活動データ
タイム
13:03
距離
39.4km
のぼり
2141m
くだり
2145m
活動詳細
すべて見る自分の限界を試したく、亘理地塁山地全山縦走にチャレンジ。惜しくも打ち砕かれた記録でございます。 【山行目的】 YAMAPのレポートを拝見していると、時折人間離れした超絶的な記録を見かけます。谷川馬蹄縦走1dayとかそんなやつです。コースタイムであれば3日はかかるところを日帰りで駆け抜けている記録を見ると、あなたは仙人か神獣か何かですかと聞きたくなってしまいます。とても真似ができるとは思えませんが、自分はどれくらい”人間を超えた先”に近付けるだろうか。ふとそう思う時があります。それに、単純に自分の限界を知りたい。自分の限界が分かれば、今後の山行計画や有事の際の己の余力を把握するなんて時にも少しは参考になる気がします。自分のリミットとは如何ほどのものか。それを計測することが目的の1つです。 縦走が好きなので、「全山縦走」なんて響きは大変惹かれます。ましてそれを1dayでとなると…なんてカッコいいんでしょう。その昔所属していたサークルの山行記録に、 先輩が打ち立てた「八ヶ岳1day縦走」なんて記録がありました。自分には到底達成できそうもない驚異的な記録に畏れを抱きつつ、山行記録としては大変カッコいいなと思ったものです。昔から「全山1day縦走」は頭の片隅に引っ掛かっていたのかもしれません。飯豊や朝日、神室といった本格的アルパインでの力試しは怖さが先行してやりたいとは思いませんでしたが、里山にカテゴリされるだろう亘理地塁山地であれば試しても良いのではないか。皆さんの投稿のおかげで亘理地塁山地という存在を意識するようになり、胸の底で眠っていた野心が沸々と鎌首をもたげてきたのです。今回はそんな野望に挑むことも目的でありました。 亘理地塁山地、全山縦走となるとその距離は45kmに及びます。ちょうどフルマラソンくらいの距離です。それを知って、なるほどと思いました。私が今まで自分の足で歩いた1日での最長距離はランニングでハーフマラソン、登山では6月登った磐梯・猫魔ヶ岳を縦走した30kmです。自分の限界を目指すと言うと漠然とした感じになりますが、少なくともフルマラソンを目指してみるとなると何だかイメージが固まります。まずはフルマラソン相当を目指そうと、心が決まったのでした。30km歩けたのなら、45kmも決して無謀な数字ではない。ただし、亘理地塁山地について書かれた世のブログを覗くと「1日で歩くのはよほど人間離れした人でないと難しい」なんて評されています。となると、「人間を超えた先」を知るには打ってつけじゃないかと膝を叩いたのでした。 とはいえ、フルマラソン相当を1日でとなると、悠長に歩いてはとても叶いません。どこかで走るなりしないと間に合わないでしょう。そこでトレイルランです。個人的にはそそられないスタイルではあるのですが、多面的登山を提唱している身としては、やはり登山の1ジャンルとして気にはなる存在です。今回は全山1day縦走をすべく、手段としてのトレイルランを導入することで、トレイルランについて見識を深めよう、というのも目的でありました。 したがって、「超えた先」を知りたい・フルマラソン距離を歩いてみたい・全山1day縦走をしてみたい・トレイルランについて知りたいという多目的山行となったのでした。 【亘理地塁山地について】 地塁山地とは国土地理院の説明によると、断層の活動によって直線的に発達した小規模の山脈のことを指すようです。亘理地塁山地は宮城県亘理町逢隈の阿武隈川出合から発し、常磐道に並行して山元町、福島県新地町まで一直線に延び阿武隈山地に合流する200-300m程の丘陵で、双葉断層の活動で隆起した丘陵です。YAMAPのランドマークでは北端が七峰山、南は鹿狼山で、国道113号の大沢峠にて一度標高を大きく落とすので一般的にはここまでの丘陵部を”亘理地塁山地”と称すようです。常磐道を走ると西側にずーっと山並みが続いている様子がよく分かりますが、もっと分かりやすいのが仙台空港に離着陸する飛行機からの車窓です。もし仙台空港からフライトの機会があれば、離陸直後南側に注目してみてください。