シーズンラスト、最高の伊藤新道

2022.10.14(金) 3 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
4 時間 2
休憩時間
37
距離
10.4 km
のぼり / くだり
402 / 287 m
1 14
47
4
8
6
DAY 2
合計時間
10 時間 6
休憩時間
1 時間 12
距離
11.2 km
のぼり / くだり
1436 / 309 m
5
43
6
14
35
1 11
30
43
3
20
55
DAY 3
合計時間
9 時間 53
休憩時間
1 時間 50
距離
17.8 km
のぼり / くだり
670 / 2116 m

活動詳細

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三俣山荘の小屋閉め10月15日に合わせて、伊藤新道を歩いてきた。今回は本郷博毅ガイドとのコラボ企画。ガイド2名にお客様7名と、ツアー並みの人数ながら、グッドコンディションに恵まれて、湯俣晴嵐荘から三俣山荘まで9時間ほどと、スムーズに踏破できた。 第一に続き第二、第三の吊り橋も架かって、増水時の遡行にも安心感が増した。尾根の踏み跡も今後ますますしっかりしていくだろう。最初の難所、ガンダム岩にはホッチキス(鉄筋の足場)が設置されて、岩を乗り越えることもできるようになった。 だが激しい流れを渡渉する箇所も多く、ルートファインディング力が問われる。がれ場の登り下り、スラブのへつりなど、登山と沢歩きの総合力が求められる。 水量が減るこの10月中旬が伊藤新道の最適期。湯俣川は東に開けているので、日が差し込めば気温も上がって寒さを感じない。 <第一吊り橋> 伊藤新道の復興プロジェクトで最初に架かった第一吊り橋は、晴嵐荘から1時間ほど歩いた箇所にある。第一吊り橋までは渡渉はなく右岸の踏み跡を辿る。第一吊り橋から先は湯俣川がいったん狭くなり落差のある滝が幾つか立ちはだかる。第一吊り橋で左岸に渡り折り重なった巨岩を慎重に越えると通称「ガンダム岩」が現れる。 <ガンダム岩> 大きな岩の上にガンダムの頭部のような岩が載っている。岩の下は滝壺の側で一見すると水に入っての突破は困難なように見える。初見なら、下の巨岩の右脇の砂礫混じりの見るからに不安定な斜面を直登して高巻く誘惑に駆られるだろう。昨年はここの高巻きで著名なクライマーが墜死した。 たまたま今回、そのクライマーの供養にいらしていた方にガンダム岩でお目にかかかった。事故はちょうど一年前の10月中旬だったそうで、一緒に手を合わせて、S氏のご冥福を祈った。 水量が多くなければ、ガンダム岩は岩の下に潜り込んで、成人男性なら腰程度の水深を3mほどへつって、スベスベした岩に上がって抜ける。この10月中旬、この岩には鉄筋がホッチキス状に打たれた梯子が設置された。フィックスロープも設置されて、今後は水流を突破するのが躊躇われる時の助けになるだろう。 <第二吊り橋> 旧第三吊り橋ポイントに設置された第二吊り橋は、かなりの高度感がある。右岸側から岸壁に撃たれた鉄筋を足場に吊り橋に登る。床板は幅30cmほどしかない。左右に張られたブルーのワイヤーを掴みながら慎重に渡る。このワイヤーにハーネスからセルフビレイを取って渡るのがいいだろう。左岸に辿り着くとワイヤーがフィックスされているので、それを頼りに河原に降り立つ。 吊り橋の右岸には「雨天時、勇気を持って引き返せ」と色褪せてはいるが、赤ペンキで記されている。かつてから難所だったことがわかる。水量が多くなければ、このペンキの岩をそのまま上流へへつって抜けることもできる。 <渡渉ポイント> 渡渉ポイントの判断は難しくはない。水流の弧の始まりから対岸の弧の内側へ渡ることが多い。渡渉せずへつりで抜ける箇所は、初見では見落とす可能性もある。 水量が少なくても湯俣川の流れは早い。渡渉の姿勢、足の運びを間違えると流されてしまう。体重の軽い人、沢初心者がいる場合は、積極的にロープを出そう。 <装備> 靴はラバーソールでもフェルト底でもどちらでも良いと思う。ラバーなら沢から上がってもそのまま歩いていける。ゴーロ歩きも多いので、ラバーの方が疲れないだろう。 フローティングロープ、8mm径ほどの補助ロープ20mは用意したい。 <第三吊り橋から上流> 旧第五吊り橋ポイント付近に新たに架けられた第三吊り橋は、他の吊り橋に比べてより強固な作りになっていて渡りやすい。橋を右岸から左岸へ渡るとルートは沢を離れて高巻きし「茶屋」を経て赤沢へ続いている。 水量が少なければ本来の伊藤新道のルートを辿らず、湯俣川をそのまま赤沢の出合まで遡行することも可能。今回はこちらを選んだ。数回の渡渉があるがとくに困難な箇所はない。赤沢の出合手前で左岸を高巻きして赤沢に降り立つ。ここで沢装備を解除する。 <硫黄沢出合> 赤沢の出合から目の前のガレた斜面を登って、左眼下に湯俣川を見ながらしばらく歩くと硫黄沢の出合に着く。白く輝く岩肌をキラキラと水が流れ落ちる。地球ではないような風景だ。 <赤沢出合から尾根へ> 出合からしばらく赤沢を登ると左岸斜面への矢印がある。本来の伊藤新道の下降ルートの入り口だ。それをやり過ごしてさらに行くと右岸に残置された緑色のホースとマーキングがある。尾根への取り付きだ。 <急登と絶景> 取り付きからは急登が続く。高度を上げていくと時々視界が開ける箇所がある。湯俣川硫黄沢を眼下に硫黄尾根、槍ヶ岳が大迫力で視界に飛び込んでくる。300mほど登ったところにある「展望台」からの眺望はとくに素晴らしく、北鎌尾根と槍ヶ岳の眺望に新鮮な驚きを感じるだろう。 今回は「展望台」から上の高度で紅葉が素晴らしかった。三俣山荘も近づいて、鷲羽岳の斜面のトラバースに入り、振り返ると弥助沢とモミ沢の紅葉と槍ヶ岳のコントラストに息を呑む。 湯俣晴嵐荘を6時に出発して、三俣山荘到着15時。今シーズン最後にして最高の伊藤新道だった。

動画

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