駐車場から少し歩いたキョリにある、与那覇岳登山入り口。もうジャングルの雰囲気です。 戻る 次へ

“ちむどんどん“のお膝元『与那覇岳』は神秘的な山でした!の写真

2022.04.15(金) 11:27

駐車場から少し歩いたキョリにある、与那覇岳登山入り口。もうジャングルの雰囲気です。

この写真を含む活動日記

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5.3 km

286 m

“ちむどんどん“のお膝元『与那覇岳』は神秘的な山でした!

与那覇岳 (沖縄)

2022.04.15(金) 日帰り

今回も活動レポは長文。 沖縄の山を愛し、登る山のことを知りたいという好奇心から、どうぞお許しください。 【はじめに】  7年ぶりの沖縄上陸。 滞在中、タイトな仕事スケジュールにもかかわらず何故か、“いざ”に備えて登山道具一式がしっかり旅行カバンの中に。  しかも、沖縄本島最高峰が本島北方のやんばるの森にある「与那覇岳(よなはだけ)」(503m)であることも、那覇から登山口へのアクセスや登山ルートも事前にリサーチ済み。  本島最高峰の耳障りの良い響きとは裏腹に標高500m弱の山行としてはハードルが低い低山であることは、行く気満々をさらに実行へと煽ってくれました。  ただ、過去の活動レポでちょくちょく話題となるハブ遭遇情報は気になるところ。基本びびりですから。    結局、滞在中レンタルした車を、ホテルに泊めっぱなしは実にもったいないことが引き金となり、滞在先の宜野湾市から北に100kmも離れた国頭山地まで強行ピストン登山決行しました。  天気は曇りながら気温は29度。亜熱帯特有のジメジメした暑さにまだ暑熱順化が間に合わない状況だったはずですが、なぜか「汗だく」の山行のなかで、沖縄北方やんばる地方、NHK朝ドラ『ちむどんどん』の舞台となる自然を満喫しました。  【与那覇岳の立地】  沖縄本島は500mを越える山はほとんどありません。そのため沖縄では登山はマイナーな話題かもしれません。本島最高峰の「与那覇岳」も503mしかありません。場所は、本島北部の国頭郡国頭村奥間、やんばる国立公園(2016年までは沖縄海岸国定公園)内に位置します。  近くには南に伊湯岳(446m)、北にフエンチヂ岳(390m)(ヤンバルクイナ生態展示学習施設有り)がありますが、200mから300m級の山々が与那覇岳を囲んでいます。そのため、突出した標高をもたない与那覇岳は、遠くからも近くからも山容や山頂がほとんど見えないという本島最高峰とは思えない不思議な雰囲気を持っています。しかも、登山道からも山頂からの景観なしの特徴を加えると、内から外から姿を見せない神秘的な山ともいえます。 【沖縄本島の地質と地形】  基本、沖縄本島の表層地質は、島のほぼ中央部を境にして2つの形成メカニズムに分けられます。那覇を中心とした中南部はおもに新生界第3系の島尻層群をつくる泥岩を基盤にした「琉球石灰岩(サンゴ礁を起源)」が地質の主体となっています。そのため、標高を嵩むような山々は形成されずに丘陵地が続くような地形となります。  一方、中央部から北部の「やんばる」と呼ばれる国頭山地の表層地質は、中南部のそれに対して形成時期はとても古く、遠く南方の太平洋沖の海領で生まれた堆積物(チャート岩)や溶岩などがそぎ取られて海洋プレートに乗ってやって来る、いわゆる多種多様な地層をなす「付加体」と呼ばれる堆積物(古い地層が逆に新しい地層の上方に位置)からつくられます。  この現象は、文献的には3億年前から5千年前の壮大な地球歴史うおイベントのようです。それでも標高が嵩むような山々の形成には至っていないのも沖縄本島の山の特徴かもしれません。  もちろんやんばるの山々や与那覇岳は後者のメカニズムによってつくられています。     沖縄らしさといえば、前者の地質をさす場合が多く、琉球石灰岩からなる南部の丘陵地形となります。残念ながら、現在の那覇は開発が進み、その面影は少なくなっているといえるでしょう。  ただ、一説によると、慶良間諸島と本島北部の国頭山脈は、約200万年前には陸続きの山々であった痕跡も明らかにされています。また、それはさらに島尻の地層からスギやヒノキの木幹化石が発掘されたことから、本島北部の山々が屋久島の宮之浦岳(1936m)と連なる山峰であった可能性が想起されています。  