ぶなさんぽ

独りで歩くときは野良猫の気持ちになる。 イン谷口出発の武奈ヶ岳は、他のルートに比べると少し距離が長いので敬遠していたのだが、季節も良いし、日も長いし、八雲ヶ原にも行ってみたいし、一人だし、行けるところまででもいいし、と自分に有らん限りのポジティブな呪縛を掛けるだけ掛けた上で出発してみる。歩いているうちに、この心配性の渦に巻かれてつつ好奇心を原動力に動く感じは、まるで野良猫のようだ、と閃いて、そこからは野良猫の散歩のように心を軽くして歩く。 幸いなことに登山道は賑やかで、つねにどこかに人の気配を感じながら、適度な距離感を保って、気兼ねなく進むことができる。天気も上々。ルート上にはブナの木漏れ日が落ち、せせらぎと共に五感が楽しい。ガレ場では手を使ってよじ登り、小さな花にシャッターを切り、道標とGPSを注意深く眺め、ようやく見えてきた山頂への距離感に心折れそうになったり、勝手気ままな山歩き。 頂上までの距離は、坊村出発より、ガリバー出発よりも長いけれど、ルートが楽しいのと、いざとなったら山頂を端折ることもできる気楽さも伴って、今まで上がったどの道よりも満喫できました。また行こう。