59 四国遍路旅日記 地獄の別格大瀧寺〜大窪寺

2019.11.26(火) 日帰り

活動データ

タイム

08:38

距離

15.4km

のぼり

1319m

くだり

1298m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
8 時間 38
休憩時間
52
距離
15.4 km
のぼり / くだり
1319 / 1298 m

活動詳細

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黒人男性が四時に、颯爽と宿を飛び出て、ヘッドライトの灯りを付けて帰って来たと言う。全身がバネの彼でも大変なのに、中年太りに真似はない。八十窪の女将が、金毘羅神社まで送迎してもらえるので、小生でもOne dayが可能なのだ。その金毘羅神社から歩いても、往復で七時間はかかる。別に片道が25kmと45kmがあるが、25kmの方は、別格大瀧寺から21kmと長目になるが、讃岐温泉がある。45kmは車専用の道で、歩くのは無理だ。六時間のルートもあったが、マナーの悪い連中の素行で、通れなくなった。 金毘羅神社まで送って頂いた「ロープで下る時に、火傷するから持って行きなさい」と軍手を手渡してくれた。 車をお見送りすれば、引き返す術は、なくなった。獣道みたいな細い道しか見当たらず、本物の獣道に入ってしまう。どうにかこうにか本道に返れたが不安だ。深山(みざん)に残され、途方に暮れる自分が垣間見える。閉鎖感が寄り添う薮道、心細気に歩いた先には、噂の虎ロープがあった。崖の上から一本、虎ロープが吊らされる、ぶっきらぼうな情景に、尻込みなんかしていられない。ロープを握り締め、一挙手一投足で崖を上がり始める。宿に荷物を減らした筈だが、リュックサックを強引に引っ張る圧を感じた。振り向けば、かなり高い位置に自分がある事を知る。類稀な重力に怖さが増しロープは、ギュッと握り締めたままだだった。もし手を緩めたら、十メートル下に一気に滑落だ。浮かんで来たのは、昨日の七十歳代の男性の言葉だ「大瀧寺に行く気なら辞めた方がいい。わしゃ三回転んで、この有り様じゃ」と、包帯をぐるぐる巻きに、大きく腫れ上がった右脚を見せて嘆かれていた。逆打ちを試て、別格太龍寺から始める積もりでいたようだ。筋肉が場慣れしていないのに、一番過酷なのを選ぶ自体が、大きな間違い。女将が言っていたが彼は、何故か軍手を拒んだらしく、諸悪の根源はここだろう。ロープを上っている時は、消防隊員の演習を受けているみたいな気になった。ヤバミーなロープが五つあったが、最初のが最も手強かった気がする。 車道に合流し、大瀧寺の看板がある事に勇気付けられる。別格大瀧寺には、出石寺のような荘厳さはなく、家屋みたいなもので、彷徨い歩いた苦労が報われず、達成感が削がれてゆく。試しに道を聞いたら、23kmのコースを勧めて来る。金毘羅コースの先で、車が待っているのを知らないのだから、当然の事か、来た道を戻って下りて行くと、役立ったのは、あの軍手だった。高所からロープ越しに、背を向けて身を投げ出す時が、ほんま勇気がいる。槍ヶ岳の頂上から、下を観ながら鉄梯子を掴み、背中を向ける時のスリルがリンクする。ぶっつけ本番に怖さはあれど、握り締めた虎ロープを僅かに緩めたら拳が動いた。同時に靴底を滑らせれば簡単に、ズルズルと滑り落ちてゆけた。素手だと、片手づつ交互に下ろすしか手段がない訳で、いずれ力尽きれば、確実に落ちてゆく。絶対、山に行く時は、軍手を持って行こう! 油断して道を間違えたりもきたが、戻り直して難を逃れる。これは山登りの鉄則で、どうにかなるだろうは、最悪を意味する。 別格大瀧寺は、歩き遍路の集大成! お大師さんが、最後に辛い場を用意して、試されているのだなぁと、染み染み感じた。後は難なく、金毘羅神社まで行けた。宿へ連絡を入れ、車が来るのを待つ。この僅かな時間が至福のひと時だったかも知れない。車窓を流れる景色を見て、宿までの距離を推測すれば、歩くのはイカれているとしか思えない。途中に宿があるが、連泊出来ないから、初参者には、合っていたと思う。御褒美に置いておいた大窪寺の紅葉が、待っていると思うとワクワクするなぁ、紅葉目当てに訪れた人で、境内は凄い賑わいだ。真っ赤な楓の葉が、そよそよ揺らぎ、疲れた自分にエールをくれる。大窪寺の紅葉狩りを終わらせて八十窪に帰る。 霊山寺まで行けば、丸く納まるとかでお遍路さんは、霊山寺に行くと言うのが、流行りらしいが、気づけば病院の診察日が間近だったので、諦める事にした。緊張感が溶けると只の人、お遍路には戻れない。四国遍路八十八箇所と別格二十箇所の合わせて百八箇所を行けば、煩悩の数と同じ。しかし貪欲な小生に、煩悩の数は、余計に増える一方のようだ。八十窪のお婆さんが、十代の時に一人で、四国を回られた苦難の数々を思うと、私のして来た事なんてのは、じゃれ事に過ぎない。彼女の爪の垢でも、煎じて呑まないと、治らないであろう。明日は、志度寺にある高速バス停から梅田へ、直行する見込みである。申し訳ないですが、八十窪の女将さん、志度寺の高速バス停留所まで、送迎頼みます。 By 𝐓𝐡𝐚𝐧𝐤 𝐲𝐨𝐮 .

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