八ヶ岳 絶景くれた真教寺

2021.09.19(日) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
9 時間 18
休憩時間
1 時間 48
距離
13.0 km
のぼり / くだり
1425 / 1427 m
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1 2
6
2 31
2 57

活動詳細

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このところ、気がつけば八ヶ岳に足が向く。そして辿るピークには常に赤岳。だが、そのルートは毎回異なる。一般登山道では屈指の難易度を誇ると言われる真教寺尾根。先の八ヶ岳キレットを完走し、腕試しの山行。 三連休の初日は台風で今日が晴天となれば、道も山も渋滞。とりわけ華の八ヶ岳ならば言うに及ばず。機先を制するには早めのスタート以外に手は無し。夜半に出発し、4時前には美し森ロッジの駐車場に到着。広い駐車場には、この一台だけ。狙いが当たったことに快哉を叫ぶ。だが道中は深夜にも関わらず車が多かった。彼らはきっと、台風一過で早めスタートを決意した同志なのだ。 朝の儀式、バナナを頬張りながら登山準備。夏定番のスタイル、ベースレイヤーにショートスリーブ重ね着、これだけでは少々寒くソフトシェルを装着。重みで空が落ちてきそうなほどの満天の星。時折、霧雨が横切る。ヘッデンに照らされて、風が薄っすらと光る。 登山道へのアプローチは駐車場からスムーズで一安心。真っ暗闇の中を右往左往するのは遠慮したい。この出発点は前夜発見したばかりで、少々不安。活動日記を見ると多くが「美しの森駐車場」をベースに。だが登山道アクセスの極限まで車でアプローチしたい。ベタピン志向とも言うべき、効率性の名を借りた怠け癖。ホンモノの登山家にはあるまじきスタンス。とは言え早くも二つの勝利を収め、足取り軽く一つ目のランドマーク、賽ノ河原を目指す。 ヘッデンに反射して濡れた熊笹が光る。お蔭で周囲が明るくなり、暗闇はさほど気にならず。が、これは罠だった。かき分けながら登ること1時間。空を支配していた暗闇が交代を余儀無くされると共に、やっと周囲の状況が判明。そこはリフト降り場。これに乗れば僅か5分、暗闇と熊笹の旅、その虚しさが一瞬心をかすめる。いや営業開始前と思い至り、人力の偉大さを再確認。 賽ノ河原で小休止して、前菜の牛首山の向こうにメインの赤岳を眺める。そこで気付いた、ブーツがびしょ濡れなのだ。僅かながら靴下まで侵入。昨日までの雨と夜露で、たっぷりと水分を蓄えた熊笹。昨日防水対応したばかりだが、1時間もあれば突破は容易。ゲイターは必須だったと今更ながら愚考。 牛首山まで登り、その後は標高2300m前後の樹林帯。ピークとコルの繰り返しに飽きた3巡目、頂上山荘を視野に捉える。遂に本日のメインイベントが迫る。 6合目を過ぎると岩稜帯の気配。逸る心を抑え、歩みを進める。視界が開け、ダケカンバの立ち枯れ帯を抜けていくと、核心部に到達。聳え立つ岩場には、登山者に寄り添うように備えられた頑丈な鎖。朝日を浴びて岩場はすっかり乾燥。核心部の岩場は、ホールドも足の置き場も十分すぎる程。鎖は保険として、自らの手足で登攀。自らの手に大自然を収める感触を全身で堪能。背後には奥秩父と富士山、左には南アルプス、視線の先には権現から赤岳への稜線。見て良し登って良し、最高のルート。 贅沢なことに、今日は真教寺ルートを独占。他の登山者とは遭遇することなく、その分早朝スタートの気負いは肩透かし。マイナールートなのか、かえって寂寥を禁じ得ず。とは言えそんな侘しさも、赤岳山頂で人里の賑わい。ジワりと濡れたブーツを脱いで乾かし、いつもよりゆっくり目に休憩。阿弥陀岳と諏訪湖、北アルプスを眺める。 県界尾根を下る。ルンゼ状の岩場であり眺望は僅か。全面的にザレており、積もった岩屑が滑る。ホールドの小さい、足の置き場も見出し辛い岩場。途中まで自力にこだわり手足で降りるも、滑る岩場に嫌気差す。鎖に乗り換え、その便利さに感激。その対価は、自称登山家の矜持に傷。 岩質と眺望、相反する特徴を持つ2つのルートを1日で堪能。万人に愛されるルートも良い。一方で、人気がなくても魅力的なルートはある。秋を告げる高い空、登山口から長い車道を辿り思う。また八ヶ岳に、と。

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