距離はそれほどでもないが、標高644mピークから一旦下って、北西尾根のエッジに乗るまでの傾斜はすさまじい急峻。これは想定どうり。倉岳山北面を横切るかのような北西尾根は、山容全体の中でも顕著な造形で、巨大なテラスのようにも見える。 戻る 次へ

倉岳山北北西の尾根と月尾根沢登山道の荒廃 2019-12/27の写真

2019.12.27(金) 08:57

距離はそれほどでもないが、標高644mピークから一旦下って、北西尾根のエッジに乗るまでの傾斜はすさまじい急峻。これは想定どうり。倉岳山北面を横切るかのような北西尾根は、山容全体の中でも顕著な造形で、巨大なテラスのようにも見える。

この写真を含む活動日記

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989 m

倉岳山北北西の尾根と月尾根沢登山道の荒廃 2019-12/27

倉岳山・高畑山・九鬼山 (山梨, 神奈川)

2019.12.27(金) 日帰り

本来はKZ氏との山行だったが、風邪が悪化したので行けないというメッセージを確認したのが起床した午前四時。残念であるが、出掛ける気になってのことで、どうしようかと思った。迷ったときは中央本線が手軽でよい。次なる御前山、ということも考えたが、折角の好天で、前回は西丹沢まで遠征したにもかかわらず、山に登れなかった欲求不満もある。しばらく訪れていない倉岳山に登ることにした。 最寄り駅から電車に乗る時は未だ雨が降っていたものの、高尾駅で乗り換える頃には止んでいた。電車が上野原駅に近づいて、遅い夜明けがやってきた。霧の中から、徐々に山なみが出現する車窓。天気予報のとおりに、好天の一日である。 鳥沢駅前に下り立つと、すぐ正面に倉岳山が朝陽のシルエットになって聳えている。北面の尾根は、今までに殆どを踏破しているが、今日はどうするかなと電車の中で考えていた。 倉岳山北面の尾根は大別すると、梁川駅からの北東尾根、下畑集落の八幡神社裏手から登る北尾根、そして北西尾根の三ルートになる。北西尾根は下畑と小篠貯水池にそれぞれ分岐し、北東尾根も途上で分岐して下畑に延びる尾根があるから、五ルートにしてもよいかもしれない。いずれにしろ、鳥沢駅から眺める倉岳山北面の山腹を眺めれば、五種類の尾根を目視できる筈である。そして、倉岳山の一般登山道は、全て沢筋を辿っているので、これらの尾根はすべてバリエーション・ルートということになる。 顕著なのは、北西尾根が収斂されて、北尾根に合流していく途上の、横に延びている尾根で、張り出した庇みたいにも見える。擬人化すると、倉岳山が腕組みでもしているような恰好にも見える。今日はそこに登ることにした。 長距離トラックが猛スピードで行き交う甲州街道を歩く。生きた心地がしない。宿場町の軒先を右折し、中央本線の線路をくぐり、畑道に入り、ようやく安堵する。線路沿いに歩き、堀之内集落を通過して桂川を渡る。朝陽が昇り、気温が上がり、川面から夥しい霧が湧き出している。 小篠集落に登り返す途上で振り返ると、桂川対岸に扇山と百蔵山が雲を纏って聳えている。朝陽が山頂部を赤く染めて、一幅の絵のようである。来てよかったと、今日も自分の思いつきを自画自賛する。 小篠貯水池の東屋で小休止する。ここでストレッチスパッツを装着し、バリエーション・ルートの歩行に備える。朝まで降り続いた雨の余韻は、山峡に入るとさらに濃密に漂っている。足元が覚束なくなる林道界を過ぎて、すぐに「峠道文化の森入口」の標柱が現われる。これが目印で、左手に緩やかな斜面が広がる尾根に入っていく。 徐々に遠ざかっていく小篠沢の瀬音。濡れた落葉に足をとられながら、高度を上げていく。気がつくとかなりの急勾配になっていた。左手の植林帯の向こうが開けてきているのが見える。もうすぐ尾根上に乗る筈、と思いつつ、黙々と足を繰り出し続ける。 標高差約150mを登り、尾根上に立った。濡れ落葉の急傾斜登りは難渋を極めた。標高560m圏峰でひと息つく。数回下ったことがある尾根だったが、登りがこんなにきついとは思わなかった。(ちなみに、この尾根の末端から登ろうとすると、小篠集落にある養福寺付近から沢に下りて薮を掻き分けて取り付かなければならないので、貯水池付近から取り付くのが無難だと思う) 踏路は徐々に、苔生す岩混じりの尾根となっていき、眼前には標高644m点のピークが現われる。下畑から延びて来た尾根が合流する。ここまで来ると、例の庇状尾根までの距離はそれほどでもない。一旦急激に下り、北西尾根のエッジに乗るまでの傾斜はすさまじい急峻で、これは想定どうりである。 この尾根に乗ると、いつも強風に晒される。今日も同じで、せっかくの晴天は対岸の景色で明瞭なのだが、倉岳山北面の上部は、とてもじゃないが長居できるような状況ではなかった。 北尾根に収斂される直前、北西尾根の踏路はトラバースして蛇行しつつ登っていく。雨乞社のポイント、ヘソ水は相変わらずの貧弱な水溜り状態だった。北尾根合流点に立派な大ケヤキがあり、巨木に身を潜め、風を除けて休憩した。北面はどこまで行っても断続的に強風が吹き荒れていた。 最後に北東尾根が右手に現われ、合流するまではこれも急登で、かなり消耗するが、頂上が直ぐそこに見えているので、気力はなんとか維持できる。そうしてようやく、鳥沢駅からの所要時間、約二時間半で倉岳山に登頂した。標高990mなので、北西尾根のさらに北北西尾根のポイント、644mから勘案すると、標高差346mを急勾配で登り続けてきたことになる。 山頂は舞台が転回して別の山に瞬間移動したのかと思うほどに穏やかで、北面を望むと下方から先ほどまで晒されてきた強風の音が聞こえるが、南面の日なた側に移動すると、無風で暖かい。そして、泰然と富士山の姿。真白な山体から、雪煙が生き物のように次々と湧き上がっている。 大休憩で食事を終え、帰途をどうするか少し黙考する。せっかくの好天なので、北東尾根を歩いて下山したいとも思うが、できれば早めに帰宅して大掃除でもしたい。そんな些事が脳裏に浮かび、月尾根沢登山道で確実に早く下山しようという気分になり、一般登山道に進路を決めた。 立野峠から一路登山道を下山する。詳しくは写真とキャプションに記しているが、結果的に月尾根沢登山道の倒木と土砂崩れの荒廃を検分して歩く行程となった。よもや登山口が土砂崩れで消失しているとは思わないので驚愕した。 台風19号被害の甚大さを改めて認識する。ここ数年頻出している自然災害。来年は少しでも平穏に過ぎることを祈るばかりである。