活動データ
タイム
33:02
距離
47.1km
のぼり
4933m
くだり
4102m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る学生時代にサークルで上高地から西穂丸山まで登ったのが19才の時だから、42年になりますか。ようやく、百高山すべてに登頂できました。学生時代のうちに3000m峰21座に登頂し、就職後もかなり登ったのですが子育て優先にして遠ざかっていました。5年前に、足の親指の手術の前に、手術後は山に登れないかもしれないので、久しぶりに登ろうと雨の晩秋の涸沢まで行ったら、また山の魅力に嵌ってしまった。手術後も含め、ヤマップを始めて百高山は60座くらいかな。もともと、目標にはしてなかったけど、たまたまヤマレコで過去レポも合わせてカウントしたら百高山達成まで残りが少しだったため、ここのところは百高山に登ることを優先していました。はるか前の山行の貯金も合わせての百高山なので、大したことないですが、これで百高山の呪縛から解放されて、好きな山に登れそうです。それにしても、100座目の蝙蝠岳はガスガスの瓦礫帯を歩き続け、ガスガスの幻想的な雰囲気の中、月面(行ったことないけど)を歩いているようで、素晴らしかったです。展望は少しでしたが最終目標の山にふさわしい名峰でした。 1日目 タイム07:49 距離6.9km 上り1974m 下り93m カロリー4015kcal 奈良田湖バス停8:05―1344m地点9:48―水場入口10:50―2256 m地点13:20―笹山 南峰15:17―笹山北峰15:32―宿泊地15:49 2日目 タイム09:18 距離12.6km 上り1025m 下り1136m カロリー4777kcal 宿泊地3:41―白河内岳4:41―大籠岳5:23―7:00広河内岳7:13―大門沢下降点7:41―8:45農鳥岳8:57―西農鳥岳9:37―10:24農鳥小屋10:31―三国平12:17―熊の平小屋12:59 3日目 タイム09:55 距離15.9km 上り1430m 下り1268m カロリー5101kcal 熊の平小屋2:59―安倍荒倉岳3:38―4:22竜尾見晴4:28―4:46新蛇抜山4:54―北荒川岳6:12―北荒川岳キャンプ場跡地6:22―雪投沢源頭水場下降点7:03―7:47北俣岳分岐7:53―北俣岳8:08―9:22蝙蝠岳9:31―北俣岳10:47―11:13北俣岳分岐11:21―11:58塩見岳11:58― 塩見岳西峰12:00―塩見小屋12:50 4日目 タイム05:59 距離11.5km 上り499m 下り1600m カロリー2852kcal 塩見小屋5:44―7:24本谷山7:34―8:21三伏山8:29―9:00三伏峠小屋9:06―塩川・鳥倉ルート合流点9:18―ほとけの清水9:50―豊口山のコル10:21―鳥倉林道登山口11:01―鳥倉林道ゲート(駐車場)11:40 今回のミッションは百高山の残り4座に登頂してコンプリートすること。前回、小太郎山から北岳、間ノ岳、農鳥岳から白峰南嶺(しらねなんれい)の百高山を縦走する計画であったが、悪天候のため、小太郎山のみ登頂となった。したがって、今回は、逃した白峰南嶺の3座と、最後になった蝙蝠岳を一度に登る計画にした。 南アルプスはアプローチの便が悪いことが多く、この縦走も前後のアプローチをどうするか、いろいろ考えて、奈良田から笹山にダイレクト尾根を1900m登り、テン泊、その後に北上して残り2座に登頂後、農鳥岳を越えて、おなじみの深沢のオヤジさんに挨拶して熊の平へ。ここから仙塩尾根を南下して、塩見岳手前で蝙蝠岳をピストンして塩見小屋へ。