48 四国遍路旅日記 四国中央〜三角寺〜別格仙龍寺〜別格椿堂

2019.11.15(金) 日帰り

活動データ

タイム

09:59

距離

32.4km

のぼり

1386m

くだり

1171m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
9 時間 59
休憩時間
59
距離
32.4 km
のぼり / くだり
1386 / 1171 m
1 33
1 3
6 57

活動詳細

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昨日の長距離歩きは、正に茶番劇である。再度、詫びを入れて、旅立とうと決めていたら女将さんは、明るく笑い飛ばして、背中を押してくれた。素晴らしくある朝空は、吉兆だな。 鎧兜を身に纏い、歩くような鈍感さに不便さを感じ、一挙手一投足を気に掛けないと、動かないジレンマがある。 墓地の階段を、ロボットの様な格好で上がっていくと、開けた高台に出る。 そこは、絶えず風が吹いて、青草がゆらゆらと靡く、心地良い場所だ。四国中央市の町並みや、ブルーな燧灘(ひうちなだ)が美しく、製紙工場地帯からの煙突の煙りが真っ直ぐに上がっていたのが印象的だった。夜は、製紙工業地帯に水銀灯が灯り、綺麗な映えスポットとなる。見てみた〜い! 三角寺にある階段は、一段一段が高く急勾配、瀬高ノッポで足長の人向けに合わせてあるとしか思えん!私の歩幅では難所となる。境内には、寒桜と椛の葉が双璧をなしている。紅白に彩られて、お得感も倍増だ。 恐怖の階段を下りたら、工程図があり三角寺がニ時間、別格仙龍寺までニ時間、別格椿堂までニ時間、岡田屋までがニ時間と書かれてある。全てが二時間って、上手い塩梅になっている。 三角寺を抜けたら、八十八箇所コースと離れて奥深な山道を行く。果たして岡田屋まで、無事に着くのだろうか、 木々の奥から、バタバタと激しい羽音がする。多分、鳥が襲われたに違いない。過去にチュ〜ッと鳴き声がして、音がする方向を見たら、鼠の尻にガブリと噛み付くアオダイショウを見た事がある。残酷なシーンだが、これこそが自然界の厳しさなんだと学んだ。そんな場面は、見たくないのが本音なのに見てしまうんだよなぁ〜後悔は覚悟で見上げてみたら、落石防止用の網と土壁の狭間に、動けない雉鳩を見た。羽毛を散らして藻搔いている鳩は、イタチなどの肉食動物に、襲われるんだと思うと可哀想でならない。ひょんな拍子に鳩が隙間を使って、背中から滑り落ちて来た。そのつぶらな瞳に見られたら、助けない分けにはいかない。人が居たら逃げ回るのが、鳥の本能でその距離は縮まらず、まるでイタチごっこだ。鳩を前にしてイタチは、駄目だ!禁句だった。手荒くて気が引けるが、網の間からストックを入れて、鳩が遠ざかるのを阻み、手元まで誘導するのが目的だった。後は、思い切り網を持ち上げれば、雉鳩が滑り落ちて来るだろう。しかし網の底部は、ニッパーで、ブチ切ったままで、破断跡がギザギザで切れ味が鋭い。鉄とは違い、ステンレス製なので、錆毒の心配は無く、手負いの鳩にはするまいと、想定以上に持ち上げた。手首に網の端が食い込もうが構わない。やがて鳩は滑り落ちて来て、羽ばたいて行った。心の隅に、もしかして鳩の恩返しがあるのではないかと期待する、疾しい自分がいる。代償として、親指の付け根から鮮血が垂れていた。 龍泉寺の案内板に従い、歩いていたら道の上から、黒い軽自動車が、ぶっ込んで来た。千載一隅のチャンスと思い逃してなるまいと声掛けした。生の声で、確信が欲しかったからだ。 「うち、よう解らんから、上で聞いてくる」と言い残して、脇道を駆け上がって行った。しかし、山手の人の運転てのは、こうも手荒く、ぶっ込んで来るのだろう。態々、急ブレーキを掛けて、止まって来れたりもする。優しさに溢れているのも事実だ「ここを真っ直ぐ行って!」と言って、猛スピードで下って行った。 お陰で心寂しく不安な山道も、大手を振って歩ける。仙龍寺の標識が見えて来てホッとする。苔の生い茂る薄暗な杜の中に、赤い手摺りがある。階段を上がれば、別格龍泉寺に着く。 古めかしい玄関を潜り、靴紐を解いて辺りを見渡す。山小屋の中みたいに薄暗く、渡り廊下に沿って天井からは、裸電球が並んで吊られてある。電球こそが道案内人で、その奥で御朱印が頂けた。窓が少なく、方向を失いかけて不思議な感覚に陥いる。 ここは標高も高く、朝晩の温度差が激しく色付きが綺麗だ。中腹にある銀杏の木が、煌びやかに輝いている。横の椛も朱赤で美しい。先程の暗い道を戻り、胴山川沿いを行く。ダム湖であり通り行く車もなく、一層静かで孤独である。水面の輝きに時の揺らぎが感じられ、いつしか、深山の一人歩きにも慣れて来た。声を張り上げたとて、児玉しか返って来ない山ん中、歩く他ないだろう。石積みのある大きな常夜灯がある。天辺には、鳩の様なオブジェがある。これが鳩の恩返しかな? 田圃を抜けたら、朱赤の二本の柱が見えて、別格椿堂に着いた。後は、二時間歩けば岡田屋だ。遍路道が峠越えだったのだが、境目トンネル(855m)を選んだ。もう限界が近づいていて、起伏のある道は、受け付けなくなっていた。トンネルの上は、紅葉の色付きが強く、山が柿色に燃え上がっていた。大型ダンプが走らない事だけを願いつつ、戦々恐々でトンネルを抜ければ、民宿岡田屋は直ぐそこだ。 岡田屋には、九一歳の名物爺さんがいて、その話術を聞くために訪れる遍路も多い。体験談や出来事を独自の色付けにアレンジして、自分で撮って来た写真や絵図を手に、宿から雲辺寺までの細かな道順を面白可笑しく、教え頂ける「明日は雲辺寺だ!」とボルテージが最高潮に達した時に、一人の女性が、別格がある筈なのにと、不思議がっていたみたいだ「箸蔵寺は、大変ですね。明日いかれないんですか?」と言って来た。嗚呼!別格があったんだと、気付かされ、赤っ恥な面を剥がしたくて仕方がなかった。慌てて、明日泊まる予定の藤川旅館に、お願いして一日ずらせてもらい了承して頂けた。

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