活動データ
タイム
06:35
距離
6.9km
のぼり
850m
くだり
849m
活動詳細
すべて見る最近上越国境の山にハマっているのですが、その道中、関越自動車道から西に望む巨岩が目に付いて仕方がありませんでした。岩の名前は、獅子岩。そしてその背後に聳えるのは子持山。先日ついに登ってみたら、期待以上に素晴らしい山でしたので、コッソリその魅力をお伝えしちゃいます。 【子持山 地理学上の魅力】 群馬県は上州三山をはじめ、関東最高峰である日光白根、日本三大岩場を抱える谷川岳、今なお噴煙を上げる浅間山など、名山がひしめいています。日本百名山11座を擁し、その数は全国3位と、関東最強の山岳県です。山の列強に囲まれている中、きらりと存在感を見せるのが子持山。1296mと標高は里山+αのクラスですが、屹立する獅子岩は圧巻で、この山のシンボルとなっています。タイトルはぐんま百名山だけですが、何気に一等三角点であったり、前述の獅子岩の存在もあって、群馬県においてはなかなか目立つ存在ではないでしょうか。 シンボル獅子岩は、地質学上は”岩頸(がんけい)“と言いまして、昔の火山の火口に至るマグマの通り道になります。マグマが火道で冷え固まったものが、周りと比べて侵食に強いため風化に耐えた姿ですね。代表的なものだと、縫道石山(下北半島)や筆石(伊豆大島)になります。ただ、獅子岩だけが目立ちますが、子持山の特筆すべきは獅子岩を中心に火山の内部構造が明確に観察できる点だそうです。成層火山としての規模はさほどですが、ここまで綺麗に火山の内部構造が見れる山はなかなかないそうですよ。実際獅子岩の上から周囲を見渡すと、あちこちに岩壁が望めることでしょう。護摩壇や屏風岩と、獅子岩同様名前が付いているこれら特徴的な岩壁は、岩脈といってマグマが地質の割れ目に貫入し冷え固まったもの。岩頸がマグマのメインストリートならば、岩脈は路地と言ったところでしょうか。子持山の面白い所は、登山道中に岩脈の上を歩き、最後岩脈が収斂する岩頸たる獅子岩に登り立つことができる点です。まさに身をもって火山の内部構造を堪能できる唯一無二の秀峰ではないかと思います。クライミングルートとしても獅子岩は人気で、もしクライミングで登ればマグマの動きをそのまま体感できるので、そういう意味でも貴重な山かと思います。 火山の内部構造もさることながら、子持山は上越新幹線建設上最大の障壁として、JR東日本に辛酸を舐めさせています。詳しくは「中山トンネル」で検索すると詳しいですが、子持山と西の小野子山の間に掘削された中山トンネルは、異常出水を端として計画変更を余儀なくされ、トンネル内の速度制限は160km/h、工費は1mあたり839万円(青函トンネルは770万円、大清水トンネルは220万円)と上越新幹線工事の負の遺産となってしまいました。 また、山頂付近から東を眺めると、赤城山の扇状地や片品川の河岸段丘、それを跨ぐ土木学会田中賞受賞の片品川橋、さらには日本に4本しかない超高電圧(1,000万V)の送電線である東京電力東群馬幹線が一望でき、まさに地理の勉強には打ってつけの素晴らしい山でした。 (参考) しぶかわお宝調査団「子持山」 http://newshibukawa.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-3219.html しぶかわお宝調査団「子持山の生い立ち」 http://newshibukawa.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-499d.html Treasure Reports「第二編 上越新幹線(大宮-新潟)第五章 中山トンネル」 http://technotreasure.info/Cool1/page024.html 【子持山 歴史上の魅力】 子持山を語るにおいて、子持神社は欠かせません。登山道に向かう際も子持神社の大きな一の鳥居を潜りますが、子持神社はヤマトタケルが蝦夷征伐の際に開いたとされるほど由緒ある神社。祭神は安産の神ともされる木花咲耶姫で、子持山という山名にも納得(子持山という山名自体は、山容を子どもを抱く姿にみたてて「子持山」と呼ぶようになったとされているそうです)。5月1日は神楽を舞う例大祭が開催され、その前夜に、登山口の窟屋で一夜を過ごす神事なんかもあるそうです。 ヤマトタケルが開いたほどの古刹なので、万葉集にも詠まれています。「子持山若楓の紅葉まで 寝もと吾は思ふ汝はあどか思ふ」(大意:子持山の春の若いカエデが秋になって紅葉するまでずっとあなたを抱いていたい。あなたはどうか。)