折立から室堂へ日帰り

2021.09.23(木) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
15 時間 17
休憩時間
1 時間 5
距離
27.3 km
のぼり / くだり
3342 / 2264 m
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活動詳細

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薬師岳の玄関口「折立」から立山の玄関口「室堂」を結ぶ縦走路。言わずと知れた名峰を結ぶコースをワンデイ縦走で堪能してきました。 ※YAMAPで1日で縦走している記録は見つけられなかったので、検討している方は参考にしてください。(もっと長いのはあるみたい) 縦走路を歩くため、車でアクセスする場合は回収が必要となる。同行者である先輩と立山駅に待ち合わせ、車1台をデポ。そのまま2台目の車で有峰林道を上がり、折立へ。駐車場は、満車状態であった。県外ナンバーが目立つ。薬師岳の人気の高さを見せつけられる。アラレちゃんに「大好き、薬師岳」と言わしめるだけのことはある。 簡単に食事を済ませ8時前に仮眠。安眠の為、テントを張る予定であったがテン場がクマ出没のため閉鎖されており、あえなく狭い車内で仮眠。愛車はコンパクトカーのため、狭くてほぼ寝れていない。横になり、1分ほど意識が飛んだ程度であった。 10時に起床。車中泊の方々がまだ眠りについている中、ゴソゴソと準備を開始。空には満天の星が瞬く。この日も好天を確信。10時半ごろ、準備が整ったため登山開始。 登山口すぐに愛知大学登山部の慰霊碑が設けられている。冬季登山にて、誤った尾根に入り大量遭難の現場となった薬師岳。無雪期であるが、大きな山だ。甘く見てはならない。合掌し、冥福を祈るとともに気を引き締める。しばらくの間、よく整備された樹林帯の登山道を歩く。薬師岳の登山道は毎度思うがよく整備された道である。急なところもなく、快適に登り続ける。しかし暑い。木々が覆っているおかげで、湿気がたまり汗が流れ出す。 少し歩いたところで、ハイドレーションの飲み口が外れていることに気づく。今回はULザックでコンプレッションがあまりかかっていないせいか、水が出てこないので命拾い。ホースを折って登山再開。山を汚してしまい、場合によっては致命的となるミスに反省。 やがてアラレちゃんと再会を果たした後、樹林帯をぬけて太郎平へ至る道を歩く。樹林帯に入ると風が抜けて肌寒い。上空にはガスがかかっている。これまた最近整備されたであろう石畳の上を歩いていくと、ガスが抜け始め、薬師岳の大きな山容が姿を現し始める。上空のガスは抜けてすっかり快晴である。ここで同行者とヘッドランプの明かりを消す。月明かりと満点の星々のみが周囲の山々や道を照らす。立ち止まれば無音である。自分の小ささと対極にある自然の大きさを、薄暗闇と無音という閉じているようでどこまでも広がっている矛盾の中で意識させられた。太郎平小屋へ到着。 軽く補給を済ませ、足を伸ばす。同行者は山行中にストレッチを欠かさないという。なるほど、単純な動きの中で蓄積された疲労は「かたまる」という形で現れる。これをほぐしてあげることでとても快適に歩くことができた。ここからテン場へ一度下り、樹林帯の中を登ってゆく。6月に残雪だった谷の雪はすっかり溶けていた。ここが迷いやすかったが、谷を少し登った後、右側の道を入るのが正解。ルーファイの重要性を再認識。やがてカールの縁を登ってゆく。程なくして薬師山荘。小休止、補給。富山の街が見える。稜線に出て風が強く、冷えてゆくため、すぐに再出発。避難小屋手前にて左折し、薬師岳山頂に到達。折立から4時間であった。風が強いため、小休止にとどめ再開。きた薬師岳へ進む。ガレた岩場の連続でペースが上がりにくい縦走路である。そのため体が冷え、難しいコンディションであった。さらに暗所であるため、慎重に岩場につけられている印を探しながら進む。朝4時に北薬師岳へ到着。まだ夜明けまで1時間以上あるため、先へ進む。再び、岩場の稜線を下ってゆく。そうしているうちに、風も弱まり始め空が明るくなる。待ちに待った瞬間である。後立山方面の地平線が真っ赤に染まり、上空は透き通った混じり気のない青色である。