憧れの雲ノ平周回―天空の4日間

「黒部の山賊」を読んでいつかは行ってみたいと思っていた雲ノ平。 遠い憧れが、心強い山友仲間のおかげで現実のものになった。 台風の動きにやきもきしながらも結果的には晴天に恵まれた。 雲ノ平はやっぱり天国のような美しい場所だった。 【１日目】　約4時間 折立駐車場～太郎平小屋（泊） 夜中に大阪出発し、6時のゲート開通にむけて並ぶ。 大きな駐車場だけど、8割以上が埋まっている。 7時に登山口からスタート。 今日は太郎平小屋（2330m)までなので、途中のベンチで休み休み、ゆっくり登る。 憧れの場所に近づいていく高揚感に、ワクワクする。 【2日目】　約12時間 太郎平～北ノ俣岳（2661ｍ）～赤木岳（2622ｍ）～黒部五郎岳～黒部カールを下り～黒部五郎小舎～三俣蓮華岳～三俣山荘 朝4時に小屋出発。お花畑の木道を緩やかに登る。 「ここは天国ですか⁈」とみんなではしゃぐ。それくらい美しい風景。 最初のピーク・北ノ俣岳（2661ｍ）から赤木岳（2622ｍ）を超えて、黒部五郎岳へ。 見晴らしのいい稜線にテンションはあがる。だけど、なかなかのアップダウン。 岩がゴロゴロと転がる荒々しい登山道を登りきると黒部五郎岳山頂（2840ｍ）。 反対側を見下ろすとド迫力の巨大な黒部カールが広がっている。 一面に咲く可愛い花々と、巨岩が点在するダイナミックなカールの対比がすごい。 ようやく辿り着いた黒部五郎小舎で軽くお昼休憩。 ここが今日の終着地だったらどんなにいいだろうと恨めしく思う。 もう7,8時間歩いてる。だけどまだまだ先が長い。 小舎からキツイ登りを経て、三俣蓮華岳へ。 予測通り、遠雷が聞こえだす。急がねば！ 4時前、ようやく三俣山荘に辿りつく。 パラパラと雨が降り出し、山荘に駆け込んだとたんに強烈な豪雨となる。 奇跡のようなタイミング。今回はとってもツイてる、と喜びあった。 【３日目】　約13時間 三俣山荘～鷲羽岳（2924ｍ）～ワリモ岳（2888ｍ）～祖父岳（2825ｍ）～雲ノ平（庭園の木道歩き）～雲ノ平山荘～アラスカ庭園～薬師沢小屋～カベッケガ原～太郎平小屋（泊） 「黒部の山賊」「黒部の山人」にも登場する憧れの三俣山荘。 ジャズが流れるおしゃれな展望喫茶が名残惜しいけど、日の出前に早々に出発する。 三俣山荘の目の前にど～んとそびえる雄大な鷲羽岳。 ヘッデンの明かりを頼りに九十九折れの登山道を歩く。 展望は素晴らしい。雲海の中に槍がちょこっと顔を出していて面白い。 朝の光が周囲の景色をどんどん変えていく。息をのむほどきれい。 山は早朝出発が三文の得！ちょっとツライけどね。 山頂から軽く下って登り返したらワリモ岳。その後の祖父岳もドーンと連なっている。 縦走路が延々と続く遥かなる稜線。素敵だけどアップダウンがすごい。 あれをまた登るのかと思うと溜息が出てしまう。 台風のせいか人が少ない。悪天候予報も外れて見事な青空。 「この素晴らしい世界を3人で独り占め～！」 「メッチャついてる私ら！」と嬉しくて、嬉しくて、強気発言が止まらない。 雲ノ平山荘泊予定だったが、台風の安全をとって泣く泣く計画変更。 キャンセル料を払いに雲ノ平山荘に立ち寄り、Tシャツ購入。 ジャズが流れるすてきな場所。 ゆっくりお茶でも飲みたいが、今日も長丁場。ゆっくりできない。 写真でよく見る雲ノ平。天国のような大草原の木道。本当に夢のようだ。 やっと来れた、本当に来れた、と思うと泣きそうになる。 同行二人の後姿を見ながら、連れてきてくれてホントにありがとうな～と何度も心の中でつぶやいてた。 天空の散歩道の後は、試練の道。 薬師沢まで約500ｍの激下り。苔むした岩がめっちゃくちゃ滑る難路だ。 これが約1時間半続き本当に難儀する。岩にぶつけて青アザもいっぱい、 薬師沢小屋からの最後の登りも苦行だ。 すでに10時間以上歩いた後の、2時間の登り。 次の目的地までの距離が長いのが、この黒部源流の辛いところ。 最後の力を振り絞って太郎平小屋が見えた時には心底ホッとした。 壮大な縦走路、類まれに美しい風景、何とか歩けた達成感と安心感、 いろんな意味で素晴らしく、心に残る山旅、かけがえのない経験になりました。 一緒に歩いてくれた二人に心から感謝しています。本当にありがとう！ ［こぼれ話編］ 太郎平小屋でビールを飲みながら達成感にひたっていたら、「トランスジャパンアルプスレース」の選手の方々がヘッデンで走ってきた。 今朝、富山湾を出発し早月尾根から剱岳、立山を走ってきたという。たった17時間ですよ？ これから北・中央・南アルプスを越えて駿河湾に抜ける500キロのコースを走り抜けるのだそうだ。本当にすごい。ただただ感心するばかりです。 （残念ながら大会は台風で中止になったそうです）