活動データ
タイム
09:55
距離
10.1km
のぼり
1315m
くだり
1321m
活動詳細
すべて見る(…いつもながら長文レポですが、今回の感動も最高潮なため、個人的主観、文章長め、写真多め~全306枚撮影からセレクト、さらに現場の緊張からピンボケ多し~となってます<(_ _)>) さかのぼれば2020年の10月。明神岳から桧塚奥峰へ向かう稜線で、南へ続く雄大な尾根をみた。 これは、どこの山につながってるのだろう…? 山と高原地図を広げて目をたどると、この尾根は台高縦走路。つづく先には、『池木屋山』と太字で書かれた山があり、四方向へ伸びる尾根をもつ名峰であることを知る。「いけごややま」と言うらしい。 桧塚の道中にも、池木屋山はこちら、というふうな矢印標識を見つけていて、 「いつか登れたらな…」と思い、写真にもそう書いていて…。 ほのかな夢が生まれた瞬間であった。 そこからコロナ渦があり、土手を苦手なマラソンをしてみたことから始まり、自分では縁が無かったはずのロング山行も。山でも長距離をあるく魅力を知り、STM繋ぎや大峯奥駈道、熊野古道伊勢路に魅せられ、様々な角度からの山の表情をみて、山時間を楽しく、ときにはヒヤリと、過ごしてきた。 そんな感じで今に至り、今年5月。ふと見たヤマッパー『あるく』さんのレポで、あまりに美しい渓谷美にやられてしまった。今、池木屋山に登りたい!前の私では到底無理だった。今の私でも無理だろうか…? 思い立ったら、止まらない。再びこの『池木屋山』への憧れが沸々と湧き上がってきた‼ 美しい緑の苔と、清流を見ながら歩く、宮ノ谷渓谷からの池木屋山へのアプローチ。 整備されたハイキング道が今なお高滝手前まで続いている。 前からこの渓谷周回ルートは調べていたが、実際、高滝付近で遭難や滑落事故が発生という厳しい現状もある難所としって、躊躇していた。 いろんな人の過去レポをみたり、あるくさんに細かな質問をさせてもらったり。興奮するリサーチにかける時間は、もう登山が始まってるも同然で楽しすぎて…。 梅雨の合間という、ヒルの最高潮にダイナミックな活性もあるこの時期。けれど、太陽が一年で一番ながく、焦らず、余裕をもって歩くことに集中できるというメリットが後押しして、山友さんにこの思いを相談したら、一つ返事で同行を承諾してくれた。 天気予報とにらめっこ、前日の午後まで雨が降っていたというコンディション。心配なのは増水によって渓谷脇の岩がまず歩けるかどうかという不安だった。渡渉は川にはいるべくマリン靴も持参。万が一の時には、代替案も用意して、いざ出発した。 平日のこの日、林道終点の宮ノ谷渓谷駐車場には先客が一台。 7~8台は停めれるようだ。この日の天気は晴れ、夕方には山間部は夕立のおそれ、とか。 実際は14時まえには雲が広がってきたが、雨には降られず、17時すぎ、香肌の湯スメールに到着直後に、夕立ちに逢ったという運の良さだった。 最初から緑の沢沿いの道。潤いに満ちて、鳥のさえずりをききながら歩いていくと、赤い欄干の橋や梯子がでてくる。美しい緑と朱色のコントラスト…!あぁ、これが見たかった…! ここのあるがままの自然の美しさを、一人でも多くの人に見てもらって、歩いてほしい、そんな思いで整備されたかのような、たくさんの階段に橋。 原生林の美しさを損なうことなく、岩から岩へ、渓谷美を堪能できるように歩けるようになっていて、ここでもう感動でいっぱいだった。 増水を心配していた川沿いの岩場も、無事に歩けた。ただ、すべての岩が濡れていてツルツル。落ち葉もしっとり。 案の定…( ̄▽ ̄;) そこは、ヒルの巣窟、ヒルの楽園であった(;Д;)。 生まれて初めてあんな無数のヒルが生き生きと活発に、多量に生息している姿をみた。 