農鳥岳 幻覚/幻聴/不思議体験

2023.05.21(日) 日帰り

活動データ

タイム

17:32

距離

23.6km

のぼり

2779m

くだり

2782m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
17 時間 32
休憩時間
3 時間 22
距離
23.6 km
のぼり / くだり
2779 / 2782 m
22
29
5 12
3 6
2 31
23

活動詳細

すべて見る

残雪期の農鳥岳の山行記録です。 なかなかログが出ないこのシーズン、「出ないなら自分の目で確かめよう」と思って行って沢山のディープな経験をしました。 下記にてログに残します。 ※長文です ※霊的かもしれない事象と、遭難に近い身体的な事象が入り混じってます ※一部登山者として間違った事をしています ※ツイッターに書き込んで沢山の先輩から頂いた情報もまとめてます --- 最近雪山を中心に攻めてましたが、久々に3000m級を攻めたくなり、家から比較的近い農鳥岳へ。  土曜のうちに麓へinし、車中泊して翌朝早朝から日帰りする計画。 奈良田-農鳥岳-西農鳥岳-広河内岳のコースを予定しています。 麓inは予定通りなんだけど、何故か寝付けず、3時間ほどウトウトするレベルで朝を迎えてしまいます。 朝は行くかどうか迷いました。まだ残雪あるだろうし、 距離も時間も長いし、体調も大丈夫なのか、と。 ただ「今逃すと梅雨明けまで来れないし、今日は天気いいし、行くなら今しかない。途中無理なら撤退しよう。」と思い出発を決めます。 靴も迷いました。ロングコースで120%程度の速度で行かないと日があるうちに下山出来ません。出来れば夏靴で行きたい。去年の今時期に剱岳や笠ヶ岳に登りましたが、その時は冬靴が正解でしたが、今年は雪も少なく暖かく、しかもここは南ア。ただ、先日富士山が真っ白になったとニュースになってたので、冬靴を選択。結果これは正解でした。 奈良田から出てゲートへ到着。 電力施設の従業員駐車場に沢山の車が止まってましたが、車種とナンバー地域的に「絶対に従業員じゃないしょ」的な車で埋められてる。その後林道に入り、車の通行止めの手前でもそういう車両多数でした。止めていいのかどうなのか分からない所ですが、「ここに止めてたら往復1時間ちょっとは節約できたな」と思いました。 なお、山行中に会った人数を考えると、目的は登山ではなく、恐らく皆さん釣りか山菜と思われます。 通行止めの先も暫く林道です。 途中未舗装はありますが、舗装された箇所も結構多くて、自転車があるとアプローチしやすいです。 聖岳、光岳の芝沢ゲートのような感じ。むしろもうちょい道は良いかもです。 奥の方に電力施設や工事現場があって関係者が出入りするので、整備されているのでしょう。 30-40分ほど歩き、登山道に到着します。 この日はとても暑く、既にある程度の発汗をしてて体が火照っています。 こういう日は熱中症になりやすいので、定期的に休憩し、水分をとり、オニギリを食べました。 大門沢小屋までは特に難所もなく、順調ではありますがとにかく暑い。汗が止まらない。 この時点で水2リットルはほぼ飲み干してます。 水場をアテにしてたのですが、今時期は出ないようでした。 この先の登山道の水場で補給しました。 熱中症回避のため休憩しまくってるので、徐々にラップが遅れてきてます。 ただ、体は元気で意欲もあり、まだ時間は早く、撤退はナシとして登り続けます。 徐々に雪道が出始めます。 熱中症予防のため、雪を帽子やネックゲーターへ突っ込んで血管を冷やします。体がかなり楽になって、意識も冴えてきました。標高も上がって涼しくなり、熱中症リスクは大丈夫そうです。 ただ、引き続き発汗と喉の乾きはあり、水分は取り続け、定期的にオニギリを食べます。 大門沢下降点の真下へ到着。 2,500m地点くらい。 ※位置は添付の最下部画像「2,500m地点」を参照。 見通しの良い雪原のようになっており、良い景色です。 向こうの方から登山者の声が聞こえます。 見ると、雪原の左側の高台の上で青いウェアを着た男性が立っています。 逆サイドの農鳥側に2名の登山者を確認。