活動データ
タイム
12:37
距離
29.3km
のぼり
2104m
くだり
3083m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る参加者 中山、O氏 参考文献 「アルペンガイド6 奥多摩・奥秩父・大菩薩」山と渓谷社,1997 はじめに 11月に奥多摩の川乗山から奥武蔵の二子山まで縦走して、それなりに長いコースの縦走に自信を持った。他にも登っていない山で一気に登れる場所はないかと探し、三ツ峠山や丹沢の大山南尾根などがある中、大菩薩嶺から黒岳、大谷ヶ丸、笹子雁ヶ腹摺山を経て笹子峠へいたる大菩薩連嶺が気になった。 比較的東京から近いところにあり、整備された縦走路が備わっていると知っていたが、日帰りには遠くて手付かずになっていた。大学の新歓で滝子山から柳沢峠を目指す山行に参加したことがあるが、このときは私が風邪を引いて敗退した。 日帰りで歩けるかどうかを検討して、川乗山〜二子山と比較し、距離は何とかなるかもしれないと思ったが、歩き出しがどうしても遅くなる。鳩ノ巣を夜明けの6時に出発したときと違って、上日川峠を8:51に出発するのは3時間も遅い。 うーんと地図を見て湯ノ沢峠避難小屋に泊まることにした。この避難小屋は前に黒岳から雁ヶ腹摺山へ縦走したときに泊まったことがある(2011年冬 - 大菩薩・雁ヶ腹摺山 http://nakayamayu.web.fc2.com/record/2011/11gangaharazuri/)。珍しく電気が通じていて快適に過ごした記憶がある。 どうせ泊まるなら酒も飲みたいし、1人で飲むのも寂しいし誰か呼ぼうと思い、去年三条の湯に一緒に来てくれたOさんに声をかけた(2020年冬 - 奥多摩・雲取山 http://nakayamayu.web.fc2.com/record/2020/201229kumotori/)。 あとは大菩薩嶺から南下するか、笹子から北上するかを考えた。最初は北上を検討し、ゴールに大菩薩の湯を設定して汗を流そうと考えたが、全体的に登りになる。冬だからあんまり汗かかないだろうと考え、南下することにした。天気がよければ南にある富士山を見ながら歩けるという利点もある。 12月3日(金)上日川峠…大菩薩嶺…小金沢山…湯ノ沢峠 上日川峠まで 混雑を避けたいので金曜日休みをとり、東京を出る。 6:14高尾発松本行き普通列車でOさんと集合し、電車に揺られながら眠る。梁川駅で列車が停車し、防災無線の音で起きる。曰く、大月市で地震が発生し、震度5弱だとか。列車も安全確認のため動かない。思いのほか大きな地震に仕事で呼び出されないかビクビクするが、都内は震度2ないし3だったので安心する。 次は7:35塩山発大菩薩峠登山口行きの山梨交通バスに乗れない心配をする。まあ遅れたらタクシーで上日川峠まで行けばいいやと安穏と考える。塩山駅には1時間遅れの8:22に着いたのでバスはなく、迷わずタクシーに乗る。 タクシーは当初バスで行くつもりだった大菩薩峠登山口バス停の前を通過し、県道をぐいぐい登っていく。こんなにタクシーで上がっちゃっていいのかなと思いながら上日川峠に到着。塩山駅から約30分、5,600円。クレジットカードは使えず。下車すると標高1584mの上日川峠は少し寒い。列車の遅れを取り戻すためとはいえ、だいぶ高いところまで登ってきてしまった。 上日川峠から大菩薩嶺まで 上日川峠は平日でバスの運行がないため、人はおらず駐車場に車も10台ほどしか停まっていない。出発準備を済ませて登山道を歩き始める。霜柱があって冬の風情を感じる。その後霜柱に悩まされることになるとは思ってもいなかった。 福ちゃん荘から唐松尾根の登山道に取り付く。車の台数相応にときどき登山者が見られた。1811m標高点に登ったり、平坦なところがあったりしながら高度を稼ぐ。雷岩への最後の登りでは背中に富士山が見え、うれしい。ただ西風が寒い。 雷岩にザックを置き、大菩薩嶺を往復する。