活動データ
タイム
02:13
距離
5.5km
のぼり
392m
くだり
396m
活動詳細
すべて見る(要約)山名は船の神さまが山域に顕現したことに由来する。その故事からは、山林利用の歴史と使えるものは神をも使うという駆け引きが垣間見える。 (所感) 八百津町は木曽川の水運で栄えた町である。ゆえに産土神の大舩(船)神社祭礼(※1)で曳航される3両のだんじりは、それぞれが船の一部であり、順に並ぶと壮大な1隻の船になる。八百(たくさん)の津(港)を抱く町の、縁起に関わる古の山頂を目指す。 山腹に所狭しと開かれた棚田の隅で、読書に励む二宮像(まだ現役だったのか!)。せめて車に気を付けよと声をかけて権現山林道を遡行する。そこそこ気を使うフラットダートが続く。路肩に登山者と思われる車が2台。林道の奥からオフロードバイクが2台。駐車場はないが広い路肩があるので、そこに車を停める。 この時期とは思えない暖かさだ。 麓から続く古い山道を林道が横切っているので、奥の登山口はやせた主尾根に唐突に取り付く。山腹を一足トラバース気味に進むと、またも唐突に山頂への分岐。 上り詰めると祠のある山頂(付近)に到着。あっという間の登頂だった。数年前に切り開いて、サクラを植えたであろう南斜面。わずか南面だけが開けている。こぢんまりした八百津の町並みと悠々とした木曽の流れ。遠くでは尾張富士と本宮山が高さを競っている。 縁起に因れば、山名は山中で造船用に伐採した木が曳き出せなかったことに由来する。不思議な力に神性を見いだし大船権現としたのがはじまり、それを遷座し村社としたのが大舩(船)神社だという。木を曳いた故事は、船形のだんじりに引き継がれている。山なのに船なのは水運の民だからだろうか、穗髙神社のように綿津見の子孫だったりしたら面白いが。 それにしても、よほど大きな木だったのだろう。豊かな自然は人々の営みを支え、人々はその恩恵に支えられて生活してきた。それを後世に伝えているのが、八百津祭りのだんじりだろう。 と、まとめておけばキレイな山行録なのに。 この縁起には別の解釈も成り立つ。そしてわたしはこちらの方がはるかに好み。 麓の方に動かそうとすると、重くでびくともしなかった大木。でも、山頂に向かって曳くと簡単に動いたのだそうだ。あら不思議!すなわち、麓とは反対方向に対抗勢力があったことのメタファーである。 旧八百津町(細目村)は、近世まで水運業(=三次産業)で成り立っていた。地域資源に比して人口が多く、自給自足のバランスは著しく崩れていたはずだ。人口を維持するために資源を恒久的に確保することは、地域の大命題であっただろう。 実際、江戸時代には、権現山域を占有し山林資源を独占しようとする細目村と、阻止しようとする周辺15ヶ村(※2)との間に争い(山論)が勃発。解決には半世紀を越える期間と幕府の裁定を要したという。細目村の論拠は「権現山は産土神・大船権現の山である」ということであった。木どころか芝草ひとつ刈るにも対抗勢との戦いだった時代。山林の利用権を主張するのに「おらが村の神様はもともとその山の出だぁ!」という既成事実は好都合だったろう。 ただ、どのように利用されようとも、おらが村への帰属意識は信仰のはじまりである。とも、思う。 関西電力の反射板を経由して、山頂を北側に巻く。 多くはヒノキの植林地に変わってしまったが、朽ち果てた炭窯跡が散見される。地面に散らばった屑炭に、薄氷の上に成り立っていた山林利用の歴史に思いを馳せる。 親切に留めてあるのに、下山のコースをお約束でスルー。現川辺町との町界尾根沿いに北上する。 植生にさえ目を瞑れば、どこかアルプスを思い出させる砂岩の岩場。チャートではない、どこか軟らかい岩体を乗り越える。 東方向に、砥山(久田見山)と笠置山。恵那山は厚い雲で見えない。 今日のコース中、一番わくわくする。でも、不思議と不安はない。岩場だろうが薮だろうが、激しい山論の地の境界尾根が誰も通っていないはずはない。 ほぉら、続く天神山の山頂にも天神の石碑と自然石の石碑が2柱。この山もまた信仰の山であった。細尾根を辿る道なき道にも、むかしは信仰の道が続いていたのだろう。参る者がなくなって久しいはずの神域に一対の榊が奉奠されていた。 最近間伐されたヒノキ林を降下すれば、もちろん杣道に当たるので、労なく作業道に降り立った。 その後の林道歩きは、例によって長かった。 あぁ、ろくに下調べをせずに登ってしまったせいで、肝心の三角点2箇所と大船神社をスルーしてしまった。どこかの口の悪い有閑法師の格好の餌食である。まったくもって何事にも先達はいて欲しいものである(※3)。 (登山記録) アクセス:まず八百津までが遠い。市街地から北進。北山集落の北部農村センターを左折する。消えかけた登山口の道標と二宮金次郎像が目印になる。 最後の数キロは荒れ気味のフラットダート。運転にはそこそこ気を使う。路側の溝に前輪を落として少し焦った(ふだんは後輪駆動なもので)。道標がある手前の登山口に数台、奥の登山口の手前の路側帯に数台駐車可能。林道だからといって路駐せず、路側帯の中にしっかり車を収めること。トイレなし。 登山道:手前の登山口に道標。山頂と反射板の分岐に手製の案内板。反射板巡視路の道標。それ以外は標識テープが目印。山頂西側の分岐はやや不明瞭だが、ほとんどの登山道は踏み跡がある。 東側の山頂と反射板の分岐~天神山手前の突っ込み林道までは、踏み跡と地籍調査の杭を辿る。岩場歩きが楽しめる。続く天神山尾根までは、薄い踏み跡と標識テープを頼る。いずれも一般コースではないが、地形を読めば見当違いの方に行くことはなく、バリエーションコースとして楽しめるだろう。 天神山東麓の林道ジャンクション(地図上は5叉路)は、実は6叉路。南西に向かう3本のうち、真ん中の道を下る。 (メモ) 植物:アカマツ、ヒメコマツ、ヒノキ(植栽)、モミ、ネズミサシ、アラカシ、コナラ、クリ、ヤマザクラ、ホオノキ、コシアブラ、ハリギリ、サカキ、ヒサカキ、ヤブツバキ、ヒカゲツツジ、アセビ、リョウブ、イヌツゲ、シキミ、イワカガミ 鳥:エナガ、シジュウカラ、コゲラ、ヒヨドリ 地質:砂岩、(一部チャート) 水分:携行0.6L→消費0.4L (注釈) ※1祭礼(八百津祭り)の様子 https://yamap.com/moments/712107 ※2川辺側の主張 https://yamap.com/activities/29237812 ※3徒然草52段
活動の装備
- その他(Other)ICIオリジナル ガッシャブルム5
- モンベル(mont-bell)ガレナパック 30
- ソニー(SONY)DSC-RX100M3
- その他(Other)OneTigris スマホポーチ 多機能 シンプル ミリタリー風 iPhone8・8Plus・Xperia・Galaxyなどの5.5インチ以内対応 モール ベルト固定ホルダー 小物入れ リュックポーチ
- カリマー(karrimor)TC ヒップベルトポーチ
- ガーミン(Garmin)eTrex 30x
- その他(Other)iPhone 13 mini
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