活動データ
タイム
07:10
距離
13.5km
のぼり
1185m
くだり
1185m
活動詳細
すべて見る「14日、どこか行きませんか?」 「3/14?空いてるよ!」 二つ返事で返したものの、念のため手帳を開く。3/14、、、ホワイトデーやん!笑 そんな日にあえて36歳独身貴族に何の遠慮もなく声をかけてくるとはなかなかのヤツだ。まぁ週末はだいたい山にいるので、そう思われるのは当然か、、、 とは言え私の手帳には彼の予想通り、何も記載されていないのだが、、、、😂笑 彼の名は「なおやん」 年末に谷川岳で出会った大学4年生、この4月から新社会人のフレッシュボーイ! 人懐っこく、話のテンポも合うし若さ故の体力も備えている、可愛い弟ようなヤツだ! 行先については、富士の外輪辺りとか色々と候補を出す中で、この冬のうちにどうしても行きたかった浅間山を挙げる。 しかし天気は良いが風速24mっと。。 今度いつ規制がかかるかわからんし 「どうしても浅間山に行きたいねん」と言うワガママを聞いてもらった。 その上、栃木から埼玉の川越まで車で迎えにきてもらった笑。 15歳も歳下をこき使う36歳独身貴族。 なんてヤツだ。 それでも彼は笑顔を絶やさない。 なんて良い子だ笑。 車中、4月から社会人になるという彼の心境を聞く。 前向きな気持ちもあり、不安もあると言う。 遠い昔のことで忘れかけていたが、私はどちらかと言うと、当時働くことに憧れていた為、明るい未来を想像して入社し働き出してから打ちのめされた典型的なタイプなので笑、彼には社畜などと言わずに、是非社会人生活も、仕事も、そして成長していく自分自身を楽しんでほしいと願う。 往路はスムーズに流れ、埼玉を出発して約2時間ほどで浅間山荘に到着した。 ここがあの有名な事件の舞台かと思いながら、準備をする。 1972年に起きた浅間山荘事件。 彼にも聞いてみたが何それ?のような顔をされた。 私の年代でも知っている人は少ないので、平成生まれだと当然か、、、笑 そもそも私も生を受ける前の話だ。 これほど年齢に差がある子と山に登るのは2回目だが、山やカメラなど趣味の話で盛り上がれるのが唯一の救いだ。 山が好きってだけで、年代を超えて人と仲良くなれるのも山登りの魅力の1つと私は考えている。 登り始めてしばらくすると、下山してくる登山者がちらほら。 「シェルターより先、風やばくて撤退しました!」 「風速30mは軽く超えてる!」 皆一様になぜか爽やかな笑顔でこう言うのだ。 風は強くとも晴れている為、ある程度の満足感を得られたのだろうか。はたまた、これからそこに立ち向かう私たちを見てお気の毒様っと思っているのだろうか笑。 まぁいい。 撤退するかどうかは、自分の目で状況をよく見て判断しよう。 彼らの選択が9割ぐらい正しいと頭ではわかっているのだが、無理と思われることに限って何かのキッカケでこじ開けれる可能性も秘めていることを私は知っている。 --------------キリトリ------------- いつかの秋。 私は山仲間と紅葉の下で皆で鍋をつつこうと、ハイキングに来ていた。 せっかくなのでと、ワインを4本持って行ったのだが、不覚にもオープナーを忘れてお酒が飲めないことがあった。 駅前にも建物がほとんどなく、あるのは小さな個人商店(スーパー)とクリーニング屋だけだった。 小さな個人商店に入り、ワインオープナーがないか聞いたところ、取り扱っていないと言われた。 代わりにビールの栓抜きを勧められたが、丁寧にお断りをした。 絶望の淵に立たされた私は、仕方なく個人商店でお酒を買うことにした。 背中にワインを4本も背負いながら。。。。 その時、一緒に居た女性が 「わたしクリーニング屋さんに聞いてくるわ!」 は?クリーニング屋?意味がわからない。 なんだこの人は。一体何を考えているのだ。 と訳がわからぬまま隣のクリーニング屋に向かう。 