活動データ
タイム
11:57
距離
27.3km
のぼり
1936m
くだり
1897m
活動詳細
すべて見る栗子山から豪士山を越え、七ヶ宿まで抜ける縦走ライン。着想から1年越しの実現でした。 【ルートのきっかけ】 このエリアを知ったのは、ちょうど1年前の番城山。蔵王から吾妻連峰にかけて空白地帯だったところに、宮城ではそこそこの標高である番城山の存在を知り、登ってみてからここ近辺のポテンシャルに気付きました。登山道がほとんどないのでとても静か、そして開発から逃れたのかブナ林も豊富。ところが気付いた時には東京異動の内示が出てしまい、東北でやり残したルートとなってしまいました。 ただ、知ってしまったらやりたくなるというのが人の性。東京からでも可能なルート取りはないかと地形図を見ながら複数のルートを検討しました。 メインのルートは栗子山〜仙王岳で固まってはいたものの、入山口が未定でした。まず思い付いたのが、巨大な氷柱が有名な二ッ小屋トンネルからのアプローチ。氷柱を見てみたいという理由からでしたが、トンネルまでのアプローチも、トンネル後栗子山に至るまでもアプローチが最悪でボツ。 次に思い付いたのが、板谷駅から旧栗子国際スキー場を抜け、稜線沿いに栗子山へ向かうもの。都心からのアクセスは及第点ながら、途中国道西栗子トンネルの上を抜けたあたりに気になる崖マーク。これはスキーでは厳しそう&情報が皆無ということでこちらも微妙。ちょうど3月7日にこのラインで焼枯まで歩かれている方がいて、日記を拝見しましたがやはり崖マークはかなり手強そうでした。また、奥羽本線も冬の間は板谷駅を各駅停車含め通過するんですね。ちょうど今年の1月からの措置のようですが、いずれにしても縁のないルートでした。 そんなこんなでアプローチを探っていたら、米沢スキー場にバスが停まることを発見。しかも、スキー場の少し手前から分岐する万世大路を登っていくと、旧栗子隧道に突き当たりこちらも氷柱が見もの。ただ、そこから直接栗子山に登るには少し急すぎて雪崩が怖い?1087点の尾根を攻めるべきか?と悩んでいたところ、フォロワーさんの栗子隧道レポ。のみならず栗子山にそのまま登るという、まさに私の悩みを解消する素晴らしいルート取りで、ようやくルートが固まりました。バス+氷柱トンネル+栗子山と、一石三鳥が嬉しい登山ルートとなりました。 入山口は固まりましたが、栗子山以北になかなか記録がありません。ヤマレコで急栗子国際スキー場から鎌沢を遡り稜線に取り付き、鳩峰峠に至るまで35kmの超縦走をされた方の記録がちょうど昨年の同時期に上がっていたので、少なくとも鳩峰峠までは行けるだろうという勝算はありました。そしてフォロワーのたかかさん・おらおらさんが12月に七ヶ宿から龍ヶ岳まで歩かれていたので、恐らく北側も行ける…!記録は少ないながらも、ピンポイントの情報に勇気付けられて、妄想登山を実現することができました、ありがとうございました。 【ルート概要】 ◇アプローチ◇ 米沢スキー場行きの始発バスは9:11米沢駅発なので、東京始発のつばさで間に合います。ただし日祝休みなので、基本的にこのルートをやるならば北上推奨。後述しますが、核心部的にも北上が良さそうです。 米沢は週末パスの範囲内なので、少しお得に行けるのも嬉しいところ。あと、バスも安い(310円)。アプローチ的には新幹線乗るわりにお財布に優しい山でした。(帰りの七ヶ宿町営バスも乗り継いでも400円) 始発で朝ご飯を抜いたとしても、駅そばやってたので(しかも米沢牛食べれる)そちらもおススメ。 ◇米沢スキー場〜栗子山◇ 正確にいうと米沢スキー場のちょい手前の採石場入口から。このバス、フリー乗降区間設定されてるので指定の場所で降りれる点でもポイント高いです。ちょっとスタートが遅いので、駅で完全に支度してから乗り込むのが良いと思います。 採石場入口からしばらくは社道になります。雪国ながらしっかり除雪されていていますので、スキーブーツだとなかなか厳しい。アプローチシューズで歩きましたが、わりと融雪でドロドロなのでしっかりめの靴があればその方が良いかも。採石場事務所の空いている平日は入山届けを事務所に出す必要があります。話逸れますが、採石場の中を歩く機会って滅多にないのでなかなか面白かったです。 採石場内の万世大路を案内する看板に従うと、登山口の橋に出ます。ここから積雪につきスキー着用。栗子山までの場合であれば雪の締まり具合的にはスノーシューが最適かも。隧道までは人気ルートなのでトレース多数、ショートカットポイントにはピンテもあります。 隧道は氷柱鑑賞ポイントまでしっかり踏み固められてるので問題なし。トンネルで気温変化も小さいのか、氷柱もまだ元気です。 トンネルからトレースは少なくなりますが、それでも栗子山までは何人か歩かれている模様。抗甲山北のコルへ栗子川右股の源頭部の谷を詰めます。