活動データ
タイム
10:19
距離
23.6km
上り
2999m
下り
2998m
活動詳細
すべて見る甲斐駒ヶ岳還走コース。そんな地図が描かれた看板が黒戸尾根の七丈小屋にある。ずっと気になっていたけれど、手持ちの地図には破線ルートすらないのでためらっていた。 七丈小屋のブログを見るとこのコースの話があり、なんとかいけそうなのでやってみることにした。 https://www.kaikoma.info/single-post/2019/09/20/%E6%97%A5%E5%90%91%E5%85%AB%E4%B8%81%E5%B0%BE%E6%A0%B9%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%A9%B1 日向八丁尾根側は途中にエスケープルートはなく、小屋は甲斐駒の近くに無人小屋がひとつだけ。急峻な岩場もあり、ハードルは高い。それだけに、人の少ない静かな山域を満喫できる。 どっち回りで周回するかで迷って、今回は黒戸尾根から入ることにした。結果的にこれが正解だった。夜明け前に出発する場合、逆回りだと日向山の通過が夜で景色が見れないのはもったいないし、下山時は人の多い時間帯に黒戸尾根を下ることになる。 午前3時45分、尾白川渓谷駐車場を出発した。里に比べれば涼しいものの、動き始めるとすぐに汗ばむ。9月も終わるというのに。ときどき雨つぶが当たる。霧雨くらいならむしろ心地よい。 黒戸尾根はルートがはっきりしていて、夜でも歩きやすい。今回は甲斐駒以降が初見なので、体力の温存を心がけた。甲斐駒山頂で体力の7割を残すイメージ。 展望の少ない黒戸尾根で、一瞬森が途切れて景色が広がる刃渡り。ここで、計算したかのようなタイミングで日の出が見られた。ついている。 黒戸尾根は修験の道ということで、おごそかな雰囲気が随所にある。修験道では山歩きを抖擻(とそう)といって、自我を捨てて自然に溶け込むように歩くそうだ。昔の人はまさかここを走る時代が来るなんて思いもしなかっただろう。 七丈小屋を過ぎると岩場が増えてくる。さすがにこんなところは走れない。そう思っていると、上から小走りのトレランさんが下りてきた。走れるのか。 甲斐駒山頂に着いて一息つく。山頂は涼しい。天気は晴れてきて周囲が一望できた。体力は十分で、体調もいい。これなら日向八丁に向かっても大丈夫そう。初めての鋸岳方面。楽しみになってきた。 甲斐駒から下り始めると雷鳥がいた。私は南アルプス雷鳥サポーターだったりする。 https://www.city.shizuoka.lg.jp/041_000085.html 日本の雷鳥は気候変動の影響で2100年には生息域がほぼ失われると予想されていて、今まさに絶滅を食い止める瀬戸際にある。山で雷鳥を見かけたら、そっと応援してほしい。ちなみに、赤い眉毛が目立つようだと近づきすぎ。人を気にしていなさそうで、意外と気にしているので、遠目に見守りましょう。 冬の山でよく見かけるナナカマドの赤い実。雷鳥は、おいしい実が好きで、コケモモやクロマメノキの実を好んで食べる。だけど冬に食料が尽きてしまうと、しぶしぶナナカマドを食べるそう。ナナカマドって不味いから残っていたのか。 甲斐駒から三ツ頭に向かう稜線は素晴らしくて、じっくりと味わいながら歩いた。最高。もう一度言いたいくらい、最高。 六合目小屋は、ちょっとしたミサイルくらいは耐えられそうな感じだった。小屋を過ぎると樹林帯になってくる。脚に優しいふかふかの路面。道はわかりやすくて、道から外れたのは1度だけだった。 三ツ頭の分岐で、間違って鋸岳に行かないようにだけ気を付けていた。三ツ頭っぽい謎の石柱はあるものの、分岐がない。恐る恐る先に進むとぴかぴかの道標があった。急に現代な感じの安心感。 烏帽子岳のあたりは展望のよい稜線が少し楽しめた。そこから樹林帯に戻って快適な山道を黙々と進む。 大岩山の垂直の岩壁が見えてくる。ここがこのコースの最難関で、ロープや鎖がなければ決して登れない。黒戸尾根側の難所よりもレベルが高くて、かなり緊張感があった。 ここまでの道をつなぎ、こんな崖まで通れるようにしてくれた先代の小屋番さんには感謝しかない。この道に対する深い思いを感じる。 大岩山を登りきると、また快適な山道が始まる。鞍掛山の展望台にも寄りたかったけれど、ガスっていたので今回はパスした。 さくさくと進んでいくとときおり白い斜面が現れる。そして突然視界が開けて、白い日向山が姿を見せた。日向山はハイキングコースがあるので人がたくさん。あとは気楽な下山だけ。と思ったら、下山するルートが見つからない。ここまで来て人に聞くのもなんだし、うろうろしてしまった。今回の山行で一番迷った。砂浜みたいで楽しかったけれど。あとは駐車場までひとっ走り。 振り返ってみると、甲斐駒ヶ岳還走コースは、ただただ、素晴らしかった。変化に富んでいて、次々と新しい場面に切り替わっていく。樹林帯は道がふかふかで走りやすい場所が多い。本格登山とトレランが一度に楽しめた。ここに来るために身体を鍛えておきたい。そう思えるコースだった。
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