石鎚山(弥山 〜 天狗岳 〜 南尖峰) 西之川登山口から

2021.06.12(土) 日帰り

活動データ

タイム

06:29

距離

11.7km

のぼり

1930m

くだり

1091m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
6 時間 29
休憩時間
31
距離
11.7 km
のぼり / くだり
1930 / 1091 m
1 52
3
16
8
6
11
3
34
1

活動詳細

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四国の百名山ハシゴの旅の二日目は、本格的に登山を始めた2017年頃から 北岳(2019年登頂)と並び、ず~っと憧れていた石鎚山です。 憧れた理由は二つ。 一つ目はなんといっても山容のカッコよさ、二つ目は修験の道を歩けるからです。 土小屋から東陵を登るアスレチックなルートにも惹かれましたが、 修験道を歩き、古の修験者に思いを馳せるのが一番の目的なので初志貫徹。 西之川登山口から石鎚神社中宮成就社、そして試の鎖から全ての鎖場を通って山頂を目指すルートを選択しました。 また、このルートを選んだのは、早朝にスタートすることでロープウェイの登山者より早く鎖場に到達し、 渋滞を回避し、静かに歩きたいという意図もあります。 2時までは麓のコンビニで車中泊し、3時頃に西之川登山口の駐車場へ到着しました。 山道としては15km程度ですが、片側1車線の道が永遠と続き、狭い道は最後の数分にわずかにある程度。 前日の剣山とのギャップが凄まじく、早くも石鎚山の偉大さの虜になります。 奇跡的に4時間くらい寝れたので、慣れない車の車中泊としては上出来でしょう。 ※ちなみにいつもの車はセダンで、フラットシートなど夢のまた夢なので、  助手席を一番前まで動かし、空いたスペースに後部座席と同じ高さの収納ボックスを置くことで、  斜めに足を延ばせるようにして、右の後部座席に頭を、左の助手席の後ろあたりに脚を置いて寝ています。  2泊3日とかすると、絶望的に疲れがたまりますので、居心地の良い車に買い換えたい欲望に駆られます。  ただしこの車は運転性能は抜群な為、長距離運転の疲労、ストレスは驚くほど少ないので、  私は運転の疲れ>寝れない疲れを考慮し、性能の良い車の方を優先しています。  一番良いのはアルファードの3.5Lとかでフラットになれば最高なのでしょうが、そこまでのお金はございません。 あいにくこの日は曇りor雨、稜線上は風速10~15mの予報。 本来であれば絶景を楽しみたいところですが、 修験者たるもの晴れだ曇りだ雨だ風だ、天候にかかわらず修行をしていたはず。 雨の日にしか得られない経験、辿り着けない境地というものがあるのではないかと、気持ちを整理して登ります。 自分でも驚きますが、こういった考え方はポジティブシンキングの一言で片づけられるものではなく、 あるがままを受け入れられる寛容な心というか、柔軟な心というか、 登山を通じて磨かれた精神から生まれて来たものだと思います。 ・4時30分の日の出時刻同時出発に向け、4時頃から準備を始めるも、異様に暗くね?  あと30分で明るくならなくね?とネットを調べると、なんと日の出は5時。  ですよね~。西日本は関東より日の出が30分遅かったですね~、と今更思い出す。  暗いうちに登り始めてもいいけど、山の雰囲気を感じられなきゃ意味がないなと5時スタートへ変更。 ・駐車料金500円を入れる赤いポストの周りは、  可愛くデコレーションされた石や人形に埋め尽くされており、早速癒されます。 ・登山口を通過すると歴史を感じられる登山道が始まります。  杉の木でしょうか?(それすらわからんのかい!植物は全く興味がないのと無知ですみません)  高い木々の間の整備された道を緩やかに登っていきます。  いや~参った!写真見てください!これですよ!