星もうっすらと浮かび、足元は薄明かりに照らされた草紅葉。チングルマの綿毛が朝の冷えた秋風に揺らめく。これほどまでの絶景があるだろうか!これがあるから、山はやめられない。同じ絶景であっても、苦難を乗り越えた先の絶景は心の一番深いところに刻まれる。大自然の雄大さを五感で味わう。薄靄かかった越中沢岳や五色ヶ原方面。遠くに雄山の荒々しい姿。こちらから見る雄山は新鮮なほど険しい表情をしている。その奥に、剱岳。今日は剱岳を見ながら歩いてゆくことになりそうだ。槍ヶ岳を見ながら歩くのが表銀座とすれば、こちらは何銀座と名付けようか。チングルマ銀座?しかし、銀座とは賑わった場所に付くにふさわしい名前である。静寂の縦走路。名前などないほうが、誇り高く、俗っぽくなくて似合っている。 さて「チングルマ銀座」を歩いていく。やがて間山を通り、スゴ乗越小屋へ。ここでご来光。テン場は立派で楽園のようである。さらに進んでゆくと目の前に一際大きな山容が姿を現す。知る人ぞ知る越中沢岳である。名前が渋くてなんとも好みである。ちなみに、同行者からは越中沢岳太郎と呼ばれている。やがてスゴの頭を通り、登頂。よくやった越中沢岳太郎!山頂からは薬師方面から五色ヶ原まで一望できる。展望に優れた名山であった。 越中沢乗越へ降る。するとまた登り返しである。鳶山。力を振り絞る。9時ごろ登頂。ここもチングルマの群生地であった。五色方面へと進む。急な下りとトラバースを終え、緩やかな木道が伸びる五色ヶ原へ到着。この時期、紅葉が始まり実にカラフルであり五色ヶ原とはよく言った名前である。チングルマ銀座とか名付けそうだった自分が恥ずかしい。五色ヶ原山荘でスタッフさんに水場を尋ねると、汲んできてくださった。なんとも親切な方であった。備え付けの椅子に座り、写真撮影をした。座るのは11時間ぶりのことである。絶景の中いつかゆっくりくつろいでみたい。 10時ごろ、木道歩きを再開。木道は安全なため気が緩むためか、疲れからか、眠気が襲ってくる。そして目の前にした登り返し。獅子岳。初めてここで自信が揺らぐ。ザラ峠へ下り、登りかえす。登り返してみると、まだまだ足は残っていた。集中し、心を奮い立たせる。同行者も無口になる。足元のザッ・ザッという音がやがて「頑張れ!頑張れ!」と聞こえ始める。張っていた気持ちに気づく。気づけば、涙が頬を伝う。極限に近いところでは、普段の生活で溜まった無駄な垢のようなモノがポロポロと剥がれ落ち、純粋なこころに帰ってゆくようであった。透き通った心、極限まで高まった集中力で文字通り無心。ここまで不思議な気持ちになったのは初めてである。11時10分、獅子岳に登頂。小休止の後、再開。 この日何度目の登り返しであろうか。目の前に最後の龍王岳が堂々とそびえる。一歩一歩が重い。足がここまで痛むのは1年以上経験がない。歩きながら「痛い」とつぶやきながら歩く。立山方面から来た人に「何時出発ですか?」と聞かれ「(昨夜の)10時半です」とだけ答えたら、沈黙の後に「・・・早いですね。」とだけ言われた。おそらく、全く会話が噛み合っていない様子であったが、折立から歩き続けている旨説明する余力もなく、進む。 やっとの事で、13時5分、浄土山に至る。今日通過する最後のピークにして8つ目のピークである。室堂方面へ。荒れた急登の石道が膝を刺激して痛い。室堂平の石畳に到着。賑やかだ。バスターミナルでゴール。万感の思いがこみ上げる。最後まで歩き続けた自分が少しだけ誇らしい。 自分の限界に挑んだ山旅。道中、すれ違う方々にお声がけいただき、勇気をもらった。ここに無事の下山を報告し、感謝を伝えたい。と思ったら、YAMAPのすれ違い通信の欄がカラであった。「チングルマ銀座」の秘境度合いを思い知らされた。 (終わりに) ちょうど2年前、由布岳に登り景色に感動して始めた山登り。2年目の締めくくりに、このコースに挑戦できて幸せな気持ちでいっぱいである。いつもDOMOをいただくフォローワーの皆さま、応援してくれている皆さま、山岳関係の皆さま、そして、この挑戦に誘ってくれた、ともに苦難に挑んだ仲間であるtaka0827氏に感謝申し上げる。3年目も、たくさんの山々に登れますように。

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