【「槍ヶ岳」日本百名山ピークハントクエスト〜六十二座目〜】

2023.11.04(土) 2 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
10 時間 3
休憩時間
1 時間 54
距離
13.2 km
のぼり / くだり
2129 / 97 m
DAY 2
合計時間
9 時間 46
休憩時間
1 時間 59
距離
21.5 km
のぼり / くだり
295 / 1865 m
3
38
1 33
13
35
33
3
2
8
9
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8
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活動詳細

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人は感動のキャパを超えると語彙力が低下するらしい。 その瞬間は、言葉を失い、笑って叫ぶことしかできなかった。 色んな要素が化学反応を起こして、槍ヶ岳登頂は人生一最高の一座となった。 【一日目】 昨夜のうちに新穂高の無料駐車場まで移動し車中泊。 夏は17時には満車になる駐車場もこの時期は数十台のみ。 前々日が睡眠不足だったが、昨日は4時間ほど眠る事ができた。 今日のスタートは5時予定。 のはずが、なかなか起きれず、トイレ問題もありダラダラと6時前にスタート。 槍ヶ岳はもうだいぶ前に冠雪し、日によっては最低気温が-15℃とか。 ここ最近は季節外れの夏日で、朝方でも-3℃程の情報。 それでも山の天気は変わりやすいので、念には念を入れて、厳冬期ブーツ、ピッケル、アイゼンなど、冬装備を準備して挑んだ。 厳冬期ブーツは重さがネックになるなとは覚悟していたが、想定以上に過酷な2日間になるとはこの時は思ってもみなかった。 登山道までは、右俣林道を5kmちょっと歩く。 普段ならスタートの林道は足慣らしになるが、今回はブーツの重さが気になり、慣れないせいか時たまフラついてしまう。 穂高平小屋前で軽めの朝食を摂った後、途中ショートカットの山道に入りながら2時間ほど歩き、標高を約500m稼ぐ。 ここからようやく本格的な登山道。 傾斜が緩いおかげで、ブーツにも慣れ始め、予定より巻き気味でひたすら進んでいく。 チビ谷を越え、滝谷避難小屋に到着し、沢沿いにザックを下ろして休憩。 シャリバテしないようここでも栄養補給。 前回のお礼にと、昨日Cちゃんからいただいたお土産の塩チーズクリームサンドケーキがちょうどいい甘さで体力回復。 沢水も冷たくて美味しい。 次のチェックポイントは槍平小屋。 まだまだ傾斜が緩く、息は切れるものの大分貯金ができており良いペース。 まあ、元々CT×1.2で計画しているから当たり前か。 槍平小屋前のウッドデッキでも一息いれる。 この辺りでようやく標高2,000m手前。 距離にして9kmちょっと歩いているが、ここから残り4kmほどの道のりだがこれまで稼いできた標高と同じくらいの高度を上げなければならない。 つまり、ここからが傾斜もキツくなり槍ヶ岳登山本番へと突入していく。 これまでと同様の傾斜の山道をを進んでいくと、徐々に急登へとシフトしていく。 11時を過ぎると太陽が季節外れのやる気を見せ、気温が見る見る内に上昇。 寒さ対策でフリースを来ているせいで滝汗が止まらない。 徐々に疲労も蓄積されペースが落ち始めるが、無心で歩き続ける。 標高2,400mを越えると徐々に雪が付きはじめ、少し風も出てくる。 風は冷たくて気持ちいいが、後ろから降り注ぐ陽射しがその気持ち良さを相殺してくる。 ようやく千丈乗越の分岐に辿り着き、ザックを下ろして休憩。 この頃には太陽は薄いガスに隠れてくれたが、今度は強風が吹き始め、今度は寒さに悩まされる。 止まっていると一気に体温が奪われるのでさっさと先に進みたかったが、若干シャリバテ気味だしこの先休憩できそうなポイントはなさそうなので、多少風を防げそうな岩場の陰に腰を降ろし、カップヌードルで暖をとる。 