活動データ
タイム
06:26
距離
6.6km
のぼり
785m
くだり
790m
活動詳細
すべて見るはじめに。 滑落ログ、生還ログ鮮明です。 この場をお借りして、ご心配をお掛けした皆さま、本当に申し訳ございませんでした。 さすがに身体は大きなダメージを受けましたが、幸いにも致命傷はなく元気です。 ご心配をお掛けした方たちに無事を知らせるとともに、遭難者心理、自分なりの原因分析等、少しでも皆様の参考になればと思いアップします。 この日は視界不良でしたが、風もそれほど強くなかったので、山荘にチェックイン後予定通り独標まで行くことに。 先行者が何組かいたけれど、独標で一緒になったのは、ご夫婦1組と若いソロの男性1人。 独標で写真を撮りっこしたらいそいそと下山開始。 ご夫婦、ソロ男性、私の順で、登りでいう所の最後の直登部を全員クライムダウンで無事下りきる。 更にそこから降りる順番を待っている際にアクシデントが発生してしまいました。 先頭が岩場にてこずっているのをルートミスと勘違いした私は、待機していた場所から一歩だけ足を動かしました。一歩だけです。足を置いてしまった場所はサラサラパウダーの下で獲物を狙い続けているアイスバーンでした。刹那、一気に身体が滑り落ちていきました。あっという間の出来事でした。頭上では悲鳴にも似た叫び声響いていました。 すぐに停止姿勢をとりますがピッケルが刺さりません。その後も何度も試みましたが、刃先はアイスバーンに弾かれるばかり。 増すスピード、迫りくる岩、打ち付けられる身体。 この時登山ではじめて死を覚悟しました。ヘルメットはかぶっていたけれど、頭だけは守ろうと頭の後ろに腕を回して保護を試みました。その効果は打撲が肩周りから腕にかけて集中していることを考えると効果があったのだと思います。 どれだけ滑り落ちただろう。ようやく止まりました。すぐに身体の状態をチェック。意識はハッキリしており、幸いにも出血や骨折はありませんでした。(この時はそう思った)顔面、頭部へのダメージもなし。(実際はには顔に少し擦過傷)但し、全身が痛い。。 次に場所の確認。滑落停止した場所はかなりの急斜面で、自分が落としてきた雪が雪溜まりのようになって奇跡的に停止したようでした。 視界が悪いのでここがどの辺りかさっぱり見当もつきません。上を見上げてもガスが漂い稜線らしきものも見えない。 幸いにも携帯は生きていて電波も入ったので、警察に状況を連絡。場所を聞かれるもこっちが教えてほしいくらいやと内心毒付きながらも、とりあえず滑落したポイントとどれくらい落ちてきたか、怪我の状況を伝えて、高山署の救助隊の方に変わる。この間一旦電話が切られて心細くなるが、その間に生きて帰るために自分が出来ることを考える。 まず服装。ハードシェルの下は、フリース一枚とベース一枚。下はハードシェル、冬ズボン、ウォームタイツ、コンプレッションタイツ。 下は大丈夫だけど上が心許ない。ビバークするにもアタックザックで出てきたので、アルミシート一枚きり。ここに長居は出来ない、稜線に戻るべきと判断。そこに救助隊の方からの心強い電話。再度状況を説明し、稜線は見えるかと聞かれるも相変わらず視界不良で上部は霞んでいる。再度稜線に戻れるかと問われ、先程の自分の判断もそれだったので、何とかやってみますと答え、一旦電話を切る。 改めて上部を見上げると、ここでもまた奇跡が。。 わずかなガスの切れ目から稜線らしきものが見え、左手には独標の姿も見えました。 何となくの場所を把握することはできましたが、果たしてあれが本当に戻るべき稜線なのか。。 確信が持てるまで再度ガスの切れ間を待ちます。 どれくらい待っただろう。。再度ガスが切れ、さっきよりクッキリと稜線が見えた。間違いない。 あそこに戻ることができれば。。 かなりの急斜面でカチンコチンでテラテラ輝いている雪面とバリバリカリカリそうな雪面、それに踏み抜きそうな樹林の上らしき箇所があり、果たしてこの状態で登り切れるのか。。 でも生きて帰るには行くしかない。とりあえず硬そうな雪面を狙って稜線までのコースを思案。 いざ生きて帰るためのチャレンジスタートです。 両膝両肘両肩に激痛が走りますが、アドレナリン全開のこの時は不思議と気になりませんでした。 永遠に続くのかと思うくらいに、独標直下のような急斜面をひたすら、ピッケルを刺し、アイゼンを蹴り込んで登った。生きて帰るんだ、それだけを考えて登った。途中救助隊の方から電話が入り、有り得ない状況と体勢の中通話を交わし、激励と叱咤をいただいた。そしてようやく、距離にして150mくらいだろうか。。 ようやく稜線に。。思わず涙が出そうになった。 だがまだ山荘まで戻らないと。。 