活動データ
タイム
20:44
距離
36.2km
のぼり
3724m
くだり
3728m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る1年越しの計画、北鎌尾根の挑戦にまたとないチャンスが訪れました。 天候不順に間隙をつく、奇跡的な晴れ間☀️と重なる休み。 前日の夜から翌日まで雨は降らず、翌日夜勤まで時間に余裕がある。 9月以降の冷え込みに、これ以上遅い時期の稜線でビバークできる自信がない。 北鎌いくなら今しかない❗️ 逃せばまた1年先送りになりそうだ。 初見ソロでは曇り☁️もNG、 代替案を視野に入れ、数日前から雲の動きとにらめっこをする。 午前の晴れ☀️を確信。 意を決して今年の本命、北鎌尾根⛰挑戦に踏み切った。 間違いなく登山人生で一番の冒険だ。 さほど多くない過去の登山経歴で、トップに君臨していた北穂〜西穂縦走の難易度を、ぶっちぎりで更新しました。 凶悪で峻険な世界に聳え立つ槍ヶ岳⛰ その神々しい姿を見て、初めて心の底から「槍様」と崇めました。 --------------------------------- 以下文章は個人的に残したい思い出のメモです。 大変長文になりますので、苦手な方はスルーしてください🙇♂️ 興味ある方はお付き合いいただけると嬉しいです🙏 --------------------------------- ※昨年(21年)の直下地震の影響で、北鎌尾根の難易度が上がったという話を聞きましたが、私は地震前の地形を知らないので何が変わったかわかりません。 ここは雨の後でも、日々地形が変わる大変危険な場所です。ご参考にされる方は、その辺りも踏まえてご注意ください ※2022.09.07 追記 ちんねんさんからいただいた写真を追加 ~~ ▼プロローグ ▼~~ きっかけは21年のnekojigenさんの登山記録。 それまで悪いイメージでしか見聞きしてなかった北鎌尾根の印象がかわった。 技術よりも、過酷な環境が印象に残る国内屈指のクラシックルート。 必要な装備や印象は登山者によって様々。 nekojigenさんの姿とレポに感化され、ロープテクニックがなくても踏破できることを知ってから挑戦心が沸き起こった。 北鎌攻略にあたり、ご本人からいただいたアドバイスがとてもしっくりとくる。 一に天候、二に体力、三にやる気❗️ なるほど、わかりやすいw🤣 必ずどこかで登攀を要求されることになるが、特別な技術よりここで重要なのはルートファインディング。 間違った踏跡を頼りに突き進むと進退窮まり、簡単に抜けられなくなってしまう場所だ。 現地でわかったことだけど、もろい岩盤に岩肌にのっかるザレ斜面。 一つのワンオペミスが死に直結するこの地で、浮石岩帯を安定してひたすら歩きとおせる技術(注意力?)が必要となる。 まさに体力勝負。 ボルダリング3級とか5級が必要とかどこかでみたけど、正直程度がわからない。 これもルーファイ次第なんだろう。 ボルダリング未経験なので、 剱岳別山尾根・西穂高縦走で、極力鎖を使わないフリークライミングとクライムダウンをして、身体で岩場の感覚を覚える。 昨年と今年に登った、剱岳の往復ビンタとロングは、この日のためのサブミッションも兼ねていた。 目下、北鎌尾根最大の問題は、エスケープルートが存在しないこと。 もし、稜線で手に負えなくなった場合、それまで歩いてきた道を全て引き返さなければならない。 引き返しも北鎌コルからの下りは危険な道のりとなるようだ。その覚悟をもって臨んだ。 〜~ ▼新穂高温泉出発▼ ~〜 予定より20分遅れてスタート🚶♂️ 遅くても4時には水俣乗越を下り始めたい。 まだ病み上がりでブランクあるので、後半戦も考え極力省エネで進む。 雲が晴れるのは24時以降とみていたが、スタート直後からすぐに晴れ渡りの星空🌌に変わり、テンションが上がる。 4時間50分で槍ヶ岳山荘🏠に到着。疲労を溜めないように登ったペースとしては悪くないような気がする。 千丈分岐点少し手前から冷えた空気の層に変わり、山荘周辺は寒かった。 