あったまるのは一瞬だが、山でカップヌードルをすするその瞬間はなんと幸せな事か。 ちょっとではあるがこの休憩でHPを回復し、もう目視できている槍ヶ岳山荘を目指す。 少し進むと、本格的に雪道になり始め、標高2,700地点辺りでチェーンスパイク装着。 ほんとはアイゼンの方がいいのだが、先日手に入れたCAMPのチェンスパを使ってみたくて実力チェック。 何気にチェンスパを使うのは初めて。 装備し始めてしばらくは安定していたが、標高を上げ雪が深くなってくると流石に滑りやすくなる。 気温が高めで雪がシャバシャバなので今はチェンスパでも問題ないが、陽が落ちて雪が締まってきたらもう意味はなさないだろうな。 なんとなく、チェンスパの限界点が把握できたので良かったが、アイゼンの方が安パイで疲れなかっただろうな。 飛騨乗越までは、先行者のトレースを頼りにいつの間にか激登りに変わっていた斜面を喘ぎながら登っていく。 高山あるあるの、目の前に見えているのに一向に近づいてこない現象に見舞われ心が折れかける。 まあ、戻るも地獄なので、後少しなので当然頑張るわけだが、飛騨乗越に着いた時には15時半を回り、体力の限界も近づいておりこの日の槍ヶ岳登頂はほぼ諦めていた。 ちょっと去年のジャンダルム〜奥穂縦走が頭をよぎり、瀕死状態で槍にアタックしたら絶対滑落するだろうと思った。 すぐ近くにある大喰岳くらいはハントしようかとも思ったが、初の3,000m オーバーの雪山では何があるかわからないので素直に槍ヶ岳山荘に向かう事にした。 飛騨乗越を過ぎた辺りで、山荘から着信。 まだ16時前だったが、この時期に槍に登る人は健脚ばかりだろうし、16時前でも心配してかけてくれたのだろう。 他登山者がいないかも聞かれたが、自分の後ろには人の気配はない。 そう言えば、大分序盤で2名に抜かされたがそれ以降は登りの人とは会ってないな。 テント場を越えると飛び込んでくるのが、槍の穂先。 圧倒的なスケール感。 これまでの山容とは明らかに違っており、別な大地が隆起しているような光景。 ジャンダルムに似た怖さと異質さに圧倒された。 この瞬間、この日槍にアタックする気持ちは完全にポッキリと折れた。 槍の麓には真っ赤な外観の槍ヶ岳山荘。 受付を済ませ、大部屋の一区画を割り与えられる。 結構空きはちらほらあったのだが、小屋営業最終日なので、なるべくコンパクトにまとめて小屋締めの負担を減らす狙いなのだろう。 そんな事よりもHP1だったので、とにかく横になりたかった。 着替えとトイレを済ませ1時間ほど仮眠。 17時半に夕食のため、のそのそと布団から這い出る。 槍ヶ岳山荘最終日の夕食は、春巻きと焼売と海老チリ。 ご飯と味噌汁とキャベツはおかわり無料。 更に春巻きもおかわりができた。 おかずがおかわりできるのはなんとも珍しい。 今日槍にアタックできなかった分、明日は絶対登頂しなければ何のために来たのかわからない。 お腹は空いていたが正直そこまで食欲はなかったが、明日のパワーに変換するためご飯も味噌汁も春巻きもおかわりしまくり限界まで腹に詰め込んだ。 夕食後は暖房が効いている談話室でダラダラ過ごす。 折角の山荘泊だが、誰かに話しかける気力もなく、iPhoneに取り込んだ写真を無気力に眺める。 夜は冷えるだろうと、一応持ってきていたシュラフをザックから取り出し、寝床に戻って就寝。 新調したカイロが思いのほか暑過ぎたのと、蓄積された疲労のせいで何度か寝たり起きたりを繰り返しながら、今日一日は更けていった。 【二日目】 槍ヶ岳アタックは山頂から御来光を拝みたかったので、5時スタートを予定していた。 4時に目を覚まし、ダラダラと出発の準備を始める。 十分過ぎる睡眠を摂ったのと、無理矢理夕食を詰め込んだおかげか、思いのほか疲労感はなくなっている。 これで槍にアタックできる!と思い、様子を見に外に出ると当然ながらまだ真っ暗。 