ゲストハウスでスクーターを借りて(ガソリン込み2500円)、島を反時計回りで一周することにした。
 空港の展望デッキに上がると、報道陣が自衛隊輸送機の着陸を待ち構えていた。装甲車が公道を走るシーンも併せ、今回の日米共同統合演習で撮影可能な「見せ場」らしい。 戻る 次へ

国境の島の写真

2022.11.17(木) 11:35

 ゲストハウスでスクーターを借りて(ガソリン込み2500円)、島を反時計回りで一周することにした。  空港の展望デッキに上がると、報道陣が自衛隊輸送機の着陸を待ち構えていた。装甲車が公道を走るシーンも併せ、今回の日米共同統合演習で撮影可能な「見せ場」らしい。

この写真を含む活動日記

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19.0 km

652 m

国境の島

与那国島・宇良部岳 (沖縄)

2022.11.18(金) 日帰り

 🌴goto与那国島 2日目 宇良部(うらぶ)岳と断崖絶壁たち  🌴第1章「国境の島」  際立って特殊な「国境の島」。  なんせ、石垣島より台湾のほうが近いとあって、ここ数年とみに印象がヘビーになっている。 ※感じ方には個人差があります  石垣市民になって10年目。気になる隣町・与那国島に、ついにやって来た。  フェリー(週2便、所要4時間)は「ゲロ船」の異名を取り、プロペラ機(1日3便、所要30分)は8400円(往復割引の片道)もかかる。  「いつでも行けるし」「気候風土が近場の離島と大差ないし」という印象も相まって、ズルズルと上陸を先送りしていたが、  ①近い将来、民間人は入れなくなるかもしれない ※個人の予感です  ②たかが旅行の代金に血税を投入していただける  という信じ難い状況を踏まえ、「早く行こう」と焦り出したのだった。  📌与那国島———  八重山諸島に属する日本最西端の島。石垣島から127km、台湾から111km。  東西12km、南北4kmのサツマイモみたいな形をしている。周縁は、ほとんど断崖絶壁。  町役場がある北部の祖納(そない)、フェリーが着く西部の久部良(くぶら)、「Dr.コトー診療所」がある南部の比川(ひがわ)の3集落から成り、人口1700人。町の無料バスが3集落と空港、港を結んでいる。  📌産業———  農業(牛、サトウキビ)、漁業(カジキなど)、観光業が主だったが、2016年に始まった防衛業(?)のシェアが高まっている。  この年、陸自駐屯地(沿岸監視部隊160人)が開設されると、減り続けていた人口が反転。与那国小学校では複式学級が解消された。  来年度から電子戦部隊が加わり、住民の5人に1人が自衛隊員&その家族になる。  電子戦部隊は、有事に電磁波で敵の指揮系統を混乱させ、平時は情報収集に当たる。  ——————————————————  🌴第2章「市役所へ」  はやる気持ちを悪天候に阻まれ続けた。  11月16日までの1カ月で☀マークが付いたのは9日。そのうち5日は「一時☂」などで、まともな☀は今月15日だけだった。  冬になると、北からの季節風が強くなる。海面を通る間に暖められ、水蒸気を得るので、雨天曇天がダラダラと続く。今季は、これが前倒しされている感じだ。  ようやく太陽が戻ってくるらしい12~13日の週末に初上陸&連泊しようと決め、7日、じゃらんなどを物色したが、与那国島には割引対象がないと分かった。  JAL予約サイトに入ったものの、やはり高い。ピーチのセールなら成田にも関空にもペアで飛べる金額で、買う気にならない。  ふと「ほかにも運賃がございます」という表記に気づいた。  クリックすると、忘却の彼方にあった特典が出てきた。離島割引(県予算)である。往復1万6800円が1万400円になる。  部屋の引き出しを捜索したら、搭乗に必要な「沖縄県離島住民割引運賃カード」が見つかった。  しかし、顔写真が若い。嫌な予感がする。案の定、2019年に失効していた。  急ぎ市役所の市民課に電話を入れると、「免許証サイズの顔写真を持ってきてもらえれば、その場で発行できるさ~」  今春、国際免許証取得のために撮った老け顔バージョンの写真のセットが、同じ引き出しにあった。バッチグ~(死語)  🌴第3章「マラソン、米軍、Dr.コトー」  9日、市役所でカードを更新し、準備万端。高評価の民宿「さきはら荘」を12日から予約しようとした。  ところが、電話に出た女将は「満室です~。どこも空きはないと思いますよ。土曜日(12日)にマラソンがあるんで」。え?  ググると「第28回 日本最西端与那国島一周マラソン大会」と出た。3年ぶりの開催、150人が参加したと後で知った。  心に決めた旅を諦めるのは簡単ではないが、ド暇な近隣住民だけにリスケは簡単だ。翌週の天気予報を確かめて、マラソン明けの13日、再び電話を入れた。  ところが、全く想定外の「しばらく満室です~」。えええ?  与那国駐屯地で「日米共同統合演習」が始まり、その間、警備の警察官や報道陣、反対派が来島して混むという。  演習のことは一応、知っていた。