東鎌尾根に突入。 高度感満載の痩せ尾根から眺める景色は素晴らしい!と心の目で見る。 下り始めてすぐに暖かい空気にかわり、ヒュッテ大槍をすぎてから低木が増えていった。 水俣乗越に到着。 ~~ ▼水俣乗越から▼ ~~ 計画にあたり、水俣乗越からの天上沢下りに最も恐怖を感じていた。 あの鎌尾根から底が見えない暗闇の急斜面を降りると思うだけでぞっとする。 現場を見て恐怖心煽られると思ったけど、実際来てみると案外そうでもなかった。 下り始めて数十メートル、右手に沢溝下りを避ける脇道が出てくるので、その踏跡を利用すると楽に下れた。 しばらく低木帯が続き、抜けると急斜面のザレ場が出てくる。 ここは落石無しで下るのはちょっと難しい。 差し支えなく降りる方法ないかなと手間取っていると、後ろからヘッドライト🔦の光が。 まさかこんな時間にここで人👲と合うとは。 というか、2年前の水晶ピストンで1155さんと会って以来、人に追いつかれたのは初めて。 ラクが多いので、距離を空けずに行けるところまでご一緒しませんか?と声をかけていただいた。 聞くと、この人も同じく1dayで初めての北鎌尾根とのこと。 こんな偶然ってあるのか?🤣 強者との出会いに心が躍り、2つ返事でOK。即席バディを結成する。 ソロ登山でこのアドバンテージは大きい。大変心強い。 急斜面ザレ場が終わると、沢特有のガレ場が始まる。 リードをしていただき、俺はトレースをする。 トレランスタイル👟の方だが、ペースを合わせることはできそうだ。 ルーファイが素晴らしく、ストレスなしにガレ場をすいすい進み、あっという間に北鎌沢出会についた。 ここでテン泊されてた方が3名ほど、この人達いなかったら気づかずに完全に通り過ぎてたw ~~ ▼北鎌沢▼ ~~ 北鎌沢に登る前に休憩、ここでお互いのことで会話する。 (稜線上がってから自己紹介などもしてるがここで紹介) 通称ちんねんさん👲(facebookされてます)。名古屋から来られたとのこと。 8月29日時点で年齢54歳。 恐れ入った。沢を下るときの身体のキレは年齢を凌駕している動きだった。 以前はトレランをしていたが、今は冒険が楽しく、バリエーションもよくいかれているらしい。 そして、本名の名前が俺と同じ読みだった(笑) 運命感じました🤣 北鎌沢という名の三途の川を登り始める。 基本的には、右へ右へ行くようにと聞いていたが、 分岐については左俣に入らないようにするだけで十分だと思う。 それ以外でルートを間違える人がいれば、逆にこの先が心配になる。 沢水が枯れるのを警戒して早めに水補給をしたけど、水量豊富な沢登りで、ある程度登ってから補給してもよかった。 沢を登るに従い、岩場がもろくなっていく。 後に、山岳ガイドの方と稜線で出会い、聞く話によると、前日の雨で新しい落石があり、沢の地形が変わったようだ(全然気が付かなかった)。 一見安定しているように見える大岩も、体重かけると簡単にスライドする。 雨や増水する日は非常に危険な場所である。 ここでちんねん👲さんと「クライマーズホイホイはまだか」と同じネタで何度か話題になる😅 右俣は基本的に右を選んでいくが、クライマーズホイホイだけは左にいかないと危ないらしい。 警戒して進みます。 その現場に到着。 一度写真みてからくれば、すぐにわかる景色だった。 あ、これだこれだ❗️と観光地にきたようなノリw 確かに右側に引き込まれそう❓な踏跡ある。 でも、これ間違えるかな...?💦 Y字左側の方が道広いし、その先の方向にコルのくぼみも見える。 2人の間で、警戒してたけどちょっと拍子抜け感。 でも命に関わることなので、とても大事なことです。 有名なランドマークなので2人で記念撮影📸 クライマーズほいほいの先が気になりつつ、左の沢を登り、コル直下のラストの分岐が出てきた。 左→見るからに面倒臭そうな急斜面のザレ場 右→細い沢状のガレた道 結論で言うと左が最短だったけど、見た目で右へ進む。 コルに近づくにつれ、斜度がヤバくなってくる。