【年末年始】荒天の北アルプス

2019.12.31(火) 2 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
4 時間 34
休憩時間
23
距離
9.1 km
のぼり / くだり
1194 / 280 m
DAY 2
合計時間
11 時間 14
休憩時間
3 時間 7
距離
17.9 km
のぼり / くだり
1463 / 2370 m

活動詳細

すべて見る

20191231-20200101_槍ヶ岳 昨年は中崎尾根経由で登頂をした為、今年は、南岳を経由しての登頂を目標に計画を立て入山をする。 年末のラッシュは一区切りしているタイミングの為か、入山者は少ない。 31日は年末の寒波の襲来の警笛がならされていることもあってかもしれない。 30日の夜には猛烈な南風が吹いており新穂高はちっとも寒くない。 深夜の松本市内でも気温が7℃と見た事の無い数字に驚きながら新穂高へ。 ■Day1 新穂高~白出沢~滝谷~槍平 入山をするとすぐにまさかの雨が… 年末年始の北アルプス 標高1300mで雨が降るのか…と驚愕する。その後寒気が入って大荒れになるすぐに雪に変わるだろうと思いつつ歩くが 歩けど歩けど雪にはならず全身ずぶ濡れになり、心も体も萎える…。 白出沢で男性が一人立っていた。先に入った友人の姿が見えないとの事。もしかしてトラブルか?と思い、一旦降りた方が良いと助言をするが、 先に進んで行った。すれ違う下山者に先の様子を聞く。 先行パーティは2パーティ。 単独男性と6人位の団体との事。先程の男性のパートナーであることを願う。 30日は天気が物凄く荒れていて、行けても千丈乗越まででそこから先は爆風で進めなかったとの事。 滝谷の避難小屋で休憩を取りつつ身なりと整える。この間に雨は雪に変わっていた。 滝谷から槍平まではすぐの為、今日は、翌日も踏まえ、この後の荒天もあるのと、前日・前々日の入山者が少ない事やを加味して、 南岳経由での登頂は諦め、今回は、中崎尾根からの槍ヶ岳に変更する。 先行パーティは、まだ時間がある為、中崎尾根にあがるとの事だが、自分は厳冬期には少し心許ないテントの為、槍平に泊まり翌日の 天候を見てアタックするか決める作戦へ変更する。 単独だとコースの変更およびスケジュールの変更に柔軟性があるのがとても良い事だと感じた。 槍平には10:30過ぎについてしまい、かなり時間が余ってしまったが、今日の天候でこれ以上進むのは危険なのと 全身濡れているので、まずは衣類の乾燥をさせようと幕にした。 この日は、あとから2名の単独者の入山があった。 夕方16時頃になると風も雪も止み、空は奇麗に晴れ渡り、穂高の峰々が夕日に照らされ幻想的な景色を見る事が出来ました。 ■Day2 風無く、星が煌めき絶好のアタック日和である。 寒さもさほどなく歩きやすい気温である。 まずは奥丸山から中崎尾根を目指す。前日入っているのは、愛知からのN山岳会と2人組のパーティ。 4時間程度でどこまで進んでいるのだろうか。とても気になる。 ふと、槍の穂先の方を見ると煌々と明かりがついている。また、御殿のような大きな明かりも。 もしかして、昨日入山以外にも山に残ってアタックを続けていたパーティが居るのだろうか。さすがにあの位置にあの時間に昨日のパーティが入っているとは思えない場所であった。 奥丸山をかわし、中崎尾根に取付く。奥丸山まではしっかりと登り下りのトレースが着いていた。尾根上にもしっかりとしたトレースがあった。 先行の光は動いている為、明らかに行動しているのが判った。2600-2700m付近だろうか。 途中N山岳会のテントを通る。静かだ。まだみんな寝ているのだろうか。昨日のラッセルや休憩なしの行動で疲れているのだろうと思い先に行かせて頂く。 その後、15分位歩いたところに2名パーティのテントが雪中にあった。こちらは起きていた。先頭に立った。 先行パーティはまだまだ先に居る。がだいぶ近づいてきた。 その頃になるとようやく空が白け始める。 下山は、千丈乗越から飛騨沢に下りそのまま、槍平を目指すルートに決めていたので、適当な尾根を見分しながら高度をあげて行く。 飛騨沢をそのまま降りるのは雪崩のリスクもあるし、大喰岳西尾根は、今回は事前の調査不足の為、利用しない事とする。 中崎尾根を戻るのは時間的に勿体ない。 2550mの樹木を最後に森林限界を越え草も木も無くなる世界になる。その為、その直前の樹林帯で休憩を取り装備を整える。 風は強くは無いが時折吹いていた。 バラクラバをテントに忘れてきた事に気付く。 さすがに今からは戻れない為、持っているもので工夫をして乗り切る事にした。 幸い風はそこまで強くない。夜が明け朝になっていたのでヘッデンを仕舞い森林限界を越える。千丈乗越手前の大岩。昨年はトラバースをして超えたが今年は手前を登って行っていた。 手前から上がると高度を稼がないといけないのと岩場を乗り越えないと行けないので大変である。がラッセルをするよりはトレースを頂いたほうが良いと考え 先行パーティのトレースを使わせて頂く。岩の直下になると麻紐が出て来る。紐をガイドに高度を稼ぎ千丈乗越に辿り着く。 その頃には先行パーティの姿をハッキリととらえられるようになって来た。 7名いる。N山岳会である。 一体何時に出て来たのだろうか…と感銘する。 