活動データ
タイム
21:45
距離
25.7km
のぼり
2350m
くだり
2352m
活動詳細
すべて見る1日目: タイム13:08、距離12.6km、上り2120m、下り384m、カロリー6735kcal 2日目: タイム08:35、距離12.6km、上り354m、下り2081m、カロリー4126kcal 地蔵尾根駐車場5:10―地蔵尾根中間水場7:29―松峰小屋10:02―丸山谷ノ頭12:59―地蔵尾根合流18:03―仙丈小屋18:18 2日目 仙丈小屋7:00―地蔵尾根合流7:19―丸山谷ノ頭9:50―11:40松峰小屋11:59―地蔵尾根中間水場13:56―地蔵尾根駐車場15:34 中央高速を走行していると、西に中央アルプス、東に南アルプスの白い峰が聳えている。特に南アルプスは距離があるにもかかわらず、異様に高く白い峰々が惹きつける。 その中でも、仙丈ケ岳は雄大で大きな山。戸台からの林道の復旧に時間がかかっており、開通しても歌宿までとなるそうだ。開通するまでに登るには地蔵尾根を行くことになる。ここからのルートのレポはたくさんあり、日帰りで登られる猛者もいらっしゃる。でも、標高差2000m越え。私の場合は迷わず、無人小屋泊りとなる。その代わりにこの季節、冬用シュラフ、ピッケル、アイゼン、冬靴・・・荷物の重量がかなりになる。準備して図ってみたら16kgを越えた。もちろん、靴を入れずに。どちらが良いのやら。 しかも数日前には積雪があり、何人も断念されている。行けるかわからないけど、降雪後少し時間が経っているので安定していると考え、絶好のお天気を見計らって仕事の休みを頂いて柏木登山口へ。 日が変わる24時前に駐車場に到着。私を入れて3台。明け方にもう1台来られて、先に出立された。もう2台も出発されているようで人気を感じなかった。仮眠して夜明け前に起きて5時に出発。もうヘッデンは不要だった。駐車場の先を進みすぐに左折して登山口へ。そこから長い長い山道。林道を交差し、2回、林道歩きもある。林道の方が歩きやすいと思って歩いてみたが、イバラのある木が茂っており、それを避けながら歩くので、山道の方が良さそうだ。 出発した駐車場1150mくらいで、林道との交差が終わる地点が1940m。山道でも標高は上げてきているが、そこからなかなか高度を稼げない。2067mピークに登った後、尾根伝いに進んで下降するとようやく松峰小屋への分岐。 ちょうど、10時。積雪もないのに、ここまで5時間もかけてしまった。ここで泊まるか、稜線まで上がるか判断するところ。ここ数日、天気は非常に良いし、ここから5、6時間で稜線に達すると見込んで、先を進むことにした。ここの先から雪は踏みしめられたカチッカチの氷の上を歩く。アイゼンを装着して登るが、半分くらいは雪のないところもあり、かなり面倒。それでも地蔵岳のトラバースが雪がタップリで、アイゼンありで安心して進めた。2350mの稜線でカモシカさんと出会い、その後も尾根伝いに、さらに左へトラバースして2430mの丸山谷ノ頭。松峰小屋からここまで2時間の予定だったが3時間を要した。ここから稜線まで2時間を想定していたが、この調子では3時間以上かかりそうだ(実際には実に5時間を要したのだが)。 この後は尾根伝いに樹林帯を2400mの高度を保って進む。上から登山者が降りてこられた。長身のかっこいい爽やかな男性。泊まる用意がないので、仙丈の写真を撮ったので引き返すという。 踏み跡が大きく右に折れると正面に見える尾根との間のルンゼ状の雪田に出る。灌木が生えており、大きな雪崩を発生することはないだろうがかなりの傾斜なので、足元で切れたら怖い。本日の先行者らしい、新しい足跡がトラバースしていた。私は雪田に入らずにハイマツのそばを登って行ったが、雪が深く、腐って崩れやすいので、トラバースした。そこから雪田の上部へ急登すると、その真ん中に標識が立っているのが見えた。おそらく、ここから山頂まで80分の表示だろう。 ここの上部は2700m。あと300m少々だが、雪が中途半端に積もった稜線ではストックが邪魔になる岩場が出ており、アイゼンがギシギシと音を立てる。一方でハイマツと雪に覆われた斜面では踏み抜き多発。膝まで潜る箇所もある。踏み跡がいくつかあるものの、ほとんど新雪状態。思ったより時間がかかるし、息切れがひどい。私の場合、苦しい呼吸のまま心臓発作が起こるとヤバイので、静まるまで立ち止まる。何度も何度も。目の前の峰のあそこまでと目標を定めるが、そこまでいかないうちに立ち止まって呼吸を整える。深く息をしてもなかなか収まらない。さすが3000m近いことはある。 今日の好天は間違いなく続くので、急がずに一歩一歩進むしかない。稜線に緑色のテントが見えた。夕食の支度をしておられる。もう稜線まで登れるのは間違いないので、テントの横でザックを降ろしてしばらくお話しさせていただいた。兵庫県の方で松峰小屋に一泊して7時に出発されたそうだが、きつくてここでテン泊となったそうだ。風はほとんどなく、広い稜線で気持ちよさそうなところ。稜線まであと1時間少しかかるだろうか。日が暮れるまでに小屋に行きたいので先を急ぐことにした。