眺望を探してそぞろ歩きの…関八州見晴台

2021.08.28(土) 日帰り

活動データ

タイム

05:00

距離

14.8km

のぼり

887m

くだり

999m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
5 時間
休憩時間
44
距離
14.8 km
のぼり / くだり
887 / 999 m
13
17
16
4
19
19
20
12
48
8

活動詳細

すべて見る

もう、体力は大丈夫かな。と、罫君が云う。長引くステイホーム。体力と気力の衰微。これではいかんということで、親子三人でトレーニングの登山を決意。それで週末日帰りハイキングを実施してきたのだが、第三回目の北高尾山稜は、さすがに堪えたようである。 罫君の科白に、トレーニングはもういいから、早くテント泊で信州辺りの気持ちいい山に登りませんか、というような意味が含まれているのも理解している。しかし、遠征のために取得している連休は、まだ二週間も先なのであった。 前回の苦行を癒やすために、一回休みとしてもいいのだが、二週間を全く活動しないで過ごすのもどうなのか、とも思う。それで、手軽に登ることのできる、眺めのいい山に、ちょっとだけ登るかと誘ってみることにした。 軽い感じのコースなんだよねと、叡君が念を押してくる。北高尾山稜では、終盤に愕然とするくらいに疲弊して、無言のまま牛歩となってしまった叡君である。 それはもう、風船のように軽い。と、私の口調も熱を帯びる。サクッと登って、降りてくる。そんな感じかなと云うと、ようやく首肯する叡君であった。 西武秩父線の西吾野駅から歩き、高山不動尊を見学して、関八州見晴台に登る。覚えてはいないだろうが、ふたりが小学生の頃に連れていった山である。 猛暑の続く八月。奥武蔵の低山では、それほどの眺望は期待できないだろうが、それでも、関八州見晴台である。前回の苦行に比べれば、呆気なく見晴らしの山頂に到達できるのは間違いない。 というわけで、先週の疲労が癒えていないような感覚ではあるが、なんとか日帰りハイキングの実施、ということになった...。

関八州見晴台 西武秩父線、西吾野駅。下車するのは何年ぶりだろうと思う。周辺に住宅街は無く、山上の駅という風情が好ましい。

舗道を下り、北川に沿って歩いていると、涼し気な瀬音が心地よい。
西武秩父線、西吾野駅。下車するのは何年ぶりだろうと思う。周辺に住宅街は無く、山上の駅という風情が好ましい。 舗道を下り、北川に沿って歩いていると、涼し気な瀬音が心地よい。
関八州見晴台 北川道路が天久保山を迂回するようにして右にカーブしていくと、西武鉄道の鉄橋に近づく。
北川道路が天久保山を迂回するようにして右にカーブしていくと、西武鉄道の鉄橋に近づく。
関八州見晴台 パノラマコースに至る林道を見送り、間野集落の、崖に張り付いたような住宅街の急坂を登る。

住宅が尽きると山道となり、急勾配を登った甲斐のある眺望が開ける。
パノラマコースに至る林道を見送り、間野集落の、崖に張り付いたような住宅街の急坂を登る。 住宅が尽きると山道となり、急勾配を登った甲斐のある眺望が開ける。
関八州見晴台 尾根を実直に登り続ける。麓の川沿いの心地よい涼気が嘘のように、蒸し暑くなっていった。萩ノ平茶屋跡で、ふたりとも座り込み、汗だくになりながら飲料を摂取している。

標高510m圏で、パノラマコースの尾根と合流した。分岐点には、石仏と並んで、いにしえの道標が鎮座している。

罫君が、石仏の前にそっと、賽銭を置いた。
尾根を実直に登り続ける。麓の川沿いの心地よい涼気が嘘のように、蒸し暑くなっていった。萩ノ平茶屋跡で、ふたりとも座り込み、汗だくになりながら飲料を摂取している。 標高510m圏で、パノラマコースの尾根と合流した。分岐点には、石仏と並んで、いにしえの道標が鎮座している。 罫君が、石仏の前にそっと、賽銭を置いた。
関八州見晴台 日影山という名前のある、標高555mの山腹に沿って、踏路が続いている。小鞍部を過ぎると、岩の勾配となり、高度が上がっていく。

樹林越しに、飯盛峠から刈場坂(かばさか)峠に至る山稜も見えるようになった。
日影山という名前のある、標高555mの山腹に沿って、踏路が続いている。小鞍部を過ぎると、岩の勾配となり、高度が上がっていく。 樹林越しに、飯盛峠から刈場坂(かばさか)峠に至る山稜も見えるようになった。
関八州見晴台 高山不動尊に到着。荘厳な大銀杏は推定樹齢八百年。木製ベンチで大休憩とする。

