夕張岳の奇跡、登りの巻。

冷水コースは小さな花や草が眠りから覚めるような木漏れ日の朝陽が差し込んでいる この地の念願の花を見に、長く狭い林道を超え、登り始めた自らの行動力に感銘しながらも、足は鈍く、笹をかき分け、もう既に長い道のりを悟り、自分で計画を立てた時間内に登頂出来れば良しとしようと思い始める まだ朝の７時前なのに、岩に腰掛けた私を見て、下るのか？と問われ、そんなわけないでしょ、と心の中でツッコミを入れ、見送った親子と思われる二人連れが、冷水の沢で休憩していたので私も腰を下ろすと、息子と思われる歳の頃40代の、在住地の質問に答えると、父親と思われる方を指差し、同じ街だと言う 間髪入れずに、我々、山仲間なんで！と親子の予想を断ち切られる じゃ、どこの自治会かを問うと、これまた車で５分ほどの距離で、近所には町で有名な本屋があると言うので その前をよく通っていると答え、じゃ後ろから追ってきた車か？と思えば、 この歳になると林道が嫌だから、と息子ほどの人の家まで1時間迎えに行って同乗させてもらった、と言うので それは遠回りでしたね、と答える それからは遅い私を時々休憩しながら待ってくれてたかのように、私が来ると少し話をして、またゆっくり歩きますから、と言い残し、先をあっという間に登ってゆくのだが、 景色が開けたあたりでキョロキョロして眺めると遠く向かいの登山道の草の間からこちらに手を振る 私も手を振り、頑張るが、 なんとこの山は長く辛いのだろう なかなか追いつけない この超のろいおばさんが シャキシャキ登る山男達についていけるはずもない だが、鳥居で参拝し、振り返ると さて、行くか と腰を上げ、またゆっくり行きますよ と言い残し、先を行くのだ 私にしてはやっとの思いで登頂出来たこの憧れの山でこんなにも快晴で、この悦びを話す人がいる、ということがさらに喜びなのだ 後半の下山の巻。へつづく