去年も来た大菩薩嶺(2020年冬 - 大菩薩嶺 http://nakayamayu.web.fc2.com/record/2020/201205daibosatsu/)は展望のない地味な山頂だ。タクシーを使った結果、登り出しの1本目で今回の山行の最高点に達してしまい、こんなに楽していいのかとちょっと考える。写真を撮って雷岩に戻る。 大菩薩嶺から小金沢山まで 雷岩は富士山がよく見えていいところなのだが、いかんせん西風が寒い。東側の少し陰になるところで休む。大菩薩峠へ歩き始めると雷岩の隙間でカップラーメンをすする人がいた。私たち同様休む場所に困っていたようだ。靴ひもを締め直す。 寒いと鼻水を垂らしながら歩いていると右手に塩山から甲府に至る盆地がよく見える。残念ながらその先の南アルプスは雲に隠れていた。ときどきぬかるんで歩きにくいところを通過しながら賽の河原の避難小屋に下りつく。親不知ノ頭に隠れて風は弱く、ここで休むのが正解のようだ。 大菩薩峠の介山荘は閉まっていて登山者もいない。小菅方面を見てあれが雲取山かなと指差し話す。大菩薩峠からは人が歩いていない。静かな山を歩く。森林の中を登っていくと熊沢山。特に看板などはない。下りは笹の斜面を一直線に石丸峠に下っている。登山道は笹がなく土の斜面にあり、霜柱がほどよく解けて滑りやすい。途中で仰向けに転んでお尻が泥んこになってしまった。お尻が冷たいくらい濡れるし、泥がべっとりつくし、もう嫌になる。慎重に歩いていてもその下でももう1回転んで今度はザックに泥がついた。カメラも落として笹の中を這いずって探す。 石丸峠で小菅への道を分け、縦走にかかる。天狗棚山に登り、振り返ると自分が2回すっ転んだ斜面がよく見える。スキーの上級者コースのような斜面だ。南側の笹っぱらの斜面はどこもこんな滑る道で歩きづらい。天狗棚山の下りには岩場があって上日川ダムの眺めがいい。 滑らないよう気をつけながら下っていき、小金沢山の登りにかかると樹林帯に入る。展望のない山を歩いていくと南側が開けた小金沢山に着く。 小金沢山から黒岳まで 静かな山頂でザックを下ろして休む。正面には雁ヶ腹摺山と黒岳が見え、その向こうには富士山が控える。向かう稜線がほとんど真正面に連なっていてよくわからない。東側には雲取山から三頭山あたりの奥多摩の山が見える。大岳山の形は特徴的で離れていても分かるなあとOさんと話す。 尻の泥を気にしながらふと地震で電車が遅れた時点で逆コースをとる方法もあったなと思い返す。逆コースなら滑る斜面を下りではなく登りにとることができる、タクシーを使わなくて済む、という利点がある。まあでもタクシーで楽できたし、とOさんに言われてそれもそうかと疲れ始めた体に言って聞かす。 牛奥雁ヶ腹摺山までは大した登り下りもなく笹の生えた樹林帯を歩く。牛奥雁ヶ腹摺山で久しぶりに人に会う。1人は大菩薩峠方面へ歩いて行き、5人ほどのグループは上日川ダムの方へ下っていった。ここも富士山の眺めがいい。 牛奥雁ヶ腹摺山から下り始めると小さな凍った池があり、氷を割られた跡があった。川楜沢ノ頭との鞍部である賽の河原へは急な笹原の下りでやはり滑る。川楜沢ノ頭まで登り返すと平坦な尾根が続く。大峠への道を分けると静謐な森の中に黒岳の山頂がポッカリと現れる。展望はない。今日最後の一休み。 黒岳から湯の沢峠まで 黒岳から少し下って白谷ノ丸に出ると視界が開ける。大蔵高丸から破魔射場丸までの長い稜線と三ツ峠山、奥には富士山。贅沢な景色だ。 白谷ノ丸からは笹の生えた樹林帯の下り。ずるずると滑りやすく、最後の正念場。最後に湯ノ沢峠に出るところでトゲトゲの植物に右手を引っかかれてしまった。 湯の沢峠にて 峠から見えるくらいのところに湯ノ沢峠避難小屋がある。さして広くない避難小屋だが、水場が近くにあり、林道も通じており、照明がつくことから便利な小屋である。避難小屋と別棟のトイレはあるが、冬季閉鎖と貼り紙があった。