活動データ
タイム
21:36
距離
28.0km
のぼり
2348m
くだり
2348m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る真っ白に染まったアルプスに一点黒く聳え立つアルプスの象徴 槍ヶ岳。辛くて苦しいが積雪期になると登りたくなる。 昨年末からタイミングを狙っていたが、天気や仕事の都合で実行できずにいた。 4月になると入山者も増えるため、自分の中では3月末までがリミット。(できれば2月まで)そういう意味では最後のチャンスだった。 この週末の天気は金曜から土曜の午前中にかけて良さそうだ。 年度末で何かと忙しかったが、これを逃すと今シーズンも諦めざるを得なくなるため、無理矢理都合をつけて単独で挑むことにした。 この時期の槍ヶ岳情報は乏しく状況は分からなかったが、乗鞍や西穂高は極端に雪が少なくそれ程苦労しないと軽く考えていたのだが…。 計画は以下。 ⚫︎一日目 (26日) 新穂高温泉 → 中崎尾根(テント泊) ⚫︎二日目 (27日) 中崎尾根 → 槍ヶ岳 → 中崎尾根 → 新穂高温泉 ◆◇◆◇◆ ◉一日目 新穂高温泉に前乗りして車中泊。 この時期にしては暖かく、窓を開けていても3シーズン用のシュラフでぐっすり眠れた。 5時に新穂高登山指導センター前をスタート。 延々と長い林道を経て7時過ぎに白出沢に着いて小休止。その後、滝谷までは難なく辿り着いたが、ここからは予想に反しての積雪量に加えてトレース無し。デブリで夏道は塞がれているため右俣谷を遡行し、5時間かけてようやく槍平に着いた。 予報に反して小雪が舞う槍平。 ここまでの疲れと残った僅かな体力…単独だったこともあり、予定していた中崎尾根まで登る気力を失い、一日目は槍平の冬季小屋で泊まることにした。 時間は早かったが荷揚げしたアルコールで完全にoffモード。誰も居ない小屋でのんびり寛いでいると一人の若者が入ってきた。 「こんにちは。トレース使わせてもらいました。」と…。彼も今日は中崎尾根でテント泊の予定だったようだが、この天候で躊躇しているようだった。 二人だけの小屋で何気ない話をしているうちに、「これから一緒に中崎尾根に行きませんか?」と誘いを受けた。 offモードになっていたが、明日のことを考えると少しでも進みたい。そしてラッセル必至のこの先を考えると尚のことだった。 12時前に小屋をリスタート。 本来であれば、槍平のテント場を少し進んだところから尾根に向けて詰めるが、トレースが無いことから飛騨沢を少し進んで等高線の間隔が広いところから登ることにした。 中崎尾根に辿り着いたのは14時半頃。 既にアルコールが入っていたせいもあって辛い急登だったが、雪が舞っていた空は碧く晴れ渡り、ここまでの辛さが一気に吹き飛んだ瞬間だった。 ◉二日目 深夜2時半に起床。 4時スタートには早かったが、せっかちな性格で落ち着かず身支度を整える。 予定通り4時にスタートして目覚まし代わりの核心部。前回は直登したが、今回は巻いてみることにした。いずれにせよ脚を滑らせると飛騨沢まで一直線に変わりないが。 比較的暖かな朝だったが雪面は締まっていて、それ程難しくはなかった。…問題は下りだが。 千丈乗越に着いたのは5時半前。 薄明るくなってきた空に浮かぶアルプスのシルエット…言葉では表現できない瞬間だ。 所々緩んだ雪面…ピッケルやアイゼンも効きづらく気を抜けないところもあったが、テントから3時間弱、ようやく肩に辿り着きアルプスを象徴する頂まで残すは100mとなった。 小休止後、山頂に向けてアタック開始。 鋭く尖った雪のつきにくい黒い岩稜を登る。硬く凍りついてアイゼンも蹴り込まないと噛まないところもあったが、7時25分、踏み跡の無いその頂に立つと同時に全身が引き攣るような感動を覚えた瞬間だった。 自分にとってこの時期の槍ヶ岳は難しいとか優しいとかではない。難しいところに行きたければ他にいくらでもある。 山登りを始めた頃の憧れの頂…その想いを忘れないために。
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