栃穴御前山と鶴島御前山/小糠雨の細尾根を歩く。

2021.05.16(日) 日帰り

活動データ

タイム

03:28

距離

6.9km

のぼり

495m

くだり

562m

チェックポイント

DAY 1
合計時間
3 時間 28
休憩時間
54
距離
6.9 km
のぼり / くだり
495 / 562 m
1 29
27
14
27

活動詳細

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九州や四国で梅雨入りしたと見られる、という気象庁の発表が出た週末。土曜日は好天だが、日曜が怪しい、そんな関東地方の天気予報だった。 では土曜日に、何処かに行こうかなと考えていたところに、所用が出来てしまった。日曜日の怪しい予報は、昼過ぎから雨、というものだった。それで、早朝に出掛け、午前中に下山してしまおうと考えた。 中央本線沿線の、駅から歩ける山ということで、これまで幾つかある「御前山」に登った。大月辺りから東京に向かって数えてみると、駒橋御前山、斧窪御前山、綱之上御前山、四方津御前山、鶴島御前山。いずれも端整な山容で聳え、山頂からの眺めが良い山だった。 戦国時代に於いて、砦や物見台、烽火台として活用されてきた山ということで、一様に御前山の名前となっている。現在の冠名は、同じ御前山が幾つもあると混乱を招くので、便宜的に付与されたものと思われる。 郡内(山梨県の東部を郡内地方、西側の甲府を含む地域を国中地方と呼ぶのは、甲斐国時代からの名残り)に並ぶ御前山。見たところ、未だ登ったことがないのは、鶴島御前山から西北に延びる尾根の途上に突き出る、栃穴御前山だけとなったようである。 栃穴御前山は、ずっと気になっていた山だが、取り付きの場所が判らないというのと、低山ながらも峻険な岩場が続く、危険なルートであるという情報から、二の足を踏んだまま、現在に至っている。 登山詳細図シリーズの「山梨東部の山(東編)」には、栃穴御前山のルートが記載されている。登山詳細図が出版される前は、ネット上の数少ない山行記録を頼るしかなかった。バリエーション・ルートの記録は、概して説明的ではなく、参考になるものではなかった。 四方津駅と上野原駅の、ちょうど真ん中辺りに位置する栃穴集落は、気軽に駅から歩けるイメージではなかったが、登山地図という道しるべが、気後れを、後押ししてくれるような気がする。 尾根に乗ってしまえば、ふたつの御前山を周回して、上野原駅には二時間余りの程度で到達できる行程である。雨が降ってくる前に、難路が予想される山歩きを、敢行することにした。

倉岳山・高畑山・九鬼山 旧態依然の駅舎が嬉しい四方津駅に下車。難点はトイレも旧態依然なことであるが、新しく多機能トイレが設置されていた。喜んで拝借する。
旧態依然の駅舎が嬉しい四方津駅に下車。難点はトイレも旧態依然なことであるが、新しく多機能トイレが設置されていた。喜んで拝借する。
倉岳山・高畑山・九鬼山 駅舎を背に、左手に移動して、甲州街道には上がらずに、線路を潜る。

静まり返った日曜の朝、住宅の点在する道を東に歩くと、彼方に顕著な三つのピークが見える。

真ん中が鶴島御前山なので、左側が栃穴御前山なのかなと思うが、定かではない。

いずれにしても、狼煙が上がれば直ぐに判るな、と思う。
駅舎を背に、左手に移動して、甲州街道には上がらずに、線路を潜る。 静まり返った日曜の朝、住宅の点在する道を東に歩くと、彼方に顕著な三つのピークが見える。 真ん中が鶴島御前山なので、左側が栃穴御前山なのかなと思うが、定かではない。 いずれにしても、狼煙が上がれば直ぐに判るな、と思う。
倉岳山・高畑山・九鬼山 生活道は徐々に狭まり、中央本線の線路と、桂川の隙間を辿っていく。