ガレ道がなくなり、植物で生い茂る土手を滑り落ちないよう、必死で草を掴みながら力技で進むことに。 草が抜けて滑り出したら100mは止まらない💧 なんとか到着した場所は、コルから少し離れたP7寄りの小高い崖の上だった。 〜~ 北鎌のコル ~〜 対面の大天井の稜線がダイナミックで気持ちいい。 話で聞いてたけど、本当にブヨ🪰がウヨウヨ寄ってくる。 試しに持ってきたハッカスプレーを体に撒いたら効果てきめんだった。 〜~ P8、P9 ~〜 ここから本番だ。 コル脇道の踏跡から進むが、ものの数十mで足場が怪しくなる。 独標まで踏跡明瞭と聞いてただけに2人とも疑問を抱き、開始早々に足を止める。 ち👲「本当にここで合ってる?笑」 俺🕺「たぶんw」 他に進む道ないのでゴリ押しで進む。 P8、P9は正直どこだった❓というくらい、いつの間にか過ぎていた感覚だ。 北鎌尾根は岩場のイメージ強いが、ここまでは樹林帯が目立つ。 ち👲「眠い」 鬱蒼とした雰囲気(退屈❓)でどうやら眠くなったご様子🤣 一般登山道に比べれば危ないし、既にルーファイ始まってるんだけどね。 天狗の腰掛けで腰掛けてみたかったけど、これもサクッと通り過ぎ、どれがそうだったか分からずじまいで終わった💧 ルーファイするに当たり、千丈沢側に巻くとか、ここだけは天上沢側に巻くとか、そういう情報はよく見かけた。 現地に来て思ったこと、それありきで進むのではなく、ここは自分で考えて進む方がいいと。 こまめに写真撮って情報残そうと思ったけど、ペースを崩したくない気持ちが勝る。 リードをお願いしてるが、自分でも考えて歩いていく。 ちんねん👲さんも、ルートの確認で何度も聞いてきた。 一緒に考えるから出せる決断も早い。何より、わかってても一度相談入れることで得られる安心感が全然違う。 そうやってルーファイしながら進むのがとても楽しい。 独標の全容が現れた⛰ 〜~ 独標 ⛰~〜 俺は核心という言葉を簡単に使うのはあまり好きではない。 見る人がそれに惑わされて、問題の本質が見えにくくなってしまうためである。 そう言う意味でここは核心だ、とは言い難いが、独標は個人的にこの先を占う試練の場となった。 (コース取りと技量で個人差でます) 独標登り始め早々、トラバース踏跡が出てくる。 向かう方向が基部より下に向かうように見えたので偽トレースと判断し、無視して進む。 少し進むと、有名なコの字岩壁に辿り着いた。 ここも観光名所で、ここだここだと、話が少し盛り上がる。 確かに右手は垂直の崖、安地はザレてて危ないがあっさり通過。 残置ロープは触れる程度しか使わなかったけど、安心感があって有難い。 逆コの字を見て、思ったより普通だったね💧と意見が一致した。 コの字通過直後の天狗沢方向・独標基部で行き詰まる。 ちんねん👲さん、先の不明瞭なトラバースを見て、独標岩壁を見上げながらここから行けそう、と呟く。 作戦会議(相談)が始まった。 俺🕺「多くの人はこのままトラバースで進み、稜線に上がった後、独標に行きたい人は逆方向で登るようです」 と言ってみたが、ちんねん👲さんから迷いが消えなかった。 その様子を見て、独標に登り始める前の会話を思い出す。 ち👲「ここはどう進もうか」 俺🕺「クライミングに自信ある人は直登するようです。その他の人は右からトラバースします」 それを聞いてトラバースに舵をきった。 俺の勝手な思い込みだが、もしかして独標クライミングをしたいのではないだろうか❓ 冒険が楽しくて、今はトレランしていないと言ってたし。 俺がいるから気を遣ってトラバースしたとしたら、、 今度は逆に背中を押してあげなければ。 俺🕺「この辺りから独標へ登る人もいるようです。どこかのレポで見たことあります」 ち👲「そうだよね。行けるよね」 独標基部から岩壁の登攀が決定する。 クライミング未経験の俺に、自ら試練を課した。 手に負えないなら、ここで別れてトラバースを進むべきだが、 困ったことに岩壁を目でトレースしていくと、登れそうと思ってしまう。 それに、これまでのルーファイとスピーディな判断を見てきて、ちんねん👲さんの選択に全幅の信頼を置いていた。 