52 四国遍路旅日記 別格海岸寺〜曼陀羅寺〜出釈迦寺〜甲山寺〜善通寺〜別格神野寺

2019.11.19(火) 日帰り

活動データ

タイム

07:45

距離

32.9km

のぼり

389m

くだり

376m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
7 時間 45
休憩時間
1 時間 2
距離
32.9 km
のぼり / くだり
389 / 376 m

活動詳細

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夜半からの雨が未明まで続き、山越えが可能なのか気になっていた。ふれあいパーク·みのと、登山口の間を行き来するだけで先に進めず、地元の車掌さんに相談してみた「岩場が滑るかも知れんな、行かん方がええじゃろ」と言う。迂回すると、縦走するより三倍は掛かるだろうが、安全を考慮すると、迂回するしかなさそうだ。メインルートの反対を行く事となり、軽やかに転がる枯れ葉と共に、タッタッタと下る。朝陽に輝く弥谷山越えルートを見て、あれなら歩けたやん!と悔いていた。 やがて海岸へ出る。ここの海風は、桁違いに強く頬は突っ張り、涙を飛ばしてしまうから、顔面が干されてゆく。 塩泡(しわく)諸島の小島群を見ながらのウォーキングは、他所では味わえないダイナミックさがある。海面から飛び出た小島が、瀬戸内っぽくて良い。 二百五十メートル離れた、小島と陸とを繋げる朱塗りの津嶋橋は、鳥居とを結ぶ。奥がましいとは思うが、讃岐のモンサン·ミッシェルと呼びたい。津嶋神社夏季大祭りには、立ち入る事の許されない津嶋橋を皆が渡り、花火が上がって大盛り上がりする。 古いままの海岸線があり、断崖絶壁でヘアピンカーブと、危険極まりなく、命を売る様なものだ。海側が無理なら山側を歩けばいいと、言いたいところだが、コンクリート壁の法面は、逃げ場はなく、ダンプが来たら冷や冷やものである。側溝を跨いで行き去るのを待たなければならない。山をぶち抜いて、掘削工事が行われている最中で、道半ばなのだ。お遍路参りが、安全に行えるよう、完成が待ち遠しい。 戦々恐々とした区間が終わり、海岸寺と書かれた黄色い看板に安堵する。立ち寄れば「納経所はここじゃない。もっと、先の離れた所にある」と言う。県道沿いを歩いて、数百メートル行けば、納経所があった。それにしても離れ過ぎで、無駄に疲れるだけだ。 先へ向かう標識などはなく、県道11号線の交叉点が目安になる。十キロを歩いて、遍路道に戻る。 農道を歩いていると、八匹のハスキー犬が、田んぼの上を戯れあい、駆けずり回るのを目撃する。「危ない!誰かいる」よく見ると、痩せ細る爺さんが腰掛けて動けないでいる。案の定、犬達に絡まれてしまった。爺さんは、ひょうひょうと我関せずで、慌てる素振りもない。犬の方も、抗うでもなく従順だ。ひょっとしたら、あの爺さんがラスボスなのか?そうなれば、次に危いのは、こっちの方や!八匹のハスキー犬が、タッグ組んで、駆け寄って来たらどうなる、高校時代、ヤンキーにカツアゲされた悪夢が蘇り、気が気でない。犬が消え去るのを静かに待つ。 丘陵地にある、曼荼羅(まんだら)寺と出釈迦寺を終えて、丘の上に立つ。ラーメン鉢をひっくり返したような甲山(こやま)が見える。兎寺と呼ばれる甲山寺が麓にあり、十六匹の兎の像が置かれてある。また、毘沙門(らしょうもん)天王の岩窟と言う洞窟があり、老人が現れ、幼少期のお大師さんにお告げをしたとも云う。 煮干しの香りに、惹き寄せられるように、うどん屋の暖簾を潜る。香川は、ヤバいから気を付けろと、パンダ屋のご主人に言われていたので、リュックサックは、担いだままだ。白尽くめの遍路姿の男が、人のザックを担いで消え去ってゆく。御朱印帳が目当てで、満願になる手前を狙って、掻っ攫っい四万円程で、売り飛ばすと言う。巻き物タイプは、後ろからスッと抜き去るから大変だ。お家に帰るまでが、運動会と言うように、家に上がるまでが、お遍路旅なのだ。店のお母さんに、荷物を下ろしたらと言われても、かたくなに背負い続けていた。 ここへは半年前、姉と兄の三人で、善通寺と塩泡(しわく)諸島を訪れたたばかり、塩飽諸島には、手島と言う小島があり、見るに忍びないが、母が苦しんでいた痕跡を知る。善通寺には、通い詰めていた事も知り得た。最初で最後の三人旅だった。私には、四国遍路を生き甲斐としていた母を、阪急武庫之荘駅まで送った事の方が印象深い。車窓に向かって、健気に手を降る母の姿が、目に焼き付いて離れない。 半年後に、ここに来るとは、何の因果か知らないが、不思議な気がする。 海岸寺で、時間を取り過ぎたので、別格神野寺に着く頃には、日が暮れてしまう。別格は別物、善通寺駅から電車に乗り、車窓から、どれくらいかかるか目測してみた。これを歩いて帰って来るなど、無理だと思い知る。下車した塩入駅は、タイムスリップしたかの様な穏やかな町で、まったく時間に囚われない空気感がある。整備された農道の先で、不思議な光景を目にする。田んぼの傍で、山積みにされた籾殻(もみがら)があり、その上に一匹のワンちゃんが、くつろいでいて、こちらを見る。フワリとした雲の上に、浮いているようで気持ちよさそうだ「俺も横に寝転んで、大の字になりたいわ〜」天然のエアー·ウェーブの寝心地は、どうだい!ストレスゼロのワン公に、嫉妬メラメラだ。 人っこ一人いない農道は、美しく綺麗だ。神野寺に着くと、目の置き場に困るくらいの真っ赤な椛に、ドキッとさせられる。朝晩の温度差が、激しいのだろう。 寺の横に、湖と見紛う満濃池があり、周りの山々や、浮かぶ雲までもを水面に写し込んでいる。灌漑(かんがい)用の溜池であるが、魔鏡のようで美しく魅了されてしまった。 時計が三時を指し、日が傾きかけて、影が長く伸び始める。塩入駅まで、夜道を歩く事など出来ないし、タクシーを呼ぶ事にした。琴平駅まで、行くのに、一体いくらかかるなんて、野暮な話しは、言うまい。後は、涼しい顔でことぶき旅館に着く。ちなみに、タクシー代は、3500円ほどでした。

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