これ!私が求めていたのは!  美しい木々に囲まれた山の中に、ただ一人身を置く喜び。  行ったことありませんが、熊野古道とかこんな感じなんですかね~。  無の境地に浸る、古に思いを馳せる、自分と向き合う、楽しいことを考える、  自由自在に物思いに耽ることが出来ます。  感動で背筋が涼しくなり、鳥肌が立ってきますね。  こんな道なら10時間歩いてもいいな、遥々四国まで来た甲斐があったな~と、  憧れ続けていた歴史のある登山道を歩ける幸せを噛み締めます。  多少の雨でも水捌けも良く、高い木々が遮ってくれて気持ちよく歩けるので、  時間はかかりますが、是非この道から石鎚山山頂を目指して欲しいなと思います。   ・ちょっと話は逸れますが、この素晴らしい登山道を歩いているうちにとある思いがよぎりました。  皆さんも登山をしていると、いろんなところで神社に出会うことと思います。  私がトレーニングしている筑波山や地元の山も神社とセットになっていることもあり、  登山時は私と接することで、周りの人が幸せになれるような人間になれるようにと己を磨き、  下山後は無事下山出来たお礼と、私を大切に思ってくれている家族や友人が健康で幸せに暮らせるようにと  祈願して帰るようにしています。  しかし、今回は何か腑に落ちません。。。  修験者はそんなちっぽけなこと、狭い範囲のことだけを考えて歩いていたのだろうか?  自分の周りのことだけではなく、もっと広い視野で物事を考えて歩いていたのではないか?  と疑問を持ち始めました。  偉大な石鎚山がそう思わせたのかもしれません。  今の私には願えることはただ一つ。  東京オリンピックの中止と、少しでも早くコロナがなくなり幸せな世の中に戻ること。  実現性、現実性なんて二の次、自分が正しいと思う道を信じて歩くのみ。  今日はその思いを胸に秘めて歩こうと決意しました。 ・約二時間の気持ちの良いお散歩を終え、中宮成就社へ到着し、  まずは先程決意した思いを祈願。  降りのロープウェイから周りの山を見る限り、  この日の石鎚山系は標高1,500m以上のところがガスに覆われていた模様。  グレートトラバースでは見返遥拝殿の先に石鎚山が見えていましたが、  この頃から雨がしっかり降り、風も強くなってきたので、何にも見えず。  ここから見る限り、山頂方面は非常に荒れている様子だったので、  濡れた鎖場と強風(平均15m、最大で20mかなぁ)の稜線が頭に浮かび、気が引き締まります。    ここで勘違いして欲しくないのは、遥々遠くまで来たから、  悪いコンディションでも最後まで行くという判断をした訳ではなく、  槍ヶ岳(標高3,000m)での最大風速20m、八ヶ岳(標高2,500m)での25mを経験した上で、  行けるところまでは行って、無理なら引き返すという判断したということです。  私も鳥海山では25mの吹上げに撤退したこともあります。  いきなり厳しい状況が生まれることは稀です。  ここからは強い風が吹き込んでくるなとか、雨が強くなってきたなとか、何かターニングポイントがあるはずです。  勇気とか経験とか関係ないと思います。  そういう感覚が元からない人にとっては、いつまで経ってもわからない感覚でしょうが、  危ない、怖いと感じたら、その時点で引き返す、それだけのことです。  しかしこの日に限っては、冷静なだけでは怪我をするな、  普段は頼りにしていない気合いも入れる必要があるなと心の声が聞こえました。  濡れた岩場を乗り越える為には相当に滾(たぎ)らせなきゃいけないなと。。。  滾る?と言えば中邑真輔、中邑真輔と言えばイヤァオ!!、  不思議なことを思い出すもんだなと驚きながらも、  「滾ってきたぜぇ!」「絶対ミスしねえぞ!」「イヤァオ!!」  と心の中で叫びながら先に進むことにしました。 ・と滾らせてはみたものの、途中でまだしばらく試の鎖に着かないことに気付きました(笑)  慣れないことすると体力持たなそうなので、一旦スイッチ(滾り)を切ってパワーを温存。  