活動データ
タイム
08:09
距離
10.9km
上り
768m
下り
765m
活動詳細
すべて見る✻✻✻ 「新巣山」ってどの山? ✻✻✻ 「新巣山」の名前は「苗場藩主がタカ狩り用のヒナを捕まえるための山で、タカが巣をかけそうな深山」=「御巣山」に由来しています。 苗木藩仕置法度(1649年)によると、付知川流域の福岡にある「高山」「柏原」地区では、周辺域を「御巣鷹山」と呼んでいます。白川「御巣鷹山」エリアを指して「新巣山」と呼んでいたわけですね。 でも、その新巣山が、一体どの山なのかについては、色んなとらえ方があります。『岐阜百山』を開いてみると、大明神の村人から「あれ(国土地理院の地形図上の新巣山)は新巣山ではない」と否定された、と書かれています。 果たして、私やあなたが登った山は「新巣山」なのか。それが「新巣山」でないとしたら、どこが「新巣山」なのか・・・ 『岐阜百山』を読み返すと、次の三つの候補が見えてきます。 ①黒淵から北を仰ぐ位置にある984m(点名;津賀立) <根拠は付知町史> ②寒陽気山そのもの <根拠は点名自体が新巣> ③寒陽気山の東、恵那郡福岡町境の無名峰1114m <根拠は東白川村史> ところが困ったことに、③に関しては該当する標高の山が存在しません。ならば③は一体、どのピーク? ✻✻✻ 謎解きの始まり ✻✻✻ 地図を見ながら、付知川との分水嶺を作っている福岡町と東白川村の町村界尾根に注目してみました。 町界尾根の南側は、飛騨川の支流である「白川」「黒川」「赤川」の流域になっています。白川町の名はこの「白川」に由来します。その上流にあるのが、東白川村ですね。 さて、白川には「大明神川」と呼ばれる大きな支流があります。そこに展開する集落が、越原地区の「黒淵」と「大明神」です。 この地区では、周辺の11ヶ所を総称して「御巣山」と呼んでいます。それを裏づけるように、大明神川の最上流部に位置する「寒陽気山」の点名は「新巣」。大明神川流域では「越原(おっぱら)区内」の国有林と「神土(かんど)区内」の村有林一体も合わせて「新巣」と呼んでいます。う~ん、謎が深まりましたね。 ✻✻✻ ③の候補を絞り込んでみる ✻✻✻ 仮説ですが、「新巣山」とは特定の山ではなく、付知川と大明神川をめぐる集落群の後背山地全体を指すのではないでしょうか。特定のピークに「新巣山」を名乗らせるのは、行政や登山者の強い思い入れであって、そもそも無理があるのかもしれません。 そうは言いつつ、気になるのは『岐阜百山』に登場する正体不明の「③1114m峰」です。その正体は・・・? 地図上で目立つのは、最高点の1156mピーク。しかし、福岡町・東白川村・白川町の三つの「行政区界」をなす1142m無名峰の方が、より重要な位置にあるのがわかります。そこで、③を次のように書き換えてみました。 ③「白川町」「東白川村」「中津川市福岡町」の町村界にある1142mピーク この目で確かめるため、さっそく山行を組みました。まず、切越峠を起点に柏原三角点を踏む。それから、最高点の1156m峰と、新巣山の候補である1142mを結んで歩く。そして高時山(福岡・付知町界)の山頂神社に詣でてから、切越峠に戻ろう。 ✻✻✻ 切越峠~1156m ✻✻✻ 峠から林道支線南縁の切り開きへ。三角点峰が現れる。点名が「柏原」なので、福岡町側に地権があるのか。笠置山や白鳥三角点を透かして、最初の休憩を取る。 コウヤマキやアスナロ、木曽五木を眺めて歩く。雪の重みに耐えるリョウブが美しい。楽勝とも思われた尾根歩き。だが、1156m最高点を待たずして、笹ヤブに飲み込まれる。 こういう中途半端なやつが一番厄介だ。ヤブを分けたり踏みしだいて進む。シカやウサギの足跡を追って、前へ前へと攻めていく。 黙々と起伏をたどると「テープぐるぐる巻きの刑」に処せられたヒノキが立っていた。そこが1156m最高地点だった。 何とも無骨で愛想もない山頂だけど、そもそもこのヒノキたちは、人を癒そうなどというサービス業についているわけでもない。 ✻✻✻ 1156m~1142m ✻✻✻ ヤブがくくり罠みたいだ。足を踏み入れると、笹の根っこに絡まった。バランスを崩して、雪まみれでヤブに転がる私。まるでヌタバでもがくイノシシだ。私に似合うのはヌタバではなく、スタバなのに(意味不明)。 樹間には御嶽山・小秀山・新巣山・御前山・川上岳・寒陽気山。やがて「新巣山候補③」の1142m峰に立った。「白川町・赤原町有林」の杭に、境界杭たち。やはり、ここは三町村それぞれのルートの集める重要ポイントだった。「新巣山③」の可能性は濃い。 見渡すと、とある山名標が目についた。丁寧に作られた「まぼろしの山」の標識だった。いわくありげだが、根拠や出典という話になると、うーむ。見なかったことにしておく。 ✻✻✻ 1142m~高時山~切越峠 ✻✻✻ 再び動物の足跡を追って起伏をたどる。天岩を経て1023標高点へ。ここで高時山への尾根に乗り換えた。 高時山とのコルに降りていく。カスミ網の痕がある!おとり用の巣箱も三箱を数えた・・・さあ、高時山に登り返そう。 山頂の鳥居の前には祠が立ち、神さまが祀られていた。こじんまりとして、居心地の良い山頂。こういうのはすごく好きだ。 ひときわ大きくそびえ立つ二ッ森山。木曽駒は留守だった。御嶽は、真っ白な裾野だけで愛想なし。あれが南木曾岳・奥三界山・井出ノ小路山・・・その左が小秀山や御前山。 さあさあ下山。東尾根をたどるうち、ルートは自然と南向きになっていく。緩やかな斜面を選び、ヤブを避けるうち、最後は沢型をたどって林道に飛び出した。 満たされた気分。いつしか雪模様になった。思わず首をすくめる。冬は冬らしく・・・かな? ※続編はPart2へ
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