やはり高台の上にいます。両者の距離は100mくらい?大声で何かを会話しています。特にそこから動く様子もなく会話しており「変なフォーメーションだな、登っているようにも見えない。雷鳥の研究とかのお仕事関係の方々なのかな」と思いながら登っていきます。 すると左手の男性から大声で呼ばれました。 「すいませーん!そっちは登山道ですかー?」「はい、そうですー!」と応答します。 そうしたら「おーい、○○さーん、登山道こっちだってー!この人が教えてくれたよー!」 なるほど、道を探してたのか。 そのまま登っていくと、右手に居た2名が降りてきました。まず先行する男性。60少し過ぎくらいのご年齢か。 男性「いやー助かりました。雪で道わからなくなっちゃって。ほら、あっちここから見ると、傾斜で先が見えないでしょ。怖いから近寄って無かったんですよね。」 私「ああそうなんですね!大丈夫です。傾斜は穏やかですし、私のトレースもあります。この後も雪渓で何度か登山道は隠れてますが、目視出来る距離に夏道が見えますので、分かりやすいかと。」 お礼を言って頂き、降りて行かれました。 明るい雰囲気の男性、終始笑顔でとても元気そう。 ピッケルではなくストック、装備も小さめで宿泊では無さそうでしたが、ここから先はピッケルアイゼンを必要とする箇所は無いので大丈夫でしょう。 程なくもう1名、女性が降りて来られました。同じくらいの年齢と想定されます。 女性「有難うございます。本当に助かりました。この先は奈良田ですか?」 私「はいそうです。私は今朝奈良田から登って来ました。お気をつけて!」 女性はややお顔に疲れが伺えました。 歩行速度も大分ゆっくりです。 装備は同様にストック、宿泊では無さそう。 まだ昼だし、ゆっくり降りても日中には下山出来るでしょう。 私は登り続けました。 ここからは急登で、ハアハア言いながら登ります。眼下に先程立ち話をした雪原が見えます。お二人がゆっくりと降りて行かれるのが見えます。最初に声をかけて下さった男性は一緒に居ないようです。 あれ、3人パーティじゃないのかしら。と思いながら「でも良いコトしたな」と少し嬉しくなりつつ、登り続けます。 大門沢下降点に到着。2,800m。 この時点で大分遅れてます。西農鳥岳と広河内岳は行けないかも、終盤はナイトハイクかも。と思います。 天気は良好。風も穏やか。 山頂まで行って、ピストンにしようとほぼ決定します。 稜線を歩きながら、ふと疑問が湧いてきました。そもそも何であんな簡単な場所で迷われたのかな。地図持ってないのかな。地形見ればすぐ分かりそうだけど。YAMAP持ってないのかな。初心者なのかしら。ただ、普通初心者の方々がこんなところまで来ないよなあ?? 稜線はまだ結構雪が残ってて、冬靴が正解でした。 ここまでピッケルアイゼンは使わずに来ています。 トレースは見当たらず、お三方は農鳥岳へは来ていなさそう、と予想しました。 山頂まであと200mというところで、本日最初で最後の難所に遭遇。雪が登山道を覆い尽くしており、トラバースになっています。右側にかけて大規模な雪。 傾斜はそこそこ、足を滑らしたら200mほど滑落する事が想定されます。傾斜の先はハイマツの樹林帯が見えますが、すぐその先は切れ落ちている模様で、滑落してハイマツに到達したら、バウンドしてその先に飛ばされそうでした。 山頂目前にして、これは、、どうしたものか。 左側は大きな岩で自由度の低い冬靴では登りたくない高さです。 色々と考えた結果、左手の岩と、雪の間に少し隙間があることに気づき、そこをプチラッセルして岩側を斜めに登ることとしました。 かなり緊張を強いられるシーンでしたが、岩を伝ってうまいこと道が作れ、岩を乗り越えて山頂へ到達! 道中よく写真を撮ってましたが、この時ばかりは怖くて写真を撮る余裕はありませんでした。 山頂からの景色は素晴らしく、以前登った北岳、間ノ岳までクリアに見えます。 疲労感はあるが体調も良好。 少しだけ高山病っぽいかな? ただ、下山出来ないレベルでは全然ない。 大丈夫そう。 山頂で休憩しながら地図見つつ、この後の工程を考えます。最後の難所で苦戦した関係で、西農鳥岳と広河内岳は諦めざるを得ません。 