雲に阻まれ天城高原

「チェックインに間に合わぬ」 下山中、不意にそう詰められた。 こんなはずでは無い、もっと早く終わるかと、もっと簡単な道かと、これではまるで登山だ、と。 この問いの全てに、反論の余地あり。しかしその剣幕、ここは抑えた。座り込まれでもしたら、困るのはこちらなのだ。その荷物も背負い、ラムネでブドウ糖を投入。発作は収まる。 温泉旅行のついで近隣の山をカバー。まさに登山家の鑑。さらに折り紙付の百名山とくればこの上も無し。 だが現実は、眺望無し、冒険無し、紅葉無し、の3ナイ登山。唯一視界が開ける万二郎岳では雲が視界の全てを奪う。加えて同行者のクレーム。これが天下の百名山か。 リターンの無い登山で、そこに意義は見出せるのか。悶々としながら自問自答の山行。