朽ち掛けたような石段を登り、常楽院不動堂に参拝する。関東三大不動のひとつ、とされる名刹だが、いつも人は少なく、静寂な雰囲気である。
高山不動尊に到着。荘厳な大銀杏は推定樹齢八百年。木製ベンチで大休憩とする。 朽ち掛けたような石段を登り、常楽院不動堂に参拝する。関東三大不動のひとつ、とされる名刹だが、いつも人は少なく、静寂な雰囲気である。
関八州見晴台 不動堂の裏手から、急勾配を登って、関八州見晴台に向かう方が速いのだが、先ほど歩いてきた尾根まで戻ることにした。

緩やかな傾斜を、のんびりと登っていく。今日はとにかく、楽なコース取りを心掛けている。

奥武蔵グリーンラインの横切る箇所に達する。かつて存在していた、見晴らしのよい茶屋は解体されていた。
不動堂の裏手から、急勾配を登って、関八州見晴台に向かう方が速いのだが、先ほど歩いてきた尾根まで戻ることにした。 緩やかな傾斜を、のんびりと登っていく。今日はとにかく、楽なコース取りを心掛けている。 奥武蔵グリーンラインの横切る箇所に達する。かつて存在していた、見晴らしのよい茶屋は解体されていた。
関八州見晴台 ふたたび尾根道に入り、直截的に日差しを浴びながら、黙々と登っていく。登山道は捲いていくが、先頭の罫君は丸山経由の尾根道を選ぶ。体力は、大丈夫のようである。

ふたたびグリーンラインに合流して程なく、「関八州見晴台入口」の立派な石柱が現われた。

路肩の駐車スペースを見て、「ここに車を駐められるんだ…」と罫君がつぶやく。麓から登ってきた者が、複雑な心境になる場所である。
ふたたび尾根道に入り、直截的に日差しを浴びながら、黙々と登っていく。登山道は捲いていくが、先頭の罫君は丸山経由の尾根道を選ぶ。体力は、大丈夫のようである。 ふたたびグリーンラインに合流して程なく、「関八州見晴台入口」の立派な石柱が現われた。 路肩の駐車スペースを見て、「ここに車を駐められるんだ…」と罫君がつぶやく。麓から登ってきた者が、複雑な心境になる場所である。
関八州見晴台 西吾野駅からおよそ二時間で、高山不動尊奥ノ院、関八州見晴台に登頂した。標高は771.1mである。

東屋に、少なくないハイカーが休憩しているので、山名標のある、展望の利くベンチで休憩する。

幸いにも太陽は雲に隠れているので、それほど耐え難い暑さではない。

飯能市街方面に広がる景色は、やはり茫洋として判然としない。それでも、山に登った感じがするね、と罫君が云う。

その言葉で、安堵し、そして嬉しくなった。
西吾野駅からおよそ二時間で、高山不動尊奥ノ院、関八州見晴台に登頂した。標高は771.1mである。 東屋に、少なくないハイカーが休憩しているので、山名標のある、展望の利くベンチで休憩する。 幸いにも太陽は雲に隠れているので、それほど耐え難い暑さではない。 飯能市街方面に広がる景色は、やはり茫洋として判然としない。それでも、山に登った感じがするね、と罫君が云う。 その言葉で、安堵し、そして嬉しくなった。
関八州見晴台 同じ道を西吾野駅に下山するのは詰まらないので、顔振(かあぶり)峠を経由して、隣の吾野駅に下山しよう。

そう云うと、今の今まで目立った反応の無かった叡君が、え、と云って妙な表情をする。

どうやら、早く帰りたがっているようだが、叡君のこの反応は、それほどの内容ではないことは解っている。前回のように、無口になってしまうくらいでない限りは、大丈夫である。

というわけで、山頂域から東の尾根を下り、花立松ノ峠で、奥武蔵グリーンラインに降り立った。猿岩林道が合流するところに、ドライブで訪れているとおぼしき車が数台、停車して屯しているので、なんとも邪魔である。