序盤はスキーでも気持ち良い滑走のできそうな広い斜面。上部がやや斜度があるため途中からクトー使用。ジグを切れば問題なく登れました。斜度も気になりますが、ブッシュも少々面倒でした。といっても雪もまだ繋がっていたので思ったより苦戦せずコルに到着。そこから栗子山頂までは雪原と言っても良いくらいのだだっ広い尾根を行きます。 ◇栗子山〜高畠町最高峰(焼枯)◇ 栗子山の山頂が平らすぎて、快晴なのに歩き始め行き先を迷いました。七ッ森への稜線を分ける所までは、開けた稜線が続きとても気持ち良いです。 焼枯へは北に進路を取りますが、少々急な下り。シール滑走で行きましたがジグを繰り返しながら標高を下げました。そこから焼枯までも、たまーに雪庇がでできます。やはり地形図通り、焼枯手前のところから厄介な雰囲気を醸し出してるので、要注意です。 ◇ 高畠町最高峰(焼枯)〜豪士山◇ 雪の回廊で歩きやすいところもありますが、何ヶ所か雪庇注意ポイントもあります。ひかば越えで再び雪原となるので、しばしの間ホッとできます。 豪士山(前峰)登りは一見急でスキーは無理かと思いましたが、昇温で雪がぐずぐずだったおかげで踏み込みが良く効いて、クトー使用で突破できました。むしろ前峰から豪士山本山にかけてが、細い尾根だったので若干怖かったです。 豪士山からやや降りた雪原でビバーク泊。ぐずぐずだったのでブロックがすぐ固着する点は組みやすかったのですが、恐らく何度か雨が降ったのでしょう、ブロックを切り出すのはかなり力仕事でした。そもそも硬い上に、かなり噛み合ってましたので…。ただおかげで、しばらく大規模な雪崩は無さそうだなとも判断材料を得ることができました。 ◇豪士山〜鳩峰峠◇ 最初は雪原地帯なので高まりを巻きつつ進みます。江の沢山にかけては地形図通り尾根も細くなりますが、直下までは意外と苦戦しませんでした。ただ直下の鞍部は雪庇が壊れ始めているところを通過してから、一度雪が切れるのでスキーを脱ぎ、さらに江の沢山登り返しと障害物だらけ。特に登り返しは、今ルートでは最も急な角度でスキーでは突破不可。朝で雪面が冷えていたのもあったでしょうが、仕方がないので脱いで登りました。登り自体は短かったのは幸いでしたね。 江の沢山から先も、924三角点までは雪庇地帯。場合によっては若干西側をトラバースするのも手です。 924三角点を抜けると尾根が広くなるので、緊張も解け鳩峰峠へ。鳩峰峠は雪で閉ざされています。 ◇鳩峰峠〜仙王岳◇ 豪士峠周辺もそうでしたが、鳩峰峠も登り始めは西側の雪が溶けていたため、東側を巻きこむように登りました。952点手前、若干急坂で頑張りが必要(シールのみで突破できました)。952からしばらくは雪原状の尾根なので楽しいです。 龍ヶ岳からなんとトレースが出てきて、精神的な支えになりました。982点は東側より巻けます。982点以降若干狭く急なので、スキーだとやや大変。特に837点手前、標高860m付近には地形図からは想像できない壁(40度はあると思います)があり、少しずつ横歩きで降りました。高さは10mないくらいですが、このルートの核心部の一つと言っていいでしょう。少なくとも南下でこの壁を突破するのは、登りになる分さらにレベルが上がると思います。今回は雪が締まっている分登りやすそうですが、厳冬期はオーバーハングのドラッセルかもしれません。 壁からしばらくは平らなブナの森を行きます。ただ、心にゆとりができたのも束の間、891手前小ピークから仙王岳手前県境分岐点までは雪庇が連続します。しかもこのルートで一番状態が悪く、少し崩壊の始まっている雪庇の上を急ぎ足でやり過ごすこともしばしば。西側は雪が溶けて藪だったり、急傾斜すぎてトラバースするのも躊躇するような斜面だったので雪庇と真っ向から挑むことになる、なかなか緊張した区間でした。 ◇仙王岳〜東沢バス停◇ 仙王岳もたまに記録があるのですが、大体真北に伸びる尾根が使われています。ただそうするとバス停まで余計に歩くことになる(スキーを担ぐのは辛いので…)ので、最短距離の谷を選びました。ただこの谷、なかなかのV字谷な上、雪解けが進んでいたのでルートチョイスとしては失敗。クラックもたくさんできている中、急で狭い谷筋を降りていくのはかなり神経を使いました。渡渉も何回か繰り返し、上の方は雪が生きていたのでそのまま行きましたが、林道直前はスキーを脱いで、飛石伝いに沢を渡りました。 林道まで行けば安心で、そのまま国道へ。 県道13号線の分岐の少し先にバス停があります。白石・白石蔵王駅行きは七ヶ宿のファミリマートで一度乗り換えることになりますが、1日3便(朝、昼、夕)しかないのでそれに合わせたプランニングも必要です。 全体的に難しいところはそこまでないですが、要所要所で注意箇所があります。個人的には 1.仙王岳下り:そもそも冬道ですらないので選択肢に入れないほうがいいです 2.仙王岳手前雪庇 3.江の沢岳近辺(キツイ登りと雪庇) 4.