久住山~九重連山~

2021.07.03(土) 日帰り

活動データ

タイム

03:51

距離

4.9km

上り

561m

下り

848m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
3 時間 51
休憩時間
24
距離
4.9 km
上り / 下り
561 / 848 m
1 12
2 21
1

活動詳細

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 今回は久しぶりに拷問テイストが濃厚だった。去年天目山に行った時も後半エライめに遭ったのだが、あの時のは恐怖体験だった。今回はとにかくウザい!に尽きた。  九重連山に行こうと思ったのは、GPVとSCWシミュレーションで連日綿密な検討を行った結果、九重連山ならば金曜の夜半過ぎから土曜の朝9時までは雨が降らずなんとか持ちこたえると判断したからだ。というのは半分嘘で、「こんにちは、かほです!(山ジェスチャー)」が印象的な、癒し系山岳女子Youtuberのかほちゃんが九重連山縦走の動画をUPしたのを見て、おお、僕ちゃんも行きた~い!と思ったからに他ならない。(がんばれ!やまねこ)  目的地は大分県竹田市の赤川登山口。宮崎県の南端にある都城市から海岸沿いを南北に縦断し、延岡を越えて大分県に入ったら西へ進む、総距離230kmに及ぶ行程。どしゃ降りの東九州自動車道を突っ走っているとき、本当にだいじょうぶかなぁ、いったい俺は何をしているのか、こんな時はやめた方がいいじゃないの、といったネガティブな感情がふつふつと湧き上がる。それでもシミュレーションを信じて……かほちゃんの笑顔を思い浮かべて、進むしかないと思い直しハンドルを握り続けた。  日付が変わって午前1時30分、赤川登山口に着いた。駐車場に先客はいない。それはそうだろう、今夜こそ俺だけさ、と心の中で呟く。そしてシミュレーションの通り、この時雨はほとんど止んでいた。俺は無言でシートを倒したのだった。  3時半にセットした携帯の不快なアラーム音に叩き起こされる。冷たいブラックコーヒーに刺したストローに吸いつき、にょろにょろとしたマヨネーズが入ったパンを口に運ぶ。雨を避けるため9時頃にはまたここに戻ってこなくてはならない。俺は機械的に支度を始めた。  外は雨が降っていない、それどころか雲が切れて星が出ている。上々の気分でヘッドライトを頭で光らせて出発した。温泉があるので卵の腐ったような強い匂いが鼻につく。その状況から一刻も早く逃れたいとでもいうかのように急ぎ足で進んだ。時間を節約するため、写真はいつもより控えていこうと考えていた。始まってすぐに沢に下りる。いきなり徒渉のようだ。前日の雨のせいで水かさが増しているが、透明なきれいな水だ。しかし、増水のせいで適当な徒渉点が見つからない。行きつ戻りつを2回繰返した後、勇気を振り絞って渡ったが、ここで時間をロスし、焦りが生まれた。  川を渡った後も道が判然としない。温泉の匂いがきつく樹脂製の黒いパイプが這っていて木が生えていない少し開けた場所があったので進んでみた。ここが沼地みたいな場所で、ずぶずぶの砂地の上に異様に苔が生えた気持ちの悪い場所だった。何か白い物質(恐らく温泉由来)が浮かんだ浅い水たまりに足を置くと、ずぼっとトレッキングシューズが半分めり込んだ。うわっ、やばっ。もう、焦って進んだ。5、6歩進んで奥の方が見える位置にきたが、先がありそうに見えない。こっちじゃない。引き返すしかなかった。  何とか正しいルートに入ることができたが、時間を浪費してしまったので急ぎ足で進む。だいぶ来たなと思ってどれくらい進んだか気になり携帯を取り出しYamapのルートガイドを見た。なんと記録がストップしていた。沼地でルートの確認を焦り、地図を拡大縮小したりしているときにでも誤って止めてしまったのだろう。この時、平面上で頂上までの距離を既に半分以上通過していた。この失態で記録は中途半端な位置からになってしまった。そしてここから急な階段が続くことになる。ここまで少し無理をしてきたのでバテ始めていた。ここのところ写真を撮る方がメインの山行が続いていたので、スピードハイクに適応できない。気は急くがこの時はもう足が上がらなくなってきていた。そして続く道では藪を潜り抜ける登山道になっていて、蚊柱が道に立ちはだかるようになってきた。これがもうとんでもなく鬱陶しい。俺が登るペースに合わせて移動する……ような感じがする。