朝靄に包まれ、時折シルエットを覗かせるが、槍の穂先は大魔王の貫禄で直感的に真っ暗な中スタートしたら死ぬやつだなと感じた。 5時頃外に出てもまだ暗がりの中だったので、もう少し明るくなってからスタートすることにした。 思いのほか気温は高く、恐らく氷点下にはなっていなかったと思う。 30分ほど仮眠し、6時前にようやく明るくなってきたので、外のベンチにザックをデポし、天空のつるぎ(ピッケル)と天空のかぎづめ(アイゼン)、天空のよろい(マウンテンパーカー)、天空のかぶと(ヘルメット)を装備し、大魔王討伐に繰り出した。 意外や意外、早朝に大魔王城に乗り込む冒険者は一人もおらず、差し詰め気分は大魔王討伐を任された勇者の気分。 戦士や魔法使いなどのパーティーがいないのがなんとも寂しい。 ドラクエⅠの勇者はこんな気持ちだったのだろうか・・・。 と、厨二病はここまでにして、いよいよ槍ヶ岳へのアタック。 槍の穂先に取り付くと最初から岩登りが始まる。 梯子場以外は、意外と巻きながら登っていくのかと思っていたが、見たまんまほぼ直登の岩壁をよじ登っていく。 岩と雪のミックスだから、アイゼンを引っ掛けないように慎重に足場を確保しながら3点支持で高度を上げていく。 滑落すれば死の世界へダイブできる場所なので、高度感と恐怖感に襲われると思ったが、意外と平気。 というより、楽しくて仕方がない。 ゾクゾクとワクワクがミックスされた不思議な高揚感。 梯子場はちょっと注意しながら登った。 アイゼンを装着したままだから、岩壁と梯子の間隔が狭くてうまく足を掛けられない箇所が何箇所かある。 それでも楽しさの方が勝り、今度は最高のアトラクションを独り占めできてる優越感に浸った。 槍の穂先に取り付いてから約30分で、遂に憧れの槍ヶ岳山頂に登頂! そしてその瞬間に御来光。 ちょっとガス多めだったので、御来光の瞬間は一瞬だったが、なんとかカメラにもその瞬間を収めることができた。 陽が上がった後は見る見る空は青くなっていき、青空と白雲とヴィーナスベルトのグラデーションや、雲の上からオレンジ色に輝く太陽、その太陽に照らされた笠ヶ岳稜線のモルゲンロートなど、この時期この場所でしか見れない絶景にただただ言葉を失い、次の瞬間大声で叫んでいた。 感動って理屈じゃなく、心から湧き上がるものなんだな。 天候、季節、装備、体調、槍までの道のり、これまでの経験。 今この瞬間が一番鮮明な記憶だからかもしれないが、いろんな要素がバランスよく整った瞬間で、間違いなくこれまでの人生で一番最高なシーンに立ち会えていると確信できる。 記念すべき山頂ジャンプは、ピッケルを槍に見立ててダイナミックさを意識してジャンプ! 槍アタック中はお荷物でしかなかったピッケルはこのために持ってきたようなもの。 おかげで最高の一瞬を切り取ることができ、六十二座目のピークハントクエストは大!大!大成功の一座となった。 もし今自分が死んだとしたらこの槍ヶ岳で撮ったジャンプ写真を遺影にしてほしい。 時間が許すのであれば、何時間でもこの場所に居たかった。 名残惜しいが、また再訪の誓いを立てて下りの梯子に足を掛けた。 下りルートは登りよりも若干恐怖心を煽られる。 アイゼンを引っ掛けて前から倒れると危険だったのでほぼ後ろ向きで下っていたが、雪ミックスの下りはルーファイが難しく、鎖や腕力に頼り切る場面が多かった。 この辺はまだまだ経験不足だろうな。 20分程で山荘まで戻ってくると、少し安心感。 アドレナリンどっぱどぱだったから感じなかっただけで、どこかできっと恐怖感はあったんだろうな。 さて、ここからはひたすら下るだけ。 計画では、ピストンだと面白みがないので上高地までロングルートを下る予定だったが、昨日の時点では槍登ってさっさと下りてしまおうという頭になっていたのでピストンに計画変更していたが、槍のおかげでモチベーションメーターが振り切れていたので、元の計画通り上高地まで下る事にした。 ピッケルをしまい、下山準備をしていると山荘スタッフから、槍ヶ岳山荘を最後に出発した客として写真を撮らせてくれないかとの事で声をかけられた。 