龍ヶ岳〜仙王岳間837点手前40度壁(逆ルートだと最難関?) 5.豪士山近辺(前峰-本山間の細い稜線と前峰登り) の順で怖さを感じました。厄介さでいうと多少前後するかもしれませんが、身の危険を感じる核心部という順番では上記になるでしょうか。ただ、どれも厄介なのも間違いありません。 ただ、上記核心部の他は、どこまでも広がる雪原稜線や豊かなブナ林を往く雪の回廊、抜群の眺望をほぼ独り占めできるかなり良いエリアでした。稜線を歩いた距離は約20kmに達し、これは谷川-平標や剣山-三嶺、以東-大朝日なんかを上回る稜線歩きになります。スキー向けの山ではあんまりないですが、移動する分にはスキーが1番速いと思います(スノーシューでも行けそうですが、下りが遅いのとスキーより浮力がないのでちょっと疲れるかも)。とはいえほぼシール登降で、シールを外したのは仙王岳下りのみ。僕みたいな登るのが好きなスキーヤーにとっては楽しいかと思います、あんまりそんな人いないと思いますが笑フォロワーさんに何人か思い当たる方いらっしゃるのでちょっと詳細に記載させていただきました。 【稜線の山々】 このルート上のピークはどれも個性的な山名で興味深いのですが、なにぶんマイナーな領域につき記録が見つかりませんでした。 ・栗子山 唯一有名なのが栗子山ですね。福島と米沢を結ぶ国道13号線にも西栗子トンネル・東栗子トンネルの2本のトンネルが連続するので、この道を走ったことがある方にとっては聞いたことのある地名かもしれません。元々の街道は新幹線の駅名にもなっている板谷峠を通ったようですが、明治時代山形県が現在の形になった際、初代県令の三島通庸が得意の強硬土木で切り拓いたのが萬世大路。片道2日を要した旧板谷越えは、往復3日で済むようになったとか。その後も改修が重ねられ、昭和には現在氷柱で有名となった「栗子隧道」が貫通し、さらに昭和後期に現在の国道13号線、そして平成に東北中央自動車道と、涙ぐましい交通改良が繰り返されてきました。役目を終えた萬世大路ですが、その姿を偲ぶだけでも、栗子山への登山は面白いと思います。『歴史の道百選』や土木遺産に指定されたこともあり、福島市・米沢市の協力もあってよく整備されたハイキングコースになっているようですね。ちなみに「栗子山」という山名は、南にある「抗甲山」から貰った名前のようです。 参考 山形河川国道事務所https://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/road/banseitairo/01_meiji.html 福島市https://www.city.fukushima.fukushima.jp/rosei-chosei/machizukuri/toshikekaku/doro/kosokudoro/bansei.html 万世大路研究会 鹿摩貞男「栗子峠の歴史」https://ootaki.xsrv.jp/betsuzoe-1.pdf ・豪士山 本ルート唯一のタイトルホルダー(やまがた山)。こちらも地元山岳会のご尽力によりハイキングコースが切り拓かれています。とはいえ冬に訪れる人は稀でしょう。豪士という山名は惹かれますが、由来分からず ・龍ヶ岳 こちらもカッコいい名前なれど由来は謎。鳩峰峠というくらいだから、鳩峰という名前でもいい気がするけど(山容もたおやかですし)。鳩峰峠から宮城に下ったところに「稲子」という集落がありますが、現在は住民が1人になったそう…!福島市茂庭と山形県高畠町を結ぶ宮城と何の関係も無い場所にあるのに宮城県なのは、仙台藩の藩有林だった名残らしい。 ・仙王岳 こちらも名前はカッコいいけれど由来は不明。麓の二井宿の県境は山形県側に少し食い込んでいますが、これは伊達政宗が関ヶ原合戦で上杉の統治していた(そして伊達政宗の出身地である)置賜に攻め入った名残だそう。 【まとめ】 気になっていたルートを、遂に果たせて非常に満足度の高い山行となりました。ほとんど歩く人がいないだろうなと思いながら、12月のたかかさんご一行に始まり、直前の焼枯までの入山者、龍ヶ岳からのトレースと、直近で入山者がいらっしゃったのは、先を越された!というちょっとした口惜しさと、同志がいた!という嬉しさに安堵と、いろいろ感じました。でもやっぱりトレースがあるのは心強いですね。お陰様で素敵な縦走ラインを刻むことができました。 昨年東北を離れる間際に気付いたエリア、1年越しにトライしたところ、前述した通りなかなか奥ゆかしい、静かな魅力が溢れる山域でした。これは、静かな山歩きを楽しみたい方にはコッソリお勧めしたい山ですね~。(山名についても気になっていますが調べきれずスミマセン!もし由来をご存じの方いたらご一報ください!喜びます!!)
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