とりあえず救助隊の方に電話をし稜線まで戻れたことを伝えると、安堵していただき山荘まで万が一何かあったらすぐに連絡するようにと励ましていただいた。 緊張が切れたのかここから山荘までは全身が痛かった。が、とりあえず山荘に戻らないことには生還したとは言えない。最後の気力を振り絞って山荘を目指します。 途中1組のパーティーとすれ違ったとき、独標から滑落した人がいるそうですと伝えられた。あのお三方が連絡しておいてくれたんだと感謝。 自分を指さすと、パーティーの方大変驚かれ心配してくださいました。 そしてようやく山荘へ。。 あのお三方と奇跡の再会を果たすことができました。ご夫婦は涙ながらに良かった本当によかったと 手を握り締めてくださり、これ食べてゆっくり休んでくださいと色々とくださいました。 日帰り予定なのに時間ギリギリまで。。 本当に申し訳ありませんでした。 ローブウェイ間に合ったでしょうか。。 ソロの若者は装備解くのを手伝ってくれ、小屋に入ってからも身体の状態を気遣い、心のケアに努めてくれました。本当に感謝です。 小屋の方に無事生還したことを伝えた後、救助隊の方にも電話してその旨伝えてようやく人心地。。 沢山の方にご心配をお掛けしてしまい大変申し訳なく思っています。 小屋の方に湿布訳と氷をお借りして一番痛みのある右肘を冷やしながら生還できた喜びをひたすらに噛みしめました。。 小屋の中は暖かいはずなのに、しばらくは震えが止まりませんでした。安心したと同時に死の恐怖がフラッシュバックしていたのでしょうか。。 今でもわかりません。。 2日目の計画は当然中止にして朝食後すぐ下山。 昨日のアドレナリンが解消され全身の痛みが増してきています。着替えるのもザック担ぐのも一苦労。 食事も箸を口元まで持ってくることが出来ず殆ど残してしまいました。すみません💦 前日の雪と朝イチと言うことでモフモフノートレース状態で昨日とは様子が一変。 本来ならモフモフダイブしたいところですが、そんな余裕は1ミリもない😱 脚は上がらない、ストックも振れない満身創痍のこの状態では無理と判断。先行者が出てトレースを待とうと引き返すと、同部屋だった方が下山に現れ、先導しますのでとおっしゃってくださり、甘えることに。 先頭で道を作ってくださり、後ろを振り返っては気に掛けていただき、本当に助かりました。 おかげで無事ロープウェイまで降りることができました。 本当にありがとうございました! 滑落の原因を自分なりに考えてみました。 視界が悪いので先行者を見失わないようにしたいという焦りがあったのかもしれません。 次に、思い返してみると下降待ちの場所が悪かったように思います。 上記焦りからか先行者との距離を詰め過ぎた。さすがに密着するような距離ではなく少し離れていたけれど、これが結果的に足場の悪い場所に待機することになった原因だと考えています。 そして初動の第一歩。これが決定打になりました。普段なら確実に足置きの確認をしているはずなのですが。。 以上が自分なりの原因分析です。 今回生きて帰ってくることができたのは幾つかの偶然が重なったことと、あの状況で自分でも意外なほど冷静に判断し、行動することが出来たからだと思います。 それとピッケルを無くさなかったこと。いつもはハンドリーシュなのですが、この日は本当にたまたまなのですがショルダーリーシュを付けていました。これをしていなかったらピッケルを無くしていて、滑落地点からの復帰は不可能だったでしょう。 全身打撲で身体中が痛く、特に右肘が腫れ上がってヤバイ状態です😱 帰宅後すぐに夜間救急外来を受診しました。 なんで下山後すぐに最寄りの医者に行かなかったんだとこっぴどく叱られました。当然ですよね。。 明らかに骨折している箇所はないが、右肘と左肩は再診が必要とのこと。 全身に重度のダメージを受けているので、胸と腹の写真も撮られましたが、こちらも異常はみられないとの暫定診断。 右肘固定して吊り、左肩も本当なら吊った方がいいと言われましたが、Wツリーになってしまうのでそちらはお断りしました💦 そして今日再診の結果。 全身打撲 右肘剥離骨折と靭帯損傷の疑い 左肩腱板損傷もしくは断裂の疑い 左膝強打撲による筋出血の疑い ってどれも疑いかーい😱と思わず突っ込んでしまいました。。 来週改めてMRIでの精密検査になります。 来週て、来週なったらもう治ってるんちゃうの⁉️ と思いながら予約して帰ってきました笑 あれほどの滑落で良くこれで済んだと思います。 皆様もどうかこのようなことのないよう、細心の注意を払って安全登山を楽しんでください。
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