すいませ〜ん キム子「ワイン開けるヤツないですか?」 おばちゃん「あるで!ちょっとまってて!」 っと、店内の奥に消えた。 え!まじで!? そう、このクリーニング店も個人商店で、店を構えた奥にその家族が住んでいたのだ。 しばらくして暖簾の隙間から店主が笑顔を見せる。 おばちゃん「あったあった!はいっ!」 キム子「ありがとうございます!」 ニシハタ「帰りにお返ししに来ます」 おばちゃん「ええであげるわ!使こてへんし」 キム子さんの機転と、親しみやすいおばちゃんの好意により、私はワインオープナーを手に入れ、皆と紅葉の下でワインを楽しむことができたのだった。 ---------------キリトリ--------------- しかしシェルターに到着した私は絶望していた。 この惑星の自転が止まってしまったかのように全てが荒れ狂っている。 目の前が白く見えるのだが、これはガスではなく雪煙である。 バラクラバ&ゴーグルを装備しフードを深くかぶっても顔が痛い。 ここに至るまでもすごい風圧だったが、ここからは本格的にやばい状況だ。 果敢にも外輪を一直線に上がって行ったが、50mも進まないうちに身動きがとれなくなった。外輪の肩はまだまだ先だ。 まともに風を受ける場所に立つと、身を低くしていても時折、身体が浮きそうになるほど。これはまじでやばい笑。 今まで強い風に吹かれたことは何度かあるが、これほどの爆風は本当に初体験であった。 マイケルジャクソンがナナメ前に倒れるパントマイムがあるが、まさにそれが実現可能な程。 手を広げると本当に飛んでいけそうだ。 ちなみに風速30mというのは、走行中のトラックが横転するレベルのものである。 あと少し強ければ、もはや人間などあっけもなく吹き飛ばされてしまうだろう。 数年前、大阪を直撃した台風では市内に風速40mの風が吹き、私の住んでいたマンションのバルコニーを根こそぎ持って行ったのだ。 賃貸マンションだったので今となっては笑い話なのだが、いざその風と対峙している今、完全に笑えなく恐怖でしかなかった。 相棒と2mも離れると会話が困難で、意思の疎通も図れない為、危険と判断し一度シェルターに戻った。 エネルギー補給をしながら後続のPTと少し会話を交わす。彼らもどう攻めるか頭を捻っていた。 ここはまさに境地。心技体を試される時だ。 シェルターから風の通り道や強弱を注意深く観察すると、狂気の凍風は外輪の外側から内側に抜けている。 外輪尾根を普通に歩くと横風によって外輪内側に滑落の可能性があるため、外輪の少し外側にコースを取ることを決めた。 そして私たちは再度外輪に足を向けた。 深い吹き溜まりになっているが、極力風裏になる部分(外輪内側)を這い上がる。風が僅かに弱まるタイミングをみて一気に外輪の外側へ移動。突風で倒れてもこれで滑落の危険はなくなるのだ。 あとは横風に耐えながら少しずつ進み、ようやく前掛山の山頂に到着する。 相棒とのハイタッチ!! 困難を乗り切った達成感と安堵感。 なににも変えがたい喜びを噛み締め、私たちは大きく雄叫びを上げたのだった。 その後、凍えながらも登頂の証に写真をとり、相棒と慎重に下山した。 賽の河原まで降りると風も弱まり、静かな森に戻った。 火山館の小屋番の方に「やり遂げたか?」と問われ、それに応えると「やったな!今日山頂踏めたのは1割もいない!」っと。 入山してから20人ともすれ違わなかった為、今日この状況で登頂できたのは、私たちと後続PTの男性1人のみ。 完全勝利だ\⍩⃝/ 私たちは再び手を握った。 彼とはまだ知り合って間もない上に、随分と歳が離れているが、本当に「相棒」と呼べるほど素晴らしい体験を共有できた。 これも登山の魅力の一つと言えるだろう。
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