その後、慶良間諸島からやんばる山とを結ぶ仮想南海の「脊梁山脈」は、沈降を繰り返しながら現在の地形に落ち着いたとされていますが、実は与那覇岳は2000m級の堂々たる岩峰だったのかもしれません。  まさにロマンです!もしそれが間違いだとしてもその空想ができるだけでもやはりロマンです!  地史の壮大なロマンを受け継ぐ山、それが「与那覇岳」の密かな本態と信じたいものです。  本島を二分する地質変化は、沖縄自動車道を那覇から名護方面に走る車窓から見える地形の変化でも明らかに分かります。「石川インター」手前から、照葉樹が目立つ山々が現れてくることで丘陵地形からの変化がすぐに実感できます。沖縄には目立った山はない、とも言われますが、全体に丘陵地ばかりですので、標高300mを越えるとそれなりの山に見えるのは、まさに沖縄マジックといったところでしょう。 【与那覇岳登山口と登山ルート】  与那覇岳登山口は、国道58号線上にある「やんばる国頭道の駅」から右折して山間部に入り、先ずは国頭森林公園をめざし、途中、やや細い大国林道を経由して登山口駐車場(約7台駐車可能)まで向かいます。  比較的分かりやすい舗装された道ですが、登山口では携帯電話のアンテナは1本しか立ちません。YAMAPアプリは、予め地図をダウンロードしていなければ使用できないので要注意です(私は一度林道を下って電波が届くところで地図をダウンロードして再び登山道に戻ってGPS使用)。  駐車場には、大きな観光看板と立派なバイオトイレが常設されています。そこから、右手の整備された山道をすこし歩くと、正式な与那覇岳登山道入り口の標識に出会えます。  遭難注意の警告に身を引き締められて、さあ登山開始です。  山道は横幅がありはしばらく傾斜もないためなく気楽なトレッキング感覚とジャングル感満載の雰囲気のあるロードです。 どうも登山道の一部は、記念碑広場までは森林セラピーロードとも呼ばれているようです。  記念碑広場までの山道はすべて緩やかな登りです。途中、目立った沢が一度だけ現れますが、水量は少なく、登山道にはみ出た支流が横切るものの、沢渡りの表現には至らないレベルです。  沢を通り過ぎると、山道が1枚岩のような琉球石灰岩に苔が被う場所が数カ所出てきます。雨に濡れると滑り転倒リスクが高い場所と、注意を喚起したいところですが、不覚にもすぐに滑って転んでしまいました。やはり要注意でした(下山にはとくに注意)。  記念碑広場に到着すると、看板左手にある登山入り口から本格的に与那覇岳を目指します。  登山道は急激に狭くなり、黄色い粘土地質が「楔状」に削られた溝が山道を兼ねている様相を呈してきます。雨が降るとこの溝に沿って水が流れるためきっと歩けなくなるでしょう。  途中、ロープが備わった短い急な登りも小刻みに現れてきますが、驚くほどの登りは一度もありません。この付近からは、亜熱帯地域特有の生い茂ったジャングル山道となります。藪漕ぎするほどではありませんが、山道を塞ぐような倒木が10数回現れてきます。それでも、運動会の障害物競走をイメージするような光景遭遇にそれを潜りながら微笑ましささえ感じました。ハブがいたら別ですが! 山道から時折分岐する立派な側道は、どうも遭難実績のあるルートらしく、それらにはすべて通行禁止(封鎖)のロープが張られ、遭難実績ル-トを示す標識もつけられていました。その後、やや下りの山道を降りると、その終点となる三叉路の中央部に「与那覇岳」の標識が目に飛び込んできます。ちょうど登山道から2km少しのキョリ。その標識から右手の山道を約300m登ると、小さな木々のないスペースに辿りつきます。そこが、事前リサーチ通りまったく景観のない与那覇岳山頂となります。このとき、唯一景観と言える上方を眺めてみると、早い雲の流れの切れ目から少しだけ青空が現れてきました。景観がまったくないだけに、その僅かな青い空が与那覇岳の最大の印象となっています。 下山に際し、山頂スペースから四方を眺めると、4方向に下山道らしきルートが見えます。一瞬たじろぐかもしれませんが、正式の下山道には、「下山」と書かれた標識と⇒がつけられていますので安心です。 下山はややスリッピーな場所もありましたので、道迷いも含めて注意して無事下山。 滞在先から登山口まで往復約4時間の所要時間、登山2時間、6時間の異国情緒あるジャングル山にて夢のような山行となりました。沖縄の山々のことを考えさせていただいた与那覇岳に心から感謝いたします。 追記:大国林道の途中で、初めて与那覇岳の山容を視認。嬉しい瞬間でした(写真最後)。