避難小屋には10年前は布団が置かれていたのだが、不衛生という理由で捨てられてしまったようだ。今晩寒いかな、と2人で心配する。 ザックを置き、水を汲みにいく。水場の看板に従って谷に直接下っていくが、どうも急すぎて歩きづらい。水場は焼山沢の源頭で、左岸側にある。半割れの塩ビパイプから水が凍らず出ていて汲みやすい。帰りはくの字に曲がった登山道から小屋に戻った。ザックを外で干したり、泥の乾いたズボンをたたいたりする。 小屋でのんびりしていると来客があった。単独行氏で「疲れた」という。甲斐大和駅から大鹿峠に上がり、南大菩薩を縦走してきたそうだ。私たち同様滑る斜面で苦労したようだ。平日で他に人が来ることを想定していなかったので驚いた。 夜は鍋を作った。足を動かすと右太ももがつって動けなくなる。テントではなく小屋なので足を伸ばして痛みが引くのを待った。雪山のテントではよく足がつるが、これほどつるのは久しぶりだ。最近は日帰りばかりだったが、今日は泊まりがけの荷物を持って足への負担が大きかったのだろう。 鍋ができてからお酒を飲んだ。意外と澤乃井って飲んだことないね、と言って持ってきた澤乃井はおいしく、500mlがすぐ空になってしまった。早々寝てしまった単独行氏をよそにうどんで締め、19時に就寝。 12月4日(土)湯ノ沢峠…大谷ヶ丸…大鹿峠…笹子雁ヶ腹摺山…笹子駅 湯ノ沢峠から大蔵高丸まで 21時と3時ごろに起きる。21時ごろはトイレに起きた。外はシカの目があちこちに光っていて不気味だ。水を飲みに訪れているのだろうか。寝床に入ると鼻詰まりで横向きに寝るとどうも鼻が詰まる。3時ごろは口が乾いて起きて寝る前に作っておいたお湯を飲む。幸い風は吹かず、持っているものをすべて着込んだからか寒さはそんなに感じなかった。 5時半に単独行氏が起きて我々も起きることにする。ラーメンを作って食べていると外にエンジン音がする。歯磨きがてら外に出てみると白い車が停まっている。車で稜線まで上がって来られると思うと便利な峠だ。 お湯を作って各自の魔法瓶に詰める。水は各自1リットルほどずつ残り、寒いからあまり飲まないだろうと水汲みはしなかった。 単独行氏と別れて笹子へ向かう。湯ノ沢峠にある登山者カウンターを押し、大蔵高丸へ登る。少し登るとシカ除け柵の扉を開けるとお花畑があるが、12月とあって花は見当たらなかった。大蔵高丸へはいったん西側へトラバースするようにしてから登る。登りついた大蔵高丸はススキの野原で富士山の好展望地だ。朝のうちということもあり、雲ひとつない富士山を正面に眺めることができた。今回の山行で一番印象に残った景色である。 大蔵高丸から大谷ヶ丸まで 大蔵高丸から破魔射場丸までは登り下りの少ない稜線を歩く。樹林帯やススキの原っぱを抜けて大して登ることもなく破魔射場丸に到着。ここも南側の樹間から富士山が見える。1648m標高点から天下石への下りは霜柱で滑る土の斜面だった。草地に逃げ込んでもトゲのある木が生えていてつかめない。草のでっぱりをつかみながらクライムダウンで下る始末だ。 天下石は何の特徴もないピークの巻き道に高さ2mほどの石が置いてあり、どこから出てきたのか不思議な岩だ。1626m標高点から米背負峠への下りは樹林帯で滑るところはなかった。米背負峠を過ぎると大谷ヶ丸の急な登り。 大谷ヶ丸山頂にはベンチみたいな岩があり、そこで休む。この辺りからは歩いたことがあるOさんからもうツルツル滑る斜面はなかったと思うと言われ、ほっとする。 大谷ヶ丸から大鹿峠まで 大谷ヶ丸からは枯れ葉の道を下っていく。はじめは急だが下るにつれ緩やかになっていく。樹林帯で滑るところはない。途中、南側に並木道のような広い尾根があり、そっちが尾根かと思ったら右手が尾根だった。アルペンガイドによると防火線のようだ。植林の結果なのか紅葉していたら見事だと思う。 ピークらしくないコンドウ丸を過ぎ、曲沢峠に着く。曲沢ルートは道が荒れていて通行注意という看板があった。登山道はオッ立1301mの北側を巻く。