この台湾至近の駐屯地を「米軍が」「初めて」訓練に使うというのが、ミソである。情勢は、ここまで悪化している。  さらに間が悪いことに、12月公開の映画「Dr.コトー診療所」の試写会も重なっていると女将は言った。  唯一の大型ホテルがなぜか休業したままで、旅行予約サイトに登録しているのも数軒らしい。アナログな十数軒にしらみつぶしに聞いたところ、やはり満室だった。  辛うじて滑り込めたのは、ゲストハウスの5bedドミトリー(17日)、恐ろしく昭和なホテル(18日)。  そのホテルのお父さんが「夕食のお店を予約しておいたほうがいい」と教えてくれた。中心部でも飲食店は数軒。売店の弁当類も夜には売り切れるという。  周辺離島で素泊まりを強いられる場合の飲食の難しさ、弁当類の悲惨さは、西表島で確認済みだ。早速、高評価の居酒屋を2夜分まとめて押さえた。  🌴第4章「Day1:逃した魚」  17日午前10時40分、与那国空港に着くと、いきなり報道陣が集結していた。  車で迎えに来てくれたゲストハウスの旦那さんは、迷惑そうな表情で「自衛隊機が飛んで来るんですよ」。にしても、カメラの数が多すぎないか?(謎は後で解けた)  ゲストハウスでスクーターを借り、島を反時計回りで一周することにした。  山がちで起伏が多く、「なんもねー感」が濃厚で、たまに牛や馬がいるところは、石垣島北部(裏石垣)に似ている。  「最果て感」はもちろんのこと、断崖絶壁が目立つため「火サス感」までミックスされるところが、与那国島の特徴だろうか。  西部の集落・久部良まで来ると、信号交差点にカメラマンと野次馬が数人ずつスタンバイしていた。この盛り上がりは何?  その交差点を曲がって数分、肝心の駐屯地正門に行ってみたが、こちらは人けがない。事前に「人払い」があったのだろうか。  スクーターを止めると、さすがに守衛所から迷彩服が1人駆け寄ってきた。おめめクリクリの童顔、20代と思しき隊員♂だ。  「写真撮ってもいいすか?」  「門扉だけなら。報道の方ですか?」  白T&短パン&サングラス&スクーターで乗り付け、ポッケからスマホを取り出した輩が「報道の方」に見えたはずもない。彼なりの牽制球だろう。  「陰ながら応援している石垣市民です」とお世辞を言ったら、ちょっとした雑談になった。配属2年になるという。歓迎一色とは言い難い究極の離島に2年かあ。  ゲストハウスに戻ると、川崎市から来たフリー記者♀に出会った。取材内容を聞き、この日の写真を見せてもらい、謎が解けた。  曰く、輸送機で与那国空港に運ばれてきた陸自の装甲車(16式機動戦闘車)1台が駐屯地まで公道を6km走ったという。  空港から装甲車が出てくるのを午後3時まで待ち続け、バイクで追いかけ、正面から撮るため追い越そうとしたら、警察官に止められた——と、お怒りだった。  現場発の通信社の記事によると、砲塔付き車両が沖縄県の公道を走るのは「戦後初」。その画(え)のインパクトは絶大で、そりゃあ騒ぎになるわけだ。  で、演習の詳しい予定など知る由もなかったヘタレ石垣市民は、そんな歴史的な日に来島しておいて、そんな歴史的な画を見られなかった。逃した魚は大きかった。  いや、しかし、それを見ていたら、旅は迷彩色に染まってしまったに違いない。  🌴第5章「Day2:別世界」  翌18日は、まあまあ晴れ。最低23.4℃、最高27.5℃。普通に蒸し暑い。  近所の恐ろしく昭和な「ホテル入船」に荷物を預けた後、歩き始めた。そう、こっちがメインイベントだったのだ。  中心部を見下ろす天然の展望台(というか崖)の「ティンダバナ」、しま山百選の第100番(!)宇良部岳(標高231m)に登り、東端の灯台を経て戻る島半周コースである。  例の装甲車は同日戻るので、駐屯地→空港は連日の騒ぎだろうが、それ以外は別世界(というか普段通り?)の閑散ぶりだった。  初めのティンダバナで報道カメラマン1人に出会ったものの、基本的に「ハイカー」はゼロ。普通はバイクか車で周るのだろう。  ジャングル山、サトウキビ畑、猫、牛、馬、蝶、サンゴ礁の美ら海、久しぶりの強力な陽光、波と風の音。  八重山オールスターキャストを堪能しつつ、ヒーヒー歩いた。     のほほんとした「八重山な風景」が目の前に当たり前のようにあった一方、「防衛の物理的最前線」としての与那国島も、普段は見えにくいものの、厳然としてあるのだろう。  一見すると(演習時を除く)、そんな最前線には見えないんだけどな。  一見して分かるようになったら終わりか。  🌴第6章「そして我が身」  石垣島でも来春、陸自駐屯地がオープンする。500~600人のミサイル部隊がやって来るから、雰囲気は少し変わるかもしれない。  台湾有事で八重山諸島に即ミサイルが飛んでくるとは思わない。でも、民間船(機)が平常運航を続けられるとも思わない。  「まず食べ物に困るよな......」というのが、直感の有事シナリオ。なんせ、台風が来ただけでスーパーの棚が空になる離島である。  2013年に今の自宅を買った時、台風と津波のリスクは考慮に入れた。  「安全保障リスク」が湧いて出るとは、夢にも思わなかった。(了)