例え行き詰まっても、死ななければ後悔はない。 覚悟を決める時のようだ。 登山人生で一番の冒険が始まった。 ラクに巻き込まれないよう、距離が空いてから登り始める。 俺が持っている武器は3点支持と体幹力のみ。 最近登った剱岳の感覚を思い出す。 ただし、ここは西穂、剱岳と決定的に違う所がある。 ・当然だけど、鎖や人工的な足場がない ・地質が脆い ・安地斜面はザレている 体重を預けられそうな大きな岩や、安定してるように見えるホールドでも、一切信用できない。 大岩もびっくりするくらいズルズルと動くし、周辺の壁ごとホールドが簡単に剥がれる場所もある。 一つ一つの強度を確認しながら垂直に近い岩場を登っていく。 手がかり少ない岩の角で、フリクションを効かせて身体を支えるシーンもあった。 一点でも滑ったら、谷底さっ逆さまだ。 怖がったらダメだ。重心がずれて危ない。 必死で考える。どういう力の入れ方をすれば滑落せずに済むか。 一つ一つクリアに集中、徐々に斜度が緩やかになる。 そしてピークに辿り着いた。 開けた景色に、現る大槍⛰ 切れ尾根と繋がる槍ヶ岳の神々しすぎる姿に目を奪われた。 この達成感、槍ヶ岳は独標から見る景色が一番かっこいい❗️これは疑いようがない決定事項だ 最高の瞬間だった。 ~~ P11~P15、北鎌平 ~~ ここから先はほぼ尾根通しで進む。 切れ尾根の高度感と岩壁のクライムダウン、どのシーンも今までの山行で一番危険なんだけど、 独標の登攀を経験した今、こなせないものはなくなっていた。 ちんねんさんの素晴らしいルーファイで、想定以上にかなり早いペースで槍ヶ岳手前まできた。 終わりが見えてきてだんだん寂しくなってきた。 すぐに頂上に登るのはもったいない。 P14、15、北鎌平、何度か休憩をとり、ゆったりと時間をかける。 蒼天のビューティフルMondayを全力で味わった。 ~~ 槍ヶ岳⛰登頂 ~~ 北鎌平を後にし、ラスボスに向かう。 ここもかなり厳しい岩壁だが、ここまでたどり着ける力があれば、ルートさえ間違えなければ進むことができるだろう。 2つ目の有名なチムニーがオーバーハング気味で俺には少し難しかった。 壁に足でフリクションを効かせて身体を固定しながら登っていく。 頭の中で、ベア・グリルスのチムニーシーンを思い出す。 ここを越えれば頂上は目の前だ。 最後に手をかけ、チムニーをクリアしようとした瞬間、フリクションを効かせていた左足がズルリと滑った。 3点支持とれてたので大事に至らなかったが、全身から冷や汗が噴き出し、支えている手が少し震えた。 ぶら下がったまま息を整えすぐに冷静を取り戻し、チムニーをクリア。 ついに槍ヶ岳頂上へたどり着いた。 水俣乗越から休憩含めた8時間の死闘、 擦り傷一つ負わない、初見2人組のパーフェクトゲームが完結した。 頂上にいた5人の登山者がみんな祝福してくれた。 素晴らしい達成感と感動の瞬間。 若い2人組👨🌾が、俺とちんねんさんの武勇伝を聞いてくれた。 俺なら自慢話はめんどくさいと思ってしまうが、今だけは語らせてくれ。 話を聞いてくれた若いお二人に感謝。ありがとう。 ~~ 最後に ~~ 槍ヶ岳山荘で2人でラーメン食べながら、ゆっくり過ごす。 山荘から槍ヶ岳を見ると、うちらの登頂を見届けたかのように、北鎌尾根がガスり始めていた。 ちんねんさんがいなければ、ここまで完璧な山行にはならなかっただろう。 ちんねん👲さんは上高地方面なので、ここでお別れとなった。 上高地から焼岳Pまで自転車で移動するそうだ。 時間があったので、俺🕺は西鎌尾根を通して小池新道から帰ろうと思ったが、今日は槍様の日☀️ 余韻に浸りたかったので、千丈乗越で北鎌に別れを告げ、右俣林道から下山した。 もし、俺が後10分、水俣乗越の到着が遅くなっていたとしたら。 全ての歯車が変わっていただろう。 天候とちんねんさんとの出会い、神がかり的な巡り合わせに心から感謝❗️ 北鎌尾根は危険に勝る素晴らしい世界でした。
もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。