翌日は鳥倉に下山して、1日2本の夏季限定登山バスで松川ICまで行き、高速バスとJRで帰宅する計画とした。逆方向にして奈良田に温泉に入りたかったが、登山バスの時刻の関係で一日目は三伏峠までしか行けず、そうなると蝙蝠岳ピストンしてテン泊装備で熊ノ平まで行くのが厳しくなるので却下した。 食料と飲料以外の装備は以下の通り。総重量9kg 【ラ・スポルティバ】TX4 MID GTX 【グレゴリー】ズール40 M 【モンベル】 EXライト ウインド ジャケット Men's(#1103233)シトロンイエロー 【モンベル】トレラントフライヤージャケット L 【モンベル】サンダーパスパンツ XL-S 【モンベル】トレッキングアンブレラ L 【モンベル】 シンプル ロングスパッツ 【パタゴニア】R1プルオーバーフーディー 青 M 【モンベル】ULサーマラップパーカー L 【モンベル】ULサーマラップパンツ 【ショーワ】【手袋】No282テムレス Lサイズ 1双 【カリマー 】treck carry sacoche TRIWONDER トレイルランニング専用ポール 【ペツル】 E099GA アクティックコア 450ルーメン 【マイルストーン】 MS-B1 アドバンスモデル ヘッドライト SS 【ファイントラック】FAG0311 カミナドーム1 OG:GY 【ファイントラック】 FAG0113 フットプリント カミナドーム1用 GY 【GEERTOP 】テント ペグ 16 cm チタン製 【モンベル】ダウンハガー800 #5 【モンベル】ブリーズドライテック スリーピングバッグカバー ワイド 2レイヤー 100均アルミコートマット 【solarpuff】 ソーラーパフ ウォーム 【EPI】ガス 110パワープラスカートリッジ 【EPI】REVO-3700ストーブ(日本製) S-1028 【エバニュー】チタンマグポット500 RED ECA266R 【SOTO】マイクロトーチ COMPACT(コンパクト) ブラック ST-485BK 【モンベル】ヘルメット ザックのグレゴリーズール40 は重量はあるが、重荷に対する安定感、背負ったときの軽量感。簡単には破れない強さなど、ここ一番には強い味方。大峰山奥駆けでも使用した。 この行程の核心の一つ目は、一日目のダイレクト尾根の登り。テン泊装備で頑張れるのか。二つ目は熊の平から北俣分岐まで登り上げ、コースタイム4時間超の蝙蝠岳の往復をできるのか。その間の行程もアップダウンがあり、2日目以降、不要となったテントを担いでいかねばならない。一人ゆえに自分のペースで行けるものの、行程の不安も、トラブルもすべて自分で対処しなくてはいけない。日が迫って、何度も天気予報をチェックするが、雨模様を避けられない情勢となり、気が滅入ってくる。弱気になって本当に止めようとも考えて、キャンセルの連絡をできるように連絡先などチェックもしたりした。でも、天気はどう変わるかわからないし、少しでも晴れて展望が見られたらいいじゃないか。危険な天気でなれば頑張ってみようと思いなおした。 奈良田へ公共交通機関で行くのだが、京都からウィラーの夜行バスで4時に甲府着。4:35発の広河原行きバスに乗り、広河原から7:00発の奈良田行に乗り換えて8時までに到着の見込み。甲府駅のバス乗り場に着くと、誰も居なかった。小太郎山に行った際には数名はいたのだが、今日は木曜でしかも天気が悪いのは確実なのでポールポジションゲットとなってしまった。今回は行きに2回、帰りに1回、バスを利用するので、それぞれの料金を3袋に分けて用意しておいた。これでスムーズに支払えた。 