甑岳(山形県村山市)-2021-02-28

「ぬおぉぉっっ！」 鳥海山が近くに見えるほどの晴天。甑岳登山道、幕井コースの稜線上、私は思わず吠えてしまった。 直立出来ない程の急斜面とアイスバーンに四つん這いで格闘していた。数歩登っては滑り落ちる。１キロ進むのに何度繰り返した事だろう。山側の右脚が曲がったまま負荷がかかり続ける。鬼にアイアンクローをかけられたようだ。 澄み渡る空と風、雪に覆われた山並み。心を無にし、何とか頂上広場らしき所にたどりつく。 先に到着していた友人 「あまごいのばりだにゃ」（甘いのばっかりだね。しょっぱいのないの？） 「よっぐほだなでのぼったにゃ」（なんでそんな装備で登ったの） 山をナメている程の軽装で、私が準備した軽食とコーヒーをゆうゆうとほおばりながら言う。 体力、食事、山の下見。準備万端のはずだった。 友人のメンタルと身体の強さに対して、悔しさを押し殺しながら足元を見つめる。 「スノーシュー・・・」 これまで、今日ほどの硬い雪面と急斜面は体験した事が無かった。メリットだった浮力が今日はデメリットだった。 山と友人に対策を練り、春になるまでもう一度登りたい。