廃村とカレンフェルトの山

2021.11.29(月) 日帰り

彦根の東の丘陵地帯に廃村があることは、以前その付近の山村の紅葉散策に行った時に山間の家並みを見たので知っていた。最近の新聞にその周辺の廃村で学生達が畑を耕す姿の写真を見た。その名前が『男鬼(おおり)町』である。町の名前に『鬼』名が付いているのだ。確か大峰・奥掛けに『前鬼』なる地名があって、前鬼さんという氏名を名乗っているというのを聞いたことがある。 この廃村の周辺に石灰の採掘現場があるらしいことも知ったので、廃村と一緒に散策しようとしていると、ヤマップにもこの辺のコースがあるので参考に見ていると、男鬼山という山名もあるので登ってみようと出かけた。 河内風穴への道を進み、途中から鳥居本へ抜ける道が昔と比べると物凄く良くなっていた。河内風穴方面が脇道風になってしまう、その鳥居本への道を進み、水谷集落を過ぎて仏生寺町手前から右に林道を入る。舗装の林道で離合は少し難しい所もあるが、快適な道をクネクネと進むとやがて男鬼峠に到着した。そこには4,5台は駐車可能な敷地があった。道は更に奥に2本に分かれてあり、右下は男鬼集落へ、左は男鬼山を東に巻く林道のようだ。来た道の南の方向にも林道があって、それはこれから行く『イブキ』というピークへ行くコースであるが、これも朝来た林道にも通じているようだ。この道は狭いので走行頻度は少ないような感じだ。 その林道はほぼ水平にアップダウンしながら進み、右下方向へ行くのが先ほど通ってきた林道と合流するのであろう。我々は更に南に進むとダートとなった林道は広く緩く左にカーブしている。カーブの頂点から南南西に踏み跡と赤テープがあるので進み、針葉樹林で少ない藪が絡まる不鮮明な尾根の踏み跡を登ると、樹林の中に『イブキ』はあった。周囲は深い森の中のイメージで、何も見えずほんの少しの赤色の葉があるだけであった。紅葉の季節以外興味の湧きにくい場所だ。 カーブのポイントに戻って、その先に進むと左に高い壁が現れ、石灰の採掘場の広い平坦地に出た。左は100m弱の高さの絶壁があって白っぽい岩がゴツゴツと現れている。広場の端には古い建物が朽ちかけているが残っている。広場の右下も急斜面で、彦根や米原の一部が良く見える。そこには、石灰の採掘の名残と思えるコンベヤ-と大きなタンクが見えるが、放棄してから数十年以上経過していそうな雰囲気であった。採掘の絶壁を南(右)方向から迂回して捲き、絶壁の天辺に向かうと採掘場は何段にもなって徐々に競り上がっているのが判った、下からでは見えない構造である。此処までくると、見晴らしが誠に素晴らしいものがある。今日は天候も良いことも相まって、琵琶湖と少し雪を被った比良山系や比叡山もみえる。琵琶湖を取り巻く平野群も畑も町もものの見事に見えるではないか!素晴らしいの一言だ。 後方に目をやると、鈴鹿の山並が見えていて御池や藤原、近くには鍋尻山も手に取るようだ。先ほど登ったイブキは樹林に覆われた何のことはない少しこんもりとしたふくらみ程度にしか感じない。この石灰採掘場最上部は643mの標高でイワスの最高点とある。イワスは639mとのことだが、少し北西方向のピークのようだ。そこは針葉樹に囲まれて殆ど景色は見えない場所なので、こちらの方をピークとしたいくらいだ。 イワスピークから樹林の稜線を進むと比婆之山の疎林の山頂に出て、北に少し下ると比婆神社があって立派な社が垂直の大岩に設置されていた。その参道が男鬼町まで続いているのを知ったのは、長い林道を下って男鬼町にある石の鳥居のすぐ脇に橋を見た時であった。今でもこのような山中にも拘わらず、定期的に祭祀を執り行っているのは信仰心の強い方々の、故郷への強い思いが伺える。 そして、男鬼町集落に入ると、10棟未満の廃屋となった家屋が続いてた。その中に今でも時には来ているらしい家並も1棟あったが、やはり荒れた家屋はもの悲しさしを感じざるを得ない。その中に、『宇佐山小』と『少年山の家』の文字を彫った、ブロック形状の記念碑に何故か心が打たれた。すぐ近くには集会所らしきものがあるが、ひょっとすると分校跡を集会所的にしたものかもしれない。広場は運動場かも。とても狭いが。集落のはずれ迄進んでから元の鳥居に戻って、男鬼山を目指した。 林道が彼方此方にあるが、登山コースらしき地図の点線を忠実に進むには藪も木々もお構いなしに進み、それらを避けて急斜面を登らねばならない。行く先が明るくなるとコル状の峠で、ここから稜線を辿れば山頂へ行くものとGPSの地図とにらめっこしながら、針葉樹の植林地を進むとカレンフェルトのニョキニョキした岩が一杯の斜面となって、何時しか落葉樹と灌木に変わっていた。平らな山頂部に倒木が酷く、それにイワヒメワラビや藪が絡んでGPSの山頂部に到達するのが至難の業だ。倒木の上に載っ足り降りたりと大変だ。やっとのことで、男鬼山683mポイントの山頂標識にタッチできた。山頂周囲は樹林はないが、その外側は使用樹林に覆われていて、外側はなにも見えないのが残念である。 GPSから、男鬼山の北側に殆ど同じ高さの山があるので、行ってみようと急遽西に少し進んで合流した林道から北に向けて進むと、アップダウンを繰り返しながら雑木林を進むと向山に到着した。すぐ下にはエレベータ会社のシンボルの塔が見えるではないか。更に、琵琶湖岸にホテルのような大きな建物も見えるし、長浜の平野も伊吹も直ぐそこだ。 今日は緩い傾斜と少しのアップダウンの継続する廃村とカレンフェルトの丘陵地帯を廻るハイクであったが、意外と今まで知らないことばっかりで、驚きの発見が多かったことに満足だ。 ”八”、”永”、”竹”