苦行の蝶ヶ岳、厳冬期長塀尾根

2022.01.08(土) 2 DAYS

活動データ

タイム

17:08

距離

19.7km

のぼり

1548m

くだり

217m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
5 時間 38
休憩時間
2 時間 8
距離
7.5 km
のぼり / くだり
223 / 39 m
DAY 2
合計時間
11 時間 29
休憩時間
2 時間 5
距離
12.1 km
のぼり / くだり
1325 / 178 m

活動詳細

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ガイド登山は、お客様とガイドの共同作業。 お客様の希望とガイドの内容が程よく「マッチ」していなければ、 満足のいく山行にはなりにくい。 厳冬期蝶ヶ岳は、ガイド登山としてはなかなか成立しにくいコースだ。 雪の多い今季はとくに、取り付いてはみたもののラッセル天国では、 長大な長塀尾根を攻略することは難しい。 そしてお客様の希望はもちろん、 山頂で一晩過ごし、明け方の美しい穂高を撮影すること。 苦労して登って悪天候では、申し訳ない。 事前の天気の読みは慎重になる。 本来は南八ヶ岳全山縦走の予定を変えて転戦することにした蝶ヶ岳だった。 集合した沢渡駐車場で、お客様の荷物を確認する。 ここでこれはヤバいと思った。重すぎる。 初日は徳沢まで入って幕営の予定だったが、 重すぎる荷物に一泊目は小梨平に野営地を変更。 今回初導入のワンポールテント(MSRシェルター)で宴会をして、爆睡。 幕営装備の内、お客様のテントは小梨平にデポ。 ビバーク用にワンポールテントを持参。 なるべく荷物を減らして出発。 明神で1人脱落。 身体の調子が少し悪いので大事をとって引き返す、との申し出。 徳沢で1名離脱申請。この重たい荷物を背負ってワカン履いて登るのは無理、 とのこと。 取り付きを少し登ってみると十分なトレースを確認できたので、 ワカンはデポして登ることを告げ、退却ありで行けるところまで行こう、 と全員で歩き始める。 長塀尾根は徳沢から長塀山山頂まで標高差1000m、CT3時間40分。 ルートはジグザグではあるが、ほぼ直登している。 容赦ない「塀」が立ちはだかる。 30分に一回の休憩で細かく刻みながら、 予想通り、重たい荷物と雪道のせいで5時間かかって長塀山に到達。 ここからしばらくアップダウンを繰り返し地味に疲労しながら、 森林限界を越えると一気に穂高の絶景が現れた。 蝶ヶ岳山頂に着いたのは午後5時。 夕まぐれ、荘厳な世界を前に、言葉を失う。 蝶ヶ岳ヒュッテの冬季小屋は清潔で使い勝手が良く、トイレ完備。 今季からテーブルとベンチが増えて、ますます快適。 疲れ切った身体を温かい飲み物で癒し、簡単な夕食を済ませて就寝。 あまりに疲れ果てて、お酒も進まなかった。 翌朝4時半起床。外は快晴。5時半に外へ出て撮影開始。 あまりの素晴らしい景色にお客さんと一緒に感動。 どんなに素晴らしかったかは、写真を。 お客様への負荷が高かった今回の山行。 途中で諦めかけたお客様も「来て良かった〜〜〜」とおっしゃってくださったのは、 ガイド冥利に尽きる。 お客様の希望と現実とガイドが「マッチ」した瞬間だった。 <ポイント> ラッセル覚悟で臨んだが、結果的にはしっかりしたトレースに助けられての登頂。 4名パーティーだったが、もしトレースがなければ、敗退していた可能性が高い。 厳冬期蝶ヶ岳登頂のタクティクスとしては、 徳沢か長塀尾根のどこかで幕営して、 早朝に軽身でアタックして戻るのが、確実だろう。 が、夜明けを山頂で迎えねば意味をなさないのが撮影山行。 あえて苦行を選択したが、その甲斐はあった。 <装備> 長塀尾根でワカンやスノーシューが必要な状況なら、 相当ラッセルに強いメンバーが複数いなければ、 登頂はそもそも困難かもしれない。 ピッケルを使う場面はない。持って行くなら軽量なタイプをお守りに。 4名パーティーだったのでビバーク用にMSRのシェルターを持参したが、 少人数ならツェルトでよかっただろう。 装備の軽量化は必須。

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