白沢五山+長袋五山+1座の11座ピークハント トレイルランとこの辺の地質の話

2021.11.14(日) 日帰り

 久しぶりの職場登山会。毎年紅葉後、降雪前の中途半端なこの時期は登る山に迷っていましたが、今年はYAMAPのおかげでたくさん情報が集まってきます。今回は今まで行ったことのないエリア。これもたくさんの山レポを受け取れるYAMAPを始めたからこそ知ったエリアです。その山とは白沢五山。仙山線の愛子の隣駅、陸前白沢の背後に連なる五つの小さな峰で、またの名を五つ森とも言います(実際、このあたりの地名は五つ森)。地理院の地図には名前がありませんが、地元の方に呼ばれ愛され、今もその整備を感じられるような素敵な山群でした。今度は七つ森にしようということで、その予習がてら五つ森に向かいました。まぁ、欲張って南側の長袋五山も制しちゃおうという計画なので、実は今回の方がルート長いんですけど…笑  というわけで今回の目的の1つが、ピークハントです。ピークハントという、点にこだわった登り方は個人的に目指している”多面的登山”の正反対なのであんまり意識しないようにはしていますが、いかんせん先週の月山六十里越があんなに歩いたのに1つもピークカウントされずちょっと悔しくて。ピークだけを考えているわけではないですし、先週は大変実りある山だったので満足はしています。が、先週だけじゃなく、沢なんかやってても「こんなに疲れたのに、ピーク1個もカウントされてないじゃん…!」みたく思うことが度々あって、今回はまとめて溜まったフラストレーションを発散したい気分でありました。それから、職場の先輩がトレイルランに興味を示されているので、走れそうな山域探しという偵察も兼ねてです。 【白沢五山の地質】 さて、とりあえず地質のコーナーです。分県別登山ガイドには載ってるんだろうな~とは思っていましたが、登りたい山が多すぎるのでどうしても里山は後回しになってしまうのです。加えて派手さに欠ける里山、いままでほとんど興味も湧かなかったからこそ登ることもなかったのですが、それはお山に対して申し訳ないので、ちょっと調べてみました。相変わらず地質学の御大、地質調査総合センター(ブラタモリ出演おめでとうございます!)さんの資料からです(H24『仙山線沿線地質ガイド』gsj_openfile_563jp.pdf) さて、昔の火山ということで可愛らしいお椀型の山がポコポコと連なっているのが七つ森ですが、こちら五つ森はどういう成因でしょうと気になると、地質を調べざるを得ません。毎度思いますが、登る前に調べればいいのに…笑 でも登った後だって、その後山を見る目が変わりますからね。登って終わりの関係にしたくないですし。先述のガイドを見てみると、白沢五山一帯は白沢層と呼ばれる第3紀中期(約1000~500万年前)に堆積した砂岩・泥岩の層のため、非火山地形と言えます。この白沢五山に限らず、宮城県において脊梁山地である蔵王・二口・船形から平野に向けて細長い丘陵が東西に連なっているのは疑問でした。火山から延びているので溶岩流なのかなとも思っていましたが、それにしては規模が大きすぎますし(長すぎる)、標高は一定の標高を保つのでなくどんどん平野に吸収されていくはずです。今回はじめて東西丘陵の地質を調べましたが、やはり堆積岩ということで溶岩ではないんですね。川沿いなのでさしずめ河岸段丘とか断層崖とかそういう作用の方が強いでしょう。白沢五山から尾根伝いにずーっと行けば、河岸段丘と断層でできた崖を守りの機構に取り込んでいる青葉城がありますし、この青葉城の丘を作った広瀬川は白沢五山の下を流れていますから、造山の作用的にはやはり似たような感じだと思います。登ってみると弱い起伏が広がっていたので、隆起後準平原化して結果的に五山の形になったのかなと結論付けました。 と書き終えた後でもう少し調べてみると、この手の地形は舌状台地と言うんですね。要因は複数あるようですが、宮城県一帯のそこそこ目立つものだと複数の河川に侵食された台地の縁辺部・もしくは溶岩台地の末端というのが当てはまりそうなところ。仙台の20万分の1地質図を見てみるとこの一帯は昔の奥羽山脈火山フロントから流出した感じの凝灰岩主体の地質ですし、秋保川・広瀬川といった大きな川も並行しているので、複合的な作用なんですかね~。専門的な論文を読むほど勉強したわけじゃないので正確なところはわかりません笑 ちなみにこのあたりで目立つ戸神山や太白山、蕃山、仙台観音あたりの高まりは全部安山岩なのでかつては火山だったようです。太白山のピラミダルなピークなんて特徴的ですが、やはりこれらは地質の違いが地形の違いに現れる好例。やはり地質を齧ると面白いです。白沢という地名も、白沢層の堆積岩が白く見えるから付いた地名な気がします。ただ、とりわけ面白かったのは”古仙台湖”です。 ◇古仙台湖◇ 秋保は石でも有名ですが、その秋保石が溶岩として地表に噴出した後、地下のマグマが出た分沈降したところに水が溜まったのが古仙台湖。そしてこの火山体の名残を白沢カルデラと呼ぶようです。おっ、出てきましたね白沢の地名。ただ、白沢と呼ぶこのカルデラは非常に大きくとても白沢周辺だけでは収まり切りません。