成就社から先の道も非常によく整備されており、気持ちが良く歩けます。 ・結局1時間近くかかり試の鎖に到着。  まだ木々の中なので雨風は大して吹き込まないものの、濡れた岩を見ると緊張感が走ります。  とはいえまだ試の鎖なので、両手でほっぺを軽くペチペチして滾らせてから登りました。  もちろん相棒は岩場では絶対的な能力を発揮するアプローチシューズ、TX4です。  乾いていれば岩場に慣れた方なら問題のないレベルですが、  濡れている時はわざわざ登らなくてもと感じるくらいの危険はあります。  試の鎖を登り終えると断崖絶壁の試の降りが現れ、  今日のコンディションを考えると降りは迂回路で十分と考えていたのと、  本日初の危険な降りに心の準備が足りておらず、マジかよといった感じでした。  最後の部分が鎖が短く、足の置き場にも苦労するので、じっくり見極めてください。  やっと終わりだと雑に降りて怪我をしないように。   ・その後の一の鎖、二の鎖は試の鎖がこなせれば問題のないレベルです。  三の鎖は木々に囲まれておらず剥き出しの岩場なので高度感が違いますね。  途中で下を振り返るとめっちゃ怖いです。  濡れていると足の置き場がより繊細になってきます。  ここだと思ったところに試しに足を置いてみるもグリップしないで滑ることが数回あったので、  くれぐれも靴がグリップすることを確認した上で体重を乗せるようにしましょう。 ・鎖場全体の感想としては、長い鎖場が5ヵ所、合計240mもあるので、  腕の力に頼ってしか登れない方には向いていません。  岩場、鎖場で腕の力がなくなるような方は根本的に登り方を見直す必要があると思うので、  足で登る技術を身に付けてからチャレンジして欲しいと思います。    ※私は危険な岩場、鎖場に臨む際には勢いに頼らない冷静さが一番大切と考えているので、   田中陽希のようにゼエゼエ、ハアハア、オシッ、オリャとか言いながら、   力任せに登るのはナンセンスだと考えています。   あれはナレーションと一体となり、いかにも凄いことをやっている & 視聴者に恐怖感を煽る為の演出です。   あの人は演技するくらい余裕があるだけなので、素人は真似しないようにしましょう。   ・無事山頂へ到着しましたが、やはり稜線上は風が15m前後で視界は30m程度。  雨は風に少し含まれているかなくらいで、気にならない程度なのが救いでした。  鎖場と山頂でお会いしたトレランお兄さんと少しだけお話ししたところ、  濡れた鎖場は怖いので、迂回路を使って鎖場の下と上から写真を撮りながら登って来たとのこと。  この先の天狗岳、南尖峰も興味がありそうでしたが、ご自身の経験、この日の天候を考えて断念されていました。  初めての石鎚山と仰ってたので、ここまで来て戻るのは非常に残念だったと思います。  私もトレランシューズでは濡れた鎖場、岩場は通りたくないので、正しい判断をする方だなと感心しました。 ・天狗岳、南尖峰への稜線は一見切り立った岩の上を歩くように見えますが、  下まで落ちて死ぬような部分はほとんどなく、岩の上で滑って転倒する部分がほとんどです。  特に雨の日は一歩一歩慎重に足の置き場を見つけながら歩いてください。  南尖峰は大きな岩が積み重なったような場所で、最後まで行こうとするとなかなかの恐怖感でした。  ただしガスがある日の方が得てして怖くないと思うので、恵まれていたと思います。 ・誰もいない石鎚山の稜線歩きを楽しみ、無事弥山まで戻ってきました。  本日の危険なところは終了したので、少しだけ緊張感を落とします。  結果的に石鎚山は弥山までは木々に守られており、雨風の影響を受けにくい為、  この日は鎖場を避けて迂回路を使えば、弥山までは誰でも辿り着けるレベルだったと思います。 ・あとは石鎚山との残り少ない時間を惜しみながら、ゆっくり降っていきます。  