広河原まで数名のお客を乗せて、6:30頃に着いた。広河原で奈良田行きのバス待っていると青空が見えてきた。このまま、天気予報が良い方向に外れればいいなあ。広河原にいらっしゃる皆さんは大抵、北岳方面に向かわれた。この天気なら皆さん、嬉しいだろうな。 奈良田へのバス待ちしていると、先ほど広河原まで乗ってきたバスが行先を奈良田に替えてやって来た。奈良田へは私一人。見知りになってしまった女性の車掌さんが、VC入りの飴を3個くれた。この飴が、のちほど、ダイレクト尾根での苦しい登りの気分転換になって助かった。 奈良田に向かう道中から、やっぱり雨が降り出した。バスのフロントガラスを眺め、雨はそれほどきつくないなあと思いつつ、先ほどの晴れ間は何だったんだ。北岳を目指していかれた皆さんは大丈夫かな?って思う。 このバスは自由降車可能なので、あらかじめ地図を見せて吊り橋のところで降ろしてくれるようにお願いしておいた。奈良田温泉辺りを過ぎて、吊り橋が見えてきた。左側に広いスペースがあるので、そこで降車して、運転手さん、車掌さんに一礼して見送った。大きな木々が茂っていて、その近くは濡れていないので、そこで雨具上下を着て、ザックカバーを付けて準備完了。山登りを始めるときはワクワクするのだが、通り過ぎた奈良田温泉方面を見ると、人恋しくて、どうせ雨模様が続くので温泉に入ってそのまま帰ろうかなって邪念も出てくる。まあ、せめて吊り橋くらいは渡ろう。渡っていると、工事関係の車の音が聞こえる。仕事だから雨の中でも中止はないですよね、ご苦労様です。 吊り橋を渡って左へ。そのまま突き当たるコンクリートの壁に沿って右に進むと登山口。事前情報通り。ルートは木々に囲まれているため、地面はほとんど濡れてなく、歩きやすくて助かった。最初はそれほど急登でもなく、汗をかきすぎないように少しゆっくり登る。パイプの手すりがあり、それに従って上り詰めると水道管の上部に出る。ここから尾根伝いの登り。雨は強くなったり弱くなったり・・・。そのたびに雨具のフードを被ったり、外したり。湿度が高く、呼吸がきつくなって、汗を拭くために度々立ち止まる。これが1900m続くと思うと、なんか陰気になってくる。誰かと話しながら登れば多少は気が紛れるが、ソロでは回避できない。登ろうとする自分と、弱気になって降りて温泉に入ろうと言う自分との闘い。今なら、奈良田からバスに乗って帰れるぞ。 でも、出直すにしても予定を全部変更しないといけないのは大変だ。雨は強くないし、明日には少しは天気が回復するかもしれない(もちろん、逆もあるのだが)。弱気な自分をなだめて、少しずつ高度を稼ぐ。ムシムシしているので、凍らせてきたソルティライチがうまい。それを褒美にして、また歩を進める。展望のない山道だが、雨風が酷くならないのはありがたい。 水場分岐までやって来た。標高1600m、まだ1600mだ。奈良田は830mだから800mくらい登ってきたのだが、笹山2718mまで1100m登らないといけない。さすが南アルプスだ。こうでなくっちゃ、と弱気の虫を封印する。今回はソルティライチ500mL3本、水550mL2本、夜行バスで飲んだQooの残り200mLを持参している。明日のお昼頃、農鳥小屋で補給するまで、水はこの程度で足りる算段なので、水場での補給はせずに、すこしでも標高を上げることにする。 この稜線はずっと登りとのことだったが、細かな起伏があり、肩といわれる平坦地や少々の下りもある。苔むした木々に腰掛けて呼吸を整えると、その苦しさと同時に、緑の美しさに心洗われる思いがしてくる。標高1900mを越えると、もう弱気の虫は消え去り、地形の変化を楽しみながら登ることができた。