秋保-折立-根白石-定義-作並をすっぽり覆う巨大カルデラで、その地熱を仙台市の電力源にしようという動きもあるくらいです。侵食・隆起で原型が判然とせずその姿はなかなか気付かないですが、山で言うと秋保の大倉山-蕃山-仙台観音-堂庭山-鎌倉山-戸神山あたりが外輪山ということになるのでしょうか。地質図的にこれらの山は外輪山というよりも貫入岩ぽい分布をしているので全然かつての火山体の姿がイメージできませんが、この一帯をジオパークに指定する取組もあるようなので、その辺の解説は今後に期待しましょう。カルデラの詳細については東北大学をはじめ色々な機関が調査されているようですが、青葉区の仙台市民センターの図が古仙台湖とともにイメージしやすいのでリンクお借りしますhttps://www.sendai-shimincenter.jp/aoba/miyaginishi/oshirase/page/hmmr2n000005vyaw.html で、この古仙台湖の湖底に溜まった砂や泥が岩になったものが、白沢五山一帯の”白沢層“。よくよく地質図を見ると、泥岩・シルトの他に凝灰岩も混ざっているようなので不思議に思いましたが、かつてのカルデラ底と考えると納得です。 【トレランについて】 はじめにお断りしておくと、私はトレイルランって手放しに歓迎できる登山スタイルではないなと思っています(トレイルランナーの方、大変申し訳ございません!)。山は自然相手ゆえ、不測の事態に対応できるようにしておかなくてはいけない。そのような考え方で学生時代から縦走登山に親しんでいたため、街から遠く離れた高山帯で驚くほど軽装なランナーの方とすれ違うと、正直内心ギョッとしてしまいます。もちろん私はトレイルランをしたことがないため、ランナーの皆様がどれだけ対策を講じているかわからないですし、実際はちゃんと用意があるのかもしれませんが。ただ、危険への対応はランナー自身に限った話ではありません。そういうランナーは多くはありませんが、中には道幅が狭いのにもかかわらず、スピードの速い方が譲られて当然のような態度で強引に通り抜けていく方います。落石なんかも心配です。 また、山への負担も通常の登山より大きい気がしてしまい、それも敬遠する理由の1つになっています。ただでさえ、足の置き場が悪ければ路肩を崩してしまったり、木の根を踏み抜いたりは山を歩くうえでどうしても生じてしまいます。ましてトップスピードで走れば、足の置き場を考える余裕はかなり制限されるでしょう。それに、運動体の速度が上がれば絶対的な運動量、つまり負荷は上がるので、歩くより走る方が登山道への踏圧負荷は大きくなると思うのです。ただ、一般登山道を利用している点では、トレイルランナーも登山者もそう大差はないのかなとも思うので、そのへんは本当に”偏見”なのかもしれません。人は自分と異なるものを嫌いますからね。 いろんな山のスタイルがあって良いと思います。自由に楽しめるのが登山の良いところですからね。その自由が責任を伴えば、の話にはなりますが。トレイルランも、安全に楽しめるのであれば、1つの山のスタイルとしてはアリなのかなと思います。着目したいのはその移動速度。圧倒的な速さは、武器であります。私がトレイルランに興味を持ったのは、2年前北海道で十勝から大雪にかけて縦走したときでした。忠別岳付近の本州では考えられない平坦な地形を走ることで行動時間を短縮すれば、縦走の可能性をより幅広く取れるなと思ったのです。もっとも25kgのフル装備だったのであくまで机上の空論レベルの考えではありましたが、このスピードを登山の手段として取り入れるのは魅力的でした。 (話が逸れますが、私は登山が主、つまり大目的なので、登るスタイルとなると手段として捉えることが多いなと思います。東北に来て始めた山スキーなんかはまさにそれで、その機動力に惹かれたというのが大きなきっかけです。まぁ他にも登山黎明期の冬山登山の最も一般的な手法、いわば最もクラッシクな山登りをしてみたかっただとか、単純に自分は山にも登るしスキーもするからというのも理由ではありました。それに最近は山スキー自体に楽しさを見出していますから、山スキーの目的化も定着しつつあります。それでも他のスキーヤーが山の中腹から滑り出している中わざわざ山頂まで行きますから、あくまでも自分は「スキーヤー」でなく「登山者」なんだと思っています。 ちなみに沢登りは元々沢登り自体をやってみたかったので、沢登りが目的です。ただ心の底から好きになれないのは、最初から沢登りが目的だったからかもしれません。沢登り、爽快感・冒険感・突破した達成感と楽しいことも多いのですが、反面突出した危険度や身体への負担が通常登山の比にならないなど、ツラいことも多いです。山については楽しさがツラさを完全に振り切っていますから全然気にならないのですが、沢の場合楽しさがツラさを覆いつくせないのですよね。そこが自分の中の山と沢の違いなのかなと思っています。 恐らくトレイルランについても同様の境地なんだと思います。山スキーも沢登りも、やってみないとわからないそのスタイルだけの楽しさがありました。トレイルランもやってみると面白さに気づくとは思います。が、その魅力がツラさを凌駕する程のものかというと期待薄なのも、自分がトレイルランに傾かない理由の1つなのかなと思っています。)  