急登の続く大門沢小屋までは日があるうちに下山、その先は道が穏やかだから、ナイトハイクやな。と地図を見ながら帰りの計画をたてなおします。 そこで大いなる違和感に気づきます。 先程お三方に会った雪原に至る為には、ルートは3つしかありません。 あの雪原へ来るためには、 ①奈良田から来る ②間ノ岳、農鳥岳を縦走してくる ③奈良田から回り込んで来る の三択しかありません。お三方は①が見つけられなかったので①からは来てないハズです。山頂にトレースが無いから②も無い。そうなると③だけしか残りません。 ※最下部「山頂時」画像参照 ③は点線コース、雪原まで10時間、会ったのは午前。あの雪原に辿り着くためには深夜の0時、1時からナイトハイクしないと辿り着けない。またはどこかでテント。ただ装備的にテントは持ってない。あの雪原でルートを見つけることが出来ないという事は、そこまガチ勢じゃない。 えっ、、おかしくね??絶対成立しないじゃない。もしかして霊的な何か?? いや、でもめっちゃ至近距離で会話もしたし、おかしな様子は無かった。 でも絶対成立しない。 うわーーー謎ーーーー! 何なんだろーーー! 腹落ちしないまま、とは言え山頂に留まる訳にもいかないので、下山を開始します。 下山は念のためピッケルアイゼンで。 降りながらも「何だったんだろうなあ」とずっと気になってます。例の雪原を通過、特に何もありません。雪原を過ぎてアイゼンを外し、ピッケルをストックに変えて再スタート。 徐々に日没してきますが、山荘までは予定通り行けそうです。眼の前に見える富士山が美しすぎて、途中途中で写真を撮りちょいちょい遅れます。 山荘までの道のりが半分くらい終わった頃、左側が切り立った崖になっている道を通ります。 ふと崖下に目をやると、雪渓の中にお地蔵さんと小さな祠のようなものが転がっているのが見えました。200mくらいの距離があるので小さくしか見えませんが、確かにお地蔵さんと祠です。 あら、何であんなところに。 雪に流されてあそこまで来てしまったのかな。 手を合わせて無事の下山を祈りました。 徐々に高度を下げつつ、順調に道を進めます。 水が切れたので、雪解け水を補充。満タンにします。 日が暮れました。トワイライトのうちに山荘に着けそうですが、樹林帯なので暗いです。 ヘッデンを点灯。 歩いていると、ところどころ登山道の岩が顔に見えてきました。 あれ?見間違い? 徐々に暗くなってきます。 その後どんどん石や岩が顔に見えてきて、足元が顔だらけになりました。 おお。ちょっと怖いな。これ幻覚だわ。 以前YAMAPで、塩見岳で自らの幻覚に誘われて遭難してしまった話を読みました。 私も同日登っていて、たまたま読んだ話です。その方がデポしたザックも見たし、恐らくその方が迷い込んだ分岐も通りました。(その方は無事に翌日救助されています) またTJARの方が幻覚をたくさん見た、という話も読んでいたので「これは幻覚だから、迷わずしっかり下山しよう」と心に決めます。 山荘へ到着。ほぼトワイライトも終わってましたが、ここからは大分穏やかな道になります。 山荘のテント場等を見ましたが、誰もいない模様。 休憩しつつこの後の道のりを再確認します。 聞こえるはずのない救急車の音が聞こえます。 ああ、キテるな。 行くか。 道は予想通り穏やかで、歩きやすいです。体のフラつきなどもなく、安定して下山していきます。 ただ、ずっと幻覚は見えている。 そこら中が顔だらけです。 顔にはバリエーションがあって、一番多いのは目だけの物です。 他に、浮世絵みたいな絵とか、横顔の絵とか、ちいかわみたいな動物の可愛い顔まであります。 もうこの頃にはすっかり慣れて「めっちゃいっぱいいるなあ」位にしか思わず、怖くもありません。ひたすら下山します。 途中で休憩。今度は大量のバイクが走っている音が聞こえて来ました。ああ幻聴か。 行こう。 このエリアは橋があって、何度か橋で河を渡らないと行けません。 そのうちの一つに差し掛かった時、橋の真ん中に白いワンピースを着た白人の女性がいました。 流石にその時はギョッとして怯んだのですが、よく見ると、大きな白い巨木が流されて橋に引っかかってるだけでした。 また幻覚か。 その後も幻覚を見ながら進み、最後の休憩。 あとちょっと。 