相変わらずのカメ足で稜線に到達。藪沢カールにある仙丈小屋への分岐よりかなり上に出たが、もう18時だ。山頂に往復すると小屋に着くのが19時を過ぎそうなので、写真だけ撮って山頂は明日に目指すことにした。今晩に暴風が吹き荒れ、ここが最高点になることを知らなかった。 カールへの分岐までモナカ雪、かと思ったら、一部は凍っていた。1つだけ足跡があったが昨日までに上部へ向かったものだった。他にトレースはなく、新雪を踏み降りてカールへ下降する。明日に登り返すので、できるだけ登りやすいように小股にしてステップを作るようにして下降した。小屋には人気はない。足跡もないので当たり前だが、正面から3階に上がって冬期小屋を空けると、誰もいなかった。やっぱり、貸し切りみたい。きれいな小屋だが、靴を脱いで上がってみると、床が異様に冷たい。スマートウールの分厚い靴下でも冷たさがジンジン伝わってくる。象足を持ってくればよかった。 とりあえず、アルミシートとサーマレストのマットを敷いて座り込み、ザックから衣類を出して着込み、夕飯の支度。湯が沸くまでにシュラフを出して、足を突っ込んで温める。 一か所だけある窓から、外が見える。夕方のカールの写真も欲しいところだが、もう小屋を出る気にはならなかった。 夕食を食べて、水分を取ったら家族にLineして寝ることにした。ナンガのオーロラライト 750DXは暖かく、ダウン上下を着込んで寝たら、広々とした小屋にポツンと一人でも寒さは全く感じなかった。夜中にコーヒーを飲んでみたりして、快適な夜を過ごした。 だが、外から風のものすごい音がしてくる。すぐに稜線のテン泊者が気になる。広い稜線とはいえ、飛ばされてないだろうか。携帯の電波は入るので予報を見てみると朝方に多少は弱くなるが風は止みそうにない。何度も起きるが風は強いまま。小屋は頑丈で揺れることもない。小屋のありがたさを感じた。 明るくなっても風が止まないなあ、今日帰らないといけないけど強行突破できるかなあ、と思いつつ、まどろんでいると、突然小屋の扉が開いて人が入ってきた。グリベルのヘルメットで完全武装。思わず「どこからですか?」と聞いたら「下のテントから」。昨日のテン泊の猛者でした。小屋が解放されていて私が泊まると話していたので、3時頃から撤収を開始してこちらに来たそうです。勇ましい姿に誰かわからなくて失礼しました。テントはこの風の中でも持ちこたえたようです。 小屋の中で、テントを畳みなおし、朝食の準備をされ始めた。私もカップラーメン(チリトマト)を食べて荷物を整理して出発の準備。風が少しは収まった気がするので7時に出発。 私はもう頂上への思いはなく、積雪期の地蔵尾根を登れたこと、ノートレースの冬期小屋を満喫できたし、もう十分なので山頂へは行かないかもしれないと言い、先行して外に出た。ピッケルとポール一本とした。風はあるが良いお天気。山頂は雪煙が舞っている。昨日作ったはずのステップはほぼ消えて跡形だけ残っている。そこを再び上り返した。 ここまで来ると風は相当強い。山頂への思いより、この尾根を無事に下降できるかが気になるところ。遅れて登ってきたテン泊の猛者に降りる旨合図して、手を挙げて別れた。地蔵尾根は下るほど風が弱くなってきた。標高が下がったこと、風自体が弱くなってきたことによるかもしれない。途中でアイゼンを外し、尾根を降りる。ある程度下降するとハイマツの踏み跡やマーク通りで行くと、2700mの雪田まで下りてきた。昨日はあんなに苦しんだ箇所をあっさりと下ってきた。まだ、時間帯は早く雪は締まっているので、雪田をトラバース気味に下降し、安全に下れた。それ以降は、例のガリガリの凍った雪道をひたすら下降した。雪のない箇所もあるがすぐに雪道が出てくるので、アイゼンは外せない。途中で日帰りで登ってくる方が来られた。まだ、8時半。快調な様子だった。これなら日帰りできそうだけど、上部が雪で苦戦するかもしれないとお伝えした。今日会ったのはこの方だけだった。途中、カモシカの居場所に来たが、留守だった。残念。 松峰小屋への分岐でアイゼンを外し、ピッケルを仕舞ってお役御免。あとはひたすら長い山道の下降だ。林道を歩いてみたが、日差しが強いうえ、路面からムッと熱気が上がってきて暑さが倍増する。途中から山道に戻って、長い長い山道。昨日は、こんな長い道のりを重い荷物で良く登って来たなあって感心しながら、スピードを上げる気力もなく、ヘロヘロと駐車場まで下った。3L用意した水はほぼ使い切った。駐車場で靴とアイゼンを洗い、着替えていると、今朝出会った登山者が早くも降りてこられた。なんというスピード。荷物が少ないとは言え、凄いなあ。テン泊の猛者が降りてこないが、スポルティバのバツーラを履いた強者だから大丈夫だよね。 今回の山行で、自分の体力的な限界が見えた気がした。天気がしばらく安定しているのを知っていたから、それも重々考慮した行動であったが、いつもこのように行けるはずもない。夏場になれば急変も起こる。今回はお天気に恵まれ、思わぬ残雪を満喫できた。
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