ただ、いろんな山のスタイルを知りたいですし、食わず嫌いももったいないので、自分でできる範囲でトレイルランをやってみるのはアリなのかもな、とは思っています。今回はどちらかというと先輩が興味を示していたため、トレイルラン可能エリアの探索ということで歩いてみました。本当に走るとなると、そもそもルート上に目立った障壁がない道、そして万が一骨折レベルの怪我をしても自力で救急車の来てくれる所までは辿り着けるエリア(あくまでイメージです)でなければ個人的にはおっかなくて走れそうにありません。そうなると、この山もそうですが、里山のような周囲の道路が近いエリアになってくるのかな、と思います。(それでも山は何があるかわからないと思ってしまいますが…)。ただ、実際歩いてみるとなるほど確かにランナーさんの記録があるのも納得という道でございました。ということで今の時点では自分はやっぱりトレイルランそのものよりも、山の情報からの推察と現場検証という、いわば「山と向き合う」登り方が性分に合っているんだなと改めて思った山行でした。 【ルート概要】 駅~大針登山口~長峰縦走路口 陸前白沢駅よりしばらく長閑な田園を歩き登山口に向かいます。白沢五山はエリア全体がぐるっと獣害対策の柵で囲われており、登山口は開閉式のフェンスになっています。杉林を抜け二次林を緩やかに登っていくとほどなく長峰縦走路にぶつかります。途、倒木が道を塞いでいるところがありました。問題はありませんが少し邪魔です。 長峰縦走路 今回の登山口(大針口)より、小塚山・岩垂山を南側に巻き五郎山に至り、そこから白沢口(国道457号戸神山登山口)に至るルートが長峰縦走路。全体的に道幅広く、足元に障害物もなく、起伏も少なく非常に歩きやすいです。ただ、作業道・枝道が何本も交錯するので割と迷いやすいです。そのおかげでピークを巡る迷路ゲームのような楽しさも味わえましたけどね。詳細は「みやぎ里山文庫」さんが概念図掲載されています。https://satoyama.obunko.com/00special/imgfile/001_1nagamineMap.html このwebページ、別件で先月知ったのですがなかなかマニアックですよね。山の楽しさは無限大であることがよくわかる一例だと思います。 それから、小塚山の登り口のお助けロープには要注意です。この山に特徴的なゴルフボールが滑り止めに付けられている面白い造りなのですが、切り株状の枯れ木に掛けられているだけなので上方向にテンションがかかるとすっぽ抜けるようなフィックスになっていますので使用の際は十分気を付けてください。 五郎峠~奥大旗山  他の方も書かれていましたが、一番厄介な部分。里山だからと侮っていると痛い目に遭います。特に沢の徒渉前後300mほどの区間が、沢・藪に道が搔き消され判然としません。地形的に険しいわけではないので突破はできますが、初心者の方と行くような区間ではありませんでした。小尾根に取り付いてからはきちんと踏み跡がありますが、お助けロープの連続でなかなかの急坂です。YAMAPルートだと小尾根に途中から乗っていますが、小尾根の下の方にピンクテープがありましたので、本当の道はそちらなのかもしれません(確認はしていません)。 長袋五山 白沢五山の南、秋保側のエリアを長袋五山と呼ぶんですね。南からやけ山・愛宕山・大旗山・二ノ輪山・五郎山が五座に数えられています。 奥大旗山からの登山道は明瞭ですが、大旗山・愛宕山の下りはそれぞれなかなか急で、もし濡れていれば滑るだろう土の斜面でした。また愛宕山を降り切り再度獣害対策の柵を越えると向泉寺の境内に出るのですが、完全に墓地なので場違い感がなかなかです。11座制覇のため、一端車道を歩き国道457線の峠に向かいました。地理院の地図では溜池の間から二ノ輪山に向かう登山道がありますが、立入禁止の柵がありその奥も判然としなかったので恐らく歩けません。峠には何台か駐車スペースがありましたが、満車状態でした。山行中は誰ともお会いしませんでしたが、戸神山に登られているのでしょうか…?峠からは長峰縦走路を歩くことになります。 もしトレイルランをするならば長峰縦走路が最適です。長袋五山周辺も路面状況的には可能かもしれませんが、いかんせん急坂なので…。大旗山~白沢五山の連絡は走るには不向きです。 ということで気付いたら例によって長文になってしまいました。これも今までまったく興味の沸かなかった白沢五山・長袋五山へのお詫びの気持ちということで…… でもせっかく調べたので、ご一読いただければ嬉しいです笑 【参考元リンク】 ・地質調査総合センター『仙山線沿線地質ガイド』 https://www.gsj.jp/data/openfile/no0563/gsj_openfile_563jp.pdf ・青葉区仙台市民センター https://www.sendai-shimincenter.jp/aoba/miyaginishi/oshirase/page/hmmr2n000005vyaw.html ・みやぎ里山文庫https://satoyama.obunko.com/00special/imgfile/001_1nagamineMap.html