南からの日差しが長く木の影を落とし、冬らしい風景に思わずカメラを取り出す。巻き切るとお坊山が見えて大きい。景徳院への道を分け、大鹿山は道に従い南側を巻く。 大鹿峠から笹子雁ヶ腹摺山まで 大鹿峠はごく狭い峠で、景徳院側がザレて落ちている。峠みちはいったん大鹿山方面へ登って尾根を下るようだ。日差しがよくあたり、ベンチがあるので休むことにする。景徳院から登ってきた単独行の人が休まずお坊山へ登って行った。 大鹿峠からお坊山へはこの日1番の登りだった。樹林帯を時間をかけて登っていく。登り切って尾根に出てもまだお坊山ではなく、しばらく歩くとやっとお坊山だった。お坊山から米沢山までは大した登り下りもないだろうとたかをくくっていたらけっこう急な下りが控えていた。細かい登り下りもあり、トクモリ(門井沢ノ頭)という名前の峰もある。日帰り圏内らしくけっこう歩いている人が多い。 地味にきつい米沢山への縦走を終え下りにかかる。米沢山の下りには岩場があり、鎖も設けられている。日帰り装備なら身軽に下れるかもしれないが、泊まりがけの装備を背負っていると慎重にならざるを得ない。こんなところあったかなとO氏は記憶をたどっていたがあまり覚えていないようだ。 米沢山から笹子雁ヶ腹摺山への縦走も登り下りが多い。1箇所南側の展望が開けるところがあり、富士山も見える。ただ、手前の山が近すぎて裾野が見えない。笹子雁ヶ腹摺山には反射板があり、遠くからでも目立つ。 笹子雁ヶ腹摺山から笹子駅まで 急な登りを経て笹子雁ヶ腹摺山へ到着。笹子雁ヶ腹摺山の山頂は狭く、ベンチが1つ置いてある。そこで2人組が休んでいた。富嶽十二景の1つらしいが、木が伸びていてあまり景色はよくない。最後のひと休み。 笹子雁ヶ腹摺山から笹子駅へ下る。反射板の横を通り、植林帯が多くなる。左下に大きな建物があり、あれは何かとOさんと話す。トンネルの設備ではないかとかいろいろ考えたが、地形図を見ると発電所のようだ。8人ほどの集団を追い抜き、送電線頭に出る。もう下界は近い。YAMAPでは降り口を間違えやすいとあったので左手に踏み跡がないか気をつけたが、見つからず尾根筋を下った。けっこう急な道で途中単独行の人に追い越させてもらう。 墓場の上に出てOさんがなんか違う、と左手の方に歩いていく。どうやら沢沿いの道が正解だったようだ。道がわからず右か左かと相談し、下っていく道を選ぶ。そうこうしている間に道を開けてくれた単独行氏は墓場の横を通って下っていってしまった。 笹子駅までのダラダラとした国道を下る。バス停の時刻表をのぞくが土日は本数が少なく歩いた方が早かった。車道を30分ほど歩き笹子駅に着く。30分ほどの待ち時間でジュースを買ったり、トイレに行ったり、ズボンについた草の種を取り除いたりしていた。14時を回った笹子駅は日陰で寒く、ダウンジャケットを取り出して電車を待った。私たちが追い抜いた8人ほどのパーティーも追いつき、意外と日帰り客がいるんだなと見直した。 おわりに なかなか行けてなかった山域を歩き通すことができてよかった。Oさんも付き合ってくれたので、タクシーも割り勘になったし、酒も2人で飲むことができた。 天気はよく、富士山が見え続けたのはこのコースどりの利点を最大限活かせてよかった。概ね想像した通り、大きな起伏のない歩きやすい道だったが、石丸峠への下りなど滑りやすい斜面がいくつかあったのが疲れた。また、大鹿峠から笹子雁ヶ腹摺山まで意外と登り下りが多く、岩場もあり、泊まりがけの装備では重くてつらかった。 湯ノ沢峠避難小屋は照明ありで快適であった。冬にもかかわらず稜線近くで流水が手に入るのはありがたい。毛布がなかったのは想定外だったが、さほど冷えることはなかった。 笹子付近の山はあまり行ったことがなかったが、日帰りの登山客が多いのは知らなかった。中央線に近い場所に住んだらこの辺りも登ってみたいと思う。
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