44 四国遍路旅日記 泰山寺〜栄福寺〜仙遊寺〜国分寺

2019.11.11(月) 日帰り

活動データ

タイム

08:13

距離

22.1km

のぼり

469m

くだり

433m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
8 時間 13
休憩時間
2 時間 2
距離
22.1 km
のぼり / くだり
469 / 433 m
42
2 43
1 35

活動詳細

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今治グランドホテルは、駅のまん前にあり、五階からは、その日の天候がよく分かる。前のビルの上に群がったアンニュイな雲の塊りる。雨が降るのかい、降らんのかい、どっちなんだい!「ゴロゴロゴローッ!」雷鳴が轟いて首をすくめてしまった。耳をつん裂くよな音と共に、雲に風穴を開けて白い雲が裂け、黒い雲がプシュッと噴き出して来たのだ。その後重いせいか、下りて筒状の塊を作り出す。それを見るなり「龍の胴体だ!」龍好きには、そうにしか見えない。 筒状の塊りから想定すれば、そこはかとなく大きい龍だ。八十八番札所、大窪寺まで、あっと言う間だだなぁ〜 下を見れば、コンビニの灯りが煌々と灯り、風で揺らいでいる。ホテルをチェックアウトしてからコンビニで、おにぎりを買い、駅の高架下で、素早く食べ終えた。 ザワザワ空が騒ぎ出すと、大きな雨粒が顔にバチバチ当たって来て、キャップのひさしをポンチョの先に合わせて視界を確保する。これみよがしに、舗道を叩き付ける乱暴な雨のせいで、全ての音は遮断された。泰山寺に着くと雨も弱まり、空は回復傾向にある。早々に寺を出て蒼社川へと至る。辺りは、田畑と野原が混在する原風景で、吹き渡る風が爽やかで清々しい。 栄福寺の参拝を終えて犬塚池に来た。仙遊寺の鐘が鳴れば上へ行き、栄福寺で鳴れば下る忠犬がいた。あるとき同時に鐘が鳴って悩んだ犬は、池で溺れ死んだ。不憫に思った住職が、池に塚を建てたとする言い伝えがある。そんな池の畔に、あったわ!白くて、でかくて猛毒とヤバ過ぎるオオシロカサタケが、誤食すれば、特典として確実に天国行きの片道切符がもらえる。 森を抜け車道となる。ぐんぐん上がって行き、傾斜がキツい。 ″車で5分、歩いて40分,, という標識が気になる。「クソか、下手なジョーク言いやがって要らんねん車で五分が、余計にめげるわ!」 山門が現れると、スリムな仁王像が見えて来る。小顔でイケメン、八頭身で筋骨隆々、ジュノンのモデルか、もう少しこちら側に、寄り添っても良いのではないか! 山門を潜って、立ちはだかる四百の階段、ゆっくり歩けばキリが無いからガンガン攻めて、苦しいのを一纏めにしちゃえば、後が楽だろうと、訳の分からない暴挙を選ぶ。リミッターが外れたみたいだ。休まずに無酸素状態のまま、階段を駆け上がると、口が開いたまま、心臓のバクバクが止まらず、気持ち悪い汗が全身から吹き出して来て、命の恐怖を覚えた。 仙遊寺は作礼山の頂上にあり、霊幻あらたかな空気が、抗う魂を納めてくれる。しんどいのは、もう嫌や!靴先が勝手に車道へと向かわせる。にわか雨に会い素早く後戻りして、頂上で足止めを喰らう。それも旅の醍醐味だ。 山門に下りて来て、イケメンの仁王様にサヨナラして森の中へ、 五郎兵衛坂は、靴音だけが森に木霊するトレイル道、光と影の妙が鮮やかで五感が研ぎ澄まされてゆく。 次第に暗まる空に焦りを募らせる。「ヤバい!雨が降る前には下らんとあかん」山を駆け下りたら、青空もあるし雨具は要らないいだろうと、リュックサックに収めた。歩き出したら遠くで異物音がする。地震かな?と身構えていたら、直ぐ直後に、グゥオーグゥオーと地鳴りが起こり、バスタブをひっくり返す様な豪雨に襲われた。道の上が川だ!濡れようが、雨具を取り出せる状態じゃなく、しのげる場所を探す方が先決で、有事とは言え、民家の敷地内には、どうしても入れない。見付けた田んぼの収納庫に飛び込む。そこは、ポンプを格納するだけのもので人が留まるとこじゃない。隙間から雨が入り、ボタボタ落ちてくる。中はミスト状態で、二十分は電動ポンプを抱き抱えていたと思う。 雨が弱まり太陽が降り注いで外に出ると、衣服は、びしょ濡れで泥まみれと濡れ鼠のように歩いてたら、また轟音と共に着やがった。偶然あった廃屋の軒下で雨やどりをする。刻刻と変化する空模様に打つ手なしで、呆れてポンチョを被る。遅れを取り戻そう!殺風景な町中に一軒も飲食店は無く、空腹のままに彷徨い歩くと、一軒の雑貨屋の棚に、カップヌードルを見つけた。無理を言ってお湯を分けてもらった。飢えをしのげたシーフード味は、生涯忘れられないだろう。 ひなびたスーパーマーケットを見て、バナナを買いに走る。出際に芳ばしいソースの香りがして、出店でたこ焼を買う。接待だと言って、一個おまけしてくれた。ラッキー!感謝です。 百米も経たずに直ぐだ。一日の集大成のような猛烈な雨、地響きと強風を引き連れて天が暴れだした。つん裂く雷鳴に驚き慌てふためくも、隣りにバス停の待合室があるのが見えた。なんて運がいい人なんだだろう。屋根付きなのは本当に有り難い。雨具なんぞクソの役にも立たない豪雨に、人は無力だと知る。四十分間も、待合室に閉じ込められていたから、向かいのお婆さんが憂いてか、気の毒そうに私を見ていた。雨ざらしの道を見て、ふと思った事がある。運がいいのは、空の上から母が、手助けしてくれたんだと…。 澄み渡る青空を見て、大丈夫と確信してから国分寺に到着する。黒光りする薬師壺は、触れて治したい所を撫でると良いと言う。横に握手すれば願い事が、ひとつ叶えてくれる握手修業大師がある。手を差し伸べた形の地蔵様にハンドインハンド、安全を祈願した。 県道196号線は、車の往来が激しく騒音が耳障りだ。滅げずに歩き続けて、道の駅今治湯ノ浦温泉に着いた。湯ノ浦ハイツは、ここから小高い山の上で四十分上がらなくてはならない。連絡して下さい、と条件付きで言ってたが便宜上のもので、上がって来いと言うサインと受け取った。もう行くしかない!坂道を上がってゆくと、高台は、ホテルもマンションも学校まである町だ。湯ノ浦ハイツは、まだもうひとつ上にある。宿に着くと最も上に有り、周りは申し分のない景色が広がる。洗濯機は外で、洗い物を抱えて下りてゆくと、空は夕焼けてゆき、駐車場から望む海は穏やかに暮れてゆく。 天然温泉の大浴場にドボーン!少し熱めのお湯が、溜まった疲れを緩和させてゆく。湯量は、勿体ないくらい豊富で、平泳ぎしちゃった。窓からだけど景色も最高だ。部屋に戻って、瀬戸内海を眺める優越感に勝るものはない。淡い蜜柑色に海が染まり、黄昏れる比岐島、小比岐島の情景は、ベストショットに入るだろう。

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