登りでは通らなかった迂回路は見事なものでした、  特に二の鎖、三の鎖の裏にある迂回路は鉄骨の階段が設置されており、  しかも登り用、降り用でレーンが分かれていました。  登山口からの成就社までの道、成就社から鎖場までの道、鎖場や迂回路、  そして思い返せば登山口に至るまでの道路を含め、  石鎚山は皆が安心して登れるよう、見事なまでに整備されています。  このような険しいルートを開拓した方、重くて頑丈な階段を設置してくれた方、  登山道を整備し続けてくれている方、関係する全ての方々に心から感謝しながら歩きました。 ・そして遂に成就社へ到着。  無事登山をさせていただいたお礼と、お守りを買って成就社を後にしました。 ・最後はロープウェイの駅まで15分程度の降りです。  お詣りに来ている普段着の方々が現れ、現実の世界に戻って来たことを実感します。  これが登山が終わったというスイッチになったのかわかりませんが、  とても清々しくて爽やかな達成感に包まれました。  ここで感じた達成感は決して凄いことをやったという意味ではなく、  山に敬意を払って登るとか、自分と向き合うことが最大限に出来たという意味の達成感です。  体(力)こそ余力はありますが、心、技は全て出しきったからこそ生まれてきた感情だと思います。  これだけやりきったと思える登山がかつてあったでしょうか。  「俺、やったよ!!!」って、自分が誇らしくなるくらい素晴らしい山旅になりました。  興味を持った皆さんには是非登って欲しいと思います。   ありがとう石鎚山!また来ます! ・唯一の心残りは、「おのぼりさん」、「おくだりさん」と、  他の登山者から声を掛けてもらえなかったことです(笑)  この日すれ違った登山者は約10人だったので、それも止むなしか。。。 最後に今回で引退することになった相棒、TX4と、 最近出会った優れもののギアを紹介をして終わります。 ※写真の最後の方をご覧ください。 ①LA SPORTIVA TX4  2018年から危険な岩場、鎖場で私の命を守ってくれた真の相棒です。  横歩きレベルの岩場では、ハイカット、ミドルカットの登山靴は向いていると思いますが、  縦歩きレベルの岩場では、足首が自由に動き、グリップ力が抜群のTX4に敵うものはありません。  一度履いたら、包み込まれるようなフィット感と、  絶対的な安心を得られるグリップ力の虜になること間違いなしです。  難易度の高い岩場、鎖場を登られる方は是非購入をお勧めします。  昨年、左足の内側のラバーとスエードの継ぎ目あたりが、  短く尖った藪に貫かれて修理した為、同じものを新調して第一線からは退いていました。  今回は雨で濡れる可能性もあったので、最後の登板となった次第です。  下山後に靴を脱ごうとすると、修理したところが見事に裂けていた為、完全に引退モードですが、  命を守ってくれた相棒を遠く四国のゴミ箱に捨てて帰る訳にも行かず、  綺麗に洗って飾ることにしました。 ②アクシーズクイン UVメッシュグローブ(好日山荘)2,000円弱  あくまで日焼け、切り傷防止用の手袋です。  昨年はワンシーズン使ったミレーのグローブが今年は早速破れました。  5,000円もして数ヶ月で買い換えるのは無理なので、好日山荘で安い物を探しました。  通気性や速乾性はミレーの比ではない感じで、付け心地抜群。  通常の使用ではベルトを絞める必要ないので、外すのも簡単です。 ③ショーワ マイクログリップ(ケーヨーデイツー)500円弱  ブラックダイヤモンドのグローブは厚手なので、  濡れると水を含んでとても使えなそうなので、投入してみました。  今回の濡れた岩場、鎖場で全く問題ありませんでした。  問題は1回洗っただけで手首の当たりのゴムがヨレてきた気がするので、  数回の使い捨てと割り切るのが良さそうです。

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