活動データ
タイム
23:10
距離
39.9km
のぼり
2285m
くだり
2286m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る「お山の大将」という言葉がある。人を揶揄するときに使う言葉だ。それを踏まえてあえて言わせてもらうんだけど、槍ヶ岳は「お山の大将」感を味わえる山である。それもとびっきりのやつ。 北アルプスのシンボルタワー、言わずと知れたトンガリのシルエット。北アルプスやその周辺の山に登ったとき、頂上でぐるりと見回したあと、まずは槍ヶ岳を見つけて、それから周囲の山の目星をつけていく存在。眼前に広がるとびっきりの山々の頂上から、あるいは何処かの稜線から、きっと誰かが、あるいは誰しもが、このてっぺんを目印として注目し、「あ!槍ヶ岳見えたよー」とか「あそこが槍ヶ岳だから、あの隣のが穂高でしょ」とか「だったらあのあたりが燕かな」とか、「そうだとしたら、あっち方向が立山の方か」などなどという会話を繰り広げているに違いない。私は繰り広げた。覚えている限り、立山でも、燕でも、八ヶ岳でも繰り広げた。繰り広げている人もたくさん見た。槍ヶ岳が見えている状態で、槍ヶ岳を無視できる人なんている? そういう山だ。 頂上にいる今、その瞬間、私はこれまでの人生のどのタイミングよりも視線を集めた時間を過ごしている。もちろん、北アルプスの数々のピーク、あるいは稜線上にいるだろうオーディエンスの姿は見えない。見えないがいるに違いない。こんな絶好の登山日和に、いないはずがない。フジロックフェスティバルのステージ上からだって、甲子園のバッターボックスからだって、恐らくオーディエンスの顔なんて見えないだろう。スターになるとはそういうことだ。顔は見えずとも、その存在を確信する。この人生最大の大将感。こればっかりは、槍ヶ岳にかなう山はない。富士山でさえ及ばない。 ところで、そのシンボルタワーに登頂してしまうと、目印になるものがない。360度見えすぎるくらいに晴れ渡った遥かの地平線に連なる折々の山が、まったくなんだかわからない。ただ茫洋と圧倒的な雄大さを誇る日本の北アルプスを眺めるしかない。しかも登頂時にはさすがの私も冷静さを欠いている。人生の98%が冷静でできていると言っても過言ではない私だって、槍ヶ岳の山頂だともなれば、冷静ではいられない。おトイレをがまんしながら、下山3時間目に突入時くらい冷静ではいられないのだ。感無量。ついに、私の人生槍ヶ岳なのである。うふふふふ。意味もなく笑いが止まらない。 本当なら、もっといっぱい書くことはある。登山は、歩いている時こそが楽しい。そういう意味では、上高地、徳澤園から横尾、槍沢ロッジまで歩いた1日目の爽やかな道のりは掛け値なく美しかったし、今回テントを張ったババ平テント場は素晴らしいテント場だった。高山植物にも恵まれ、テント場で出会ったお姉さんはとてもいい人だった。 でも、どう頑張っても全部は書けないのだ。書いている本人がある程度書き進めるとすっかり飽きてしまうのだ。なので、最後にこれだけは。 うちさん、いつも一緒に遊んでくれてありがとう。今回は特にありがとう。シュラフを買ってしまったが最後、これからも連れ回しますので、覚悟あれ。
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