相変わらず、汗がいっぱいなので汗拭きタイムを頻繁に取って、呼吸を整える。展望は北方面に少しあるだけで、風も吹かないので暑い。2250mにも肩があり、テン泊できそうなスペースもある。でも、今日は少なくとも笹山には登って、その近くにテン泊して明日の行程を楽にしたい。明日は大門沢下降点まで、目印はあるそうだが、霧で視界が悪いと迷いそうとの情報があり、ここがポイントになりそうだ。農鳥を越えれば早めに熊ノ平に着くはずで、3日目の長い核心の行程の前に2日目は十分休養したいので、1日目はできるだけ先に行きたかった。 2500mを越えるといよいよ笹山は近いはず。あと残りの標高をカウントしながら眼前の高みを目指して登ると樹林帯の中から開けた山頂が現れた。最後はあっけなかったが、今日の目標の笹山南峰だ。1900mを何とか登りきれてほっとした。周囲を見ると近いところに蝙蝠岳の稜線が見えた。明後日に挑むルートは手が届きそうだがその手前はひどく落ち込んで深い沢になってる。北からグルっと回りこまないといけない。幸い、雨は僅かで、今のうちにテン泊適地を探さないと! 南峰のすぐ先にハイマツに覆われた広いスペースがあり、風もあまり吹かずに良さそうであったが、もう少し先に進んでみた。すぐに樹林帯の下降となり、細い道を進むと樹皮が剥がされた木々が見えた。剥がされた部分はまだ、真新しいので、近くに熊さんがいるのだろうか。声を出しながら、足早に歩き去った。登りになり、まもなく北峰に到着した。テン泊できるスペースはあるが、風が強く天気が悪くなると大変そうだ。ヤマレコのyamanekoさんが事前に教えてくれた状況通りだった。少し戻ってみたりしたが、良いスペースは見つからないので白河内岳の方に向かって樹林を下ったところで、自分のテントがなんとか張れそうなスペースをルート沿いに見付けられた。 スペースに倒れ込んでいる枯れ枝を退けてテントを張っていると雨脚が強くなってきた。カミナドームは1年ぶりに実戦で使用するが、地面は枯葉のフカフカな場所なので固定に手間取ったが何とか固定してテントに潜り込んだ。雨はさらに強くなり、21時ごろまで続いた。疲れたので、お湯を沸かしておにぎりとパン、スープパスタで簡単な夕食にしてシュラフに潜り込んだ。夜半まで風が強く、樹林がゴーッて音を立てているが、テントを揺らすことはなく、それなりに眠ることができた。 2日目は2時半過ぎに起きた。幸い、昨日の辛い登りの体へのダメージはなさそうである。心配していた膝も大丈夫だ。簡単に朝ご飯を済ませてテント撤収。雨でしっかり濡れたフライが重い。一式をまとめてゴミ袋に入れてザックにしまいこんだ。3:40にヘッデンで行動開始。くまさんに遭わないように、鈴を鳴らし、ストックを叩き、ホイッスルを吹く。樹林帯を抜けるとハイマツとゴロゴロ岩のルートとなり、視界が良好になる。空は雲が多いがしばらく雨は降らなさそうな様子。いいじゃないか。これは恵まれている。周囲の山々がバッチリで富士山も見える。富士山が見えるとやっぱり嬉しくなるなあ。まだ暗い中、白河内岳に到着。ペースはまあまあ。早朝で汗もかかないので暑くならないうちに距離を稼ぎたい。大籠山へもハイマツとゴロゴロ岩のルートを進む。マークが付けられておりそれに従うが、マークを見失ってもそこそこ行けそうな気がして進むと、見事にトラップに嵌った。前方はハイマツの海。突破しようかと思ったが、その先は急降下している。仕方なく、元に引き返して、マークのある所まで戻ってやり直し。マークやケルンのありがたさを再認識した。 大籠山から広河内岳まで70分くらいの行程。進路は北から西に折れて登る。急登だと覚悟していたが、調子が上がっているのかそれほど苦も無く登ることができた。