線路の向こうの高台には「コモアしおつ」の街がある。それが俄かには信じ難い、森閑とした雰囲気になった。

ふたたび田畑が広がると、千足沢経由で高柄山方面に至る道標が現われた。それを見送り、依然として線路と併行する舗道を歩き続ける。
生活道は徐々に狭まり、中央本線の線路と、桂川の隙間を辿っていく。 線路の向こうの高台には「コモアしおつ」の街がある。それが俄かには信じ難い、森閑とした雰囲気になった。 ふたたび田畑が広がると、千足沢経由で高柄山方面に至る道標が現われた。それを見送り、依然として線路と併行する舗道を歩き続ける。
倉岳山・高畑山・九鬼山 三つのピークが近づいてきた。予報通りの不穏な色の空で、栃穴御前山を取り巻く、不気味な風景となっている。

未踏の険阻な尾根を想像して、云いようの無い不安感に包まれる。
三つのピークが近づいてきた。予報通りの不穏な色の空で、栃穴御前山を取り巻く、不気味な風景となっている。 未踏の険阻な尾根を想像して、云いようの無い不安感に包まれる。
倉岳山・高畑山・九鬼山 久保集落の中を通過して、幅広い車道に出ると、杖突橋の袂であった。橋の上から、桂川を眺める。

山なみの遠望は利かなくなり、至近の尾根が確認できるのみとなる。
久保集落の中を通過して、幅広い車道に出ると、杖突橋の袂であった。橋の上から、桂川を眺める。 山なみの遠望は利かなくなり、至近の尾根が確認できるのみとなる。
倉岳山・高畑山・九鬼山 桂川の右岸に出て、道なりに蛇行する舗道を登っていく。対岸を見ると、正面に聳えるのが、四方津御前山。

ピーク東端の電波塔、そして岩稜の尾根が判然として眺めることができる。
桂川の右岸に出て、道なりに蛇行する舗道を登っていく。対岸を見ると、正面に聳えるのが、四方津御前山。 ピーク東端の電波塔、そして岩稜の尾根が判然として眺めることができる。
倉岳山・高畑山・九鬼山 杖突集落に入り、途中で「萬霊等」の石碑と、その奥に在る廃寺を覗く。そして、人の気配の無い農村の道が続いていた。

やがて舗道は急降下して、栃穴沢を渡る。坂を登り返すと視界が開けて、そこが栃穴集落だった。
杖突集落に入り、途中で「萬霊等」の石碑と、その奥に在る廃寺を覗く。そして、人の気配の無い農村の道が続いていた。 やがて舗道は急降下して、栃穴沢を渡る。坂を登り返すと視界が開けて、そこが栃穴集落だった。
倉岳山・高畑山・九鬼山 栃穴御前山の入口が近づいてきた。登山詳細図には「擁壁に入口」とある。

神社を左に見て、勾配を登り切ったところに、二件の民家が在った。右手の民家の入口に沿って、擁壁が続いている。

記載通りであった。擁壁に沿って民家に入る前に、尾根に登っていく踏み跡が明瞭に確認できる。

小休止で神経を沈静化させて、いよいよ登山開始である。
栃穴御前山の入口が近づいてきた。登山詳細図には「擁壁に入口」とある。 神社を左に見て、勾配を登り切ったところに、二件の民家が在った。右手の民家の入口に沿って、擁壁が続いている。 記載通りであった。擁壁に沿って民家に入る前に、尾根に登っていく踏み跡が明瞭に確認できる。 小休止で神経を沈静化させて、いよいよ登山開始である。
倉岳山・高畑山・九鬼山 取り付きから急勾配で、ロープまで設置されている。民家の裏手に廻るようになり、傾斜は落ち着いた。