大小、長短、太細さまざま。きっと月齢いろいろの大きさのヒルが、くねくね、びよ~んと、伸縮し、気づけば靴底から側面に這い上がり、ゲイターに登りつめ、こちらは爪ではじいたり、つまんでとったり。 ぎゃーっ、と騒いでしまうのも最初だけ。途中からは、まず足場を安全に確保してからヒルチェック。もちろん「昼下がりのジョニー」で対策はしていたが、まったくひるまないヒル。飛んで火にいる夏の虫のようにウェルカム状態だったようである。張り付いたら簡単には取らせてくれない猛烈な吸着力と勢いにたじろぐ。持参した塩も、湿ったゲイターと靴に振りかけり、ヒル本体にもかけたがあまり弱らない。きりがなくなり、ヒルは所詮、血を吸うだけで毒を注入されるわけじゃないので、なるべく気にしないようにして、せっかくの景色を楽しむことに専念した。(あんなに無数によじ登ってきた割には結果的に足首3か所、マダニ1カ所の被害で済んだ) 高滝が見えてきた。注意喚起を促す看板。ここからが難所の始まりである。 とたんに踏み跡も明確ではなく、テープ間隔もあいていく。 前半に出くわした数mの濡れた岩盤を登るのが、私には全工程を通しての最難所だった。 一番緊張したといっていい。おそらく濡れてなかったら滑らず足をかけ、手でよじ登ってクリアできたであろう場所が、小さな岩突起は濡れてつるんと滑り、左側は谷底への傾斜。掴める枝は左手にはあるが少し遠く、右側は枝、根はなく、濡れた岩盤のみ。ここでいちばん時間をくった。 結果的に山友さんが先を見越してルートを確認してくれたのち、上部から伸ばしてくれたポールをフォローで使って、私は三点支持とそれで体をもちあげ、何とか無事に通過することができた。 その後は、急な斜面のトラバースや、急登だが、根がしっかりあったり、新旧たくさんのロープが設置されていて、助けになった。 ロープにより大地と繋がっている心強さ。なんてありがたいのだろう…!さきほどの濡れた岩盤を身体だけで登った緊張を思うと、怖さの比が違った。 ロープ数本を束に握りつつ、なんども、足を滑らせたら谷底へ落ちていくという可能性あり、という斜面をトラバースし、登り降りしながら、ひしひしと思った。 これだけのロープを手にさせてもらった時間で生まれてきた気持ちには、重いものがあり…。 今までこんなにもロープ設置の意味を深く考えたことはなかった。 ここまでの、たくさんのロープが付けられているという険しく厳しい現実の場。 後世へ向けた安全のフォローを思う人々の思い。 それはここに残してくれてるという、未来への登山者への思いやりでもあり、同じく、池木屋山を愛して歩く同胞への、より一層の注意を促す警告でもあり。 何事も、すべて神様の匙加減ひとつで起こりうるのだ、と思い知らされた出来事があった。 まさにこの高滝を巻いてる途中、私がモノを取りだそうとしてザックから落ちてしまった500mlのペットボトルが坂を転がり、拾えるところで停まったので、山友さんがわざわざ回収しに行ってくれた。 それを山友さんがポケットに入れてくれていて、そのまま登っていたこの道中、なんと枝にそれがひっかかり、そのペットボトルが山友さんの体から離れて落ちた。「あっ…!」と、私らの目の前で、ペットボトルが転がっていく。 ころころと、加速する、跳ねて、飛んで、ぶつかって、恐ろしい勢いで谷底に落ちて行って見えなくなった…。 唖然。忘れられない光景。これが現実。あぁ、なぜかすごい身がつまされた。ペットボトル…さっきは拾ってもらえて助かった命。こんどは谷底へ永遠の別れとなるなんて。 まるで私の身代わりだと思えというようで…そう思っておこう、とすら思い、これはサインなのだ、と。 意識を極限まで引き締めて、その後は歩いた。 