右が函倉、左が前山

右が函倉、左が前山

右が函倉、左が前山

右が小塚、左が大森 これに写ってない岩垂を合わせて白沢五山

右が小塚、左が大森 これに写ってない岩垂を合わせて白沢五山

右が小塚、左が大森 これに写ってない岩垂を合わせて白沢五山

first peak

first peak

first peak

ギリギリ紅葉楽しめた

ギリギリ紅葉楽しめた

ギリギリ紅葉楽しめた

second peak

second peak

second peak

えっ…?ツツジ???

えっ…?ツツジ???

えっ…?ツツジ???

何て読むの?岩だら?ガンダーラってこと?They say it was in India??

何て読むの?岩だら?ガンダーラってこと?They say it was in India??

何て読むの?岩だら?ガンダーラってこと?They say it was in India??

この山で象徴的?なゴルフボール付きロープ

この山で象徴的?なゴルフボール付きロープ

この山で象徴的?なゴルフボール付きロープ

つつじ満開奥大旗山

つつじ満開奥大旗山

つつじ満開奥大旗山

祠があって、紙垂もあった大旗山

祠があって、紙垂もあった大旗山

祠があって、紙垂もあった大旗山

これは…トレイルランしたくなる…!

これは…トレイルランしたくなる…!

これは…トレイルランしたくなる…!

愛宕山山頂

愛宕山山頂

愛宕山山頂

向泉寺

向泉寺

向泉寺

大東岳(右)と糸岳 登った山が見えると楽しい

大東岳(右)と糸岳 登った山が見えると楽しい

大東岳(右)と糸岳 登った山が見えると楽しい

たぶんノスリ

たぶんノスリ

たぶんノスリ

素敵な楓

素敵な楓

素敵な楓

長峰縦走路はトレイルラン可能かな

長峰縦走路はトレイルラン可能かな

長峰縦走路はトレイルラン可能かな

五郎山、最高峰かつ一番眺め良いかも

五郎山、最高峰かつ一番眺め良いかも

五郎山、最高峰かつ一番眺め良いかも

後白髭の横には

後白髭の横には

後白髭の横には

異彩を放つ仙台カゴ 仙台カゴって仙台のどこから見えるのだろう…と思ってましたが、少なくともここからは見えますね!

異彩を放つ仙台カゴ 仙台カゴって仙台のどこから見えるのだろう…と思ってましたが、少なくともここからは見えますね!

異彩を放つ仙台カゴ 仙台カゴって仙台のどこから見えるのだろう…と思ってましたが、少なくともここからは見えますね!

愛子、その奥に仙台、さらに奥には牡鹿半島

愛子、その奥に仙台、さらに奥には牡鹿半島

愛子、その奥に仙台、さらに奥には牡鹿半島

last peak

last peak

last peak

右が函倉、左が前山

右が小塚、左が大森 これに写ってない岩垂を合わせて白沢五山

first peak

ギリギリ紅葉楽しめた

second peak

えっ…?ツツジ???

何て読むの?岩だら?ガンダーラってこと?They say it was in India??

この山で象徴的?なゴルフボール付きロープ

つつじ満開奥大旗山

祠があって、紙垂もあった大旗山

これは…トレイルランしたくなる…!

愛宕山山頂

向泉寺

大東岳(右)と糸岳 登った山が見えると楽しい

たぶんノスリ

素敵な楓

長峰縦走路はトレイルラン可能かな

五郎山、最高峰かつ一番眺め良いかも

後白髭の横には

異彩を放つ仙台カゴ 仙台カゴって仙台のどこから見えるのだろう…と思ってましたが、少なくともここからは見えますね!

愛子、その奥に仙台、さらに奥には牡鹿半島

last peak