活動データ
タイム
07:18
距離
14.5km
のぼり
1050m
くだり
1043m
活動詳細
すべて見る雨飾山、黒姫山と予定通り登頂し、3日目の最後は戸隠山。蟻の塔渡りという難所があることは知っていたが、正直大したことはないと高をくくっていた。Youtubeでその映像を検索して観るまでは。 なかなかの崖っぷり、落ちたら遺体回収不可能とまでコメントされている。行けるのか。不安がよぎる。 当日。行けるかどうかわからないが、とにかくその目で確かめる、ということで鏡池に駐車してスタート。朝の湖面に映る戸隠山。美しいのだが、頭の中は蟻の塔渡りが半分以上を占める。やがて戸隠神社奥社への参道に出、随神門を潜って杉の巨木の並木に沿って進む。奥社で登下山の安全を祈願。本気で祈願。 ちょうど白装束の修験者の一行に会い、彼らの唱える般若心経を聞いて心を整えるが、修験者を引率している男性の「岩場から足を滑らすとこの奥社の裏辺りに落ちる」という声。マジか。修験者の一行も登るようだ。でもザックもなく足元も足袋。いや、岩場は足袋の方がいいかも。 登山口には結界の紙垂(しで)が結われていた。スピリチュアルな緊張感。霊山の雰囲気がビンビンに伝わってくる。なんとなくすっきりしない天気。もやもやしながらいきなりの急登に挑む。百閒長屋の手前の岩場で奈良から来た年配の男性に会った。この先の道中、蟻の塔渡りの危険度について、いくつかの他の山を引き合いにして話す。 ダメなら引き返す、といつになく弱音を吐いたところ、「ここまで来たら行くしかないだろう」と逆に励まされ、自分よりも年配の登山者に背中を押されたことで、すーっと一気に吹っ切れた。お先に失礼して塔渡りに向かう。ここから鎖場、しかも結構な長さと高さが連続する。かつて登った表妙義のいくつかと同レベル、経験値が気持ちを楽にさせてくれる。吹っ切れると鎖も楽しい。 そして、塔渡りにたどり着いた。霧が出て見通しはよくない。先が見えないナイフリッジって考えただけでも怖い。蟻の塔渡りの先は剣の刃渡りという、まさにエッジのきいた名前の凶悪な岩場が続く。ここが一般登山ルートってダメじゃないのか。右手に迂回路の鎖があるが、ここまで来たらそれは使わず、正面突破と決める。 立ってはダメ。バランス命と念じて慎重に進む。先ほどの男性が追い付いて来るかと思ったが姿は見えず。今ここで墜落しても誰にも気づかれないだろうと思うと更に慎重になる。途中何枚か写真も撮れ、何とかクリア。5分くらいだっただろうか。集中していて時間の感覚がわからない。八方覗に着いて地面に立てることの安心感を味わった。 その先の登山道から塔渡りを振り返るが、霧の中でよく見えない。先ほどの男性が無事渡れていることを祈りながらその先の九頭竜山に向かった。あの男性は本当は実在せず、弱気な自分を励ますために現れた何かではないか、ということまで妄想させる、そんな霊峰であった。
もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。