槍ヶ岳山頂で震度4の地震を経験する

2021.09.19(日) 2 DAYS

活動データ

タイム

21:41

距離

39.7km

のぼり

2212m

くだり

2211m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
12 時間 51
休憩時間
4 時間 46
距離
20.8 km
のぼり / くだり
1945 / 590 m
DAY 2
合計時間
8 時間 49
休憩時間
1 時間 26
距離
18.9 km
のぼり / くだり
266 / 1620 m

活動詳細

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初めての槍ヶ岳山頂で震度4の地震にあいました。とても怖かったですが貴重な経験をしたのでYAMAPに書き残そうと思います。 当時山頂にいたのは11名です。 全員無事に下山しました。 ⚠これから槍ヶ岳、涸沢など穂高周辺に行かれる方は、各小屋から最新の情報を仕入れた上で余震と落石に注意してください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 14時頃、殺生ヒュッテに到着。 テントを張りすぐに槍ヶ岳に向かおうとしましたが、かなり疲労感があったため一旦テント内で仮眠を取りました。 16時過ぎに槍ヶ岳山荘に向けて出発。 この時、今から槍ヶ岳に行くか、翌朝に行くかをすごく迷っていました。 もしかしたら明日の朝は疲労で行くのをやめるかもと考え、頑張って今日のうちに行こう!と槍ヶ岳に向かいました。 時間は遅めですが、日没には余裕があり行けると判断しています。 仮に下りで多少のヘッデン行動になっても技量的には問題なし。 16時半頃山荘前に到着。 お腹の調子がイマイチでしたので、山荘のトイレに寄ってひと休憩。 山荘前では双六から槍ヶ岳に来たというおじさんと少し会話をし、パーティメンバー3人の写真を撮っていただきました。 そして、気をつけて行ってきてね!と。 (このおじさんとは地震後にもう一度会話をしました。) 槍ヶ岳の登りはさほど怖くもなくスイスイと登ることが出来ました。 16時55分頃、山頂に到着。 山頂から見る景色がとても素晴らしく感動していました。徐々にガスが晴れ槍ヶ岳山荘や北穂高岳方面も!最高の景色! 同じく山頂にいる方々やパーティメンバーと写真を撮っていました。 仲間の写真を撮り終え変わろうとしたその瞬間。 ドンッッ!!!という縦に衝き上げるような衝撃とガラガラ!!!ガッシャーーーン!!!というものすごい音が鳴り響きました。 しばらくグラグラと揺れ、山頂にいた登山者全員が即座に地面に伏せて揺れが収まるのを待っていました。 今立っている場所が崩れるかと思うほどの揺れです。 口々に地震!?今!?、怖い怖い怖い!やばいやばい!これ死ぬ!!と。 揺れが納まり立ち上がって周囲を確認すると、西鎌尾根、北鎌尾根、東鎌尾根それぞれから土煙があがり、槍ヶ岳周囲が崩壊した…と思いました。 私は早く下りなきゃ!と軽くパニックになってしまいましたが、仲間からは余震が収まるまでは待機した方がいい!と冷静に指示を貰い、少し落ち着きました。 何度か余震が発生し、大規模な落石の音を山頂で聞いていました。 無事に下山できるのか、テント場は無事かなど様々なことを考えていました。 山頂に居合せた登山者が地震情報を仕入れ、その場の全員に共有してくださいました。 ありがとうございました。 余震が収まった隙きを狙い下山へ。 地震によって発生したであろう浮石が無いかを警戒しながら素早く下山しました。 幸いにも下山中に揺れはなく、浮石もありませんでした。 小屋の前まで下山すると小屋の方がヘルメットを被ってこちら側に。 槍ヶ岳山頂での被害やルート状況を聞かれたため、詳細をお伝えしました。 その後、小屋の方2名で山頂にパトロールに行かれたようでした。 また槍ヶ岳に向かう前に写真を撮って頂いたおじさんとも再開。 「槍ヶ岳に見送った3人が無事か心配だった!!無事で良かった!!」と声をかけていただき、安堵ともに涙が出そうになりました。 あぁ、あの山頂の揺れから生きて戻って来れた… 18時半頃、テント場に戻ってきました。 テント場は緊張感が漂っており、少しピリピリしていたように思います。 19時頃テント前でご飯を食べているとさらなる余震が発生。 槍ヶ岳方面から尋常ではない落石の音が発生し、テント場は軽くパニックに。 暗闇の中どこまで落石が到達したのか分かりませんが、テント場のすぐ目の前まで来ていたように思います。 この余震と落石の後は各登山者で行動がバラバラでした。 ・荷物をまとめて下山開始する人 ・小屋に逃げ込む人 ・テントを移動する人 ・テントを片付けてビバークする人 ・現状維持の人 情報を仕入れるために小屋の前に行きましたが、たくさんの人が不安そうにしていました。 小屋のスタッフさんが言うには、「小屋の裏が斜面になっており、小屋も安全ではない。大きな落石が発生すると小屋ごと流される可能性がある。大きく揺れた際はスタッフ全員小屋から外へ避難する」と。 (記憶にある言葉ですので、スタッフさんがそのまま話された言葉ではありません。) 私はこのことを聞いた瞬間に、「あぁ、ここに、安全な場所は無いんだ…」と考えてしまいました。 この事を仲間たちに伝えてどうするか作戦会議。 ・下山をする 余震と落石が発生する中、暗闇での下山はリスクが高すぎる。 ・小屋に避難する 人が集中してしまううえに、小屋も安全ではない。 ・原状維持 テントが比較的斜面に近いためリスクがある。ダメ。 ・テントごと移動 ほんの少しでもリスクを減らすために、空いているところがあれば移動。 (無理に狭いところに行き、他の方とトラブルにならないように注意しつつ) 結果としてはテントを張っていた位置から10mほど下にある岩陰に隠れるように、3人で固まってビバークしました。(ヘリポート付近) テントに入っていてはもしもの時に避難が遅れる事から、テントは片付けてそのまま外で寝ました。 もちろんヘルメットは被り登山靴も履いたまま。貴重品や緊急用品を一つにまとめて直ぐに逃げられるように。 私は直接は見ていませんが、仲間がトイレに行くときに小屋の前を通ると、10人以上の方が小屋前でビバーグしていたそうです。 殺生ヒュッテに戻ってからビバークを決意するまでにおよそ1時間半ほどありましたが、その間に何度も余震と槍ヶ岳方面、小屋の裏、小屋とは反対にある斜面から落石の音が聞こえ、非常に怖かったです。 ビバークの用意をして寝に入ってからも数回の余震と落石が発生。 一晩、落石の恐怖と吹き荒れる風に震えて過ごしました。 結果としては夜中に大規模な余震と落石は発生せず、無事に朝を迎えることができました。 まだ日が上がっていない早朝に、何名かが東鎌尾根経由で槍ヶ岳に行くライトが見えました。 3度落石を誘発しており、早朝のテント場に響く落石の音。 昨日あれだけ落石があったのによく東鎌尾根に行くなぁ…と下から見守っていました。 しばらくして引き返していたことから、東鎌尾根は崩落しているだろうと判断。 あれだけ揺れた翌日の未明に行くものではないと個人的には思いました。 日が上がると続々とテントを撤収して下山をしていました。 私達もご飯を食べて撤収。 余震に備えてヘルメットをしたままババ平まで下山しました。 その間にも槍岳方面に登っていく登山者が多数。 え?今日行くの?と思いつつそのまま。 下山中にも何度か揺れ、特に横尾ではゴゴゴゴゴという地響き付きの揺れも。 油断できません。 しばらくは槍ヶ岳一帯で余震に注意が必要かと思います。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー そんなこんなで無事に下山をすることができました。 今回の地震は本当に運が良かったと思っています。 もし地震発生時刻が昼間になると槍は沢山の人が登っているため死者が出ていたと思います。 また夜中にズレた場合でもすごくパニックになっていました。 比較的登山者の活動が少ない夕方に発生したため、死者は出なかったのだと思います。 当時槍ヶ岳にいた登山者も全員が登りきったあとかつ山頂にいたタイミングだったため、一人も滑落することなく無事でした。 運がいいのか悪いのか分かりませんが、とりあえず生きて帰れた事に感謝したいと思います。 この日ほど山で死を意識したことはありませんでした。また、生きたい!!と心の底から思いました。 常に声をかけあった仲間たち、山頂に居合わせた方々、山荘前で心配してくださった方々、テント場で今後について会話をした方々と、一人ではなくて本当によかったです。 山で地震にあう確率は気にするほどではないと思いますが、登っていればいつか遭遇するかもしれません。 その時自分の身や仲間たちを守るためにどう行動をすればいいのか、一度考えてみてください。私ももう一度しっかりと向き合いたいと思います。 山が少しトラウマになったので、少しの間登山は休みます。

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メンバー

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