活動データ
タイム
06:11
距離
7.6km
のぼり
804m
くだり
804m
チェックポイント
活動詳細
すべて見るあけましておめでとうございます!今年は寅年ですね!というわけで登り初めは「虎毛山」。秋田県の隠れた名峰です。ただ、なかなかアクセスが悪く雲上のオアシスと呼ばれる山頂の湿原から望む360度の眺望が素晴らしく東北百名山でもあるのに、訪れる人は疎ら。ならば、あわよくば2022寅年最初の登頂者になってやろうと虎のごとく威勢よくチャレンジして、虎毛の牙の前に歯も立たなかった記録です…。 【虎毛山】 栗駒国定公園の鬼首エリア、外輪山から少し北西に重厚なドーム型で聳える隠れた名峰。栗駒国定公園では栗駒山、焼石岳に次いで1433mと山塊としては3番手の高さを誇りますが前述の通りアクセスが…。でも湯沢市最高峰でありますし、なんなら「虎」を冠する山では1番の高峰。そんなわけで山頂の避難小屋は全国のタイガースファンの聖地?にもなっているようで入ってみると面白かったりします。 でも1番はやはり山頂の湿原。冬は雪の下でしょうが、積雪期以外は雲上のオアシスと呼ばれる湿原を眼下に栗駒山が望めるのがそれは素晴らしいのです。他にも登山口の”トラの滴”と呼ばれる水場がめちゃ美味だったり、ブナ林を黙々と登り続けてようやく稜線に登り詰めるとバーンと景色が広がる感じだったり、山麓には登山家岩崎元郎氏がイグアスやナイアガラを抑えナンバーワンの滝と称賛した万滝を擁し、沢登りのメッカだったり(割と上級者向けなので私は沢は歩いたことがないですが…)、さすが東北百名山と言わしめる個性が強烈な秀峰なのです。 通常、国道108号から林道を降りた赤倉沢から入りますが、雪が積もると登れません。高松岳からも縦走路がありますが、それも冬だと厳しすぎる。そこで冬ならではのルート、鬼首の外輪山からアクセスにスポットライトが当たるわけです。昨年5月、残雪の須金岳から延々と続く雪堤の一番果てに聳える虎毛山の雄姿を見て、これは登りたいと思ったのでした。個人的にですが虎毛山は須金岳あたりからの格好が1番好きです。というより、あまりに山深いため須金くらいしかまともに全体を望める場所がありません。ただ、須金からの虎毛山は強烈で、5月からこの冬登りたい山にノミネートされていました。 【理論上可能な登山】 今回もう1つ試したかったことがあります。地図を見て登れそうなラインを探し、実際に歩いてみるということ。虎毛山を宮城県側から登る際、ネックになるのが入山後半時間以上は歩くことになる林道で、ここが雪崩の巣なのです。できることなら避けたいところ。そこで地形図と睨めっこしてアタリを付けたのが水沢森南東尾根。等高線の間隔が狭いところもありますが、外輪山に直接取り付く尾根では1番マシかつ距離も短い。ルートのない道を開拓するのは積雪期の特権。ということで今後の登山の可能性拡大のためにも近場の山で練習してみようという山行目的がありました。 先行記録のない登路、参考にしたのは天気・地形図の他には以下の感じ ①実際歩くルートの画像 5月に登った時写りこんでいた尾根およびgoogle mapのストリートビューで登るラインを確認。傾斜的には決して机上の空論じゃないぞと確信が大きくなりました。 ②積雪量 地形的に行けるとしても、雪で藪が埋まっていなければただの藪漕ぎ。スキーでは不可能です。こういう時便利なのが気象庁の「積雪深」。ピンポイントのデータはないですが、近くの直近の積雪量から何となく予想ができます。 今回参考にしたのは秋田県湯沢市湯ノ岱と宮城県大崎市川渡。それぞれ登山口を挟んで反対側に位置しています。調べてみると湯ノ岱は80cm、川渡は25cm。となると中間の鬼首は50cm+α(標高ボーナス)が期待できるのかなと。実際行ってみるとそのくらいはありました。50cmあれば藪も何とか埋まってくれますからね。 他にも今回のルートで厄介そうな地形と、自分が過去行ったルートの似た地形を比べたりして、実力不相応じゃないかの検証等を重ねました。 【ルート概要】 ◇登山口~水沢森南東尾根取付◇ 駐車は苦労しました。路肩のスペースに停め入山準備をしていたら、これから木を切るから車どかしてねと木こりの皆様。