これで99座目。残すは明日の蝙蝠岳。ここには大門沢下降点から登ってくる方々が来られた。昨日の登山開始から初めて人に会った。 大門沢下降点の向こうに農鳥岳。いくつもの峰が見えるが一番右の一番高い山らしい。38年前には北から登ったので、こちらからは初めて。さすがに呼吸が乱れる。隣の西農鳥岳へも一旦大きく下るが、岩稜帯の気持ち良い稜線を満喫できた。山頂手前から農鳥小屋が見える。随分下にある。深沢さん、お元気だろうか。38年前でも評判だったが、叱られずにすんだ記憶がある。 下りは結構長い。小屋から上がってくる登山者がおられるが、一人、ご年配の方が一歩一歩、まさに亀の歩みで登られてくる。呼吸は乱れてはないが、かなりゆったりとされている。ちょっと心配になった。小屋が近づいてくると、ドラム缶の上に寝て西農鳥を登る登山者を見ておられる深沢さんが居られた。うれしくて「こんにちは、会いに来ました」というと「みんな、そう言ってゴマをするんだよ」って言われた。さすがの返しだ。38年前に寄らせていただいたことを話すと、「もう50年小屋にいるから、その時もいたよ」。続いて「せっかくだけど、雨が降ってくると思うので休まず行った方が良いぞ」。熊ノ平へ行くことを話すと、トラバース道について、「最初は下るけど良い道がついているし、水場もあるよ」と教えてくれた。さらに「熊ノ平からどこに行くの?」。蝙蝠をピストンして塩見小屋まで、というと「蝙蝠に行きたいのか。塩見小屋は予約しているのか」。はい、予約してます。「よし、蝙蝠に行きたいならできるだけ早く出発しないと、毎日、夕立が早くなっているから」とアドバイスをくれた。ジュース2本とオヤジさんの似顔絵の入った手ぬぐいを購入して、お礼を言って立ち去った。結構、話ができて良かった。オヤジさん、元気でね! 10分も登らないうちに、熊ノ平へのトラバース道に入る。岩に「クマ」って書いてある。いきなり谷底へ下降して、谷底の向こうを登り返すルート。向こうから登り返しはきついだろうけど、こちらからは大したことない。トラバース道はずっと先まで見えているので全貌が分かる。途中、半分くらいのところのガレを通過すると、ガレの終端のハイマツの下から水が湧き出ていた。水を汲んで、タオルを濡らすと恐ろしく冷たかった。顔を拭いてスッキリ。一口飲んでおいしかった。さらにトラバースを続けて、またまたガレを通り過ぎると谷水があった。ここは水量が豊富だが地面を流れているので、あまり冷たくなかった。次は大きな岩のゴーロ帯。大きな岩を一つ一つ乗り越えてハイマツの登りになると三国平が近い。その間にポツポツ雨が降り、強くなったので雨具を着たら、止んでしまった。三国平まできたら熊ノ平小屋が見えているので、休憩がてら、カップ麺でお昼にしようと準備を始めたが、また、雲行きが悪くなってきた。西農鳥岳も見えなくなったし、仙塩尾根も視界が悪くなったので、慌てて中断して片付けて小屋に向かうことにした。小屋はまでは結構距離があった。小屋に到着すると女性のソロの方と私くらいの年格好の女性とサポートされているガイド?の男性が玄関先のテーブルに居られた。そこで話した後、受付をさせていただいた。小屋の若い女性は早川さん。さっき、西農鳥で出会った登山者から、お弁当が美味しかったと伝えてくれ、とことづかっていたので、そのことを話すと喜んでおられた。フルーツゼリーがおいしそうだったので2つ購入して、さっき食べ損ねたカップ麺を食べた。これで荷物の嵩が少し減る。そうこうしているうちに、雨が降り出し、今度は本降りみたいなので急いで小屋の外階段から2階の客室に入った。荷物を広げていると、雨がさらに強くなった。時刻は13時50分。