素朴かつストレートな恋文ですが、これが子宝授与をご利益とする子持山で詠まれたというのもなかなか興味深いですね。 (参考) 登山口ネット!「子持神社”幻の伝統神事”「御籠り」に飛入り参加してみた」 https://tozanguchi.net/komochijinjya_okomori/ 玄松子の記憶「子持神社」https://genbu.net/data/kouzuke/komoti_title.htm 【ルート概要】 ◇登山口~展望岩◇ 登山口から何カ所に分かれて駐車場が点在するので、停めあぐねることはないと思います。9時過ぎに着きましたがまだまだ余裕がありました。子持神社の奥宮までは車道、この手前に簡易トイレもあります。登山口から屏風岩まで木製の階段を登りますが、めちゃくちゃ滑ります。屏風岩から少し沢の中を登りますが、少々道が分かりづらいです。沢を詰めたところに分岐。このまま沢を詰めるルートもありますが、退屈そうなので尾根ルートへ。取り付きがロープ付のトラバースや胸を突く急坂で苦労しますが、登りきると屏風岩の上に出て景色が素晴らしいです。獅子岩を除くとルート中で最も景観の期待できる区間なので、少し苦労しますが是非とも登りたいところ。ただ、獅子岩まで断続的に岩脈の上を歩くことになるので、地理学上は貴重な経験になりますが、両側そこそこの崖なので要注意です。植生があるので高度感はありませんが、その分油断も招くので気を付けたいところ。地形図に崖マークはないですが、中には落ちたら助からないだろう標高差の崖もありました。過去には滑落事故もあったようなので、注意が必要です。 獅子岩には西側から詰めるルートもYAMAPにはありましたが、細い赤線であった通り実際行ってみるとかなり頼りげない道。展望岩経由の方が景色も良いですし無難かと思います。 ◇展望岩~獅子岩◇ 分岐から一気に高度を詰めていきます。クライマーがロープ5ピッチで対峙する獅子岩を巻いていくわけですから、巻き道といえどかなりの急坂。獅子岩手前で再度道が分かれますが、直登ルートを選択。こちらも踏み跡は明瞭ですが、とても急な道になります。登りきると主稜線とぶつかり、程なく獅子岩の直下に出ます。ここから獅子岩のトップに出るのがかなり強烈で、まず10m以上のぶら下がり型鉄梯子が控えます。そこからトップに出るには、さらに垂直な壁を、つま先しか入らないステップと鎖を頼りに登る必要があるので、なかなかアスレチックです。獅子岩はさすがの眺望で、群馬中の山が見渡せますが、万が一足を滑らせたら絶命必死なので気を付けたいところ。柵は一切ありませんが、そんなに広くもないので細心の注意が必要です。 ◇獅子岩~子持山◇ 獅子岩から一度標高を下げますが、巻き道合流直前にちょっとした岩場があります。YAMAPにも複数注意を促す投稿があり、確かに手を使って降りる必要はありますが、獅子岩に登れていれば問題ない難易度です。そこから浅間の分岐を過ぎるくらいまでは森の道なので特段危険個所はありません。子持山直下で再び木の根を掴んだり、ロープがぶら下がるちょい難易度高めの坂があって登り応えがあります。子持山の山頂は赤城方面が刈り払いされており、そこそこ眺望が良いです。山頂自体は20名くらいいると窮屈に感じてしまうくらいの広さでした。 ◇子持山~浅間~登山口◇ 分岐までは往路と同じ。分岐からオオダルミまでは一気に標高を落とします。森の中なので高度感はありませんが、ロープがあったりするくらいは急です。オオダルミからは細かいアップダウンが浅間まで続きますが難所はありません。浅間から先も同様ですが、道中特徴的な穴をあけた岩がいくつかあって面白かったです。 ◇下山後◇ 金島温泉富貴の湯:源泉かけ流しのカルシウム・ナトリウムー塩化物温泉。源泉かけ流しかつカルシウムという比較的珍しい泉質なのに400円と格安。地元の人で賑わうタイプの小さな温泉ですが、とても良かったです。コロナ対策のため入場制限がされていますが、10人以上は入れているので回転は比較的良かったです。 ポポラーレ:群馬といえばパスタ。オシャレな雰囲気&豊富で美味しいパスタメニュー、それでいてリーズナブルな価格。こちらも素晴らしかったです。 地理学上の面白さも、悠久の歴史も併せ持つ群馬の秀峰でした。群馬の真ん中に聳えるため群馬中の山が望める好展望、それでいて静かな紅葉が楽しめる素晴らしい山であります。東京から2時間のアクセスでこんなに満足度が高いのはなかなか穴場ではないでしょうか。冬は冬で氷柱が岩窟に発達するらしく、春夏秋冬の楽しみ方がある山だなと思います。気になる方はぜひお運びください!
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