虫よけのハッカスプレーをかけるのを忘れたので、両手や頭を振り振りして遠ざけるが、これで転びそうになったのでそれも諦めた。できるだけ早く進むことで振り切れることもあった。  息も切れる直前。追い込まれた感が頭を支配してきた。しかし、どこかの大学の女性教授の言葉が頭をよぎった。「登り4割下り5割、最後に1割残しておく」これを思い出してからは無理はやめて自分のペースに戻った。雨具もあるし最後の方で雨に降られても体力が残っていれば安全に帰ることができる。それも経験だくらいに思って、下山の体力を温存する道を選んだ。  最後の方はもう一段急になり、完全な岩場になった。しかし蚊柱は殆どなくなったので、登りに集中できる。久しぶりだなこの感触。高度感と相まって少し怖いが、楽しめた。ただ、カメラをぶつけないことに細心の注意を払いながら上った。そうして、頂上までもう一息のガレ場にきて、腹の底から安堵がこみ上げた。頂上は360°の眺望。東西は九重連山を構成する山々の稜線が美しく、南面は阿蘇や祖母山、高千穂峰まで見え(高千穂が見えたと思ったのは、錯覚でした。すみませんm(__)m)、北は由布岳が望めた。雲があるが、視界は良好であった。  頂上で適当に写真を撮り、休憩も取らずに下山することにした。本当は中岳(九州最高峰)も回りたかったのだが、レンズ雲が浮かび、竹田市に雨が降っているのを見たので、リスク回避のため決断した。苦渋の決断であった。くじゅうの決断……くじゅうの……(しつこい)。下山は登りルートとは変え、新明水から猪鹿狼寺本堂跡に至るルートにした。この選択が、いわれなき罰ゲームへの第一歩であった。  稜線を東に移動し、新明水から下り始めてすぐに藪に入った。ミヤマキリシマが咲き乱れている時期ならば、花の香漂う気持ち良い道かもしれないが、今回は全く違った。道幅が狭く、絶対に体が藪に接触する。がさがさと藪をつつけば大量の虫が一斉に飛び立つ。そして蚊柱は延々と続いた。体に接触する草木は朝露に濡れているため、着衣で露を拭っているようなものだ。特にズボンのすそがびっしょびしょになった。そうこうしているうちに藪の背丈が高くなり、薄暗いアーチ状の藪を潜らないといけなくなった。そして、登山道が真っ黒で水を含んだ腐葉土のような地面に変わった。登りは木の階段と岩場だったが、こちらは土、それもねっとりした、パレットに出した黒のチューブ絵の具のもう少し粘土っぽいやつとでも表現すればいいのか……。これがバナナの皮みたいに滑る滑る。気をつけているつもりでも何回となくこけそうになる。そして、たまにある岩に安心して足を置き体重を掛ければ、シューズのソールにはまり込んだ泥が潤滑剤となり、これまた滑る。全く気が抜けない。雨を避けたいため急ぎたいのだが、滑らないように足に変な力の入れ方をするため、左足のスネが攣りそうになってストレッチをする始末。そしてついに足を滑らせて右手をついてしまった。手のひらにねっとりとした泥がこびりついた。そのあとまた右手、ついには両手もついた。そして口をついたのは「もう、嫌だ~!」だった。最後には、ほとんど尻もちをつく寸前で両手をつき、ザックも地面に接触させてしまった。あ~、ついにやっちまった、しかし、尻もちでないだけまだましだった。手にばかり気がいっていたが、ズボンの裾も、特に内側が靴と擦れて泥だらけになった。ある程度下ると蚊柱は減ったが、今度は蜘蛛の巣が多くなり、これも鬱陶しいくらいに顔につく。しかし、手が泥だらけなのでうまくつまんで取り除けない。蜘蛛の糸で鼻のあたりや頬がむずむずしてもどうすることもできなかった。もうイライラして、花が咲いていても写真を撮る気になんてならないし、見もしない。今や一刻も早くここから脱出したい、その一念だけであった。  ほうほうのていではあったが、無事雨に当たらず駐車場に着くことができた。荷物を下ろし、車に積んだとたんに雨が本格的に降り始め、すぐにどしゃ降りに変わった。もう少し行動が遅れてあの泥道にまだいたとしたら……とんでもなかっただろうと思うと、ほっと溜息がでた。 今回のルートは晴れている初冬や春先はいいかもしれないが、梅雨時はうんざりするほどの道だ。そういえば、今日はだれにも会わなかった。すれ違いもしなければ、追い越されもしない。ああ、駐車場にとめてある車は一台だけ……そういうことだったのか……?

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