羽根田さんのお話(jRO会員講習会 東京2019-12-02)

2019.12.02(月) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
0
休憩時間
0
距離
0 m
のぼり / くだり
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活動詳細

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「事例から学ぶ山のリスクと事故回避策」 ~”STOP THE 遭難事故”増え続ける遭難者のひとりにならないために~  jRO主催の羽根田治さんによる講演に参加してきました。jROの講習会は6月と12月の年2回開催されているそう。今回は、上記のタイトルでたっぷり2時間、羽根田さんのお話しを伺うことが出来ました。 ヤマケイ文庫に数々の遭難事故事例のシリーズを出されている羽根田さん。 (https://amzn.to/2OQ2zWg) 多くの遭難事故当事者への取材はもとより、現地での検証までされているからこそのリアリティがありました。長文になりますがメモをとったので共有させてください。 構成は、 1.遭難事故の発生傾向 2.事例紹介 3.遭難事故を回避するために 4.生還できた事例紹介 5.質疑 となっています。 ———- 1.遭難事故の発生状況 ・登山人口の増加にともない遭難者数は増加  年間約3000人、死亡者が300人ほど ・高齢者の登山者の増加も背景の一つ ・携帯電話の普及で救助要請件数が増える要因 2.遭難事故の事例 1)奥多摩・天祖山 2006/11  ・滑落事故発生直後に滑落事故が発生  ・1件目の事故(重傷)の対応で   救助隊員の方が現場でくれぐれも   注意するよう声をかけたにもかかわらず   同じ場所で2件目の滑落(死亡)が発生 ★教訓  ・下山するまで油断は禁物   あと少しの場所でこそ気を引き締めて  ・ダブルストックの使用、すべることもある   過信に注意 2)北アルプス奥穂高 2012/8  ・奥穂高から西穂高への縦走中  ・わずかにコースを外れたので戻る際、   手をかけた岩が崩れバランス崩して滑落  ・遭難者は重傷   でもヘルメットで一命を取り留めた ★教訓  ・岩場、がんヘルメットは装備すべし  ・ルートファインディングは慎重に  ・浮石には注意 3)奥多摩 棒ノ折山 2012/10  ・行先を告げずにでかけ行方不明に  ・コースは明瞭、登山者も多い人気のコース  ・自宅PCから計画が見つかったものの   捜索にも関わらず当日の行動がつかめず  ・いまだに行方がつかめず未発見 ★教訓  ・家族には行先を告げて行くこと  ・計画書でなくても簡単なメモでもいい  ・行動中は痕跡残すこと   道中、写真を撮って家族に送るのも有効  ・行方不明、死亡認定までは7年かかる   保険もおりず、年金も止まる   自分だけではすまない。保険加入など必要 4)槍平小屋 2007/12/31  ・深夜の雪崩により幕営中のグループが被災  ・槍平小屋、冬の槍ヶ岳登山の拠点 ★教訓  ・完全な安全はない。避難小屋そばでも雪崩   慣例や過去のデータを過信しない  ・予兆に注意   天候急変、冬の雨、急な温度変化など   雪崩の予兆に注意。無理しないこと  ・雪崩に埋れた時テントの端でねていた為、   テントの生地が顔に張りつき窒息  ・メガネを壊してテントさいて脱出した方も   ナイフは手元に置いておきたい 5)八ヶ岳・赤岳 2013/1  ・赤岳からの下山中、文三郎尾根で滑落  ・6人パーティの最後尾をあるいていた人が   居なくなったことに後から気がついた  ・当日は吹雪で声も聞こえない状況 ★教訓  ・目視や声で互いの存在を確認  ・救助要請の連絡は迅速に  ・バックカントリースキーもはぐれやすい   集合場所を決めておくなど配慮する  ・冬の八ヶ岳、甘く見てはいけない   太平洋側の天候の影響を受ける 6)中央アルプス 宝剣岳 道迷い  ・宝剣岳山頂から方向誤って下山  ・千畳敷の反対側、木曽方面の急斜面を下降  ・行動不能になり救助要請  ※YOUTUBEに長野県警の救出状況の動画   https://youtu.be/TkuZS8bMRAA ★教訓  ・地図など確認しながらすすむこと  ・経験のたりない季節・コースの山行はしない  ・悪天候の中では地図が見られないことも   コンパスで方向確認するだけで   道迷いは回避できる 3.どうすれば遭難事故が回避できるか? ・登山は危険と隣り合わせ。  先んじて危険を認識することが大事 ・危険の要因は3つ。地形、天候、人間  人間に起因するものはすべての遭難に共通。 ・山登りが危険とおもっていない人こそ危険  遭難者予備軍といってもいいくらい  高尾山でも行方不明になって発見されない事も ・リーダー過信は禁物。