自分は槍に登っていたから、たまたま最後の二組が出発する瞬間に立ち会えただけだが、それでも折角だからと言う事で一緒に撮影してもらった。 その一コマがこちらにアップされている。 https://www.instagram.com/p/CzQIp-rPC8G/?igshid=MzRlODBiNWFlZA== 槍ヶ岳山荘さん、お世話になりました! ここからは急斜面を一気に下っていく。 雪道だから足への負担も少なく、アイゼンもしっかり噛むので久々に楽しい下り。 締まった雪にアイゼンは最高に楽しい。 段々と雪と岩場のミックスとなっていき、岩場の割合が多くなってきたところでアイゼンを外す。 この時、暑くて脱いでいた帽子がなくなっている事に気づく。 恐らく、水場か落ちていたエマージェンシーシートを畳んだ時だろうな。 お気に入りのノースのハットだったのにな・・・。 (上記槍ヶ岳山荘インスタ写真で被っているハット。拾ってくれた方がいたら連絡いただければ幸いです・・・。) 時折振り返りながら、突き出た槍の穂先に見惚れつつ、徐々に高度を下げていく。 完全に槍が見えなくなると、季節は秋の終わりに変化する。 道は段々と平坦になっていき足早に進めるものの、とにかく上高地までは長い道のり。 下界に近づくにつれ、風もなくなり気温も高くなり、吹き出す汗が止まらない。 帽子を紛失しているので、タオルやヘッドバンドで頭を覆い陽射しを防ぐ。 ババ平、槍沢ロッジ、横尾山荘。 とにかく、歩く、歩く、歩く。 横尾山荘からは、延々と林道を歩くのでそこそこしんどい。 おまけに途中からは大規模な工事のため、迂回路となり砂利道地獄が続き、太ももへダイレクトに衝撃が伝わるのでかなりキツい。 徳沢園まで歩いたところでようやく休憩。 流石にシャリバテ気味なので、槍ヶ岳山荘で受け取ったお弁当を開封。 中は笹の葉に包まれたちまき弁当。 鶏肉や椎茸などの具材たっぷりで、HP回復。 徳沢園からもひたすら歩く!歩く!!歩く!!! 明神館前に着いた時点で、ちょうど14時。 急げば15時のバスに間に合うが、ちょっと忙しないので一本遅らせて明神池へと寄り道する事にした。 疲れ切っているのにこのモチベーションの高さはなんだろうな。 槍のドーピングがまだ効いているのだろうか。 明神館からは登山者よりも観光客の方が圧倒的に多くなり、特に外国人の割合が高い。 すっかりコロナ前の様相。 浮いた存在になってしまったが、構わず観光客に紛れ明神橋を渡り、噂の嘉門次小屋を横切り、明神池前に到着。 明神池はまさかの拝観料。 折角なので散財。 穂高神社奥宮にも参拝し、御朱印ゲット。 一通り奥まで歩き、写真もまあまあ撮ったが、そこまで感動するものはなかったかな。 山をやっていると目が肥え過ぎて、下界の景色に対しては不感症になってきてるな・・・。 明神池の後は上高地を目指すのみ。 この行程もそこそこ長いのだが、道中野生の猿が大量発生するゾーンがあり、久々に仲間に会えて癒しの空間。 小猿が必死に親猿を追いかける姿は微笑ましかったな。 残りは木道をひたすら歩き、河童橋を渡って、ご褒美ソフトクリーム(美味!)を頬張りながらバスステーションに到着しゴール! バスで平湯温泉〜深山荘前と乗り継ぎ、少し歩いてマイカーと対面。 数ヶ月前から温めていた計画では3泊4日の槍・穂高テン泊縦走だったが、今年は例年より早い冠雪となってしまったので、縦走計画は断念していた。 それでも、槍ヶ岳だけにはどうしても登っておきたかったので、今回山荘泊の計画に練り直して大正解だった。 とりあえず、槍ヶ岳が今年最後の3,000m峰になるかな。 もしかしたら、来週あたり乗鞍岳狙うかもしれないが・・・。 この先、槍ヶ岳登頂の感動を上回る山行ができるのかはわからないが、山へのモチベーションは完全に復活したので、次なる感動を求めていろんな山旅を計画していきたい。 槍ヶ岳よ、感動をありがとう!!

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