高滝真上のお地蔵さまが鎮座する場所へ、急坂をおりてから、上り詰める。幅の狭い崖の横の道。 慎重に、という集中は、自分の意識と五感と、身体運動を、できるだけ同時に合致させること。 いままで、自分で「集中集中」と思ってても、ぐねっと捻挫しかけた時があり、思ってることが身体に伝わり切れてない現実と、その努力を本気でしてないことを痛感したので、意識をぴたっと合わせる集中をして際どい道を歩き続けた。 渡渉は全部で5回。マリン靴に履き替えたのは二度。それ以外は、岩を渡っていけた。山友さんは器用に場所を探して濡れずにクリアしていた。 難所だった高滝もすごいスケール感で、虹が見えて素晴らしく神々しかったが、さらに多数のトラバースののち、たどり着いた『どっさり滝』はさらに素晴らしかった。(ヤマップの記載場所より実際は南です) 水しぶきがかかってくる滝つぼ手前まで普通に降りれた。キラキラしていて、爽やかな広がりのある水のカーテン。 しばらく見惚れていた。 奥谷出合の美しい苔エリアまでは、緑の世界を堪能し、美しい新緑のこの今を歩けた幸せを存分に感じていた。 まだ気を抜いてはいけないが、少しだけほっとさせてもらいながら水辺の美しさの最後の渓谷美を楽しんだ。 そこからが、約500mの急登の尾根道となった。 根っこが張り巡らされてる尾根をひたすら上る。登りやすい、緊張に苛まれないというありがたさ、汗は滝のようにでるが、山頂が近づいているという興奮がもう抑えられなかった。 そして豆腐岩(四角い立方体の岩をそう名付けた)が見えてきて、景観がかわり、青空のみえる植生エリアに。 山頂はすぐだ。 空がひろがり、視線の先には…池木屋山山頂が! 着いたぁ!着いたよ!この感動はどうだろう。今までの山とは特別異質な興奮と嬉しさ。 念願の池木屋山。たどりつくことができたのだ。山友さんに感謝しかない! 霧降山へそのまま行き、そこでようやく座って、お昼ご飯にした。 白鬚岳ごしに大峯が遠くに見える。景色を眺めながら、台高の深い山の奥地にいるんだなぁ、と実感した。 下山は道が明瞭な尾根道をくだりながら、ジキタリスの群生の青空平、ヒメシャラの林をくぐり、鹿よけネット沿いに下り、モノレール沿い、そして林道へむけて、斜面をくだって、樹林帯へ入っていく。 台高縦走路でもあり、踏み跡、ピンクテープ、道は明瞭。 人が歩いているという道のありがたさ。 迷うことなく、無事に車が見える駐車場までもどってきた。 今回、距離にして10キロ弱。とんでもなく濃厚な中身、かつ、ぎゅっと凝縮されたような沢と尾根の魅力。 数字に現れないリスクに神経をつかった精神的な疲れ、それを克服できた感動、達成感は、初めて大普賢周回をやりとげたときと、似ているものがあった。何年も前なので比較はしにくいが、今回のルートは累積標高があまりないわりに、なかなかハードだった気がする。 注ぎ続けた神経と集中力、足を置く意識。危険回避のため、それを研ぎ澄ますことを知り、昔はまだ経験なくて育っていない感覚も、今回は総動員して臨めたような気がする。 初めての池木屋山。 いろんな人の目に見える助け、見えない助けに支えられて、この日の無事の下山、充実感があった。 最初から、ヒルと戦いつつ、必死になって歩いたが、それでも、宮ノ谷渓谷の緑の美しさは十分に満喫して、酔いしれながら、楽しんだ山時間。 あの緑の景色こそ、忘れたくない光景…‼ 山友さんと、池木屋山のすべてのものに。 迎え入れてくれて、無事に山から送り帰してくれて、心から感謝します。
活動の装備
- オリンパス(OLYMPUS)TG-6
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