リーダーが行動不能に  なっても自力で行動する必要がある ・トムラウシのように、ガイドさんが  行動不能になったあとは、自分の力が  すべてとなる。個々人にスキル、知識は必要 ・ベテランだからといって、遭難事故に  あわないわけではない。  登山歴が長いほど安全ということはない。 ・人間はミスをする  明日は我が身だと考えるべき ・たくさんの人の噺を聞いてきたが、  皆、なんで自分が?!という人がほとんど。  遭難事故は自分事として考えるべき。 ・想像力を働かせて行動すべし ・つもった落ち葉ですべらないか?  すべったらどうなるか?など。  もしミスをしたときにどうなるか?を考える。 ・先行者が石を落としたらどうなるか?  起こり得ることを予測することが大事  万一落石があっても当たらない場所にいるなど ・目印のないところでガスに巻かれたら  どうなるだろう?地図をみて現在地を  確認するなど、対処行動を取れるか? ・数メートルのアイスバーンがあった時  めんどくさがらずに滑り止めをつけるか?  これが生死を分けることもある ・行動中のこまめな調整(服装、靴紐など)を  しないことがリスクに直結 ・雨が降ってきたら早めに雨具を  服を濡らしてしまうと低体温症のリスクが拡大 ・気がついたらその場でやる。  めんどくさい、は禁物 ・山登りの行動中は、正常バイアス、  楽観性バイアスが働きやすいという事を  意識する。自ら行動を律することが大事 4.生還した事例 1)単独行での道迷い 飛竜山 2014/5  ・飛竜山頂からの下山時、   残雪で方向を間違えて道迷い  ・8日間かかって最終的には自力で下山  ・谷を下っても滝などがあったら無理せず   尾根に登り返し、ということを繰り返した  ・そのうちに廃道に行き当たり、   人家まで下山できた  ★遭難した要因  ・下山時の方向確認しなかった  ・間違ってると思っても引き返せなかった  ・登山計画は出していない   当日現地でコースを決めて行動  ★生還できた要因  ・冷静な行動、無理せず長期戦を覚悟した  ・判断に迷ったときは、すぐに決断せず   休憩とってゆっくり考えた  ・一歩一歩に集中、生死を分けると    考えながら進んだ。  ・今までで一番集中して、頭を使った。  ・夜は持参したラジオを聞いて励まされた  ・幸い天候はよく、雨はふらなかった  ・不思議と空腹感はなかったそう 2)北アルプス 唐松岳 2017/8   ・白馬から唐松岳を経て   祖母谷温泉に抜ける計画  ・下山直前に10mほど滑落   怪我はかすり傷。  ・登り返せないことがわかった後、   その場を動かずに救助をまって無事救出  ・持参してりる食料、チョコ十数粒と   ビーフジャーキーのみ  ・1週間で捜索ヘリで救助  ★遭難した要因  ・余裕のある日程を組んだが、それでも   体力的に無理があった  ・家族に伝えずに構造。登山届は   出していたが別居している家族が   状況を理解できず、救助要請までに   5日も時間がかかった  ・登山届があったので捜索は早かった   救助要請から救助までは2日  ★生還できた要因  ・冷静に対応、無理な行動をしなかった   3)宮田八郎さんによる救助事例  ・奥穂高吊尾根での行動不能になった事例  ・穂高小屋番レスキュー日記は、名著。   ぜひ読んでほしい   同感、お勧めです    https://amzn.to/34SPscq    5.質疑 問:ココヘリは有効か?どのくらい実績があるものなのか? 答:富山でココヘリが有効だったという話を聞いたことがあった。ココヘリの運営会社からは公表されてない。ぜひ公表してほしい。 問:羽根田さんはどうして遭難関連の取材をするようになったのか? 答:ヤマケイのスタッフをしている頃、警察の救助隊を取材したのが最初。新聞には数行の記事がでるだけ。当事者に話を聞くと一つ一つに様々な背景がある。これは、多くの登山者が知りたいと思うだろうと考えた。 問:単独、独学で登山をしている。登山計画の妥当性はどこで見たらいいか? 答:なかなか難しい。死なない失敗は貴重。たくさん失敗しても経験値として活かすことが大事。エスケープルートを確保するとか、万一の場合を考えてシミュレーションするとか。 問:今年は遭難件数が多い。年間40-50件が通例だったが、ことは70件にもなりそう。そういう傾向があるのか?(jROの方) 答:確かに山はあれているかもしれない。でもjRO加入者が増えたのが背景では?(笑) (jROの方)確かに、加入者が92,000人になった。来年は10万人をこすと思う。数万円の支払要請が非常に多い。数百万の費用負担はわずか。数万円の保険金でも事故は事故。皆さん気をつけて登山を楽しんでほしい。

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