バイクツーリングの徒が多いのはいつものことである。スーパーカブでやってきたグループを見て、ちょっと羨ましいなと思う。

山道も併行しているが、このままぶらぶらと、車道を歩いてもよい。叡君に訊くと、車道、いいね、と笑う。山歩きに食傷気味になっていることが、あからさまに伝わってくる。

ところが、登山口に集まっている、高齢のグループの方々が、お先にどうぞ、と云って、手招きしている。我々は顔を見合わせ、どうする、というような表情になった。

いい若い者が、まさか車道を歩こうとしているとは思っていない高齢女史たちが、叡君に、どうぞ、と畳み掛ける。

我々が、快活さを装って、山道を歩き出したのは云うまでもない。
同じ道を西吾野駅に下山するのは詰まらないので、顔振(かあぶり)峠を経由して、隣の吾野駅に下山しよう。 そう云うと、今の今まで目立った反応の無かった叡君が、え、と云って妙な表情をする。 どうやら、早く帰りたがっているようだが、叡君のこの反応は、それほどの内容ではないことは解っている。前回のように、無口になってしまうくらいでない限りは、大丈夫である。 というわけで、山頂域から東の尾根を下り、花立松ノ峠で、奥武蔵グリーンラインに降り立った。猿岩林道が合流するところに、ドライブで訪れているとおぼしき車が数台、停車して屯しているので、なんとも邪魔である。 バイクツーリングの徒が多いのはいつものことである。スーパーカブでやってきたグループを見て、ちょっと羨ましいなと思う。 山道も併行しているが、このままぶらぶらと、車道を歩いてもよい。叡君に訊くと、車道、いいね、と笑う。山歩きに食傷気味になっていることが、あからさまに伝わってくる。 ところが、登山口に集まっている、高齢のグループの方々が、お先にどうぞ、と云って、手招きしている。我々は顔を見合わせ、どうする、というような表情になった。 いい若い者が、まさか車道を歩こうとしているとは思っていない高齢女史たちが、叡君に、どうぞ、と畳み掛ける。 我々が、快活さを装って、山道を歩き出したのは云うまでもない。
関八州見晴台 主体的ではない足取りで山道を歩き、ふたたびグリーンラインに合流し、傘杉峠に至る、ショートカットの尾根道に入った。

久しぶりに現われる岩場の道は、変化の乏しい山歩きにとっては愉しいが、傘杉峠に到着すると、ふたりともベンチに座って、疲労感を漂わせている。

サクッと登って、などと、事前に云ってしまった手前でもあるので、下山のプロセスが長くなってしまったことに関しては、ちょっと悪かったかな、と思う。

それにしても、たいして歩いてないのに、だらしないな、とも思う。

標高点622mを経由する山道もあるが、今度こそ、奥武蔵グリーンラインを、だらだらと歩くことにした。顔振峠まで、まだ四十分ほど掛かる。

暫くして、駅までどのくらい歩くかな、と罫君が云うので意外に思った。罫君は概して弱音を吐くことなく、黙々と歩くタイプである。

どうしたのかと訊くと、どうやら生理現象が逼迫してきたとのことであった。

顔振峠の茶屋まで、あと二十分くらいと伝えると、首肯して大丈夫と云った。

少し足早に歩き続けて、眺望が広がった。山上集落の風影(ふかげ)の良景であった。
主体的ではない足取りで山道を歩き、ふたたびグリーンラインに合流し、傘杉峠に至る、ショートカットの尾根道に入った。 久しぶりに現われる岩場の道は、変化の乏しい山歩きにとっては愉しいが、傘杉峠に到着すると、ふたりともベンチに座って、疲労感を漂わせている。 サクッと登って、などと、事前に云ってしまった手前でもあるので、下山のプロセスが長くなってしまったことに関しては、ちょっと悪かったかな、と思う。 それにしても、たいして歩いてないのに、だらしないな、とも思う。 標高点622mを経由する山道もあるが、今度こそ、奥武蔵グリーンラインを、だらだらと歩くことにした。顔振峠まで、まだ四十分ほど掛かる。 暫くして、駅までどのくらい歩くかな、と罫君が云うので意外に思った。罫君は概して弱音を吐くことなく、黙々と歩くタイプである。 どうしたのかと訊くと、どうやら生理現象が逼迫してきたとのことであった。 顔振峠の茶屋まで、あと二十分くらいと伝えると、首肯して大丈夫と云った。 少し足早に歩き続けて、眺望が広がった。山上集落の風影(ふかげ)の良景であった。
関八州見晴台 顔振峠に到達して、罫君を見ると、なんだか複雑な表情をしている。そして、公衆トイレはないんだ、と云う。茶屋のトイレを拝借するのに臆しているようである。