この時は大勢の人がザワザワと話しながら、こっちへ歩いてくる幻聴が来ました。おおアカンアカン先に行こう。 その時ふと、はよ行くで。と思いました。 すぐに「ん?いやソロだよね」と思いなおし、歩きます。度々「はよ行くで。」「いや、ソロだった。」を繰り返しながら、何とか電力施設に到着。人工的な明かりが見えます。 ああー良かったーー。 ふと見ると、巨大なトラックが何かの深夜作業をしているのか動いて見えます。 「こんな夜中に工事?」と思いつつ近づくと、車などありません。建物があるだけです。 また幻覚か。 下山を続け、林道に到達。 ここまできたらもう大丈夫。 幻覚も見なくなって来ました。 ゲートに到着。 今朝見た車は一台もありません。 まあそうよね。もう22時すぎてるしな。 そして今日初の携帯電波! 家族に無事をlineします。ご心配をおかけしました。 そこから奈良田の駐車場に向けて舗装道路を歩きます。 幻覚はない。 もう間もなくという所で、路上で音楽を鳴らしながら3名の男性が踊っているのが見えました。リフレクター付きのアウターを着ており、光って見えます。 「おや、地元のダンサーかな?こんな真っ暗闇で。確かにここ車も通らないし、練習に良いのかな」 私のヘッデンに気づいたのか、ガードレール側に3名ともスーッと道を開けてくれたようです。 「怖い兄ちゃんだったら嫌だなと思ってたけど、いい人達そうだ」と思って近づいていきましたら、人に見えていたそれは、ガードレールの反射板でした。 おいまだ幻覚続くのかよ。 駐車場に到着。 ああー疲れたー!!暫くトイレ行ったり着替えたり片付けしたりして休みます。 何か急に激寒くなってきました。 上着を着たらすぐ復活。 疲れてたんだなあ。。 支度が整い、これからどうするか迷います。既に23時。 明日は仕事で重要な会議もある。 もう幻覚も見ないし、大丈夫かな。。 と思って、帰宅を決意します。 しかしこれが間違いでした。 時間的にも曜日的にも全然車は走ってないのですが、道の脇に木々が鹿の群れに見えたり、ガードレールの反射板が停車中の車に見えたり。 高速乗ったら眼の前にいたはずのキャンピングカーが瞬きした直後に消えてたり。 これは二度とやってはいけません。 ただ、私は帰宅することしか考えてませんでした。 後から思うと、下山はしたものの、心は遭難していたと思われます。 冷静さを欠いていた。 帰宅して2時半、食事をしながら今日の写真を見直してましたら、写真が顔ばっかりに見える。 拡大すると顔じゃない。 ああ、また幻覚か。 こらアカンと思いすぐに寝ました。 翌日、起きて写真を見直したら顔など一つもありません。どれが顔に見えたのかさえ分かりませんでした。 何だったんだろう。 夜に「そういえばあの不思議なお三方は?」と思って2,500m地点の写真を見返しましたが、どこを探しても見当たりません。 あれ?おかしいな。適当に撮ったから画角の問題か??または、、、 この件をツイッターに投稿したら「これじゃないですか」と指摘を下さった方が居ました。確かに人のように見える。けど、こんなに薄い色のウェアじゃなくて、もっとビビッドだった気がする。ああ記憶が全く頼りにならない、、 この件は最後まで分かりませんでした。 他方、幻覚幻聴の方は沢山の具体的なアドバイスをツイッターで頂きました。 ・日頃の疲れ ・前日の寝不足 ・ビタミンB欠乏 ・ミネラル不足 ・低ナトリウム血症 ・水中毒 ・経口補水液の粉が売ってるから持つべし ・塩ラムネ舐めるべし ・毒キノコのガスの可能性 ・極度の緊張 ・そういうときは呼吸がおかしくなってる ・続くようなら脳の検査を ・運転はダメ ・タクシーで帰るという手段もあった ・消えたキャンピングカーは単に寝落ちしてた可能性 等。 ツイッターの皆さま、本当に有難うございました。めちゃくちゃ勉強になりました。 帰るまでが登山です。 今回その事を痛感しました。結果何事も無かったから問題になってないだけで、下手したら山の中でも車でも大事故を起こしていたかもしれません。 身にしみました。 今後も安全登山を心がけます。

もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。