稜線上は風も強くなく程良い寒さで行動をサポートしてくれる。3000m辺りでN山岳会の尻に着く。ようやく追いつけた。 ラッセルのお礼を告げ、何時に出て来たのかと会話をする。3時半に出て来たとの事。道理で私がテントを通過時には人気が無いはずだ…。彼らの強さに改めて驚く。 すれ違うメンバ一人一人に御礼を申して高度をあげて行く。 先頭は既に大槍の基部に辿り着いていた。N山岳会か休憩を取っていた為、先に登らせて頂く。 昨年は、雪はあるものの真っ黒?雪が全く付いていなかった穂先ではあるが今年は真っ白に装飾がされている。 ここ数日間如何に天気が悪く、登山者の登頂を拒んできたのかが一目でわかる姿である。 一手一手慎重にピッケルとアイゼンを置いて登攀をして行く。夏の槍はもう2桁は登ったであろう。2019年も北鎌から孫槍などに行ったので昨日の事のようにルートは思い出せる。 いよいよヘブンズラダーである。(勝手に銘々) 今まではハシゴはそのままの恰好であったが今回は違う。 エビの尻尾がびっしりついておりとても神々しい姿である。このハシゴを登るのは、初登者だけに与えられる栄誉である。 とてもありがたい気持ちと、ここまで先頭を言ってくれていたN山岳会のメンバに申し訳無さを感じるが、まだ彼らの姿は見えなかった。 一歩一歩。一手一手。ハシゴのエビの尻尾に注意しながら頂上に躍り出る。 よっしゃ! 着いた!!! と思わず叫ぶ。 槍の祠は氷が張り付き看板も真っ白になっていた。 後続の為にそのままの姿を残し記念撮影を行う。山頂は時折北西の千丈沢から強風が吹くもそれほどでは無かった。360度青空が広がりどこまでも望むことが出来た。 ただ、南側の肩の小屋や大喰岳はものすごい雪煙が上がり、強風が吹いていることは明瞭であった。 その為、昨年は山頂でCoffeeなど優雅に時間を過ごすことが出来たが、今年はそこまででは無い為、写真を撮りまくり下山を行う。 N山岳会はまだ姿は見えなかった。慎重にヘブンズラダーを下り鎖を見つけ降り始める。丁度N山岳会先頭と入れ違う。 N:風が強いですね~。 S:山頂は、そこまででは無いですよ~。お気を付けて! と別れる。槍の下山は鎖を使って降りる為、鎖通しで高度を下げて行く。肩の小屋で休憩をしようと肩の小屋に向かうが雪煙があがっていないだけで実はものすごい爆風 となっていた。何しろそこまでの道がものすごくて2,3歩は飛ばされる始末。 こんなところで休憩が出来るはずも無く、大槍の基部に戻ろうとするが、基部までも 強風でようやくといった感じで時折押し戻される。数字にすると25mはあるのではないだろうか。 丁度この時の気温が—15度の為、体感気温は—40度になる。 休憩を済ませ、下山を開始しようと西鎌に向かうがあまりの風の強さに進む事が出来ないので一旦戻る。風の音や向き、周期などを確認して弱くなった瞬間を狙い西鎌尾根に辿り着く。 丁度その頃1名のソロ登山者が上がって来た。とすると、あれだけ澄んだ奇麗な青空だったのが一気に曇り始める。 曇り始めたと思ったら一瞬で真っ白になっていく。 これはヤバイと急いで高度を落とす。千丈乗越に着く頃には真っ白でかつトレースは消えている状態である。この状態で朝来たルートを通るのか? とロープを探すが、トレースも無くラッセルするような状況となった為、このルートは無理だと諦め、昨年通った夏道を使って下山をする。 とにかく早く高度を下げて樹林が見える所に行かないとホワイトアウトして何も見えなくなり行動不能になるのが怖かった。 途中岩が登山者に見える。千丈乗越の大岩の基部迄来たがここからのトラバースは、ラッセルとなる。腰下と言ったところ。灰色と白の世界の中に 夏道っぽい道を見つけ出し夏道を信じてトラバースを行う。何とか行きのルートに復帰することが出来た。ここまでくれば安心だ。 最後の樹林の所で少し休憩を行い飛騨沢への尾根道を探す。適度な尾根があった為、トレースを外れ高度を下げて行く。この辺迄来ると風も大分収まり視界も少し 聞いて来て一安心である。 雪崩無いような地形。雪崩ても大丈夫そうな所をラッセルを行い高度を下げて行く。 下りのラッセルの為、苦戦はするが、そこそこのペースで 降りて行く。だんだん飛騨沢が見え、近づいてくる。 と微かなトレースを発見。 数日前に先行者が着けたトレースに到着。 ホッと一息。 トレースに出会えて安堵で涙が出てきそうになる。 空腹感が凄かったのでここで一本立てた。 休憩している間に後ろから単独の男性が降りて来た。 彼も私のトレースを使ってからがら降りてきたようだ。 無事に降りれたことに安堵する。 その後は、小一時間程度膝下ラッセルを重ね、槍平に戻る。 時間はまだ早く12時であったので、ここで宴会をしていても仕方がなく、今から天候もあれる為、 荷物を畳み下山をすることにした。 冬季小屋から出ようとしたらお隣のテントの方が降りて来た。彼も肩の小屋で引き返して来たようだ。小屋のソロ3人は無事に下山が出来た。 その後は小雪が舞う道中を歩き、最後の穂高平からの先では、先日の降雨で凍った雪の上に薄く着いた雪に足を取られながらなんとか15時過ぎには下山をすることが出来た。 とても濃密な山行となった。

もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。