農鳥のオヤジさんの言う通り、早めに着いて正解だった。 本日は金曜日ということもあり、宿泊者は6名で空いていた。夕食は17時から。ミネストローネと蒸し鶏、杏仁豆腐、いずれも美味しかった。食後にお弁当をいただいて、客室に上がった。もっと、食堂でゆっくりしたかったのだけど、明日の行程を考えると少しでも体を休めて、早立ちに備えた方が良いと考えた。消灯は20時だけど、皆さん早く就寝されたらその時点で消灯しますとのことだった。隣の女性は塩見方面に可能な範囲で南下して、戻って農鳥小屋に泊まるそうだ。そういったゆったり度もいいなあ。今度はそうしよう。年配の女性とサポートしている男性は農鳥を越えて大門沢を下るようだ。昨日は両俣小屋から来られたそう。明日も頑張って! シュラフに入って明日のことを考える。ヤマップだと所要時間9時間少し。山と高原地図だと11時間。これに休憩時間を加えると😅・・・ともかく、早めに出るのが良さそうだ。3時出発を目標に眠りについた。2時20分に起床し、シュラフなどしまって3時直前に出発した。空はまったく星が見えない、どころか周囲はガスガスで幽玄の世界。メガネが曇っているのかと思うくらいあたりが見えない。しばらくは樹林帯なので、ホイッスルや鈴、自分の声を出しながら、ルートを進む。熊ノ平っていうくらいだからクマがいるだろうか。ここで遭遇したら避けようがないなあ。自分が発する音に気づいてくれれば良いが。 安倍荒倉岳はルートからはずれるがすぐに到着。さらに暗い中をアップダウンを繰り返し進む。蜘蛛の巣がいつくもあり、ストックで突破していく。竜尾見晴は稜線の岩稜帯で、いくつも岩峰があった。今日のガス状態では、名前のような見晴らしは全くない。新蛇抜山もルートから外れて登らないと行けないので、慎重に分岐を探すと目印があった。ザックをデポして山頂に登った。展望は期待できないのですぐに降りて、先を急ぐ。まだまだ、樹林帯が続くが、周囲は明るくなり、きれいな草原などのんびりしたい楽園が出てくる。今朝は何も食べずに出発したので、先程からお腹が鳴って仕方ない。小屋で頂いた弁当を食べることにする。開けてみると大きなおにぎりと笹に包まれたちまき、サラミ、梅であった。大きなおにぎりを頬張る。柔らかさも塩の塩梅もちょうどよく、味付けされたおじゃこがとても美味しい。なんか、泣けてくる。早川さん、ありがとう。本当に美味しいわ。また、来ますね。 お弁当のうち、ちまきは残しておいて、蝙蝠岳山頂で食べることにして、これを目標に頑張ろう。蝙蝠岳に行けるかどうかは、北俣分岐での到着時刻とお天気で判断する。お天気が問題なく、8時台に到着すれば蝙蝠岳に進むことにしている。今日の出発時刻はかなり早かったので、出発した時点で行ける確率は高かったが、最後の登りで重荷に耐えかねてグロッキーになれば、危うい。ただ、グレゴリーのザックはあまり重さを感じないので大丈夫な気がする。北荒川岳への登りに差し掛かった頃、向こうから人がやってきた。塩見小屋からにしては早すぎるのだが、聞いてみると昨日、高山裏からやってきて、北俣分岐からの下りで足に来て、途中でビバークしていたらしい。それでこんなに早いんだ。このあと間ノ岳を周回して伝付峠から二軒茶屋、椹島と行くらしい。時々こういう方がいらっしゃるが、凄い方だ。ふたりとも、しばらく誰にも会ってなかったのでよく話した。こういう方と会えると元気になるなあ。 北荒川岳と思われるピーク間近になると、上から人の声がしてくる。この方たちもビバークか?って思って山頂に出てみると、4人組のトレランのお兄さんたちだった。話してみると深夜0時に鳥倉を出発してきたらしい。6時過ぎにもう、ここまで来ているのか。