しばらく植物の繁茂する道に難渋するが、石祠の在る場所に上がると、今度は砂礫の急登になる。

標高300m近辺の等高線は、それほど混んでいないのだが、実際は木々を掴みながらの傾斜を登り続けた。

尾根は微妙に分岐していて、登り切ったと思うと細い尾根を下る地形となっている。滑落予防のロープが設置されている箇所も在った。

勾配はさらに急になり、標高380m圏で、苔蒸した石祠のある箇所に行き着いた。樹林越しに視界が広がり、高柄山方面の山々が並んでいる。

久しぶりの眺めで嬉しくなり、小休止するが、微かな雨粒が頬に当たる。

未だ朝の八時半なのだが、もう降ってきたのか、と思う。
取り付きから急勾配で、ロープまで設置されている。民家の裏手に廻るようになり、傾斜は落ち着いた。 しばらく植物の繁茂する道に難渋するが、石祠の在る場所に上がると、今度は砂礫の急登になる。 標高300m近辺の等高線は、それほど混んでいないのだが、実際は木々を掴みながらの傾斜を登り続けた。 尾根は微妙に分岐していて、登り切ったと思うと細い尾根を下る地形となっている。滑落予防のロープが設置されている箇所も在った。 勾配はさらに急になり、標高380m圏で、苔蒸した石祠のある箇所に行き着いた。樹林越しに視界が広がり、高柄山方面の山々が並んでいる。 久しぶりの眺めで嬉しくなり、小休止するが、微かな雨粒が頬に当たる。 未だ朝の八時半なのだが、もう降ってきたのか、と思う。
倉岳山・高畑山・九鬼山 山頂に近づいているが、踏路はふたたび鬱蒼とした雰囲気が続いた。勾配を登り終えると、標高431mの栃穴御前山に到着。

狭い山頂は倒木で踏路が遮断されている。
山頂に近づいているが、踏路はふたたび鬱蒼とした雰囲気が続いた。勾配を登り終えると、標高431mの栃穴御前山に到着。 狭い山頂は倒木で踏路が遮断されている。
倉岳山・高畑山・九鬼山 狭くて居心地は良くないが、烽火台の山頂なのだなと想像して、眺望を愉しむ。

鶴島御前山は、直ぐ眼の前に聳えている。狼煙係同士で、サインのやりとりが容易にできそうな、ふたつの御前山であった。
狭くて居心地は良くないが、烽火台の山頂なのだなと想像して、眺望を愉しむ。 鶴島御前山は、直ぐ眼の前に聳えている。狼煙係同士で、サインのやりとりが容易にできそうな、ふたつの御前山であった。
倉岳山・高畑山・九鬼山 「悪場」と登山詳細図に記された、栃穴御前山の南東の下り。ロープが設置されているから下れるようなものの、想像以上の崖状であった。

この箇所を下りにコース設定すると、少し怖い思いをするかもしれない。
「悪場」と登山詳細図に記された、栃穴御前山の南東の下り。ロープが設置されているから下れるようなものの、想像以上の崖状であった。 この箇所を下りにコース設定すると、少し怖い思いをするかもしれない。
倉岳山・高畑山・九鬼山 やっとの思いで鞍部に達する。上野原駅方面の眺めはあるが、動悸が激しく、景色を愉しむ気持ちにはなれなかった。

ふたたび登りに転じて、鬱蒼とした樹林帯の中を登る。降雨が徐々に本格化してきたが、濡れることは無かった。

葉を打つ雨音を聞きながら、岩混じりの細尾根を、粛々と歩き続けた
やっとの思いで鞍部に達する。上野原駅方面の眺めはあるが、動悸が激しく、景色を愉しむ気持ちにはなれなかった。 ふたたび登りに転じて、鬱蒼とした樹林帯の中を登る。降雨が徐々に本格化してきたが、濡れることは無かった。 葉を打つ雨音を聞きながら、岩混じりの細尾根を、粛々と歩き続けた
倉岳山・高畑山・九鬼山 標高450m圏に登り詰めた処で、今回のルート屈指の眺望が開ける。