亘理の海岸線に並行する直線状の山並みが手に取るように分かります。それこそが亘理地塁山地です。 さてこの山地、標高で言うと里山にランクされるかと思いますが、注目すべきはその長さ。前述の通り、全山縦走すればフルマラソンを上回る距離であり、達成感はかなりのものとなりそうです。同時に、町から近いという里山としての特徴も併せ持ちます。これはつまり、有事の際の安全性が相対的に高いことを意味します。山並みとしては南北25kmに及び、神室連峰を凌駕する長さを誇る亘理地塁山地ですが、標高は低いので合計7本の車道が山地を横断しています。内1つはトンネルですが、残りは県道クラスの道で本当に立ち往生となってもタクシーによるエスケープが可能です。この町への近さ・安心感はまさにトレイルランを試してみるには最適でした。実際登山中に知りましたが、12月5日に開催されるトレイルランの大会「亘理グレート・トレイル」の会場にもなっており、目星が図星になる経験をしました。この大会コースはもともと三陸海岸の一大トレイル「みちのく潮風トレイル」の指定コースと大部分が重複しており、そのルートとしての実力(知名度・整備具合・人気)は上昇中と思われる活気あるエリアです。 ただし、長大な丘陵のため、整備具合は場所によって極端に変わります。みちのく潮風トレイル区間は何の心配もいらないトレイルランにもってこいのルートでしたが、その他の区間はいささか厄介でした。作業道の交錯・繁茂する雑草は難敵でしたし、人気エリア以外は誰もおらず景色もなく、…正直苦行でした。この極端な落差も里山の面白さの1つな気はするのですが、人気エリア以外は正直全山登頂を目指す方以外にとっては縁がなくても仕方ないかもしれません。 ルート概要は以下の通りです。 ◇槻木駅-三門山-割山峠◇ 本ルート最大の関門。前情報から道が分かりづらいとは聞いていたし、景色も皆無なので早めに通過してしまおうと朝一に持ってきましたが、予想以上に難儀しました。 槻木駅から槻木大橋を渡るまでは車道なので特に何も。登山口の住所的には逢隈ですが最寄駅は槻木です。駅前の駐車場は管理人の手続きが必要なので近くのコインパークに停めました。 橋を渡って左手の工場脇から登り始めますが、はじめは敷地内のような構えなので少し躊躇いました。まもなく何となく道っぽいところを進んでいきますが、ここがススキ・セイタカアワダチソウ・ヨモギなどの雑草軍団に阻まれ最悪でした。幸い花粉症ではないから良かったですが、手足をフル活用して茂みを掻き分けながら進むので種が飛散し今にもクシャミしたい気分。顔も何か所かひっかき傷ができました。何度道を間違っていないか猜疑心に襲われたことか。七峰山まで1時間近く掛かってしまいました。この登りが1番大変でした。春先雑草が生い茂る前はもう少し登りやすいのでしょうか…?少なくとも秋の終わりで雑草が形を保っている今は登山道と言える状態ではありませんでした。山の反対側の神社からも登れるようですが、こちらの方がまだ登っている方が多そうなので遠回りしてでも山を回り込んだ方が良かったかもしれません。 標高80m付近で道が方向を変えたあたりから今までのは何だったのというくらい藪が解消して、通常登山と差し支えない水準で歩けます。そこから三門山までは地形が弱いので多少分かりづらいところもありますが、マイナールート慣れされている方なら問題ありません。ただイノシシの気配は濃かったです。 三門山の山頂は施設で行き止まりです。縦走路は少し手前の別のアンテナからピンクテープを追うように森に入っていきます。入口が藪に覆われているので七峰山の再来かとテンションが下がりますが、茂みはすぐ終わりその後はちょっと分かりづらい登山道というレベルです。 箕輪峠は一帯が採石場で山が切り取られているので、その断崖を避けるように一度集落に降りて登山道に復帰します。峠を越して少しだけ下るとピンクテープがあるのですが、ここ…登るの??という程道がハッキリしません。不法投棄の多い小さな沢を少しだけ下り160点から流れる沢地形の中を登っていきます。この沢の中も道が不明瞭な状況が標高100m付近まで続きます。