行き電車は空いていて、ようやく落ち着いたと思うと眠気が襲ってきた。気がつくと羽村駅で、もうすぐ終点の青梅で奥多摩行きに乗り換えなければならない。この時点では、高水三山の展望地、岩茸石山で朝ごはんということにしようと、ぼんやりと考えていた。土曜日なので、なるべくハイカーの少ないルートで登頂したい。川井駅から沼沢尾根が適当だろう、という結論に近づいていた。 奥多摩行きの四両編成がゆっくりと発車した。宮ノ平を過ぎ、日向和田駅に停車すると、駅のホーム越しに、紅白の梅の木が並んでいる。それを見て、一瞬恍惚となった。吉野梅郷に下山して、散歩しながら帰途に就きたいという思いが唐突に浮かんだ。それで、二俣尾駅で下車することにした。 二俣尾駅で降りるということは、登るべき山は日の出山方面の愛宕尾根、ということになる。青梅丘陵では、梅郷が遠くなる。愛宕尾根を登り、三室山で朝ごはん、ということに決定し、ようやく気持ちが落ち着いた。 三室山、愛宕尾根を歩くのは久しぶりで、直近がいつのことであったかは直ぐには思い出せない。この尾根で思い出深いのは、2014年の二月に発生した記録的豪雪(2/15の積雪では、都心で27cmを記録した)から十日後に訪れた時のこと。奥ノ院の愛宕山には登れたが、そこから三室山に差し掛かる鞍部で、軽アイゼンを装着していただけの私は、積雪の道を踏み抜き、ずぼっと腰まで雪に埋まってしまった。想像以上に積もっていた雪の深さに驚き、次いで雪に埋もれた我が身が、まったくコントロールの利かない状態になっていることに気付いて慌てた。 ようやく脱出してから、茫然として積雪の鞍部を見渡し、徐々に恐怖感が湧きあがってきた。それで、ほうほうの態で来た道を引き返した。 今日の再訪は、もしかしたらその時以来のことなのかもしれない。奥多摩橋で多摩川を渡り、愛宕神社の本殿前で休憩。なつかしい登山道を歩いた。特筆すべきは、四国八十八ヶ所霊場をコンパクトに模したお遍路の道が、見まごうばかりに整備されていたことであった。「山内新四国八十八ヶ所霊場」という名称で、徐々に知名度も上がっているとのことは、事後に調べての認識である。 愛宕山から三室山まで、当たり前だが平穏に登り、二俣尾駅から一時間半で山頂に到達した。当て所も無く出掛けてきた自分の行程に整合性を与えるかのごとく、ここで朝ごはんとする。午前八時半、文字通りの朝ごはんの時刻なのが妙に可笑しい。 ずいぶん早く出掛けてきたが、なんだか自分がどうしたいのか判らない。一昨日の酒が未だ残っている訳は無いが、なんだか気怠い。それでこのまま下山することにした。吉野梅郷に至る緩やかな登山道を、のんびりと歩く。途中で、この日二番目に擦れ違った女性はずいぶん気合の入ったような出で立ちで、ダブルストックで勢いよく登ってきた。挨拶を交わした表情が精悍で、このまま奥多摩三山まで行ってしまいそうなオーラを醸し出していた。それで自分を顧みて、なんだかだらしないなあと思う。 今日で二月が終わる。来月はどうしようか。自分が奮い立つような山行計画を立てよう。そんなことをぼんやりと考えながら、春の気配漂う尾根道を、ふわふわと歩いていた。
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