凄いなあ。皆さんに一礼した。で、どこまで行くんですかと聞くと、仙丈まで行って降りるそうだ。ここから長いぞ。でも、この方達だったら行けそうな気がする。しかしまあ、流石にここで出会う方たちは凄い方たちばかりだ。自分も頑張ろう。皆さんは休憩されているので先に進む。ガレの周辺部を回り込み、さらに回り込みと草原に出る。とっても気持ち良いところ。標柱がありキャンプ禁止と書いてある。注意書きしなかれば、テン泊したくなる楽園だった。ここから塩見岳や北俣分岐までの急登は見えないが、草原を進むうちに、ガスが晴れてきてルートが見えだした。遠くから見るとものすごい斜度に見えたが、十分登れそうだ。ルートをよく眺めると、2ピッチで十分行けそうだ。途中から斜度が上がる。登るには問題ないのだが、ガレの急斜面でゴロゴロしており、重荷での下りは相当気を使わないといけないだろう。先に出会った方が足に来たと言われるのも納得だ。 7時50分頃に北俣岳分岐に到着。思ったより楽に登れた。これで蝙蝠岳は確実に登れる。サブザックを出して、これに雨具、ちまきとパン、飲料1L、エマージェンシーを入れて、さあ蝙蝠ピストンを楽しもう。北俣岳は岩稜帯の連続で、最初は東側を巻いたが、次からまともな岩登りになる。しかも、岩が板状節理になっており、もろく剥がれやすい。これは重荷で通過するのは怖い。ここで落ちても誰もいないから、気づかれないだろう。 ストックをしまい込んで、慎重に進んだ。北俣岳をすぎるとガレの荒涼たる平原を下っていく。周囲はガスが立ち込め、視界は良くて30~50mくらいか。ケルンや鮮やかなペンキ、そして踏み跡が頼りだ。下り基調で荷が軽いので快調に飛ばす。 途中の岩の小ピークに青いザックがデポしてあった。誰か行ってるんだなあ。途中にある2758mピークは樹林のピークだ。これを登っていると、女性が降りてきた。ガスがでてきましたねって挨拶してくれた。さっきのザックの持ち主だ。塩見小屋からやってきて、熊ノ平小屋に行くそうだ。ちょうど、私と逆コース。この方もなかなかの強者だ。このとき私は登りでハーハー言っていたので少々恥ずかしい。ピークを越えるとくだって二重稜線になったりきれいな場所を通り過ぎるが、熊さんがいてもおかしくなさそうな雰囲気。自分に気合を入れるように声を出して登るが、だんだん、喋る言葉がなくなってきて、オーオーとか、こちらが🐻さんのような掛け声になってしまった。登りに差し掛かるがいくつもピークが出てくる。地図から見てまだ違うとは思いつつ、ガスで視界が悪いので眼前にピークがあると期待してしまう。そこまで行くと、さらに先に高みが見える。これを繰り返していたが、ガスが少し晴れて向こうのピークに標柱が見えてきた。もう、間違いない。ようやく百高山登頂だ。目標にしていなかったこともあり、足掛け40年。長すぎて、ちょっと恥ずかしいなあ。 山頂の標柱に手をおいて記念撮影し、念願のちまきをいただく。少し甘みがあり、付けられていたきなこをつけて食べるとなお、美味しい。すぐに食べてきってしまった。少し待ったがガスはなかなか晴れそうにないし、かえって雨が降ると塩見の下りは滑りそうなので先を急ごう。北俣分岐まで、快速で引き返したが、北俣岳付近の岩稜帯はやっぱり気を使った。 北俣分岐に戻ると蜂か虻か知らないが、ザックに多数たかっていたので振り払い、背負って塩見東峰へ進む。途中、細尾根もあるが、多くはハイマツの中の細道。相変わらずガスで目指す山頂が見えないが、ゴールが近いので自然と力が入る。塩見東峰では記念写真待ちで待たされた。そのあと、西峰に進むとなんと貸し切りになった。さあ、もう下りを残すばかりだ。