その後人工林に入るので踏み跡が分かるようになりますが少々急坂です。 その後割山峠直前で地形を追って若干道を間違えましたが、極端な難所はありません。 ◇割山峠-四方山-深山◇ 今までと対照的に、かなり整備された道です。それもそのはず、大部分がみちのく潮風トレイル区間ですから。景色も良い所が多く、最高。亘理地塁山地で最も美味しい区間だと思います。正直、ここだけ歩けば全山登頂を目指す方以外は満足するかと思います。整備されていることもあって、一番飛ばせた区間。というより、トレイルランが可能な区間はここだけかもしれません。藪を掻き分けるランニングなんて成立しませんよねぇ…涙。 眺望の良かったところは北から ・閉居山 近くの採石場の迫力ある断崖 ・黒森山 別名八方山。木が伐られているので蔵王から仙台までの大展望が楽しめる ・四方山 車でも行ける。桜の季節は素晴らしい気がする。周りの広葉樹林も楽しい ・角田山元トンネル上 西側の展望が良い ・深山 山元の町が良く見渡せる。蔵王側にも展望アリ またこの区間は地図にはない麓への道が何本かあって、エスケープも容易です。 ◇深山-小斎峠◇ 深山は登山者が多いので、しばらくは歩きやすい道です。お別れ峠を過ぎると快適な道とお別れ。笹との距離が近まります。それでも金津展望台までは何も困ることはないのですが、そこを境にまた藪のギアがちょっと上がります。馬船峠手前の下り、高瀬峠への下り、影倉山登り、新城山登りは少し藪がうるさかったです。踏み跡・テープは分かる程度にはあります。ただ影倉山でテープを追っていたら道を間違えました。渋い道なので小斎峠で突然行き交う車を目にしてちょっと驚きます。 ◇小斎峠-福田峠-新地駅◇ 福田峠着が日の出の近づく16時前と予想されたので、峠からエスケープを決めました。日が長ければひょっとすると完走できたかもしれませんが…でもここを押し通るのは自分の山の考え方に相反してしまうので、おとなしく下山を選択。 小斎峠までの道よりはかなり歩きやすくなりますが、相変わらず地味なアップダウンが続きます。小斎峠の登りが一番分かりづらいかもしれません。車のドライバーからすれば何もない山に分け入っていく不審者にしか見えないかもしれません。 福田峠からはひたすら車道。7km以上あるので辛いですが、駅のすぐ横に温泉施設があるのは大変重宝します。 【トレイルランについて】 登山におけるリスクマネジメントは永年の課題かと思います。通常登山でさえ「自己責任」で安全策を講じなくてはいけませんが、山を走るとなるとより厳重にマネジメントを敷かなければなりません。ただ、雨が降ったら…怪我をしたら…暗くなったら…と様々なアクシデントを想定した場合必然的に荷物は増えてしまいますが、この手のリスクマネジメントはトレイルランに必須の軽量化とは相反する考え方かと思います。トレイルランで想定されるリスクを回避するだけのリスクヘッジを自分では思い付かなかったので、今までトレイルランについては距離を置いていました。ただ、トレイルランにはトレイルランなりの面白さがあると思いますし、登山手段として考えてもそのスピードは魅力的です。今回はそんなトレイルランとしての楽しさを探りつつ、全山縦走を果たすための手段としてトレイルランを検討することにしました。 とはいえ自分はあくまで”登山者”であると思っているので、普段の荷物から万が一に備えて携行している物を外し、要るものだけで登ることにしました。ただそれでもトレイルランナーからすればまだまだ削減できたでしょう。そもそもザックが重すぎますし。莫大なエネルギーが必要と思ったので食料も多めに持っていきましたがそれも重さの元。職場のマラソン体験者に最も辛かった点を訊いたら、膝周りが痛くなることと回答を得ましたので逆に普段使わないストックを召喚。要するにほとんどただの登山者なのでなんちゃってトレイルランです。元より自分のリミットを知るための山行、完走できれば万々歳で、途中撤退も当然想定内。流せるところは流して、疲れたら普通に歩こう。そのくらいの心意気でした。あくまで、無理はするけど無茶はしないスタイルで行けるところまで行こうというわけです。 