公衆トイレがいいのなら、諏訪神社まで行かないと…あと三十分。

私が云うと、それなら耐えられると云うので、風影経由の吾野駅に下山、というコースを変更し、諏訪神社に向かうことにした。
顔振峠に到達して、罫君を見ると、なんだか複雑な表情をしている。そして、公衆トイレはないんだ、と云う。茶屋のトイレを拝借するのに臆しているようである。 公衆トイレがいいのなら、諏訪神社まで行かないと…あと三十分。 私が云うと、それなら耐えられると云うので、風影経由の吾野駅に下山、というコースを変更し、諏訪神社に向かうことにした。
関八州見晴台 舗道から山道に入り、難なく諏訪神社に到着。罫君は脱兎のごとく、厠に向かって走っていった。

ペットボトルのお茶を牛飲している叡君に、突発的な事情で、下山は西吾野駅からふたつ目の、東吾野駅になったと伝える。

どこを歩いているのか、まったく理解していない叡君は、この時点で、初めて驚いている。

「本来であれば、さっき茶屋のあったところから下山に掛かってたんだけど...」
「…あそこで下ってたら、今、駅までどのくらいだったの?」
「…あと…三十分くらい、かな…」

あいつ…と叡君が愕然とした顔で云う。

まあ、生理現象だからと諭すが、なんで茶屋のトイレを借りなかったんだよお、と、憮然として無念そうなのであった。
舗道から山道に入り、難なく諏訪神社に到着。罫君は脱兎のごとく、厠に向かって走っていった。 ペットボトルのお茶を牛飲している叡君に、突発的な事情で、下山は西吾野駅からふたつ目の、東吾野駅になったと伝える。 どこを歩いているのか、まったく理解していない叡君は、この時点で、初めて驚いている。 「本来であれば、さっき茶屋のあったところから下山に掛かってたんだけど...」 「…あそこで下ってたら、今、駅までどのくらいだったの?」 「…あと…三十分くらい、かな…」 あいつ…と叡君が愕然とした顔で云う。 まあ、生理現象だからと諭すが、なんで茶屋のトイレを借りなかったんだよお、と、憮然として無念そうなのであった。
関八州見晴台 そんなこんなで、罫君の緊急事態は解決し、改めて諏訪神社に御礼の参詣をして、ようやく下山である。

権現堂林道を下り、送電安曇幹線の鉄塔附近で、久しぶりに景色が広がった。
そんなこんなで、罫君の緊急事態は解決し、改めて諏訪神社に御礼の参詣をして、ようやく下山である。 権現堂林道を下り、送電安曇幹線の鉄塔附近で、久しぶりに景色が広がった。
関八州見晴台 林道がヘアピンカーブする阿寺の集落に、東吾野駅へと誘導する手製道標が、丁寧に設置されていた。

沢沿いの道に下り、ひたすらに歩き続けると…
林道がヘアピンカーブする阿寺の集落に、東吾野駅へと誘導する手製道標が、丁寧に設置されていた。 沢沿いの道に下り、ひたすらに歩き続けると…
関八州見晴台 林道に合流し、阿寺の岩場を見ながら下る。クライミングのグループが、撤収作業をしている。
林道に合流し、阿寺の岩場を見ながら下る。クライミングのグループが、撤収作業をしている。
関八州見晴台 阿寺林道から間野林道へ、そして虎秀(こしゅう)川に沿うようになり、ユガテに至る、橋本山の尾根を見ながら、ひたすらに車道を歩く。

紆余曲折はあれど、顔振峠から、一時間半程度で、東吾野駅に到着した。

えらい目に遭ったと、まだ云っている叡君。駅の自販機でコーラを奢ってやると、すぐに機嫌が治るので、いい性格である。



【付記】
九月になり、秋雨前線の停滞で、雨の日が続いた。週末のテント山行実施が近づいたが、天気予報は絶望的で、今回も中止となった。できれば月末あたりに順延したいが、三人の都合が揃うかどうかは未定であり、無念である…。
阿寺林道から間野林道へ、そして虎秀(こしゅう)川に沿うようになり、ユガテに至る、橋本山の尾根を見ながら、ひたすらに車道を歩く。 紆余曲折はあれど、顔振峠から、一時間半程度で、東吾野駅に到着した。 えらい目に遭ったと、まだ云っている叡君。駅の自販機でコーラを奢ってやると、すぐに機嫌が治るので、いい性格である。 【付記】 九月になり、秋雨前線の停滞で、雨の日が続いた。週末のテント山行実施が近づいたが、天気予報は絶望的で、今回も中止となった。できれば月末あたりに順延したいが、三人の都合が揃うかどうかは未定であり、無念である…。

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