これは困ったとなったところ、木こりの方たちが拠点にしている尾ヶ沢分校跡地に停めていいよとのことだったのでご厚意に甘えました。 杉ノ森沢を渡り、入山。404m点のある平坦部まで50mの登りですが、はじめは林道?的空間を進めたので楽でした。最後10mだけは気合で登ります。平坦部はそこまで藪はうるさくなかったですが、なぜか赤テープが。林業用ではなく細い立木に付いていました。キノコ用?釣り用? ◇水沢森南東尾根◇ 今回の山行の核心部です。情報はゼロ。予想される厄介ポイントは序盤の急坂並びに713m点後の細い尾根。 序盤の急坂ですが、最初の100mが鬼門です。雪質は表面ザラメ氷のモナカだったのでそれも面倒の元だったかもしれません。(結局できませんでしたが)虎毛山から延びる雪堤をスキーで滑走したいがためにスキーで登りましたが正直ギリギリでした。ワカンが無難です。100m標高を上げると幾分傾斜が和らぎ、713m点までは割と登りやすくなります。 713mから細尾根までが1番厄介でした。地形図的に分かりずらいですが713mの下りが1番細く、また藪もうるさく、雪も薄いため隠れた木の根っこに足元を掬われることも。加えて東側に雪庇が発達しているので神経も遣います。 逆に懸念していた細尾根は地形図ほど細くはなく、稜線の若干下(西側)を進めばそれほど面倒はなかったです(ヤブは少々気になる) 細尾根が終わると間もなく正規ルートにぶつかり、難所はありません。雪で藪が埋まるとはいえ、やっぱり登山道って歩きやすい!非正規ルートだとヤブと言いますかほっそい立木が面倒なことがしばしば。倒木なんかもありますしね。ただこの登り、歩きやすいですが体力は使います。 そして水沢森でまさかの雪庇の長壁。3mに迫る高さで行く手をブロックします。正攻法ではとても無理で、時間も迫っていたのでここで転身しました。地形的に南側に回り込めば行けるのかな?と思いつつ割と疲れていたので検証もせずここで転身を決定。過去登られた方の記録を改めて見てみるとやはり南側から回り込むのが正解のようですね。 ちなみに下りは標高850m位まではスキーが滑りブナ林の滑走が気持ちよかったですが、あまりの快晴に雪はグズグズ(登りも疲れました)で、下りもかなり消耗しました。特に713点以降は、登りでは比較的技術度の低かった上部も細かいターンが要求されましたし、登りでも苦労した取り付き100mは腐れ雪&傾斜&立木の三重苦でなかなかしんどかったです。パラレルでバック滑り・木の葉滑りができないと厳しいかもしれません。 平坦部はダルいですが危険個所はありません。最後の標高差50mも林道に合流するまでは南東尾根取付100mと同じような感じでした。 【反省点】 ①厳冬期日帰りで標高差1000mを狙うのは厳しい。 厳しいです。入山時間も早くはなかったですが、それにしても日が短すぎる。序盤に核心部が控える環境で安全登山を考えると7時入山、引き返しのlimitは12時といったところか。水沢森まで3時間かかっているので、虎毛山はなかなかこの時期狙うのは厳しいかも(1月に登った方の記録を拝見すると山中泊してました) ②登り始め標高350mは厳しい 山スキー、標高が低い程難易度が上がる気がします(好天という前提ですが)。安定しない雪質、煩わしいヤブ…。同じ標高差・距離を行くにしても登り始めの標高は割と重要だと痛感しました。 ③リサーチ不足 ちょっと南東尾根に意識を集中しすぎて、基本の先行記録リサーチを怠ってました。どのみち時間的に厳しかったけど、雪庇の突破は先行事例あったやん… う~ん理論で勝って、実力で負けました。スキーの乗る雪質ではなかったにしても単純に登る速度が遅い。でも仙北沢雪崩警戒時の代替ルート(といってもそういう条件下だとどのみち南東尾根も危険かな?尾根筋だから絶対的な雪崩リスクは低いだろうけど)の実績を残せたのでそこは満足。絵に描いた餅を食べることができてそこも満足。ていうかそれが大きいですね。登山の楽しみって、あれこれ想定してそれを成功に繋げるため試行錯誤を重ねるってところもあると思いますけど、今回はその極致。目標の山頂は遠かったけれど、さも虎毛、勝利の女神が半分微笑んでくれた気がします。
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