カニのハサミ岩と呼ばれる印象的なふたつの岩から、倉岳山に至る前道志の山なみを眺める。

南側の下方には、箱庭のようなメイプルポイントゴルフクラブ。雨空だが、彼方には丹沢の山々も見えている。
標高450m圏に登り詰めた処で、今回のルート屈指の眺望が開ける。 カニのハサミ岩と呼ばれる印象的なふたつの岩から、倉岳山に至る前道志の山なみを眺める。 南側の下方には、箱庭のようなメイプルポイントゴルフクラブ。雨空だが、彼方には丹沢の山々も見えている。
倉岳山・高畑山・九鬼山 桂川流域の山を見渡す中で、ひと際雄大に横たわるのが扇山であった。

久しく訪れていないので、登ってみようかなと思わせる姿である。
桂川流域の山を見渡す中で、ひと際雄大に横たわるのが扇山であった。 久しく訪れていないので、登ってみようかなと思わせる姿である。
倉岳山・高畑山・九鬼山 ハサミ岩から緩やかに勾配を登り、程無く鶴島御前山に登頂。雨はいよいよ本降りとなった。

山名標の在る木々の下が雨宿りに最適で、折り畳み椅子を使って休憩することにした。

雨に濡れる三角点を眺めながら、トレイルミックスを頬張り休憩する。山頂でのカップ麺朝食にしようと思っていたが、この雨では断念せざるを得ない。

茫然と紫煙を燻らせて休憩する。それでも、無事に栃穴御前山に登り、険阻な踏路を通過してきたことに満足する。

時刻は、未だ九時半である。濃密の内容で行程を終えて、昼過ぎには帰宅できそうだと思うと、有意義だったなと思う。
ハサミ岩から緩やかに勾配を登り、程無く鶴島御前山に登頂。雨はいよいよ本降りとなった。 山名標の在る木々の下が雨宿りに最適で、折り畳み椅子を使って休憩することにした。 雨に濡れる三角点を眺めながら、トレイルミックスを頬張り休憩する。山頂でのカップ麺朝食にしようと思っていたが、この雨では断念せざるを得ない。 茫然と紫煙を燻らせて休憩する。それでも、無事に栃穴御前山に登り、険阻な踏路を通過してきたことに満足する。 時刻は、未だ九時半である。濃密の内容で行程を終えて、昼過ぎには帰宅できそうだと思うと、有意義だったなと思う。
倉岳山・高畑山・九鬼山 山頂から穏やかな尾根道を下り、石祠の在る標高450m附近で東の尾根から外れ、登山道は険しい下りとなる。

ロープが充分に設置されているので問題は無い。栃穴御前山からの下りを経験した後なので、何のことも無いと思いがちになるが、かなりの急勾配であった。

淡々と下り続けて、墓地の在る登山口に到着。樹林の中から飛び出ると、雨に打たれながらの帰り道となった。
山頂から穏やかな尾根道を下り、石祠の在る標高450m附近で東の尾根から外れ、登山道は険しい下りとなる。 ロープが充分に設置されているので問題は無い。栃穴御前山からの下りを経験した後なので、何のことも無いと思いがちになるが、かなりの急勾配であった。 淡々と下り続けて、墓地の在る登山口に到着。樹林の中から飛び出ると、雨に打たれながらの帰り道となった。
倉岳山・高畑山・九鬼山 桂川橋から、歩いてきた山々を見上げる。栃穴御前山と鶴島御前山を繋ぐ鞍部が、抉ったように構成されているのが、判然として理解できる。

雨雲は徐々に移動しているようで、上野原駅前に着いた時は、止みそうな気配になった。

電車はほどなくやってきて、思惑通りの時刻に帰宅したが、雨雲と一緒に移動してきたようで、駅から自宅までの道のりは、濡れながら歩いた。
桂川橋から、歩いてきた山々を見上げる。栃穴御前山と鶴島御前山を繋ぐ鞍部が、抉ったように構成されているのが、判然として理解できる。 雨雲は徐々に移動しているようで、上野原駅前に着いた時は、止みそうな気配になった。 電車はほどなくやってきて、思惑通りの時刻に帰宅したが、雨雲と一緒に移動してきたようで、駅から自宅までの道のりは、濡れながら歩いた。

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