雨も降ってきたので上の雨具だけ着て滑りやすい岩場を慎重に下る。この頃には下からどんどん登ってくる。やっぱり雨が降っても登ってくるんだねえ。小屋へは最後に登りがあり苦しかったが、これを越えると山小屋到着。時刻は13時少し前。順調に来れたなあ。充実感に満たされた。小屋で受付をしてQuickpayで支払いをしていると外で大雨が降り出した。この前に小屋に入れてラッキーだった。登っていた皆さんは大変だろうなあ。 でも、しばらくして小康状態になり、さらに晴れ間も見えだした。小屋には雨具など掛けるところはあるが乾燥室ではないので、小屋から稜線に上がったところルート上の木々にザックカバーをかけて干した。日差しは続いていたので、テントも持ち出して広げて乾燥できた。おかげでテントを小さな所定の袋に入れてしまえた。私が干しているのを見て、神奈川の鈴木さんも干しに来られた。鈴木さんとは翌日の下山で一緒になり、ホトケの清水からご一緒して、道の駅まで送ってもらった。 塩見小屋では、宿泊者には沢水は無償で提供されるが必ず煮沸すること。トイレは携帯トイレブース3つ。ブースは清潔で当然臭いもなくて快適。ただ、一日で相当な量の携帯トイレが貯まるので、これの処分は大変だろうなあ。 ここは購入品の容器は持ち帰りなので注意。捨てる場所はない。 夕食はとても美味しかった。明日は降りるだけで安心したのでご飯もお汁もお代わりした。 翌朝、この登山の最後の朝、天気は良くなり、小屋の前に塩見岳が現れた。どこからも登れそうにない異様な姿は圧倒的だ。鳥倉登山口14:35の登山バスで下山するので急ぐ必要はないのだが、昨日のように雨に降られたくないので、だらだらと下り始めた。本谷山には上りになり、荷も心の負担も軽くなったけど、また、ハーハー言いながら登ると、山頂で二人組の男性にであったが、その一人から、いきなり、この花の名前は何だと聞かれた。残念ながら花音痴の私はさっぱりわからない。この二人は、これから北岳方面に進み、さらに鳳凰三山に向かわれるとのこと。広河原まで降りて、まだ登るのか、小屋泊まりとは言え、凄いなあ。 この山頂は虫が多いので落ち着かないので景色を楽しんだら早めに下山した。次のピーク、三伏山は岩峰でとても景色が良かった。昨秋に新雪を楽しんだ小河内岳、その奥にご無沙汰の悪沢が見える。また、登りたいものだ。 三伏峠まで降りて小屋でお天気を聞いてみると今日もガスがでてきて晴れなさそうとのこと。時間が余るがぼちぼち鳥倉に向けて下りだした。ホトケの清水で水で顔をクエンチングしていると、追いついてこられた鈴木さんと少し話して、鳥倉でバス待ちと話すと、送りましょうかと言っていただけた。帰る方向が違うので諦めかけたが、登山口で何時間も待つより、道の駅で待つほうがいいなあと思い、そこまでお願いしたら快諾いただけた。ここから二人でいろんな山や装備の話をしながら下山した。二人で話しながら歩くと、長い下山も、登山口から駐車場までの舗装路もあっという間に終わった。やっぱり複数人で行くと楽だなあと痛感した。 ほぼ満車の駐車場から車に載せてもらい、麓に降りてすぐの道の駅歌舞伎の里大鹿で降ろしていただいた。鈴木さんありがとう、また会いましょう。 建物の裏側で、誰も居ないことを確認して着替を済ませ、ここで百高山登頂祝に鹿肉ステーキ定食をいただいた。とっても美味しかった。さらにソフトクリームを食べるなどして時間をゆったり過ごせた。登山バスは2台であったが、2台めは空車なのでそちらに乗せてもらった。奇しくも、行きの奈良田行きと同じく、帰りも貸し切りバスとなった。
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