勝算なしに突っ込むのはさすがに無謀なので、一応想定は組んでみました。自分の今までのペースを見てみると、登りはコースタイム比130%、下りは200%で歩けています。今回は地図を4枚使ったのでYAMAP式の山行計画は組めず、Excelで算出。3時登り始めで先のペースで歩き通せば理論上は11時間で歩けてしまう。まぁそんなうまくいくことはないよな~後半まで軽やかペースで進めるわけないしと思いましたがその通りでした。そもそも序盤のヤブとかリサーチ不足でしたし、休憩時間をまったく考慮してなかったですからね笑 というわけで見えてきたものがあります。 ①従来の装備でトレイルランをすることは難しい。軽さが全く違う。 ②休憩という概念を取っ払った方が良い。そのためには走りながら飲めるハイドレーション装備等が必要 ③使う筋肉が違うし、体の使い方も違う。トレイルランにはトレイルランなりの体の造りがある。(今回は膝の裏や臀部など、まったく意識しなかった筋肉が消耗しました) なんちゃってトレイルラン、というか均しの移動速度はたった3km/hだったのでもはやトレイルランと呼べる代物ではなかったなと思います。四方山付近みたいな道がずーっと続くならもう少しペースも上がった気はしますけれど…。それにしてもこの道を1dayで行けちゃう方は本当何なんでしょうね笑 実はイノシシだったりするのではないでしょうか…笑 でも確かにトレイルランなりの魅力もなんとなーくわかった気がします。体力による突破、とでも言うのでしょうか。岩稜や雪山といった技術で突破するタイプの山の面白さを体力面に振り切った感じですかね。ひょっとすると、体と装備を整えれば1dayも可能かもしれません。一度挫かれた壁を鍛え上げた体力で乗り越える、それはそれで面白いかもなとは思いました。でも純粋にランニングの場を山に移したって方も多いかもしれませんね。走るだけで気分が良くなるのは私もわかります。加えて山を歩く楽しみは…良い景色とか関係なしに山にいるだけで気持ち良いですもんね。私は景色も大きな楽しみの1つなので写真を撮りまくってしまいますが、あんまり景色を残すことに執着のない方は「山を走る」その行為そのもので十二分に楽しめるんでしょうね。 【おわりに】 ということで、いつもの通り長文になってしまいました…笑 いや~完走できなかった! 悔しい!!あと3時間あれば!!!でもこの時期は日が短いですから、仕方ないですね。自分が人間離れした山鮪でなく、まだ人間だと思えてなんだか安心しました笑 ここを1dayで歩かれる方はすっごいですし、トレイルランナーもすっごいなと思います。今までも登山速度の速さはスゴいなと思っていましたが、こうして歴然と自分との差を突き付けられると身をもってその凄さを思い知ることができました。今回の山行目的の1つ、自分の限界は歩行時間13時間、距離は40km位ってところでしょうか。 薄々感づいていましたが、私はやっぱり歩いて登るのが好きです。何だかんだ言っても完走は狙っていたので前半はそそくさと進みましたが、常に時間に追われている感じがあって心から山を楽しめませんでした。小斎峠で日没まで残り3時間となり、次の峠で撤退を決めようと思ってから何だか心が楽になって、のんびり歩こうと普段のペースで歩きはじめると、終盤の紅葉がとっても綺麗に思えました。やっぱり自分はこうやって景色を愛でながらじっくり登りたいなと。そんな風に思う景色は、里山に転がっているありふれた景色かもしれませんが、なんだか悟った自分にとっては値千金の景色でした。 小斎峠で撤退を決めたのでそのまま下山しても良かったのですが、行けるところまでは行こう。そう思えた自分は本当に山が好きなんだと思います。山の登り方は人それぞれ。今までトレイルランを心のどこかで敬遠していましたが、トレイルランもその登り方が好きだから取っているスタイルなんだよなってことが理屈じゃなくで肌身で受け容れることができたのが今回の最大の収穫かなと思います。
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